Workship MAGAZINE書籍化第3弾!#ADHDフリーランス の新常識 他
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アプリには、ユーザーの生活の一部と化すものと、そうでないものがあります。
特に目的がないのに、Instagramのフィードをずっとスクロールし続けていることはありませんか?それとは対照的に、一度ダウンロードしたきりでほとんど使用していないアプリもあるでしょう。
こうした違いを作る原因のひとつが「リワードシステム」です。リワードは「報酬」を意味します。たとえば動画の投稿者が動画内に広告を掲載し、その広告をユーザーが再生すると投稿者に報酬が支払われる、といった仕組みがこのリワードシステムにあたります。
しかし、リワードシステムにおけるリワード=報酬は、金銭だけではありません。アプリを通して得られる情報や「いいね!」などもリワードに含まれます。今回は、人気サービスには欠かせないリワードシステムについて解説します。
▲魅力的なアプリだけがユーザーの生活に入り込める
先述したとおり、リワードシステムはユーザーになんらかの報酬を与えるシステムを指します。
意識せずとも、私たちはデジタルプロダクトを通して日々さまざまなリワードを受け取っています。こうしたリワードは必ずしも明確なものである必要はなく、むしろ絶妙なバランスのリワードがもっとも効果を発揮します。
リワードは細かく分類すればたくさんの種類がありますが、多くの場合は以下の4つに分類できます。
重要なのは、こうしたリワードの活用方法です。ユーザーの感情をより強く揺さぶることができれば、リワードシステムはより効果を発揮する傾向にあります。
フィードを通じてユーザーに配信される画像・記事・コンテンツなどがインフォメーションリワードにあたります。
コンテンツは小規模なものから大規模なものまでさまざまです。内容に関わらず、インフォメーションリワードはユーザーの好奇心を満たします。
▲Medium、Twitter、Buzzfeedはインフォメーションリワードのお手本
ソフトウェア開発者のローレン・ブリッチャーは、2008年にTwitterのクライアントであるTweetieを立ち上げました。TwitterはこのTweetieを買収し、サードパーティーのアプリは公式アプリに昇格。その結果、Twitterは公式アプリの存在を確固たるものにし、「pull-to-refresh(引っ張って更新)」という機能をユーザーに提供するに至りました。
▲10年ほど前のTweetieのUI(画像:InformationWeek)
Twitterアプリはリリース以来多くのUIを微調整してきましたが、pull-to-refreshは主要機能として現在も存在しています。その後、Instagram、LinkdIn、Mediumなどもこの機能を採用。いまやもっとも普遍的な更新機能のひとつです。
▲Twitter、Instagram、LinkedIn、Mediumはpull-to-refreshを採用している多くのアプリの一部
元Google幹部のトリスタン・ハリスは、pull-to-refresh機能をスロットマシンに例えています。
彼の人気記事の中で、彼は以下のように述べています。
「技術者は、ユーザーの行動(レバーを引くなど)をリワードと結びつけなければいけません。レバーを引いてリワード(賞品など)を受け取れるのか、受け取れないのか。そこが大切です」
ユーザーはアプリのフィードをリフレッシュするとき、スロットマシンのレバーを引いてあたりが出るのと同じように、新しいコンテンツや情報を受け取ることを期待しているのです。
インフォメーションリワードは、ユーザーにとって当たり前の存在になりつつあります。
しかし、「すべてのタイプのコンテンツがあらゆるユーザーにとって重要であるとはかぎらない」ということを覚えておきましょう。
▲Instagramには、ユーザーが余計なコンテンツを閲覧することを防ぐ、既読表示機能がある
Instagramの既読表示機能は、ユーザーがコンテンツ消費から抜け出せるような仕組みになっています。インフォメーションリワードが広く普及しているいま、ユーザーが余計なコンテンツを消費せずにすむような機能を搭載することも重要です。
Instagramの「ハート」、Mediumの「拍手」、TwitterやFacebookの「いいね!」などがソーシャルリワードにあたります。
▲Facebookの投稿には「いいね!」「コメント」「シェア」のボタンがついている
