エンジニアの副業は週1からでも可能?副業の例や探し方も解説
- ITエンジニア
- 副業
IT企業で働きながら、副業ではコーチングのスキルを使った組織開発・人材育成ファシリテーション会社を設立してキャリアを積んでいる女性による「本業と両立できるセルフマネジメント術」をインタビュー形式で紹介します。
コーチングを使ったファシリテーター(コンサルタント)としての副業とはどんな仕事なのか、そして副業を軌道に乗せていくためのコツなど、本業と両立をしながら副業を考えている方に役立つ情報が盛りだくさんです。
副業としてコーチングの仕事につきたい方、副業へ一歩踏み出せずに悩んでいる方もぜひ参考にしてみてください。
※この記事はザ・プラント株式会社による寄稿です
目次
ザ・プラント株式会社 最高人事責任者。Candid Folks合同会社代表(日本GHCDコーチング協会認定講師 )。米国の大学にてホスピタリティ学を学び、卒業後はニューヨークにある最高級ホテルの一つ、グラマシーパークホテルに入社。現在本業はIT企業にて人事部長を務め、副業では自身の会社を設立し、コーチングを使った組織開発・人材育成のファシリテーターとして活躍中。
現在、法人向けECプラットフォームやCMS、CRM、モバイルアプリなどのシステム開発を行うザ・プラント株式会社で人事・組織開発に係る仕事をしています。9割以上が外国籍という会社で、成長マインドセットを大事にする社員が多いです。
ですので週末やすきま時間を使って翻訳のバイトをしたり、Tシャツの販売をしたりと、何かしら色々なチャレンジをしている活動的な人たちに囲まれています。
私はそこで人事部長として勤務する傍ら、Candid Folks合同会社の代表として、すべては相互理解からという考えのもと、副業でコーチングのスキルを使った組織開発・人材育成ファシリテーターとしても活動。中小企業を中心に企業文化の醸成や仕組み作りなどのコンサルティングを行なっています。
副業では首都圏のみならず関西圏へも仕事の幅を広げたため、コロナ禍でリモートワークにシフトしたのを機に思い切って東京と関西の2拠点生活をスタート。東京では機動力を重視し、関西では六甲山と海に囲まれたゆったりとした環境で、それぞれの街が放つパワーや出会いを楽しみながら仕事をしています。
私が学んだコーチングは、質の良い問いを使って対話することで、自身が本当に大切にしたいことや大事な価値観に気付き、本来「自分はこうありたい」と心の奥で望んでいる状態を自然と引き出していくアプローチです。
自分自身の内面と調和が取れると、自然に周りへの理解も広まりレジリエンス力(しなやかに困難を乗り越え回復する力)も上がります。そうすると自律的に行動を重ねることができ、自分が望む未来を自分で作り上げていくことができる、そうした働きかけを行なっていきます。
コーチングのスキルを使って、ファシリテーターとして一緒に汗を流しながら、企業のMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)といった企業の行動指針の枠組み作りを模索したり、中長期的な経営目標に導くための道筋を考えたりする研修会や勉強会を講師として行っています。
マネジメント層の方たちには、チームの統括者としてのリーダーシップ強化やスタッフとの関係性を深めるコミュニケーション力の醸成をしていくためのトレーニングなどを行いながら、マンツーマンでのプライベート・コーチングも行っています。
組織は個人の集合体で構成されています。価値観や個性の違う人たちがどのように融合していくのか。自身のハピネスも大事にしつつ、チームとしていかにより良い成果を出していくのか。こうした個人と組織の調和を作り出していくためのサポートを包括的に行えるのもコーチングの素晴らしさだと考えています。
これまでのキャリアで社長と現場社員との間に立つような中間管理職的な立ち位置にいることが多かったからか、全体の調和を取りながらチームを率いていくようなことが自然と得意になったのかもしれません。
そんな背景を持ちつつ、自分で何か副業をしていきたいなと考えていたとき、コーチングという仕事を知り、勉強を始めたのが3年ほど前です。ちょうどコロナ禍でリモート化が一気に進み、オンラインミーティングが一般化したことも追い風となり、副業としてコーチングの仕事をスタートしました。
もしかすると対面だったら場所を探したり、知らない人と会うことに対する抵抗感だったりと、色んな障壁があったのかもしれません。オンラインでの交流が気軽にできる環境ができたおかげで、副業の可能性が広がっていくことを肌で実感しました。
コーチとしての副業を考えたのは、コミュニケーションの分野において何かしら自分なりの貢献ができたら、という希望もありました。
社会人1年目はアメリカの企業で数年勤務しました。帰国後も折に触れて海外旅行をしていましたが、日本に帰って来るたびに街の清潔さや忘れ物がすぐ出てくること、バッグで席取りができてしまう安全さを感じたものです。とくにホスピタリティ面での素晴らしさについては多くの気づきがあり、「やっぱり日本って以心伝心の文化がある国なんだな」と感じていました。
