2023年、Web3で起こる8つの予測

The State of Web3 in 2023
BUSINESS

2022年は、Web3(※1)に関係する人にとって厳しい年でした。

暗号通貨やNFTは好調とはいえず、大手暗号通貨プラットフォームFTXの撤退なども業界に大きな影響を与えました。しかしこうした状況に反して、多くの企業がWeb3への取り組みを計画しています。

今回は2023年にWeb3で起こることが予想される、8つの変化を紹介します。

※1 Web3:2018年頃から広まっている「次世代インターネット」「分散型インターネット」とも呼ばれる概念のこと。管理者がいなくとも、ユーザー同士でコンテンツの売買やデータ管理、送金などが可能な状況を表す

変化1. Web3における規制の強化

2023年に発展するWeb3の分野のひとつが、DeFi(分散型金融)です。

ここ数年のDeFiの進歩に対してWeb3の規制はまだ追いついておらず、スマートコントラクト(※2)の法的強制力もまだありません。

まだまだルールが定まっていない現状からしても、2023年にはWeb3にまつわる金融取引の規制強化が期待されていることは明確です。とくに、中央集権的な暗号取引所に対する規制が強化されるでしょう。

Web3がサービスの分散型モデルであることを考えると、ガバナンスは非常に難しいテーマです。Web3の特性を踏まえると、ガバナンスは特定の金融機関ではなく、コミュニティで行われるでしょう。コミュニティのメンバーが主張できるような、分散型のガバナンスになることが予測されます。

2023年になったいま、金融機関は暗号取引のコンプライアンス監視方法について考え直す必要性を感じているはず。マネーロンダリングなどの不正を検知する防止サービスや、取引監視サービスへの需要が高まりそうです。

※2 スマートコントラクト:ブロックチェーン技術において実行されるプログラムのこと。前提ルールに則って実行される取引などを指す。詳しくはこちらの記事にて解説

変化2. 暗号通貨に対する認識の変化

ここ数年、多くの人は暗号通貨を「金持ちになるための方法のひとつ」として捉えていました。しかし2023年現在、ビットコインをはじめとした暗号通貨は下落傾向か横ばいの調子を見せており、こうした捉えかたにも変化が生じています。

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▲ビットコイン/米ドルの、2022年1月から2023年1月までのチャート(出典:UX Planet)

2023年以降は、暗号通貨は投資の対象ではなく、あくまでWeb3サービスで使用されるツール(通貨)の一つと捉えられるようになるはずです。

変化3. 取引コストの削減

2023年現在、あらゆるプラットフォームに対する基本的な評価指標が「スピード」「セキュリティ」「取引コスト」などです。

取引コストは、一般ユーザーが一部のテクノロジープロトコルに手を出しづらくなっている要因のひとつです。

たとえば汎用スマートコントラクトプラットフォームである「イーサリアム」のガス代(取引手数料)は、世界中の多くの地域でユーザーの増加を阻んでいます。ネットワークの規模や利用負荷が増えるにしたがって、それらに対応できる範囲にも大きな悪影響を与えているのです。

ユーザーはより安価な代替品を探した末、多くの場合はレジリエンスの低いネットワークに落ち着きます。2021年8月、イーサリアムはガス代をより予測しやすくするために、「ロンドンハードフォーク」(※3)とも呼ばれるEIP-1559を実装しました。

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▲2015年8月から2022年11月29日までのイーサリアムの平均ガス代(出典:Statista

しかし予測可能性にあまり差がないため、優れた解決策とは言えません。2023年には、取引コストのさらなる削減が進むはずです。

※3 ロンンドンハードフォーク:イーサリアムの改善案を実装する動き。EIP-1559はガス代の見直しを目的とするもの

変化4. 分散化の加速

ブロックチェーンが進歩しているにもかかわらず、Web3インフラの多くのサービスはまだ中央集権的です。

中央集権化は、サービスのアップタイムだけでなく、セキュリティ侵害のリスクも高めます。また、ハードウェアやソフトウェアの障害に対してよりセンシティブです。

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▲分散型システムの構成要素(出典:Andreessen Horowitz

