エンジニアの副業は週1からでも可能?副業の例や探し方も解説
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「オウンドメディアの時代は終わった」と言われ始めたのは、何年前からでしょう。現実に有名メディアの閉鎖が相次ぎ、先行きの暗さを感じることもあります。
しかし、オウンドメディアならではのストック型コンテンツマーケティングによって、リード獲得やブランド訴求につながることも確か。
これからのオウンドメディアは、どう戦っていくべきなのか。
そのヒントを得るため、2大カルチャーメディアとして業界を先導するCINRA, Inc.の柏井さんと、KAI-YOU inc.代表取締役の米村さんをお呼びし、ウェビナーを開催。「オウンドメディアのマネタイズ戦略」をテーマに意見を交わしました。
(本記事ではオンラインセミナー『2020年代、オウンドメディアのマネタイズ戦略 #オウンドメディア2020』のレポートをお届けします)
1981年、東京都生まれ。2006年に取締役として株式会社CINRA立ち上げに参加。創業時から現在までカルチャーWebメディア『CINRA.NET』の編集長・責任者としてサイトの運営を行いながら、イベントプロデューサーとして入場無料の音楽イベント『exPoP!!!!!』などの立ち上げ&運営責任者を務める。人生は、常に音楽と共に歩むこと、他人を幸せにすることがモットー。
1986年生まれ。株式会社カイユウ 代表取締役社長。学生時より雑誌『界遊』を刊行。出版社で書籍編集や、IT企業にてWebディレクター/コミュニティマネージャーなどに従事し、2011年にKAI-YOU,LLC.として法人化。ポップポータルメディア『KAI-YOU.net』、サブスクリプションメディア『KAI-YOU Premium』をリリース。メディアや広告、アーティストなど、社内外で様々なプロジェクトのプロデュースを行う。
早稲田大学および同大学院でメディア表象にかんする研究に携わった後、2018年に株式会社GIG入社。編集者兼マーケターとしてクライアント企業のコンテンツ支援や採用支援を行うほか、オウンドメディア『Workship MAGAZINE』の編集長を務める。業務外でも趣味でウェブメディア『クレイジースタディ』を主宰するなど、根っからのメディア好き。趣味はダンス、作曲、イラスト制作など。
目次
じきるう:KAI-YOUさんはどのようにメディアのマネタイズをされていますか?
米村:KAI-YOUではポータルメディアの『KAI-YOU.net』、月額制の『KAI-YOU.Premium』と2つのメディアを運営しています。記事広告が要ですが、Premiumの会員費が現在は伸びてきています。
じきるう:Premiumでは、どのような特典を用意されているんですか?
米村:会員になると、限定公開の記事が読め、会員限定コミュニティに参加できます。どちらかというとコミュニティとしての機能が強く、会員同士/会員と編集部のコミュニケーションなどが盛んに行われていますね。リリース以来、順調に会員数が伸びています。
じきるう:すごいですね! 上手く機能している有料コミュニティは少ないと思います。
米村:僕らも参考にしているサイトは特にありませんでした。これを始めたのは、「みんなお金を払う場所を探しているんじゃないかな」と思ったからなんです。
じきるう:読者はメディアにお金を払いたがっている、ということですか?
米村:メディアに、というよりも何に使うかを常に考えあぐねているような印象です。
僕はこれまで、初期のインターネットにあった「フリーミアム万歳!」みたいな文化が大好きで仕事していたんですけど、最近のインターネット的な感覚はそうじゃないと感じていて。AmazonやNetflix、YouTube Premiumなどが世間に浸透して、Web上でお金を払うことが当たり前になってきている。だから、月額制のコミュニティメディアにも可能性がある、以前より敷居が下がっていると思ったんですよね。
じきるう:ユーザーの変化に合わせてメディアを作られたんですね。CINRAさんはどのようにマネタイズされていますか?