しかし昨今では日本の人材の生産性の減退について話題に上ることも少なくありません。実際に海外旅行から戻って来たときにいつも感じていた「ホッとした」気持ちも、最近は「あれ?」とハテナマークが付くことも増えてきたように思います。
そうしたことからも、もしかすると問題は、意外に自分が思ってるより深刻なのではないかと考えるようになりました。
じつは本業であるIT分野においても、UXやUIが旧態依然のままだったり、言語対応ができておらずに潜在的なマーケットを逃していたりと、デジタルソリューションに対する取り組み方も諸外国との違いを感じることが少なくありません。
コーチングのスキルを使って色々な人たちと関わって生き生きと働く人たちが増えれば、自然と創造力も上がり生産性も向上するような、何かしらの貢献ができるのではないか。その夢を副業という形で実現できるのがコーチングという仕事なのではないか、と漠然と考え、早速計画を行動へ移したのです。
コーチ業は資格が必須の仕事ではありません。正直、趣味の延長でやろうと思えばできてしまいます。ただ、それだと当然ビジネスにはなりません。きちんとプロの仕事として対価を得てキャリアを構築していきたいのであれば、まずは「コーチングとは」についてしっかり学ぶことをオススメします。
コーチングは技術的なスキルだけでなく、マインドセットの成長もかなり大切です。両方の成長にアプローチしてくれるようなスクールに通うのも、コーチ業を始める近道だと思います。コーチングスクールはいくつかありますので、体験を受けるなどしてご自身の価値観に合った場所を選ぶと良いですね。
コーチ自身の継続的なホリスティック(全体的)な成長も欠かせません。たとえばコーチングと言えば傾聴のスキルを思いつく方が多いと思いますが、これもただひたすら相手の話を聞けば良いということではありません。
コーチの価値基準や思い込み、バイアスを元に善悪や好き嫌いのジャッジを入れたりせず、共感しながら相手をしっかり理解をしにいくことが大切です。上から目線になったり、「○○してあげなきゃ」などといった相手のためを装った自己満足は要注意です。
ちなみにこういった傾聴のスキルは本業の仕事でも取り入れて、トレーニングすることもできると思います。実際これは本業のマネジメントの仕事にもとても役に立ってます。
コーチ業の報酬については、プロとしてしっかりコーチングをされてる方であれば1時間数万円程度からというのが一般的ではないでしょうか。
ときどきマッチングサイトなどで1時間数千円という報酬を見ることもありますが、そうするとクライアントさん側だけでなくコーチの本気度が足りない状態であることも少なくありません。そうなるとやはり望む成果を達成することは難しくなり双方にとってよくないですよね。
コーチは、クライアントさんが望む未来にたどり着くために伴走するプロです。きちんと提供する価値への対価をいただかないのは逆に失礼な気がします。
ほとんどのクライアントさんが仕事をされていらっしゃる方たちですので、私が行うコーチの仕事は平日夜や週末が多いです。平日昼間にどうしても必要なときは、有給を使ったり本業のフレックスタイムをうまく利用したりと良い感じにスケジュール管理しています。オンライン対応が日常的になったことは本当にありがたいですね。
本業と副業の両立に一番大切なのは、そうしたスケジュール管理も含めたセルフマネジメントです。そこで私が実践している具体的な方法を6つシェアしたいと思います。
睡眠時間は絶対に削らないようにしています。そして頼めることは人やツールに甘えてしまいます。
たとえば家事。お掃除ロボットを使ったり、ときには料理好きな友人宅で夕食を振る舞ってもらったり。必要であればプロの手を借りるのも一つの手です。
本業においても自分でなければできない事以外は可能な限りチームに任せる。自分の持っているリソースや人的ネットワークをいかに上手に活用するかが大切です。
たとえば午後5時までは本業に集中し、その後は「副業の時間」と決めてしまいます。そうして確保した時間はしっかり副業のために使うこと。その時間中は、自分はプロコーチであるとしっかり認識し、プロコーチとしての価値を提供することにフォーカスします。
とはいえ、なかなか区切りをつけるのは難しいですよね。コツとしては、少なくても慣れるまでは物理的に対策をしてしまうこと。
たとえば本業と副業で違うブラウザを利用する、メールの通知が飛ばないように設定する、スマホは別室に置いておくなどなど。こうした小さな積み重ねで、時間の上手な使い方を習慣にできるような意識作りをしていきます。
スケジュールを立てるときは、最初に自分がやりたいことや大事なところから埋めていきます。埋めたらよっぽどのことがない限り動かしません。
「○○の予定が分からないから、趣味の時間が作れない」というお悩みをよく聞きますが、もしその趣味の時間が自身にとって価値が高いと思うのであれば、先に予定を入れてしまうことをオススメします。