ソーシャルリワードは、虚栄心、自尊心、承認欲求という3つの強力な感情を刺激します。それゆえ、誤った使い方をするとユーザーに悪影響を及ぼすだけでなく、プロダクトに対する印象も悪くなる可能性があります。
当時Facebokのソフトウェアプログラマーだったジャスティン・ローゼンスタインは、2007年にテクニカルチームとともに「いいね!」ボタンを作りました。
彼はガーディアン紙で以下のように述べています
「大成功でした。社会的な肯定を受け取ったり与えたりすることが人びとに満足感を与え、エンゲージメントが急上昇しました」
▲ソーシャルメディアプラットフォームにおいてもっとも有名なボタンのひとつ「いいね!」
「いいね!」ボタンは画期的でした。ユーザーにコンテンツ投稿の報酬を与え、オンラインでのやりとりを一変させたのです。
しかし、ローゼンスタインらは近年、こうしたソーシャルリワードがもたらす「フィードバック中毒」に警鐘を鳴らしています。
ソーシャルリワードはユーザーの感情と深く結びつく強力な存在です。しかし、だからこそ慎重に扱わなければいけません。使いかたによってはエンゲージメントを向上させられますが、ユーザーが依存しすぎると逆効果になる可能性もあります。
ソーシャルメディアが成熟するにつれて、ソーシャルリワードがどのように進化してくのか、これから明らかになっていくはずです。
スコアリングシステムやアチーブメントなど、ゲーム以外のアプリにおけるゲーム的要素がゲーミフィケーションにあたります。『Treehouse』『DuoLingo』『Codeacademy』などの教育アプリが、近年このゲーミフィケーションを取り入れています。
▲コースを終えたユーザーに与えられるアチーブメント(Treehouse)
ソーシャルアプリの『Swarm』やフィットネスアプリの『Strava』などは、コアプロダクトと結びついたゲーム的要素を提供します。Swarmは頻繁にチェックインしているユーザーにバッジを与えるのに対し、Stravaは前回より早くプログラムを終わらせたユーザーにリワードを与えます。
ゲーミフィケーションリワードは、ユーザーが達成したものとまだ取り組んでいないものを可視化し、プロダクトの継続的な使用を促します。ゲーミフィケーションを通して達成感を得たユーザーがプロダクトとの関係を深めることにより、プロダクト自体の価値も高まるのです。
▲目標を達成したランナーやサイクリストに与えられるアチーブメント(Strava)
ゲーミフィケーションは使い方によっては高い効果を発揮しますが、すべてのプロダクトに向いているというわけではありません。
ゲーミフィケーションを取りいれるなら、その内容がプロダクトのコアと結びついているべきでしょう。ゲーミフィケーションがきちんと活用されていないと、ユーザーは努力がきちんと可視化されていないと感じ、かえって不満を生む可能性もあります。
ユーザーがキーアクションを完了すると、賞品や現金などがユーザーに与えられるシステムをマネタイゼーションと呼びます。
マネタイゼーションリワードを取りいれた人気アプリのひとつが『HQ Trivia』です。ゲームに勝ったユーザーには、賞品や現金が与えられます。150万人以上のプレーヤーが参加するこのアプリは、2017年にTIME誌のアプリ・オブ・ザ・イヤーに輝きました。
▲ユーザーの賞金に基づいたHQ Triviaのスコアボード
またソーシャルメディアアプリは、「クリエイターのコンテンツ制作を手助けする」という目的でも、マネタイゼーションシステムを活用しています。YouTubeは動画に広告を掲載するユーザーに報酬を支払っており、Mediumにはライターが書いた記事に対して報酬を支払うパートナープログラムが存在しています。
▲Mediumがユーザーにパートナープログラムへの参加を促すために公表している情報
昨今では、HQ TriviaやYouTubeの報酬の支払い方が批判の対象になりました。HQ Triviaは90日以内に報酬が20ドルにとどいたユーザーにしか支払いをしておらず(2018年1月に廃止済み)、YouTubeは2017年に広告ポリシーを変更したことによりユーザーから批判の声があがりました。
こうした衝突を避けるためには、支払いルールを明確化する必要があります。プロダクトの継続利用を促すためにパワーユーザーの力を借りるには、透明性の高い運用が不可欠です。
ひとつのプロダクトに対して活用できるリワードシステムは、ひとつとは限りません。
責任感を持って複数のものをきちんと活用すれば、ユーザーとの関係を深めて、プロダクトの価値を高められるはずです。
(原文:Nicholas Kramer 翻訳:Asuka Nakajima)