プロダクトマネージャーの役割とは?プロダクトの成長段階別に詳しく解説

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企業において、製品開発からプロモーション、さらに会社のマーケティング全般まで幅広く担当するプロダクトマネージャー。企業ごとにその業務範囲はさまざまですが、顧客を獲得し会社をさらに良い環境にしていくには、どのような役割を担っていくべきなのでしょうか。

本記事では、プロダクトの成長段階を「スタートアップ期」「成長期」「成熟期」の3つのステージにわけ、各ステージごとにプロダクトマネージャーに求められる役割を見ていきましょう。

ステージ1:スタートアップ期

スタートアップ期では、製品やサービスを考えるのは創業者であり、企業の代表である場合が多いです。この段階では、厳密に”プロダクトマネージャー”とは呼んでいないかもしれませんね。

製品やサービスが成長し、顧客を獲得するにつれて、創業者の作業量と責任は拡大していきます。決断がこれまでより遅くなり、ディテールに注ぐための労力が足らなくなっていきます。この時こそ、プロダクトマネージャー担当を雇う時期といえます。

この段階のプロダクトマネージャーに求められるのは、製品開発における“根本”を理解する力です。

  • どういった目的で製品・サービスを開発するのか
  • 開発された製品・サービスが、どういった環境で使われることを想定しているのか
  • その先は何を目指しているのか

などを理解する力が求められます。

スタートアップ期におけるプロダクトマネージャーの3つの役割

1. やるべき仕事をはっきりとさせる

製品開発の段階では、多くのアイディアが生まれるでしょう。中には誰にも思いつかないような革新的な発想もあったりして、とても楽しいかもしれません。一方で、製品やサービスが抱える問題から目を逸らしてしまうというリスクもあります。

会社の持つリソースを効果的に使うには、製品やサービスの詳細に取りかかる前に「顧客が求めること」をはっきりとさせることが大切です。

たとえばビジネス効率化アプリを開発する場合、顧客は自分の限られた時間を最大限に活かしたいと考えています。そのため、他のサービスやアプリを使わずに、ひとつのアプリ内で顧客のすべての需要を満たすシステムを開発できたらいいですよね。開発における目的をはっきりとさせておけば、チームのメンバーの関心はそこから逸れることなく、目標達成のためのベストな作業に集中できるのではないでしょうか。

2. プロダクトファウンダーと協力する

プロダクトファウンダー(製品・サービスの創業者)以上にプロダクトを理解している人はいません。彼らは製品の目的やその未来のことを考えるのに多くの時間を費やしています。

プロダクトファウンダーのアイディアを戦略的な視点から発展させ、共にプロダクトづくりをしていくのがプロダクトマネージャーの仕事です。

米国のコーポレートベンチャー・Google Venturesのパートナーであるケン・ノートン氏は、プロダクトマネージャーとプロダクトファウンダーの歩調を合わせるために「PM mind melds」というプロセスを試すことを推奨しています。

これは、プロダクトマネージャーとプロダクトファウンダーが1対1の対話セッションを行い、ビジネスにおける課題解決や、優先順位の設定などを行うことです。このセッションで、プロダクトマネージャーがプロダクト開発に必要なことを直接的かつ定期的にヒアリングすることによって、チームを正しい方向に導けるのです。

3. チーム人数のバランスをとる

メンバーの採用タイミングはとても重要です。業務をすばやくスムーズに進めるため、そしてビジネスを急速に拡大するために、製品・サービスの開発メンバーのチーム人数のバランスをとりましょう。

プロダクト開発の段階などによって多少の変動はありますが、基本的には5人~9人につき1人のプロダクトマネージャーがいると良いでしょう。

この結論は、Amazonの創業者ジェフ・ベソス氏が提唱する「ピザ2枚ルール」や、イギリスの人類学者が提唱する「ダンバー数」に基づいています。前者のルールは「社内のすべてのチームは、2枚のピザを食べるのに適したサイズでなければならない」というもので、後者は「人間が親密な関係を維持できるとされる人数は5人まで」というものです。

ステージ2:成長期

スタートアップの時期を抜け、成長期を迎えるころには、会社が開発した製品・サービスはある程度人々の関心を得ているはずです。トラフィックが増加し、市場でも「価値のある」モノだという認識になってくるでしょう。

この成長期では、プロダクトをさらに強化し、ビジネスを確立させることが大切です。全体的な利益を考慮し、顧客獲得に注力している時期かもしれません。どちらにせよ、UXデザイナーやエンジニアなどプロダクトのバックエンドを支える人々を増員し、チームを拡大させる必要性が出てきます。

人数が多くなるとともに訪れうる困難を乗り越えるため、プロダクトマネージャーはチームの生産性と集中すべきポイントの最適化を目指しましょう。

成長期におけるプロダクトマネージャーの3つの役割

1. チーム構成をデザインする

チームの人数が増えていくにつれて、マネジメントの難易度は上がっていきます。大人数で調和を保ちながら働くために、ここでは誰がどの業務を請け負うのかをはっきりさせ、チーム構成とその役割を明確化するのがプロダクトマネージャーの仕事となります。

たとえば、カスタマー対応にかかわるチームの編制。Eコマースのサイトでは、製品探しを最適化する「ブラウザチーム」、購入体験を最適化する「購買チーム」、そしてユーザーアカウントや困った時の対応などを最適化する「サポートチーム」の3つのチームに分けられます。