私は本業・副業に関係なく、頭をクリアにするための時間を必ず先にスケジューリングしています。やっぱり新しいアイデアはそういったアイドルタイムに出てきますよね。ちなみにスケジューラーはオンラインと1ヶ月見開き型の紙の手帳の2種類を活用しています。
現在2拠点生活をしているため長距離移動が多いのですが、個人的に新幹線や飛行機に乗っている時間は集中力が上がります。
なのでその移動中にプレゼンや研修用の資料を一気に作り上げてしまうことが多いです。在来線に乗っているときはSlackの返信やメール処理をするなど、移動手段に応じた仕事を選んで対応しています。
ちなみに移動はコールマンのバックパックと、2泊3日用のキャリーバッグを使っています。どちらもブランドがディズニーとコラボしたミッキー柄付きです。最近は交通機関の急な遅延や運休があることも少なくないので、お菓子と非常用トイレセットも持ち歩いています。
やはりデジタルツールを上手に使うのが大事だと感じています。私はとくに以下のツールを愛用していますね。
自身が場所と時間に囚われずに快適に仕事ができる環境を、意図的に作っていくことも大切です。
副業という形でビジネスを始めるときに、やはり本業の収入によって生活の安定が確保されるのは正直かなりありがたいです。
それだけではなく、一人でビジネスをしていると「相談相手がいない」などのお悩みも聞くことがあります。しかし、本業では仲間たちがいつでもいますので、気持ち的にも寂しくなることはありません。そして一番の恩恵は常に実例がそこにあり、皆さんが直面するであろう課題や問題、そして対策がリアルタイムでアップデートされる点です。
たとえば私の場合、ザ・プラントで人事部長を担っていますので、企業文化醸成を含めた人材育成や組織開発について実践による価値の高い学びを得ることができます。
一方で副業でもコーチ仲間と継続的に最新の理論について情報交換をしたり、それぞれの事例についての議論を行ったりしています。そこで得たことを本業の改善のために適用するなど、シームレスに繋げることができています。
人によっては、仕事内容が違いすぎて前向きな相互作用をもたらすことが難しいと感じられる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、貪欲に意識していけば何かしらの学びと貢献はできるのではないかと思います。本業と副業の距離感を変に離そうとしないほうが良いかもしれませんね。
副業の成功は、じつは何より本業でしっかり仕事をすることだと考えています。最近は副業がブームのようになっているからか、「いかに副業を上手くやるか」という文脈で語られることも見受けられます。
ですが、本業の雇用主への感謝と貢献は不可欠な要素だと思います。忙しいからと言ってどちらかを疎かにするのではなく、いかに双方をより質の高い状態に持っていくのかを意図的に思考していくと、自身の成長にもなります。それがビジネスパーソンとしての成功にも繋がっていくのではないでしょうか。
ちなみにコーチングのスキル自体は本業・副業だけでなく、プライベートのコミュニケーションでもとても役立ちます。要するにいかなる状況下でも自身のスキルを向上させる機会に恵まれているということです。
まずはそうした日々の学びのチャンスを逃さず、しっかり足元を固めていくことが自身の安心にもつながります。そのうえで、自分がワクワクするビジョンを「具体的に」妄想することもとても大事です。
たとえば私は日本酒が大好きなのですが、いつか酒造会社さんからコーチングやファシリテーションのご依頼をいただいて、これまでにないお酒造りに関わらせていただく……なんて考えています。
これはコーチングビジネスだけではありませんが、せっかく副業を始めたのに逆にそれがプレッシャーになってる人たちも少なくありません。そうなると本末転倒ですよね。やっぱり自分が楽しむことが一番大切。少なくても私は自分が楽しいと思えてる時がパフォーマンスも一番良いんです。それに何より楽しくないと長続きしませんよね。
またこれは副業に限らずですが、やはり自身の選択を人任せにしない、ということ。何か不安を感じたときは、家族や友達、知り合いなどに相談することも多いと思います。
相談することは良いことなのですが、それが足枷になることも。これをやろうと思っていたけど、「友達が○○って言ってたのでもう少し考えてみよう」となった経験はありませんか? そうすると行動が止まってしまいますよね。
せっかくのご自身のやる気パワーにフタをしてしまうのはもったいない。自分の人生の選択は自分で決める、すべてを完璧にやろうとしすぎない、そして何より自分の好きと楽しいを大切にする。そうして進んでいければ、うまくいかなかった事も失敗ではなく、成功へのマイルストーンだと思えるので結果もついてくるはずです。
コーチ業での副業にご興味をいただけましたでしょうか?
本業と副業をセルフマネジメントでうまくバランスをとりつつ、ぜひ双方のおいしいとこ取りをして、楽しんで仕事をして成長を遂げていってください。もっと多くの方に副業というワークスタイルの素晴らしさを体験していただけることを願っています。
(取材・執筆:長岡吾朗 編集:少年B 提供元:株式会社室町屋)