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【税理士解説】高年齢者雇用安定法が改正「70歳就業法」フリーランス・個人事業主として働く選択肢も

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高年齢者雇用安定法が改正され、2021年(令和3年)4月1日に施行されました。「70歳就業法」とも呼ばれているとおり、改正法では、希望する人に対して「70歳までの就業機会を確保する」ことが企業の努力義務となっています。

さらに、その方法として「業務委託契約を締結する制度の導入」、つまりは「フリーランス・個人事業主で働く」という選択肢も設けられています。柔軟で多様な働き方の周知や浸透が進む、ひとつの契機となるかもしれません。

※この記事はFREENANCE MAGからの転載です

執筆:河野雅人
執筆:河野雅人

公認会計士・税理士。東京都新宿区に事務所を構え活動中。大手監査法人に勤務した後、会計コンサルティング会社を経て、税理士として独立。中小企業、個人事業主を会計、税務の面から支援している。独立後8年間の実績は、法人税申告実績約300件、個人所得税申告実績約600件、相続税申告実績約50件。年間約10件、セミナーや研修会などの講師としても活躍している。趣味はスポーツ観戦。

提供:FREENANCE MAG
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高年齢者雇用安定法とは?

高年齢者雇用安定法の正式名称は「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」といい、「少子高齢化が急速に進行し人口が減少する中で、経済社会の活力を維持するため、働く意欲がある誰もが年齢にかかわりなくその能力を十分に発揮できるよう、高年齢者が活躍できる環境整備を図る」ことを目的としています。

同法律が改正されることとなった背景・要因には、健康な高齢者の労働者を増やし、人手不足を解消するとともに、年金などの社会保障の担い手を増やすことが挙げられます。

(※参照:厚生労働省「高年齢者雇用安定法の改正~70歳までの就業機会確保~」)

改正法は65~70歳までの雇用を安定させる「努力義務」が追加

従来の高年齢者雇用安定法は、「65歳までの雇用確保」を「義務」としています。具体的には、60歳未満での定年を禁止し、さらに、以下に示すような65歳までの雇用確保措置を講じなければならないと定めています。行わない企業には勧告書を発出、勧告に従わない場合は企業名の公表などの措置があります。

  1. 65歳までの定年引き上げ
  2. 定年制の廃止
  3. 65歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度など)の導入

2021年4月から施行された改正高年齢者雇用安定法では、65歳までの雇用確保措置に加え、65歳から70歳までの雇用を安定させるための「努力義務」を求めています。そのために「70歳就業法」や「70歳就業確保法」とも呼ばれているわけですが、「努力義務」に法的な拘束力はなく、「定年を70歳に引き上げる」ことを義務付けるものでもありません。

(※参照:厚生労働省「パンフレット(簡易版):高年齢者雇用安定法改正の概要」)

将来的には「努力義務」から「義務」規定となる可能性も

上記のとおり、改正された高年齢者雇用安定法では「65歳までの雇用確保(義務)」に加えて、「65~70歳までの就業機会の確保」「努力義務」とされています。

65~70歳までの就業機会を確保することが「義務」ではなく、なぜ「努力義務」とされているのか?という理由については、「現時点では義務として規制するまでの社会的な合意を得られていない」といった意見・指摘などがあるためと考えられます。

しかし、高年齢者の雇用促進については、60歳から65歳と定年が徐々に引き上げられ、今回の改正で70歳までの就業機会の確保が「努力義務」となりました。現状の少子高齢化社会においては、将来的に「義務」規定に移行する可能性もあるといえるでしょう。

高年齢者就業確保措置に「創業支援等措置」が新設

従来、企業側は高年齢者就業確保措置を講ずる施策としては、自社で雇用する選択肢しかありませんでした。

一方、今回の改正法では、他の事業所や団体への再就職や創業を支援する、あるいは社会貢献活動に取り組んでもらうといった選択肢もあり、また、これらを複数組み合わせることもできます。

具体的には以下の5つです。どの措置を選択するかは労使間で協議し、労働者である高年齢者の希望を尊重するよう定められています。

  1. 70歳までの定年引き上げ
  2. 定年制の廃止
  3. 70歳までの継続雇用制度の導入(再雇用制度・勤務延長制度など)
  4. (希望者には)70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
  5. (希望者には)70歳まで継続的に以下の事業に従事する制度の導入
    a. 事業主が自ら実施する社会貢献事業
    b. 事業主が委託または出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業

なお、今回の改正は、「従来の制度の拡大」と「新制度」の2つに分けることができます。

上記の1と3(2の「定年制の廃止」は変更なし)は、現状の65歳定年制、65歳までの継続雇用制度をそれぞれ「70歳まで」に拡大するといった内容です。

一方、4と5は「創業支援等措置」と呼ばれる新たに設けられた制度で、事業主や企業担当者は制度内容の理解や導入手続きが必要となります。

創業支援等措置とは「フリーランスとして働く」こと

創業支援等措置とは、「従来までの従業員としてではなく、業務委託契約(フリーランス・個人事業主)として働く」ことを指します。業務委託契約であるため、労働者側においては、これまで勤務していた企業の労働保険や社会保険の被保険者の対象とはならないことや、契約先が別の企業や団体となる場合もあることなど、趣旨を理解することが大切です。

創業支援等措置の導入に際して、企業側は業務委託の方法や報酬についての仕組みを新たに決め、下記の事項を記載した計画を作成します。

  1. 高年齢者就業確保措置のうち、創業支援等措置を講ずる理由
  2. 高年齢者が従事する業務の内容に関する事項
  3. 高年齢者に支払う金銭に関する事項
  4. 契約を締結する頻度に関する事項
  5. 契約に係る納品に関する事項
  6. 契約の変更に関する事項
  7. 契約の終了に関する事項(契約の解除事由を含む)
  8. 諸経費の取り扱いに関する事項
  9. 安全および衛生に関する事項
  10. 災害補償および業務外の傷病扶助に関する事項
  11. 社会貢献事業を実施する団体に関する事項
  12. 1~11のほか、創業支援等措置の対象となる労働者の全てに適用される事項

企業は、作成した計画について、労働者の過半数を代表する労働組合などの同意を得なくてはいけません。同意が得られた場合、事業所の見やすい場所に掲示するなどして労働者に周知する必要があります。そして制度導入後は、個々の高年齢者と業務委託契約や社会貢献活動に従事する契約を締結することになるのです。

(※参照:厚生労働省「創業支援等措置の実施に関する計画の記載例等について」)

まとめ

今回の高年齢者雇用安定法改正の目的は、「個々の労働者の多様な特性やニーズを踏まえ、70歳までの就業機会の確保について、多様な選択肢を法制度上において整備し、事業主としていずれかの措置を制度化する努力義務を設けるもの」です。

従来までの定年制廃止や継続雇用(再雇用)制度だけでなく、創業支援措置という、業務委託契約(フリーランス・個人事業主)の仕組みが新しく盛り込まれました。

「働き方改革」や「人生100年時代」といった言葉に代表されるように、長く柔軟に働きながら、自己実現や社会貢献を果たすのが、今後の主流な「生き方」となるとも考えられ、「社内フリーランス」を導入する企業も徐々に増えています。

将来的には「フリーランス・個人事業主として働くこと」が選択肢のひとつとして当たり前の世の中になるのではないでしょうか。「副業」「複業」といった経験をしておくことが、後々になって役に立つかもしれません。

(執筆:公認会計士・税理士 河野雅人 提供元:FREENANCE MAG

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