このメソッドでは、それぞれの担当チームがエンドツーエンドの経験を通じて個々の責任を認識し、担当分野の課題をより深く理解することで、より良いソリューションを顧客に提供できます。特定分野の担当を割り振ることはメンバーにとっての動機付けとなり、各チーム内でより強固な関係の構築につながるでしょう。

2. 開発プロセスをデザインする

スタートアップ期で上手くいっていた迅速なプロセスは、チームが成長するにつれて変化していくでしょう。これまでの製品・サービスの成功の本質を捉え、成長中のチームにその成功メソッドを適用させるのがプロダクトマネージャーの仕事となります。

最適な開発プロセスとは、会社や今いる環境にとってユニークであり、かつテストと学習が一体化したアプローチです。たとえばGoogleが発案した「デザインスプリント」はいかがでしょうか。

デザインスプリントは、月曜日にデザインの課題を見つけ、その週の金曜日にはプロトタイプをローンチするという短期集中型のプロセスです。成長期にある会社では、 最速かつ低コストで最大の成果が生み出せるメソッドのひとつといえます。

3. 時間とリソースを戦略に使う

プロダクトマネージャーとして収益を最大化するためには、自分の時間と会社の持つリソースを効率よく使うことがポイントとなります。

時間のマネジメントを行うのに、いきなり大人数の管理をしようとしていませんか?まずは、自分の時間を上手く管理してみてると良いかもしれません。

Googleの元従業員であるトーマス・デイビス氏は、自分のタスクを「チームマネジメント」「ビジネスオペレーション」「トランザクション系(メール対応など)」「経営者タスク」の4つに分けていました。このようにタスクを分類することで、自分の時間をより効果的に使うための優先順位を決定できます。自分が抱えていると思っているすべてのタスクは、(タイミングにもよりますが)平等に必要なわけではないのです。

ステージ3:成熟期

プロダクトが成熟期に入るのは、多くのユーザーがサービスを理解し、その価値を理解している時期です。成長スピードは前の2段階と比べてゆっくりになるかもしれませんが、常に進み続けています。

プロダクトマネージャーにとっては、プロダクトの成長をゆるめないための絶え間ないサポートや、顧客満足度を向上させるような新たな試みなどを行うステージとなるでしょう。

成熟期におけるプロダクトマネージャーの3つの役割

1. 前提にとらわれない挑戦をサポートする

プロダクトが成熟してくると、これまでと比べて積極的な改良が困難になります。これは、プロダクトと会社の成長のために、更なる高みとなる目標を設定することが必要だということです。

自分たちが次に挑戦する“山”を見つけるには、これまで培ってきた知識や常識に反し、リスクを持って挑戦することも大切です。

Googleでは、このときチームの考え方として「10x thinking」を採用しています。これは、物事の10%を良くするよりも、物事を10倍良くすることを考える手法で、既存の手段や前提にとらわれないダイナミックな思考力を育てます。

他の考え方として、自分のいる業界のプレイヤーたちを「鳥の群れ」のように見る手法もあります。同じ方向を向いた鳥たちに続くのではなく、流れに反して群れの中で誰よりも遠いところに行くにはどうしたら良いか考えることで、新しい価値観を生み出せるのです。

2. 「体験のデザイン」に力を入れる

ユーザーの需要を理解するには、プロダクトデザインをしっかり見直さなくてはいけません。特に、顧客が製品やサービスを利用する過程や、価値を感じる体験をデザインする必要があるでしょう。

この「体験のデザイン」を最適化することでリピーターを増やし、長期的な顧客獲得につながります。

プロダクトマネージャーは、人間中心設計のアプローチを提示したアメリカの認知科学者、ドナルド・ノーマン氏の「Three levels of design」を実践してみるといいでしょう。これは、プロダクトの直感的な「デザイン」「品質」「顧客体験」の3つを最適化することを指します。

成熟期は、ある程度の余裕を持って物事に取り組めるため、ユーザーの深い需要を満たすための経験のデザインを設計するのに最も適した段階といえるでしょう。

3. プロダクトの長期的な計画を考える

いくら良いプロダクトであっても、一瞬の流行で終わってしまっては意味がありません。顧客のニーズや業界全体は、思っているよりも早く変わっていってしまいます。だからこそプロダクトマネージャーは、長期的な目線でプロダクトの計画を立てるべきなのです。

ベルギーの起業家であるペーター・ヒンセンは、プロダクトマネージャーの時間の使い方について「10%を将来の見通しを立てるのに使い、20%を将来の計画を立てる(見直す)のに使い、そして70%を次の3ヶ月にむけて計画実行するのに使うといい」と提案しています。

一方、Facebookは「毛主席語録」に則ったアプローチを使用しています。5年後はどうなっていたいか、という古典的な計画ではなく、6か月後にどこにいたいか、そして30年後にはどこにいたいか、という一見遠くて関連性のないような問いかけをする手法です。この手法は、6か月ごとに時間を区切り、30年後の未来に向かって着実に前進していくということで注目を浴びました。

まとめ

上の3つの段落でご紹介したように、プロダクトマネージャーの役割や責任は、プロダクトの成長段階に合わせて変わっていくものです。

業界内の競争が激化するなかで、いかに効率的に業務を行い、複数人のチームをまとめ、さらに抜きんでたプロダクトを開発できるか。

プロダクトマネージャーの仕事は、継続的なチャレンジです。今回ご紹介した内容が、役に立つことを願います。

(原文:Ty Magnin 翻訳:Krala)

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