柏井:マネタイズのベースは記事広告ですね。音楽、アート業界などのクライアントが主ですが、一般の企業からも多く広告を出稿していただいてます。
単発の記事広告だけではなく、CINRA.NET内にクライアント企業のオウンドメディアを作ることもありますね。マネタイズとしても安定していますし、同じクライアントさんと関係性を深めつつ、落ち着いてマインドや哲学を発信できるので、やりがいがあります。
じきるう:KAI-YOUさんとCINRAさんはメディア運営の他にも、イベントの開催やグッズの販売などを行なっていますよね。
米村:はい。僕たちは『POPisHere』というブランドを作って、グッズを販売していました。ラフォーレ原宿にポップアップストアを出店した際は、ポップアップストアで当時の歴代一位の売上を出したみたいです。
柏井:僕たちはイベントがマネタイズの柱になってきていますね。『exPoP!!!!!』という入場無料のイベントを毎月開催したり(※現在は新型コロナウイルスの影響で休止中)、アーティストを発掘するオーディションを行なったり。最近だとオンラインイベントが多く、企業さんと一緒に開催したり、協賛をもらったりして運営しています。
じきるう:イベントをやってよかったことはありますか?
柏井:メディア以外の実績を積むことで、提案の選択肢が増えたのは大きいかなと。クライアントの目的に適した提案を幅広く行えるようになりました。
米村:イベントは本当にいいことづくめなんですよ。発信手段が増えるから、ブランディングに繋がります。採用にも効果があって、ポップアップストアのお客さんとか手伝ってくれたスタッフから社員になった人もいますね。
じきるう:メディアを運営するうえで、KPIは何に設定していますか?
柏井:売上は当然、KPIのひとつですね。PVも指標にしていましたが、3年前にやめました。その代わりに、EXPTという独自の指標を取り入れています。
じきるう:EXPTとはなんでしょうか?
柏井:EXPTは「PVと滞在時間をかけ合わせた数値」で、記事が合計何時間読まれたかを表しています。これを指標とした理由は、人の感動に繋がった記事をしっかりと評価するためなんです。
芸能ニュース記事だと、一瞬で数十万PVを記録したりするんですが、滞在時間で平均すると5、6秒みたいなものも多くて。それより、1万PVでも10分読んでもらった記事のほうが、人の感動や変化を生み出していると思ったんですよね。EXPTを指標とした効果もちゃんとあって、PVを指標としていた頃と比べると、売上が2倍以上になりました。
じきるう:EXPT、すごくいいですね。KAI-YOUはどんな指標を使われていますか?
米村:KAI-YOU.netとKAI-YOU.Premiumは、会員数をKPIに設定しています。
会員数を重視している理由は、訪れたユーザーにファンになってもらいたいからです。今、メディアってマジでいっぱいあるじゃないですか。記事がSNSで流れてきて、読んで、すぐ離脱していく流れが当たり前になっている。
一時的なPVは増えるけど、定期的に訪れてくれるコアなユーザーは増えない。サブスクリプションの収益を大事にすると、メディアを運営するうえでは固定の読者が大切になってくるので、会員数を指標にしていますね。
じきるう:両メディアとも、PVは指標ではないんですね。PVを指標にしていない理由はありますか?
米村:そもそもPVを稼ぐメリットって、アドネットワークの広告収入以外にほぼないと思っています。PVを追っても、メディアの健全な成長には繋がらないなと。
柏井:そうそう。WebメディアのほとんどがPVを指標にしているから、記事が似通ってきてしまうんですよね。芸能ニュースを配信したり、一定の工夫をしたりすれば、PVは稼げてしまうので。そうなると、メディアの個性が死んで、読者はどこのメディアで読んだのか気にしなくなります。
米村:そもそもCGMやプラットフォームと違って、人力でコンテンツをつくって運営されるWebメディアは数億規模の莫大なPVを稼ぐことが難しいです。だから、莫大なPVを前提としたアドネットワークの広告収入って、正直、割合的にはしょぼくなります。たとえ一つの記事が100万PVに伸びても、大したお金にはならない。それなのに、意図しない変な広告が流れたり、サイトスピードが遅くなったりして、収益に対するデメリットが大きい感じがしています。
だから、PVを重視したり、アドネットワークの広告収入を目的にしたりするのって、Webメディアのビジネスモデルに適してない。とはいえ1、2人とかで運営する分にはアドネットワークだけでも充分に回せると思います。
じきるう:メディアを立ち上げてから黒字になるまで、どれくらいかかりましたか?
