「会社活動はすべてコンテンツ」面白法人カヤックが、あえて非効率な“面白採用”を続ける理由

慢性的な人手不足や採用難など、ますます揺れ動く採用市場。そんななか、採用活動において唯一無二の存在感を放ち続けているのが、面白法人カヤックです。

同社は、エゴサーチの結果で合否を決める「エゴサーチ採用」や、フルマラソンの完走経験を評価する「42.195km採用」など、ユニークな採用手法を多数展開。まさに社名を体現する「面白採用」の数々は、常に注目の的となっています。

唯一無二な社内制度を持つ企業に、企業カルチャーを醸成するコツを聞く連載企画「すごい社内制度」。今回は、面白法人カヤックの人事課 新卒採用責任者・みよし こういちさんに、型破りな採用手法の裏側にある、驚くほど真摯な組織哲学について伺いました。

面白法人カヤック 人事課 新卒採用責任者 みよし・こういち氏
面白法人カヤック 人事課 新卒採用責任者 みよし・こういち氏

面白法人カヤックの人事責任者。10年以上にわたり、代表の柳澤大輔氏とともに数々のユニークな採用キャンペーンや社内制度を企画・運用。自らすべての面白採用の選考に目を通す。

会社活動はすべて「コンテンツ」である

───「面白採用」と銘打ち、ユニークな採用活動を進めているカヤックさんですが、そもそもなぜ、採用をこれほどまでにおもしろくする必要があるのでしょうか?

カヤック・みよしさん(以下、みよし):
結論から言うと、僕たちは「面白法人の会社活動そのものがコンテンツである」と考えているんです。

───会社活動が、コンテンツ。

みよし:
会社のことを「法人」って呼ぶじゃないですか。これって、法律上、会社はわれわれ「人」と同じように、人格、つまり権利能力を持つものと定められているからなんですよ。

会社には人格がある。それなら、「面白法人」の振る舞いもおもしろくありたい。だから、採用の入口をおもしろくするのは、僕らにとって普通のことなんです。

「面白法人」が世に出すサービスやプロダクトにおもしろさが求められるのは当たり前です。しかし、それ以外の組織活動、つまり採用や給与制度、福利厚生もすべて、僕たちのアウトプットだと考えているんですよね。

───「面白採用」は、「面白法人」としてのアイデンティティそのものなんですね。

みよし:
もちろん法務や財務など、おもしろ最優先では成り立たない領域はあります。でも、おもしろに振り切れる場所では徹底的に遊ぶ。うちの法務は非常にプロフェッショナルで、「これなら法的にOK」というガードレールを一緒に作ってくれるのでありがたいです。プロが後ろ盾にいるからこそ、僕たちはトップスピードで遊ぶことができるんですよ。

「42.195km採用」に「いちゲー採用」!?

───ちなみに、「面白採用」といってもいろいろなものを同時に展開されていますよね。最近だと「推しプレゼン採用」や「42.195km採用」とか。

みよし:
「42.195km採用」は、フルマラソンの完走経験を評価するものです。エンジニア限定で始めたんですけど、エンジニアって実は体力勝負な面があるし、調べてみると30代から走り始めるエンジニアが意外と多い。これ、いいかもしれないな、と。

そこに「数字だけで伝わるインパクト」を掛け合わせました。

数字だけ挙げれば世界共通で「何を指すか」がパッと分かるのって、マラソンの距離くらいじゃないですか?

───確かに。「42.195km」という数字だけでわかりやすいし、強さを感じますね。

みよし:
あとは、キーワードを検索して出てくる活動実績で合否を決める「エゴサーチ採用」や、ゲームが上手い人に内定を出す「いちゲー採用」など、入口は多種多様です。

あと、バスで全国をまわる「旅する会社説明会」っていうのもやったんですけど、あれも大変でしたね。

───それだけ窓口が多いと、管理が大変ではないですか?

みよし:
めちゃくちゃ大変です(笑)。面白採用に関しては、僕が一人で目を通していますから。週に2回は全件チェックしないと、応募が溜まって合否出しが遅れてしまいます。

でも、これをほかのメンバーに任せるのは難しいんです。「エゴサーチ採用の結果をどう評価するか?」なんて、マニュアル化できませんからね。

面白採用から生まれたエース

───面白採用で入社した方は、どのくらい活躍されているのでしょうか?

