知らないとヤバい採用面接官の心得・NG行動は?求職者に「選ばれる」ために今アップデートすべきこと

「よし、ついに我が社にも待望の応募が届いたぞ! どんな人が来るのかな……」

ここは健王建材のオフィス。しがない人事・ひよ吉は、ようやく届いた応募を前に、鼻息を荒くしていた。これまでの苦労が報われ、ようやく面接できるのだ。

「フフフ、待っててくれよ。我が社に合う人かどうか、僕が面接で上から下まで徹底的に見極めてやりますから……!」

履歴書を握りしめ、審査官気取りでニヤリと怪しく笑うひよ吉。その背後から、カッカッカッと床を踏み鳴らす、冷静な足音が近づいてくる。

「ひよ吉さん。失礼ですが、あなたは昭和・平成の時代からやってきたタイムトラベラーですか?」

振り返るまでもない。我らがミスターHRだ!

【話し手】

ミスターHR
ミスターHR

歴20年のベテラン採用コンサルタント。このたび健王建材の人事部に採用コンサルとして参画することになった。

【聞き手】

人事 ひよ吉(じんじ ひよきち)
人事 ひよ吉(じんじ ひよきち)

健王建材の総務兼人事担当。「若くてリテラシーのある人」を採れと社長に言われている。これまでの施策を惰性でなんとなくやっているが、応募数は右肩下がり。うーん、どうしたもんかしら。

採用面接は「相互インタビュー」である

迷える人事:
ミ、ミスターHR! タイムトラベラーだなんて人聞きの悪い。僕はただ、せっかく我が社を選んで応募してきてくれた方をしっかり面接して、優秀な人材を選ぼうと意気込んでいただけですよ!

ミスターHR:
それが古い姿勢だ、と言っているのですよ。いいですか、ひよ吉さん。今の時代、採用活動における最大の罠は、その「企業側が選んでやる」という上から目線の態度にあります。

現代の採用において大前提となるマインドセットは、面接は企業が求職者を選ぶ場ではなく、企業が求職者から選ばれるための場であるという考え方です。ここがズレている企業は、令和の時代、確実に淘汰されるでしょうね。

迷える人事:
あくまでも、企業側が選ばれる場、ってことですか……。でもでも、こっちがお給料を払うわけですし、やっぱりある程度の見極めは必要ですよね?

ミスターHR:
かつての買い手市場であれば、応募者が自分を売り込み、企業がそれを一方的に審査する構造でも成り立っていました。しかし、いまは完全なる売り手市場です。

現代の面接とは、企業と求職者が対等な立場で、お互いのカルチャーや条件がマッチするかを確認し合う場。つまり、審査ではなく、お互いのことを知るための場へとアップデートされているのです。

迷える人事:
なるほど、相互インタビュー。そう言われると、急に面接がフラットな場に思えてきますね!

ミスターHR:
飲み込みが早いですね。でも、そう思えるかどうかが分かれ道です。

面接官が取るべきは、評価してやろう! という上から目線ではなく、相手に純粋な関心を持つ傾聴の姿勢です。

面接官がこのスタンスを徹底することで、候補者もリラックスし、自然と話しやすい雰囲気が生まれます。結果として、求職者の本音やリアルな人柄を引き出すことができるのです。

採用面接官がやりがちなNG行動

迷える人事:
大事なのは傾聴の姿勢、と。よし、さっそく次の一次面接から実践してみます! ……とは言ったものの、二次面接以降はまだ少し心配なんですよねえ。

ミスターHR:
ほう、何か懸念でも?

迷える人事:
最終面接近くになると、いわゆるベテラン世代の役員が出てくるじゃないですか。大体は穏やかな人なんですけど、ひとりだけ、腕を組んでふんぞり返りながら「君は我が社でやっていけるのかね?」とか言いそうな人がいるんです。

僕がせっかく一次面接で良い雰囲気を作っても、これじゃ台無しですよね。

ミスターHR:
非常に良い着眼点です。まさにそれこそが、多くの企業が陥っている面接の罠です。

カジュアル面談や一次面接では、年齢の近い現場社員が優しく対応してくれて志望度が上がっていたのに、最終面接に登場した役員クラスがいかにも前時代的。この温度差のせいで、求職者の熱意が一気に冷めてしまうケースは後を絶ちません。

とくに姿勢は気をつけたいところですね。心理学的に見ても、「腕を組む」「椅子にふんぞり返る」という姿勢は、相手に対して威圧感を与え、話しにくい雰囲気を意図的に作り出してしまう最悪のNG行動です。

迷える人事:
やっぱりそうなんだ……! でも、役員相手に僕から「偉そうな態度をやめてください」とは言いにくいですよ。

ミスターHR:
だからこそ、全社的な面接官トレーニングが必要です。

「1次面接の通過率は良いのに、なぜか2次面接の特定の面接官のところで辞退が増えている……」といったケースは少なくありません。

令和の時代に即した面接のあり方や、質問を標準化する「構造化面接」の手法を学ぶための企業研修などを通して、面接官の知識習得やスキルアップを図ることが不可欠です。面接官ごとに対応がバラつかないよう、全社で共通の基準を持つことも大切ですね。

