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2023年の事業再構築補助金は個人事業主/フリーランスも使える?申請条件、採択率、金額上限まとめ【FPが解説】

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猛威を振るった新型コロナウイルスの影響も落ち着きはじめた2023年。アフターコロナのトレンドも徐々に明らかになってきており、この機会に思い切って新規事業や業態転換を考える方もいるのではないでしょうか。

そんな状況で活用できるのが、中小企業庁が採択する中小企業・個人事業主向けの補助金事業再構築補助金です。

今回は、事業再構築補助金の概要や申請条件、採択率、上限額などを、個人事業主として活動した実績も豊富なFPが解説します。

※本記事は、従業員を雇用していない独立系フリーランス(エンジニア、デザイナーなど)を対象とした記事です。フリーランス向けでない内容は適宜省略していますので、ご了承ください

執筆:齊藤颯人
執筆:齊藤颯人

FP事務所『トージンFP事務所』代表、ファイナンシャル・プランナー(AFP)。Workship MAGAZINEのマネー担当として、フリーランスや副業にまつわる記事の執筆・監修を行う。自身もフリーランス経験が長く、当事者ならではの情報発信に強み。

事業再構築補助金とは?

事業再構築補助金とは、中小企業庁が創設した補助金制度です。

制度設立のきっかけは、新型コロナウイルス感染症による甚大な影響でした。中小企業の需要や売上の回復が期待しづらい状況を踏まえ、ポストコロナ・ウィズコロナ時代の経済社会の変化に対応するための事業再構築を支援することを目的に創設されました。

具体的には、「新分野展開」「事業転換」「業種転換」「業態転換」「事業再編」という思い切った事業再構築に意欲的な中小企業などの挑戦を支援するための制度と発表されています。

事業再構築の定義

▲出典:事業再構築補助金資料

また、「通常枠(第10回より成長枠)」だけでなく、「最低賃金枠」「グリーン成長枠」「産業構造転換枠」など、取り組みに応じた申請枠が用意されているのが特徴です。

では、具体的に適用事業者の例を説明しましょう。

たとえばコロナ以前は「観光ガイド」を生業にしていた個人事業主がいたとします。しかし、コロナ禍で観光需要が激減し、経営危機に陥りました。そんなとき、このガイドさんは「これからはオンラインツアーの時代だ。オンラインツアーの主催をビジネスにしよう」と思いつきます。

この際、オンラインツアー主体への業態転換に必要な費用を補助してくれるのが事業再構築補助金、というイメージです。

事業再構築補助金の申請条件

事業再構築補助金の申請には、枠を問わず基本的に以下の条件を満たす必要があります。

  1. コロナ以前と比較して一定の売上減少(5~10%)が発生していること
  2. 事業計画について認定経営革新等支援機関の確認を受けること
  3. 付加価値額を向上させること(年率3~5%)

※付加価値額:営業利益・人件費・減価償却額を足した金額の合計。付加価値額が向上すれば、社会によりプラスの影響を与えていると判断される

しかし、2023年に受付を開始した「第10回」から、この必須条件に大幅な変更がありました。具体的には、以下のように変化しています。

  1. 事業計画について認定経営革新等支援機関の確認を受けること
  2. 付加価値額を向上させること(年率3~5%)
事業再構築補助金 必要項目

▲出典:事業再構築補助金資料

本制度の大きな特徴であった「売上減少」の要件がなくなり、売上が減っていなくても申請が可能になりました。ここだけ見れば大きなメリットですが、多くの人が活用するであろう「通常枠」が撤廃され、「成長枠」に切り替えられた点には注目が必要です。

成長枠では、通常枠時代になかった2つの制約があります。具体的には以下の通りです。

  1. 取り組む事業が、原則として過去~今後のいずれか10年間で市場規模が10%以上拡大する業種・業態に属していること
  2. 事業終了後3~5年で給与支給総額を年率平均2%以上増加させること

独立系フリーランスにとって、最大の制約になるのは2の「給与支払総額の増加」でしょう。なぜなら、多くのフリーランスはそもそも従業員を雇っておらず、給与支払いそのものがないから。給与支払総額を増加させようもなく、この条件によって多くのフリーランスは事実上申請の対象外になってしまう可能性があります。

実際、事業再構築補助金コールセンターに確認したところ、一度は上記のようにアナウンスされました。ただ、その後「一応、個人事業主でも青色申告決算書の提出があれば、『給与賃金』『専従者賃金』『所得金額』の合計額で給与総額を判断する」ため、「申請を出すこと自体は可能」という返事がありました(給与が0円でも申請可能)。

とはいえ、イレギュラーなケースであることは間違いなく、申請はできても採択される可能性は低いように思われます。

第10回事業再構築補助金 成長枠

▲出典:事業再構築補助金資料

この給与支払総額条件を含め、「従業員の雇用条件」は、以下の申請枠にも適用されます。

  • グリーン成長枠
  • サプライチェーン強靱化枠
  • 最低賃金枠(給与支払総額とは異なるが、従業員雇用は必須)

つまり、上記の枠も利用が事実上難しいといえるでしょう。第10回からフリーランス(ひとり法人も)の事業再構築補助金の利用には、大きな制限が発生したと考えてください。

