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世界中で数多くのユーザーを獲得しているTikTok。マーケターとして注目したいのは、世界中のユーザーに何時間もスクロールさせ続けることに成功している、そのアルゴリズムです。
この記事では、TikTokのアルゴリズムについて解説します。
目次
アルゴリズムを掘り下げる前に、背景をおさえておきましょう。
2020年、TikTokのCEOであるケビン・メイヤー氏は、テック企業の透明性、とくにコンテンツアルゴリズムに関する透明性の重要性についてマニフェストを発表しました。メイヤー氏はTikTokが競合他社よりもオープンであることを約束し、MetaやGoogleに対して間接的に対抗したのです。
TikTokはその約束を守り、アルゴリズムの仕組みに関するドキュメントを公開しています。この記事では、TikTokが発表している情報を、二次資料と一般的なSNSの原則に基づく推論とあわせてご紹介します。
TikTokは、年齢、性別、国籍などをもとに表示するコンテンツを選択しています。
もちろん、こうした区分だけで好みのコンテンツが表示されるわけではありません。表示するコンテンツに対する反応を収集・分析することで、TikTokはユーザーの興味を判断し、関連するコンテンツを提供しているのです。
各動画のトピックは、動画の内容によって判断されます。ハッシュタグ、動画の説明、音声、テキストなどが判断材料です。こうして分類されたトピック同士を関連づけることで、これまで該当のトピックに関与したことがないユーザーに対しても、楽しめる可能性が高いトピックを表示できます。
たとえば、インテリアデザインが好きな人は、IKEAやDIYも好きかもしれません。こうしたユーザーに手芸に関連するコンテンツを提示すると、ユーザーが興味を示す可能性があるでしょう。
TikTokの透明性に関するポリシーは、「アルゴリズムが過激化や誤った情報の拡散を促進するエコーチェンバー(※)を作り出す」と批判を受けた後に生まれました。
※エコーチェンバー:自分と似た興味関心をもつユーザーが集まる場において、自分の意見や思想が肯定され、それがあたかも正解であるかのように勘違いし、それが増幅する現象。
エンゲージメントに依存するレコメンドアルゴリズムを導入しているプラットフォームは、エコーチェンバーを作って過激化を促進する可能性があります。過去にYouTubeやFacebookも、同様の批判を受けました。
人は強い感情につながるコンテンツに強く惹きつけられるため、コンテンツ制作者は「怒り」や「恐れ」を抱かせるようなコンテンツを作ってしまうことがあるのです。
フィルターバブル効果(ユーザーが見たくない情報を遮断すること)に対するTikTokの対応は、「ときどきランダムなコンテンツを表示している」という、ややシンプルなものでした。
コンテンツの均質化を避けるために、TikTokはユーザーが普段関わらないようなコンテンツを意図的に表示しています。コンテンツの繰り返しを避けることでフレッシュさを保ち、おなじクリエイターによる動画や、おなじサウンドを使った動画を何度も表示することを回避しているのです。まだエンゲージメントがない、新鮮なコンテンツが表示されるのも興味深い点のひとつです。
エコーチェンバーの発生は、これだけで防げるわけではありません。結局、ユーザーはよく見るコンテンツにエンゲージメントしてしまうので、エコーチェンバーが発生する可能性はかなり高くなります。
ある心理学の教科書によると、すでに好きなものへの偏りをなくすには、フィード上でランダムなコンテンツを約50%見せる必要があるそうです。しかし、ビジネス上の利益に反するため、運営側がランダムなコンテンツを50%も表示させる可能性は低いでしょう。
このような背景と文脈を念頭に置いて、TikTokのランキングファクターを掘り下げてみましょう。
先述のとおり、このランキングファクターのリストは、TikTokが公表した機能に加えて、非公式な情報や一般的なSNSの原則も踏まえて作成されています。
TikTokのランキングファクターのひとつはエンゲージメントで、これには「いいね」やコメント、視聴時間やプロフィール訪問などが含まれます。
TikTok動画のエンゲージメントが高いということは、ユーザーが長時間コンテンツに触れていることを意味します。また、判断材料には、リプレイ、フォロー、ブックマーク、「興味ありません」のボタンなども含まれます。
もちろん、これらのエンゲージメントがすべて同列というわけではありません。コメントやシェアは「いいね」よりも強力なエンゲージメント指標です。これはTikTokだけでなく、他のSNSプラットフォームでも同様です。
TikTokのドキュメントによると、エンゲージメントはアカウントレベルではなく、動画レベルで測定されます。
ユーザーがフォローしているアカウントも、ユーザーの興味プロファイルの決定に寄与しています。ガーデニングのアカウントをフォローしていると、アルゴリズムもガーデニングに興味があると判断し、ガーデニング関連の動画を表示するのです。
アカウントのフォロワー数や過去の実績は、動画のランキングに直接影響するわけではありません。しかし、フォロワー数が多いとフォロワーを通じてより多くの人の目に触れるため、間接的に動画のパフォーマンスが上がります。フォロワーがコンテンツに関与すれば、その関与によってより多くの視聴者にリーチします。
これは、過去のパフォーマンスが将来の投稿のリーチに影響を与えると考えられている、古典的なSNSマーケティングの形式からの大きな変化だといえるでしょう。
TikTokが動画への潜在的な関心を判断する方法として、動画以外のコンテンツとのインタラクションが挙げられます。
