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ポートフォリオワーカーとは?仕事やスキルを分散投資する新しい働き方

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変化の激しい現代、人間が100歳まで生きるのが普通な社会がやってくるといわれます。その一方でAIの出現などにより、今ある仕事の大半がなくなる可能性も示唆されています。

こうした激動の時代を生き抜くために出てきたのが「ポートフォリオワーカー」という新しい生き方・働き方です。

複数の仕事を戦略的にかけ持つポートフォリオワーカーは、これからの時代にどのようなメリットをもたらすのでしょうか。今回はポートフォリオワーカーの意味や日本での考え方、メリット・デメリットについて解説します。

ポートフォリオワーカーとは

ポートフォリオワーカーとは、複数の仕事をかけ持つスタイルで働く人と解釈されます。

英英辞典の「Portfolio worker」の項目には、以下のように記載されています。

  • Portfolio worker:

a person who works for several different companies or organizations at the same time(複数の会社、または組織において同時並行に働く人

A portfolio worker may have a variety of different clients that they offer different services to, or they may work part-time for a company and have their own business as well.(ポートフォリオワーカーは、さまざまなサービスを複数の異なるクライアントに提供したり、会社でパートタイムで働きながら自らの事業を経営したりする

(出典:Cambridge Dictionary

ここでいう「ポートフォリオ」とは、金融業界における「金融商品の組み合わせ」を意味する用語から来ています。「さまざまな仕事を組み合わせて働く」という意味で、ポートフォリオワーカーという言葉が使われているのです。

ポートフォリオワーカーが日本で広まるきっかけになった一冊の本『LIFE SHIFT』

ポートフォリオワーカーの言葉が日本で広く知られるきっかけになったのは、ロンドンビジネススクールの教授、リンダ・グラットン氏による『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』という一冊の本です。2016年に日本語版が出版され、ポートフォリオワーカーという人生のステージが注目を集めました。

本書の中では、「ポートフォリオワーカーは働き方であり、生き方である」と解説されています。

本書には、人生には以下の3つのステージがあるとされています。

  • エクスプローラー:人生100年の時代にあらたに新しい世界と経験を探求する
  • インディペンデント・プロデューサー:自分の職を創造して生み出す
  • ポートフォリオワーカー:複数の仕事を組み合わせる

100年生きる時代に備えて、これまでの「学び働き老後に向けて貯蓄する」というライフスタイルは変わり、上記の3つのステージを組み合わせながら、学び続ける必要性が示唆されています。

ひとつの職に縛られていては、今後変化する時代についていけません。「複数の仕事や活動の場をもち生涯学び続けることで、豊かな人生を送る」ということがポートフォリオワーカーの考え方です。

ポートフォリオワーカーの特徴

ポートフォリオワーカーの特徴は、複数の仕事を並行して行うことであり、かつその考え方にあります。

まず「本業+副業」「複数の副業」「本業とボランティア」など、いくつかの活動を同時並行で行っていることが前提です。

そして収入を増やすためだけではなく、スキルアップのためや、人生を豊かにするためなど、広い意味で「働く意味」を考えられます。地域コミュニティで活動したり、趣味に打ち込む場を持つことも、ポートフォリオワーカーに当てはまる生き方です。

「副業」や「パラレルキャリア(複業)」との違い

日本では似たような意味で、「副業」や「パラレルキャリア(複業)」という言葉が使われます。

ポートフォリオワーカーとこの2つの言葉の違いを、整理してみましょう。

  • 副業:本業をしながら、別の仕事をすること
  • パラレルキャリア(複業):本業をもちながら、第二のキャリアを築くこと

この2つの言葉の違いは、ふたつめの仕事は収入のためなのかどうか、という点です。

一般的に副業は、収入増を目的に本業以外の仕事に取り組むものとされています。一方でパラレルキャリア(複業)は、短期的な収益だけを見ずに、長期的な生き方やキャリアに合わせてふたつめの仕事を選びます。

理想の生き方・働き方に焦点がおかれているのがパラレルキャリアです。

ポートフォリオワーカーとは人生のステージで、戦略的に活動の場を組み合わせること

ポートフォリオワーカーは、理想の生き方にフィットさせるという意味で、パラレルキャリア(複業)と似た考えの働き方です。

一方でポートフォリオワーカーには、人生のステージ・生き方という意味もあります。ポートフォリオワーカーの場合、長く変動する人生に備えて、自らのキャリアを戦略的に選択し、創造してく意味合いが強くあるのです。

かつポートフォリオワーカーとしての人生ステージは、20代の若手や働き盛りの年代のみに存在するのではなく、年齢関係なく選択できる生き方であるとされています。

日本でのポートフォリオワーカー

日本での使われ方は、『LIFE SHIFT』で紹介された「人生のステージ」という意味合いよりも、どちらかというと「働き方」のひとつとして使われるケースが多く見受けられます。またポートフォリオワーカーとパラレルキャリアの間に、明確な違いを設けずに用いられるケースもあります。

ポートフォリオワーカーと名乗る人は、フリーランスであり、人生を豊かに楽しむために複数の仕事を組み合わせて活動している方が多いようです。「老後のために頑張って蓄えよう」という視点ではなく、「好きなことを掛け合わせ、働く楽しみを増やそう」とする傾向にあります。

ポートフォリオワーカーのメリット・デメリット

ポートフォリオワーカーとして働く場合に考えられる、メリット・デメリットをご紹介します。

ポートフォリオワーカーのメリット

メリット1:収入源のリスクを分散できる

ポートフォリオワーカーのもともとの考え方は、金融業界で運用商品のリスクを見るためのポートフォリオから来ています。リスクを最小化するには、複数の金融商品に分けて投資を行う必要がありますが、それらの商品をまとめたものがポートフォリオです。