ちなみに先進的な企業では、部下から上司へ直接注意しづらい環境を考慮して、AIを活用して面接官の音声や対話を評価し、ハラスメントリスクや不適切な態度をスクリーニングするシステムを導入しているところもあります。客観的なデータとして「あなたの面接は高圧的ですよ」とフィードバックするわけです。

社長や役員も含めた全社で面接のあり方をアップデートしなければ、せっかくの採用チャンスを潰してしまいかねません。使えるものはどんどん活用していきましょう。

不適切な面接は、SNS炎上や顧客損失につながる

ミスターHR:
ちなみにこれからの時代、高圧的な面接を続けていると深刻なリスクもありますよ。今の時代、面接官の不適切な対応や失礼な態度は、口コミサイトやSNSで瞬時に拡散されるリスクと隣り合わせです。

よくあるのが、対話の途中で「この方は採用見送りだな」と判断した瞬間に、露骨に態度を変えたり、話を適当に切り上げたりする面接官。これをやられた求職者がSNSやネットに悪評を書き込めば、その瞬間に企業のブランドは失墜し、ゆくゆくは応募すら来ない会社になります。

迷える人事:
ひえっ……当たり前のことですけど、たとえ不採用にする相手だとしても、最後まで丁寧に接しないといけないですね。

ミスターHR:
当然です。なぜなら目の前の求職者は、将来の顧客やパートナーになる可能性があるからです。

一般の商売において、未来のお客さんになるかもしれない人に嫌な態度を取る人はいませんよね? 採用も全く同じです。もし選考の途中でミスマッチがわかっても、冷淡に打ち切ってしまうのではなく、最後まで大人の対応をすべきでしょう。

採用面接で「志望動機」より聞くべき質問は?

迷える人事:
基本的なところはわかりました! けど、応募してくれた方と会社の相性を見極めるとなると、どうしてもたくさん質問してしまって、問い詰めるような雰囲気にならないか不安です……。

相手の本音をうまく引き出すには、どうしたらいいですかね?

ミスターHR:
だいたいの求職者は、面接で聞かれがちなよくある質問に対しては、あらかじめネットで調べた綺麗な回答を用意してきます。それを聞いたところで、引き出せるのは事前に用意した台本を上手に伝えるスキルだけであり、その人の本質や人間性は見えてきません。

本質を見極め、かつ相手を惹きつけるためには、プロセス・事実ベースに絞った質問をしましょう。

迷える人事:
事実ベースの質問ですか。具体的にはどう聞けばいいんですか?

ミスターHR:
綺麗な嘘でごまかせない、過去の具体的な行動特性を引き出すのです。たとえば、このような問いかけが有効です。

【本音と行動特性を引き出す質問フォーマット】
「これまでの仕事上で、一番大変だったこと(苦労や失敗体験)は何ですか?」
「その困難を克服するために、ご自身で具体的にどのような行動をしましたか?」
「それをクリアしたとき、どのような喜びや学びがありましたか?」

ここで大切なのは、プライベートな話にずけずけと踏み込むのではなく、あくまで「仕事における具体的なエピソード」を深掘りしていくことです。これによって、その人が実際に直面した課題に対してどう動き、何にモチベーションを感じるのかという、取り繕えないリアルな本質が見えてくるのです。

内定辞退を防ぐには面接後のフォローが重要

迷える人事:
今日も勉強になりました。これなら候補者とウチの会社との相性がしっかり見極められそうです! 最高の面接をして、最高の評価をつけて、速攻で内定通知書を出しちゃいますよ!

ミスターHR:
……やれやれ。ひよ吉さん、まだまだ甘ちゃんですね。条件さえ良ければ、内定通知書(書類)をパッと送るだけで、100%承諾してもらえる! なんて思っていませんか?

迷える人事:
えっ、ダメなんですか? 内定をもらえたら普通は嬉しいんじゃ。

ミスターHR:
そこがまだまだ甘ちゃんなのですよ。内定後のフォローを怠ってしまったら、内定辞退されてしまう可能性もあります。

迷える人事:
内定辞退!? そんな、困ります! どうしたらいいんですか?

ミスターHR:
おっと、そろそろ時間が……。ひよ吉さん、内定辞退を防ぐためのキーワードは「オファー面談」そして「入社までのフォローアップ」です。続きは次回、詳しくお話ししましょう! それでは!

迷える人事:
おお……颯爽と去っていった。ミスターHR、いつも唐突にやってきては去っていくけど、いったいどこに帰っていくんだ???

(執筆:北村有 取材・編集:夏野かおる)

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