検索、ハッシュタグのクリック、トレンドトピックの検索、特定のサウンドからの動画の視聴などが、おすすめ動画に影響するのです。
ユーザーが好むトピックの動画をおすすめするためには、それぞれの動画の内容をアルゴリズムが理解する必要があります。
TikTokにアップロードされた動画には、それぞれの動画がどのようなトピックやトーンなのかをあらわす要素がいくつかあります。ここからはその要素を掘り下げてみましょう。
TikTokのプライバシーポリシーによると、動画に写っている物体、風景、体の部分などを識別することで、「動画や音声記録に関する特性や特徴を検出・収集」できるそうです。こうして得た情報は、コンテンツのモデレーションと、レコメンデーションアルゴリズムに利用されます。
TikTokは、動画の中の会話をテキスト化し、内容の理解を深めています。
動画の上に配置されたテキストも、コンテンツの理解を助けています。プラットフォーム内にテキストを追加すると、より強力な情報を提供できる可能性があります。
TikTokがもっとも公にしているのが、タイトルとハッシュタグについての情報です。動画で使用されているタイトルとハッシュタグは、TikTokに動画の内容を伝えるだけでなく、エンゲージメントによって間接的にランキングにも影響を与えられます。
動画で使用されているサウンドは、それ自体がランキング要因になります。コンテンツのパフォーマンスにもっとも影響を与えるのは、トレンドに上っているサウンドを使うことでしょう。トレンドのサウンドを使えば、短期間ではあるものの、ランキングを上げられます。
TikTokのアカウント上で設定できる言語環境は、「アプリの言語」「優先言語」「翻訳言語」の3つです。
優先言語をいくつか選択すると、TikTokは理解できる言語を選択するように促します。ただし、アプリの言語とコンテンツの自動翻訳の言語は、それぞれひとつずつしか選択できません。
TikTokがこれらの設定を利用して、どの言語がもっとも優先されるべきなのかを理解しようとしているとしても、不思議ではないでしょう。
TikTokはデバイスの重要性について公式ドキュメントで触れていますが、具体的な内容については解説されていません。
TikTokによれば、ユーザーエージェント、キャリア、タイムゾーン設定、機種、OS、ネットワークタイプ、画面解像度、バッテリー状態、オーディオ設定まで、ユーザーの端末に関するあらゆる情報を受け取ることができるそうです。
古い端末や処理速度の遅い端末では、より短く軽い動画が頻繁に表示され、性能が追いつかない場合にユーザー体験を阻害しないよう、工夫していることが予測されます。
TikTokが公表しているドキュメントに、以下のような内容があります。
「ユーザーが長い動画を最初から最後まで見終わったかどうかといった関心の強い指標は、動画の視聴者と作成者が同じ国にいるかどうかといった弱い指標よりも大きなウエイトを占めるでしょう」
TikTokは、SIMカード情報、IPアドレス、そしてユーザーが許可した場合はGPSをとおして位置情報を追跡しています。
ロケーションがランキング要素としてどのように活用されているかは明確ではありませんが、多少なりとも影響していることは確かです。視聴者とクリエイターの距離が近いことがランキング向上に役立つことは明らかですが、どのようなレベルで測定されているかはわかっていません。
TikTokは、「コンテンツを削除する」「ランク付けを不適格にする」などの方法で、レコメンドに表示させない対応をすることがあります。レコメンドに表示されないのは、以下のようなコンテンツです。
TikTokのネイティブツールを使ってコンテンツを作れば、ランキングを上げられる可能性があります。
他のSNSプラットフォームは、ネイティブコンテンツやネイティブコンテンツ作成をアルゴリズムで優遇する傾向があるため、TikTokに同様の傾向があっても不思議ではありません。ただし、TikTokからはこうした情報が明言されていないのが現状です。
たとえばInstagramは、リールとストーリーのネイティブ動画作成ツールを改善するい方、他のプラットフォームのウォーターマーク付きコンテンツを降格させています。また、FacebookはYouTubeの埋め込みよりもネイティブ動画を優先しており、LinkedInはネイティブのブログプラットフォームを提供しつつ、外部リンクのない投稿を好んでいるようです。
TikTok独自の分析によると、ネイティブのクリエティブツールを使用した企業は、使用しなかった企業に比べて14倍ものエンゲージメントを獲得しています。
TikTokのネイティブ動画のパフォーマンスが向上する間接的なメカニズムとして、ネイティブで作成できるコンテンツの種類にユーザーが慣れていることが挙げられます。TikTokのユーザーは過剰に演出された動画を広告と見抜くのが非常に早く、こうした動画へのエンゲージメントがかなり少なくなる傾向にあります。TikTok for Businessのブログ記事にも、この理論を裏付けるように「広告を作るな、TikTokを作れ」と企業に伝えています。
TikTokは、外観、音声、テキスト、ハッシュタグから動画の内容を理解し、「いいね」、コメント、視聴時間、再生、フォロー、ブックマーク、言語設定、デバイス情報、位置情報をも考慮して、ユーザーが興味をもちそうな動画を提案しています。
より多くのエンゲージメントを獲得したいなら、こうした情報を把握したうえで、計画的にコンテンツを制作してみましょう。
(執筆:Lidia Infante 翻訳:Nakajima Asuka 編集:少年B 提供元:Moz)
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