米村:1年くらいですね。僕らがメディアを始めた2013年は、Webメディアの時代だったと思うんです。記事広告という手法自体がバブルで、メディア事業がIT界隈での投資対象になっていた。仕事をたくさん受けて大変でしたが、おかげですぐに黒字になりました。記事は社内で作成していたので、かかったのは人件費くらいでしたね。
柏井:Webメディアの時代はありましたね。競合が多くなかったのと、広告の主体が紙媒体からWebに移ってきて、SNSが普及し始めたときだったので、メディアがある程度しっかりしていればお金が入ってくる時期だったと思います。
米村:そうですよね。いまじゃ考えられないけど、「Webメディアで何億出資してもらった」とか、業界ではそんな話がたくさんありました。さらに時代を遡ると、情報が少なかったので、パソコンを開いて最初に見るのがWebメディアという人も多くて、単純にファンになってくれるユーザーが多かった。
柏井:いまはキュレーションメディアやSNSにごっそりもっていかれている。戦い方が根本的に変わりましたよね。
じきるう:CINRAはどれくらいで黒字になりましたか?
柏井:2007年から本格的にWebメディア化して1、2年ですね。受託の仕事で稼ぎつつ、CINRA.NETを作っていました。一生懸命でしたよ。
ただ、お金を受託で稼ぎつつスケールしていくメディアは上手く回らなくなる場合が多かったので、当時は危機感を抱いていました。だから、「俺たちは1年でCINRA.NET単体で黒字化できる数字までもっていけなかったら辞める」と決めてめちゃくちゃ営業しましたね。
じきるう:CINRAさん、営業されてたんですね!?
柏井:しましたねぇ。受託の仕事や主催するイベントの協賛も、最初はテレアポで取りました。それで担当者と意気投合して、転職した先で協賛してくれることも。こうした関係に助けられていままでやってこれたと思います。
じきるう:KAI-YOUさんは、受託でのお仕事はされていますか?
米村:最初は受託しかしてなかったですね。会社を設立してからKAI-YOU.netをリリースするまでの2年くらいは、ずっと受託案件を受けていました。ただ、自分たちの名前が出せない案件はお金のためだけだと思って、ちゃんと自分たちのブランドとして還元できるようなものだけにいまは絞っています。でも、受託案件はやったほうがいいと思いますね。
じきるう:それはなぜですか?
米村:単純に技術や仕事に対する意識が上がるからです。自社メディアだけだとスケジュールや品質も自分たち次第なので、あんまり緊張感がでないじゃないですか。でも、受託はクライアントが全て判断するので。
受託の案件と自社メディアを並行して行うことで、自社メディアも「ちゃんとしよう」という意識が芽生えていきました。自社メディアでは難しい、0から作る仕事も受託ではできるし、スタッフの経験になると思います。
あと、自社メディアやる人間こそ、ちゃんと社会と繋がってないと。
柏井:そうそう。カルチャーのような専門性の高いメディアをやっていると、周りも同じような人たちばかりになって、社会との距離ができてしまいます。
ですが、受託の案件をしていると、カルチャーに関わりの少ない方と仕事をすることが多い。普段は出会わないタイプの人でも、話してみると共感できることがたくさんあって。刺激を受けて、記事の作り方が変わることもありますね。
じきるう:記事広告を作るなかで、気をつけていることはありますか?