みよし:
皆さん大いに活躍していますよ。たとえば、かつて「いちゲー採用」で入ってきたメンバーで、のちに事業部長になった社員がいます。

彼は入社後、クリエイティブの現場で頭角を現し、最終的には組織を率いる立場にまでなったわけです。普通の履歴書選考だけでは絶対に出会えなかったと感じるメンバーも多いです。

───履歴書には表れてこない才能をすくい上げているんですね。

みよし:
だからこそ間口は色々あった方がいいんです。効率を求めてターゲットを絞るのではなく、あえて間口を広げて、個性豊かな人が紛れ込む確率を上げにいく。多様な人材が集まれば、組織としての新陳代謝が進む、というのが僕たちのねらいです。

間口は広げつつ、マッチングは入念に

───ちなみに、これらのユニークな企画は、社内会議を経て生まれるんですか?

みよし:
いや、企画会議から始まることはほとんどないですね。だいたい、社内の誰かからSlackやSkypeで気軽に送られてくる一言がきっかけになります。

「エゴサ採用って、どうですか?」とか、「42.195km採用」って言葉だけが送られてくるとか、本当にそんなノリで。

▲実際のSlackでのやりとり画面

みよし:
いろいろと理屈をこねる前に、まずその言葉を聞いた瞬間に「おもしろそう!」と直感できるかどうかが大事。言葉のインパクトがすべてで、その後に「じゃあどう運用するか」を詰めていきます。

───入口がユニークな分、入社後のミスマッチに悩まされることはありませんか?

みよし:
過去に、面接でディープな知識を披露して合格したものの、実務でマッチしなかったという例はありました。でもそれは、一般的な採用でも起こりうることかなと思います。

そうした反省を生かして、現在(2026年時点)の採用活動では、最終面接のあとに「5日間のインターン」を設けています。

───いわば「お試し期間」を設けたのですね。

みよし:
そうです。鎌倉のオフィスに来てもらい、実際に現場のメンバーと働いてもらう。ここでスキルや相性が合うかをじっくり見ます。

「お試し」の結果、「ちょっと違うな」と感じて辞退する人が増えるかもしれませんが、それでも構わない。入口を極限まで広げるからこそ、最後のマッチングは泥臭く、実務的にやる。これがカヤックがたどり着いた結論です。

▲面白法人カヤック鎌倉社屋外観

カヤックがもっとも恐れる、変化のない組織

───お話を伺っていると、カヤックさんは「効率的な採用」の真逆を走っているように見えます。なぜ、そこまで手間をかけるのでしょうか?

みよし:
僕らがもっとも恐れているのは、組織が生き物でなくなることなんです。

───組織が生き物でなくなる?

みよし:
さっきも少し例に挙げた「旅する会社説明会」を企画したときに、柳澤(社長)が「知らない人がふらっとバスに乗ってきたらおもしろいよね」って話をしていて、そんなこと本当にあったら困るよ! って思ってたんですけど(笑)。

よくよく考えたら僕たちは、そういう偶然の出会いを大事にしていかないといけないんだよな、とも思ったんです。

だから、「面白採用」ではあえてペルソナ(=求める人物像)を設定しません。ターゲットを絞りすぎると、その定義に収まる人しか来なくなってしまう。似たような人たちばかりが集まって、組織の爆発力が失われていくんです。

それでは、僕たちの想像を超えるような組織の変化は起きません。それはすなわち「面白法人」ではなくなることを意味します。

───常に「面白く」あるためには、あえて予測不能な、多種多様な入口を作っておく必要があるんですね。

みよし:
その通りです。なんなら、「なんだこの会社、変だな」と思って遊び半分で応募してくる人のなかに、次の10年のカヤックを形作る熱量が眠っている可能性があります。僕らは、彼らと出会うためのチャンスを、自分たちの手で潰したくないんです。

想定外を呼び込み続けるのが、経営者の意地

───最後に、ユニークな社内制度を通じて企業カルチャーを作りたいと考えている経営者や人事の方へ、アドバイスをお願いします。

みよし:
制度というのは、一度作って完成ではありません。

大事なのは、その制度があることで、どんな「想定外」が起きるのか。そして、そのワクワク感を経営者自身が楽しめるかどうかが、強いカルチャーを作る分かれ道になるのではないでしょうか。

───「面白法人」という看板の裏にある、狂気的なまでの「おもしろさへの誠実さ」を感じました。ありがとうございました!

(執筆・編集:Workship MAGAZINE編集部)

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