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この記事ではプロダクトデザイナーである私が、「色が感情にどのような影響を与えるか」を、色彩心理学の観点から解説します。色が人間の暮らしにどう影響するかは、長年デザイナーの間で議論が交わされてきました。
色とは客観的ではなく、主観的な創造です。モノに光が当たると、モノは光の一部を吸収し残りを反射します。こうした色の吸収・反射はモノの特性によって起きる現象です。反射された波長が、光に反応する人間の目の網膜に届くことで、私たちは色を認識するのです。
色はさまざまな文化において、情報伝達や感情表現の手段として使われてきました。よく言われるのは、色はどのような場面においても特定の感情を作り出せるということです。これを理解するには、このトピックについて深く掘り下げる必要があります。
色彩心理学とは、人間行動に影響を与える色彩の研究である。色彩は目に見えないが、食べ物の味のように私たちの知覚に影響を与える。(wikipediaより)
色彩心理学の考え方については長年議論が交わされてきました。広く支持されている理論は、色彩・光・周囲環境が人間の気持ちに影響を与えるという考え方です。
色彩心理学の研究が進められていた当初、ゲーテとシラーによって「気質のバラ(rose of temperaments)」と呼ばれる、色彩と感情に関する有名な理論が発表されました。これは12色を人の職業または性格特性(暴君・英雄・冒険家・快楽主義者・愛人・詩人・演説者・歴史家・教師・哲学者・衒学者・支配者)に当てはめて、4種類の気質グループに分けたものです。
元々はガレンによってデザインされた気質に、下記の色がそれぞれの気質に当てはめられました。
医学と生物学の発展により、この気質に関する考え方はルネサンスの時代(14-16世紀)には衰退しました。しかしこの気質の区分は科学的ではないものの、人間の性格がどのように色で表現されるかを示した「主観」といえます。この主観が、現代の色彩心理学の始まりだと考えられています。
色彩が私たちの脳科学を刺激し、色に合わせた感情を引き起こすことは明らかです。その影響は身体的・感情的ともに存在します。
人間の後頭葉は、大部分が色彩を認識する能力とひもづいているのです。たとえば自然界で最もよく見られる色である「緑」や「青」は、ストレスを癒す効果があります。青は精神療法で広く使われている色で、日本では駅の壁を青色にしたことで、公共の場所での自殺率が75%減少したという報告もあります。
一方で色彩に対する私たちの見方は、常に「自身の好み」に影響を受けます。では、色彩は私たちにどのような影響を与えているのでしょうか?
文化は私たちの暮らしのもととなるものです。人間の行動は文化から直接影響を受け、人間の文化的側面を反映します。
アジアの文化、中東の文化、ヨーロッパの文化、アメリカ大陸の文化など、どれもが豊かな価値観を持っており、また色彩によってそれぞれ特有の価値観を表しています。国・地域によっては、宗教が色彩のイメージへ大きく影響しているばあいもあります。
以下は文化における色彩のイメージを、国・地域ごとに分類したものです。ここで主要な宗教の価値観に注目してみましょう。その宗教の核となる価値観が、どのように色で表現されているかがわかります。
色彩と仏教には強いつながりがあり、べサク祭の時期にそれがよく表されます。
スリランカでは満月の日に寺院へ足を運び、祈りを捧げて提灯に火を灯します。べサク祭の時期には多くの家屋や寺院が一週間近くデコレーションされ、仏旗が掲げられます。旗には以下の色が使われており、それぞれに意味が込められています。
ほとんどの場合、仏教徒は寺院を訪れる時に白い衣服を着用しており、白は「簡素さ」と「清浄さ」を表しています。青は「瞑想の無限性」を表し、心を落ち着かせて知恵の習得を助けるものと認識されています。
宗教における色彩についてはさまざまな議論が交わされており、それらには信仰者の信仰や思考から生まれたもの、または実際の心理的価値があるものが存在します。私自身も宗教と文化を深く学んでいますが、宗教は個人によって考えが大きく異なる難しいトピックのため、今後も慎重な調査をしていきます。
象徴とは、組織の性格特性をあらわす力強いものです。象徴によって所有権や独自性、国とその国民を表し、他のグループの人々を識別できます。象徴性は、国旗からマーケティング、自身のアイデンティティ形成からブランドの販売まで広い分野で重要です。
このセクションでは、象徴がどのように性格特性を高めるかに注目します。
多くの人が、コミックブック(漫画)を読んだことがあるでしょう。その中でも特に「スーパーヒーローもの」については、色彩と象徴性が大きく関わっているといえます。
たとえばアメコミのスーパーヒーロー系キャラクターには、それぞれ共通の色があります。
アメコミのスーパーヒーローのほとんどに、上記の主要3色が使われています。スーパーヒーローたちは多くのばあい正義の味方で、世界征服を企む悪役と戦う役です。
スーパーヒーローにこれらの色が使われる理由として、2つ考えられます。
ひとつめは、色彩心理学的に主要3色はスーパーヒーローの素質を表すことが考えられます。赤は「暖かい色」で、赤を見ると血圧が上昇したり戦闘本能を高めたりすると言われています。青は「涼しげな色」で、冷静さ、集中力、明瞭さを表します。黄色は「波長の長い色」で、前向きな思考や自信を表します。
もうひとつは、過去の印刷事情が関係しています。主要色と補助色以外に印刷できなかったローテクな時代、スーパーヒーローには主要色が、そして悪役にはその反対色や暗い灰色が使われていました。この名残が現在まで残っているのです。
スーパーヒーローの映画やコミックは、世界中で数十億ドルのお金が動く産業へと成長しました。時代とともにスーパーヒーローの数は増え、それとともに使われる色の数も増えてきています。
色彩が人間に影響を与えるといった時に最もイメージしやすいのは、人間がその色に対して抱える感情的な体験です。人間はさまざまな方法で色彩を記憶・認識します。
たとえば青は、あらゆるデザインに広く使われています。青は「海」「空」「自由」などに関係する色で、ほとんどの人は青について話す時にこれらを思い浮かべます。一方で青を「悲しさ」「寂しさ」「人々との繋がりを断つ」といったことに紐付ける人もいます。
ターゲットとする相手に最適な色を選ぶためには、位置情報や彼らが使用するデバイス等の情報だけでは不十分です。彼らの出身地、信条、大切にしているものなど、相手のことをよく理解する必要があります。
この記事を読んだ方は、適切な色彩を使ってプロダクトを作り、色彩のもたらす影響を活用したいと考えていることでしょう。プロダクトは常に「それが何なのか」「それをどう表現するのか」という点を反映するものでなければなりません。
まずはあなたの顧客、ユーザー、フォーカスグループの抱える感情が何であるかを特定しましょう。デザイナーは、人がプロダクトに対して抱く感情を予想するのが仕事です。ユーザーをより深く理解し、適切な色彩を使うには以下のポイントにしたがってください。
今回の記事でご紹介したポイントを意識して、あなたのプロダクトに最も効果的な色彩を選びましょう!
(原文:muditha batagoda 翻訳:Yui Tamura )
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