米村:クライアントの話をよく聞き、自分たちが出来ることを見つけて、結果を出すことですね。Webメディアって、社会人としてちゃんとしてない人が多いんですよ(笑)。新規参入しやすくて、勉強しなくてもできるから。
Webメディアの影響力が落ちているなかで、クライアントから信頼されるには「このメディアで記事を作ってもらってよかったな」と思われないと。そのため、当たり前ですが案件に合わせた提案をしたり、まったく新しいことをやったりと工夫しています。
柏井:そうですね。私達も、案件によってポイントは作っていきたいと考えていて。この記事は社会性を大切にするのか、人間性に迫るのか、専門性を高めるのか。これをメディアや記事の目的ごとに考えて、新しい発見を作れるようにする。
CINRAはカルチャーを知らない人に知ってほしいと思って始めたメディアなので、専門性の高い内容を誰にでもわかるように易しく、易しいけど深く、面白くしていけるかを考えています。
じきるう:易しくありつつも、深く。
柏井: そうです。また、クライアントと一緒に仕事をする際は、クライアントの要望を起点に記事を作るよりも、読者が何を知りたいかを起点にして記事を作ることを大切にしています。読者が求める記事を通して、クライアントの要望を叶えられるようにと考えていますね。
じきるう:あくまで読者目線で記事を作るんですね。
柏井:そうじゃないと、興味を持ってもらえないですしね。そこはクライアントさんと結構戦うところで、記事の目的やブランディングの意図をしっかり話し合います。最終的にはその方が良い結果も出るので、リピートしてくださるクライアントも多いのです。
じきるう:これからのマネタイズでやってみたいなと思うことはありますか?
米村:僕たちはもう、メディアを広告収益で回していくんじゃなくて、読者に直接お客さんになってもらおうと考えています。いまはライブ配信だと、投げ銭やドネーション(寄付)が当たり前になってきているじゃないですか。それをWebメディアにも応用できないかと。
具体的には、メディアにドネーションしてもらったり、記事ごとに投げ銭をいただいたりなどです。寄付してくれた読者には、記事内にアイコンや名前を表示してお礼をしようと思っていて。読者とメディアの関係性を深める方向に寄っていきたいと考えています。
じきるう:そう考えられた理由はなんですか?
米村:メディアの在り方って、もともとそっち、toCなんじゃないかなと。新聞や雑誌だってみんなお金出して買ってるじゃないですか。イギリスの「The Guardian」が運営しているWebメディアは、ユーザーの会員費と寄付で回している。それで稼いだお金で、ユーザーが本当に知りたい情報を取材するという流れができています。
僕はそっちの方がかっこいいなって思うんです。健全だなって。やっぱり広告をもらうことによって、報道や批評という観点からは書けなくなることもありますしね。純粋なファンや読者からお金もらって運営していくのが、本来のメディアな気がします。
じきるう:昔からある「お金をもらってコンテンツを売る」スタイルに戻っていくと。CINRAさんはいかがですか?
柏井:マネタイズの軸というより、CINRAの哲学や企業の目的として、人に何か変化をもたらすコンテンツを提供し続けていきたいと考えているので、Webメディア以外にも色々トライをしていて。
たとえば、いま力をいれているのは、CINRAから派生して別会社としてやっている『Inspire High』っていう教育事業。10代の子どもたちに向けて、詩人の谷川俊太郎さんや台湾のデジタル担当大臣オードリー・タンさんなどに授業をしてもらっています。めちゃくちゃおもしろいので、ぜひ見てください。
柏井:あと、僕は音楽が好きだし音楽に救われてきた人間だから、ミュージシャンやアーティストと一緒になにかをつくったり、若い才能を育てていったりできればと考えています。
じきるう:CINRAでは、メディアに限らず、事業を幅広く行われていますよね。
柏井:ええ。メディアだけでマネタイズするのは大変だなと思っていて。いろんな基盤があるからこそ、いまも続いているのかなと思います。会社としても、売上の軸が1、2個しかないと、それが傾いた瞬間に一気にダメージを食らっちゃうので。
大変だけど、マネタイズできるポイントを多く持っているのは強いですね。メディアを育てるためには、メディア以外の事業を育てることも大切じゃないかと考えています。
(執筆:イズミカズキ 編集:齊藤颯人)
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