業務時間外の連絡、どこまでOK?「即レス要求」は法的リスク【社労士解説】
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労基法(労働基準法)が改正され、労働者の「つながらない権利」が法的に整備されようとしています。
つながらない権利:
勤務時間外や休日に「業務連絡へ対応しない自由」のこと。
無償での待機時間や稼働を生みやすいことから、欧州を中心に制度化が進んでいる。
「業務委託者であるフリーランスに、労基法は関係ないのでは?」と思うかもしれません。
しかし、これは会社員だけの問題ではなく、フリーランスにも密接に関わってくる問題です。
今回は、日々労働トラブルに向き合う社労士の視点から、労基法改正を見据えて押さえておきたい、フリーランスの「つながらない権利」と関連するリスクを解説します。

開業社会保険労務士(東京都社会保険労務士会所属)、特にIT/Web業界を中心に支援している。趣味は同人活動で、評論同人サークル「さかさまダイアリー」より同人誌「村上春樹っぽい文章の書き方」シリーズなど発行。(X:@mo_himo)
目次
2026年以降、40年ぶりに改正される労基法では、労働者が勤務時間外の連絡を拒否する権利を認める「つながらない権利」が盛り込まれる見通しです。
そもそも今の労基法は、労働者が工場に集まって一斉に作業をしていた時代の発想で作られました。
一方で近年は電話やチャットでいつでも連絡が取れるため、労働時間の境界が曖昧になっていました。こうした状況を是正し、ワークライフバランスを守ることが今回の改正のねらいです。
これまで、「つながらない権利」は欧州を中心に整備が進んできました。例えばフランスでは、2016年から「従業員は勤務時間外にメールに返信しなくてよい権利を持つ」ことが労働法で定められました。まだ確定ではないものの、日本でも同様の法律が整備されることになりそうです。
業務を受託しているフリーランスは、原則として労働基準法の適用外です。
しかし、それだけで「無関係」と考えるのは早計です。法改正を契機とした労働者保護の風潮は、フリーランス市場にも影響を与えるからです。
働き手全体の権利意識が高まる中で、フリーランスに対して「労働時間を気にせず、いつでも連絡を返してくれる都合の良い存在」といった扱いは通用しなくなるでしょう。
そもそも、頻繁・即時的な返信をフリーランスに強要すると、法律上のリスクが生じます。
業務委託において注意すべきは、フリーランスが「労働者」であるとみなされる(いわゆる「偽装フリーランス」と認定される)リスクです。
昼夜を問わずチャットを送り、クイックなレスポンスを求めることが常態化すると、実質的に指揮監督下にある=「労働者性がある」と判断される可能性があります。
もし労働者(偽装フリーランス)と認定されると、未払い残業代や社会保険料を一括で支払わなければならなくなり、企業が負う代償は甚大なものになります。
▼「偽装フリーランス」問題についてはこちらで詳しく解説しています ニュースで話題の「国保逃れ」は何が問題?怪しげなスキームに潜むワナ【社労士解説】 Workship MAGAZINE
「労働者性」の判断基準としては、「業務の進め方を本人に委ねているか」「勤務場所や時間を拘束していないか」などがあります。
「すぐに確認してもらえると助かります!」「今日中に返信ください!」
といったコミュニケーションは、「業務の進め方を管理している」「勤務時間を拘束している」とみなされかねません。
まして「つながらない権利」が明文化されるとなれば、「即レス文化」はこれまで以上にリスクとなるでしょう。
労働者かフリーランスにかかわらず、働き手の時間を尊重することは大切です。
なかでも、勤務時間・休息時間の線引きが明確に定められていないフリーランスにとって、「返信しなければならない」というプレッシャーは、大きな心理的負担となります。
たずねる側は「パパッと答えてくれればいいから」と思っていても、回答のために資料を開いたり、スケジュールを確認したりしていると、5分ほどかかることも珍しくありません。
このようなやりとりが1日1通、1週間で5通(1ヶ月で20通)あれば、5分×5通×4週間=1時間40分。時給単価5,000円のフリーランスなら、1ヶ月に8,000円弱の負担を強いることになります。
しかも、これはメッセージを返すために純粋にかかる時間のみ。家事や育児、別の業務や休息、考え事を中断され、再び流れを取り戻すまでの時間を含めれば、損失はさらに拡大していきます。
こうした無償労働が積み重なると、実質的な報酬単価は目減りします。
優秀なフリーランスほど、自身の価値と報酬とのバランスにシビアに向き合っています。
「時間外労働が多く、報酬に見合わない」と判断されれば、契約の継続を断られることになるでしょう。
「パパッと答えてくれればいいから」が、優秀なフリーランスの離脱を招いてしまうわけです。
リスクを回避し、良好な関係を築くためには、あらかじめ理想の働き方について認識を合わせておく必要があります。
まずは、連絡対応が可能な時間帯を相互に確認しましょう。
始業・終業時刻を上司や会社が認識できる労働者と違い、フリーランスは「この時間帯は別の業務が」「子供の寝かしつけが」等の事情を抱えていることが多く、実際の稼働実態は聞いてみないと分かりません。
さらに、急ぎではない連絡をする場合、相手にとってストレスのない時間帯に受信できるよう、チャットツールの予約投稿機能を活用するのもおすすめです。
また、「急ぎの対応が不要の場合はメンションをしない」「業務時間外は通知を切ってもらって良い、と宣言する」などの方法もあります。
不意打ちの通知が飛ばないように配慮するだけで、心理的負担は軽減されます。
併せて、至急の連絡を取りたいときのコミュニケーション方法を定めておくことも重要です。
「こういったトラブルが発生した際は緊急対応が必要なので、速やかにこの番号に電話する」など、通常の連絡とは別の方法を確立しておけば、「何か連絡が来ていないか、常にチャットを確認しなければ」というストレスから解放されます。
このように、「しても良い連絡/即レスを避ける連絡」を明確にしておけば、企業側にとっても、「フリーランスに連絡していいのか?」という心理的負荷や初動対応の遅延リスク軽減につながります。

フリーランスの「つながらない権利」を尊重することは、決して甘やかしではありません。プライベートを充実させたり、しっかりリラックスしてもらったりすることは、アウトプットの質を維持するために不可欠です。
法改正を単なる規制強化と捉えるのではなく、フリーランスと付き合うマナーをアップデートする機会にしましょう。
「その連絡、本当に今すぐ送る必要がありますか?」と自問する習慣が、これからの経営者やマネジメント層に求められているのです。
(執筆:もひもひ、編集:夏野かおる)
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