同じようにポートフォリオワーカーの働き方は、いくつかの分野・会社での仕事をかけ持つことで、ひとつの業界が落ち込んでも他の収入源で支えられるます。収入源を失うリスクを減らせるのです。

メリット2:スキルの掛け合わせで市場価値を高められる

一つの分野・スキルのみで仕事をしていても、その中のトップクラスになるのは簡単ではありません。

一方で、ライターやイラスト、プログラミングなど、複数のスキルを学び掛け合わせることで、自身にしかできない仕事が発生し、スペシャリスト人材として市場価値を高められます。

メリット3:自分の新しい居場所や可能性を発見できる

ポートフォリオワーカーの働き方は、収入にならない仕事も含まれます。たとえば仕事をしながら、地域コミュニティで活動したり、趣味の活動に打ち込んだりすることも、ポートフォリオワーカーです。メインの会社以外の場所に活動の場を持つことで、そこで新たな出会いを発見したり、やりがいを見出したりする可能性もあります。

ある仕事でうまく活かせないスキルや特性があっても、別の仕事であれば活かせるかもしれません。ポートフォリオワーカーとしての働き方が、天職との出会いを広げてくれるでしょう。

ポートフォリオワーカーのデメリット

デメリット1:スキルやキャリアの積み上げが中途半端になる

デメリットのひとつとして、複数の仕事を担当するがゆえに、特定のスキルアップやキャリアの積み上げが中途半端になってしまうことが考えられます。

例えばデザインの仕事なら、上流工程のプロジェクトに携わるか、下流工程で仕事を受けるかで鍛えられるスキルは異なります。しかし社会人経験が浅いままポートフォリオワーカーになると、上流工程のプロジェクトにかかわる機会が限定され、キャリアの積み上げが中途半端になってしまう恐れがあります。

ひとつの会社の仕事に集中した方が、最先端の知識や技術を吸収し、チャレンジングな仕事に挑戦する機会を得やすいかもしれません。会社員勤めから、ポートフォリオワーカーとしての働き方を考えている人は、どんな可能性を失うのかという点も検討したほうがいいでしょう。

デメリット2:収入を安定的に軌道に乗せるまで時間がかかる

ポートフォリオワーカーとして複数の仕事を担当した場合、収入を安定的に得られるまで時間がかかることもあります。また稼ぎには波があり、今月は100万円の売上があっても、翌月は10万円以下になってしまうことも。

新卒やキャリアの浅い状態でポートフォリオワーカーを目指す場合は、この点を現実的に判断しなければいけません。

デメリット3:健康保険や年金の支払い負担、社会的信用の不安定さ

会社勤めをしながら複数の仕事を兼任する場合は別ですが、フリーランスとしてポートフォリオワーカーをする場合、社会的な信用の不安定さが気になります。たとえばクレジットカードを契約したり、住宅ローンを組んだりするときに、うまく審査が下りないことも。

また会社員とフリーランスでは、年金や健康保険の面で大きな違いがあります。

【年金】

  • 会社員:国民年金+厚生年金に加入(厚生年金は会社が半額負担)
  • フリーランス:国民年金のみ

年齢35歳、月収40万円で月々の年金支払い額と将来の受給予定額をくらべてみると……

月収40万円・ボーナスなしの場合 国民年金 厚生年金 月々の支払い額 年金受給予定額
会社員 16,410円 37,515円 53,925円  約158,000円/月
フリーランス 16,410円 なし 16,410円  約64,000円/月

▲参考:日本年金機構 国民年金保険料、および保険料額表
▲参考:三井住友銀行 年金試算シミュレーション

※年金受給予定額は、上記設定を用いて22歳~60歳まで年金を支払った想定でシミュレーションしたおおよその金額です

【健康保険】

  • 会社員:健康保険に加入、会社が半額負担
  • フリーランス:国民健康保険に加入、個人で全額支払う

年齢35歳東京都在住、月収40万円で月々の健康保険料をくらべてみると……

月収40万円・ボーナスなしの場合 健康保険料/月
会社員 20,295円
フリーランス 39,700円

▲参考:全国健康保険協会 平成31年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(東京都)

▲参考:東京都練馬区 国民健康保険料試算シート(平成31年度版)

※保険料の金額は、上記設定をもとにしたおおよその額です。お住まいの地域によっても変動します

年金は、フリーランスのほうが月々納める金額は少なくなりますが、老後の受給金額に大きな差がでます。老後資金のため、フリーランスは仕事を増やして貯蓄に励む必要があるでしょう。

またフリーランスの場合、健康保険を全額負担することになり、会社員時代よりも多く支払います。

ただし会社員時代の健康保険を任意継続したり、国民健康保険組合等を利用することで、保険料を一律に抑えたりする方法もあります。

フリーランスの税金や保険の話は以下の記事もどうぞ。

まとめ

これから変化する時代において、ひとつのスキルやひとつの職場に固執しない、ポートフォリオワーカーの重要性は高まっていくかもしれません。しかし日本では、ひとつの企業で正社員として働く考え方がまだまだ主流です。

世間の認識や仕組みがポートフォリオワーカーに適していないため、クレジットカードのように思わぬところで働き方のマイナス面を感じることも。

複数のスキルを身に着けてキャリアを伸ばすためには、仕事を掛け持つデメリットを理解しつつ、自分の人生のステージに合わせて取り入れるのが理想的です。

 

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