2023年には、分散化がより加速するでしょう。

変化5. 分散型のデジタルアイデンティティ

2023年には、「分散型のデジタルアイデンティティ」という概念を目にしそうです。

現在はデジタルウォレットが個別のアイデンティティとして機能していますが、この方向性がさらに強くなるとみられています。

ユーザーは、自分の個人情報をどのように共有するか(Web3のプラットフォームを利用するときに、どの情報を誰に開示するか)をコントロールできます。デジタル分散型アイデンティティは、メタバースで使われるデジタルアバター(仮想世界におけるユーザーのグラフィック表現)への第一歩になるはずです。

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▲リアルなデジタルアバター(出典:Oben)

変化6. UXの向上

DeFiプロトコルのような多くのWeb3ソリューションのインターフェースは、複雑です。使いづらいインターフェースは、Web3の拡大を阻んでしまいます。

2023年には、ユーザーニーズを前面に押し出すWeb3クリエイターがほとんどになるでしょう。

カストディ(※4)やアセットサービス(※5)、クリアリング(※6)の手順がよりわかりやすくデザインされ、新規ユーザーへの教育、Web3サービスの透明性の向上、既存のデザインパターンの再利用による親しみやすいデザインなどが実現するはずです。

※4 カストディ:主に投資家などの代わりに、有価証券の保管や管理を代行する業務のこと

※5 アセットサービス:資産運用を代行する業務のこと。

※6 クリアリング:多くの債権・債務を整理すること。主に決済の前に行う、経済取引のプロセス

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▲Opera Cryptoのウォレット(出典:Opera

変化7. メタバースの台頭

Web3は、メタバースを建設するための資材のような存在です。Meta、Microsoft、Nvidiaといった企業がメタバースの構築に取り組んでいます。

メタバースとメタバース以前の仮想プラットフォームを分けるのは、デジタル資産に対する所有権意識でしょう。テック業界の多くの人々がメタバースに対して懐疑的であるにもかかわらず、デジタル資産を所有する若年層は依然として高い関心を持っています。

所有権が証明できるユニークなデジタル資産(NFT)のコンセプトは、メタバースの基礎の一部になる可能性を秘めています。デジタルグッズの経済圏は、すでに数十億ドルの評価を受ける巨大な市場になりました。

ユーザーによる資産のコントロールを可能にするNFTは、仮想現実にぴったりの存在です。トークン化された不動産など、新しいタイプのデジタル資産が台頭する可能性もあります。

また2023年以降のメタバースは、ファッションに対する認識も変えていくでしょう。メタバースの空間であらたなファッショントレンドがうまれ、物理的な世界に逆輸入されるかもしれません。バレンシアガやナイキは、すでにあらたな収益源としてバーチャルグッズの開拓をはじめています。

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▲Nikeがデザインしたデジタルシューズ『CryptoKicks』(出典:Nike)

変化8. 環境への配慮

2023年には、二酸化炭素排出量の削減に向けた運動も加速しそうです。

イーサリアムはすでに、プルーフオブワークからプルーフオブステークアルゴリズムへの切り替え(※7)によって、ネットワーク上で消費するエネルギー量を98%も削減しました。

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▲イーサリアムのエネルギー消費量(出典:Digiconomist

2023年には、より多くのブロックチェーンネットワークが、環境に優しいWeb3を目指すことになるでしょう。

※7 プルーフオブワークおよびプルーフオブステークアルゴリズム:暗号通貨の取引データを、ブロックチェーンに正しくつなぐ仕組み、メカニズム。プルーフオブステークは比較的新しい暗号資産によって使われている。前者が1.0なら後者は2.0と言える。

おわりに

Web3に関連する情報は明るく前向きなものばかりではなく、発展途上であるからこそさまざまなニュースが飛び交っています。

2023年も、Web3に関してさまざまな取り組みが実施され、成功や失敗を繰り返すでしょう。試行錯誤しながら進化をつづけるWeb3は、これからも目が離せない存在になりそうです。

(執筆:uxplanet.org 翻訳:Nakajima Asuka 編集:北村有 提供元:UX Planet

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