第10回事業再構築補助金の全体像

▲申請枠の全体像(出典:事業再構築補助金資料)

なお、今回の制度変更により「事業再構築補助金の利用が難しくなってしまった……」という方もいるかもしれません。幸い、事業再構築補助金のほかにも、フリーランスが活用できる支援制度はいくつか用意されているので、詳しくは以下の記事をご覧ください。

【参考:事業再構築補助金の制度転換理由の考察】

今回の第10回制度を見てみると、従来のコンセプトである「コロナの打撃を受けた事業者を補助する制度」の要素は薄まり、「将来有望な中小企業の成長を促進する制度」に変化しつつあるといえるでしょう。アフターコロナを見据えた制度転換の動きといえます。

給与総額の増加要件については、岸田政権が「賃上げ」を重視しており、そのネックとなっているのが余裕のない中小企業というデータもあるため、政治的な要因も大きく影響していると推測できます。

事業再構築補助金の申請枠・補助上限/下限額

成長枠についてはすでに解説しましたが、以下ではその他の申請枠や、補助上限額・下限額に触れていきます。フリーランスの場合、事業規模的に上限額いっぱいまで補助を受けるケースはほぼないかと思われますが、ネックになるのが下限額です。

下限額を下回る補助額になる場合、そもそも支援を受けられないので、ある程度の支出が発生する事業転換を果たす必要があります。この点はよく確認しましょう。

※なお、申請枠のなかでも、前に触れた「現実的にフリーランスでは申請が難しそうなもの(従業員の雇用が必要なもの)」については省略しています。ご了承ください。

産業構造転換枠

【申請条件】

  1. 事業計画について認定経営革新等支援機関の確認を受けること
  2. 付加価値額を向上させること(年率3%)
  3. 現在の主たる事業が過去~今後のいずれか10年間で、市場規模が10%以上縮小する業種・業態に属しており、当該業種・業態から別の業種・業態に転換すること
  4. 地域の基幹となる大企業が撤退することにより、市町村内総生産の10%以上が失われると見込まれる地域で事業を実施しており、その基幹大企業との直接取引額が売上高の10%以上を占めること
    →3、4はいずれかを満たせばOK

【補助上限/下限額】

  • 上限:2000万円(従業員20人以下、廃業を伴う場合には廃業費を最大2000万円上乗せ)
  • 下限:100万円(=最低150万円の支出を伴う必要あり)
  • 補助率:3分の2(中小企業)

【備考】

  • 産業構造転換枠は過去に採択された事業者でも、2度目の申請が可能(減点、追加審査あり)
第10回事業再構築補助金 産業構造転換枠

▲産業構造転換枠の詳細(出典:事業再構築補助金資料)

物価高騰対策・回復再生応援枠

【申請条件】

  1. 事業計画について認定経営革新等支援機関の確認を受けること
  2. 付加価値額を向上させること(年率3%)
  3. 2022年1月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、2019年~2021年の同3か月の合計売上高と比較して10%以上減少していること
  4. 中小企業活性化協議会から支援を受け、再生計画等を策定していること(※売上高減少要件については、付加価値額[売上高×1.5]減少でも代替可能)
    →3、4はいずれかを満たせばOK

【補助上限/下限額】

  • 上限:1000万円(従業員5人以下)
  • 下限:100万円(=最低約133万円以上の支出を伴う必要あり)
  • 補助率:3分の2(中小企業。従業員数5人以下の場合400万円まで4分の3)

【備考】

  • 採択決定前の支出を補助対象にできる「事前着手承認制度」の対象(ただし、採択されるとは限らない)
第10回事業再構築補助金 物価高騰対策・回復再生応援枠

▲出典:事業再構築補助金資料

結論:コロナの打撃を受けた事業者の支援用枠は利用可能

上記の2つを見てみると、従来の「コロナの打撃を受けた事業者を補助する制度」の要素が残っている部分については、引き続きフリーランスでも利用できそうです。特に、「物価高騰対策・回復再生応援枠」はある程度活用しやすいといえるでしょう。

ただし、今回の制度変更を考えると、今後はこうした支援は縮小傾向になっていくと考えられます。利用を考えている方は、早めの申請をおすすめします。

事業再構築補助金の採択率

事業再構築補助金は、結論から言えばおおむね50%前後の採択率となっています。過去の細かいデータを確認すると、以下のようになります。

  • 第8回:約51%
  • 第7回:約51%
  • 第6回:約50%
  • 第5回:約46%
  • 第4回:約45%
  • 第3回:約44%
  • 第2回:約45%
  • 第1回:約55%

一見すると採択率は高く見えますが、逆に言うと事業計画を策定したうえで落選している事業者が半分近くいるうえ、申請の過程で申請を断念した「サイレント落選者」もいると思われます。審査はしっかり行われていると考えていいでしょう。

また、第10回から制度が大きく変わったため、採択率の傾向に変化が出る可能性もあります。

事業再構築補助金の申請に必要な書類

事業再構築補助金は、「補助金」という性格があるため、必要な提出書類も多めです。以下では、各枠の必要書類をまとめてみました。

事業再構築補助金 必要種類

▲出典:事業再構築補助金資料

全枠に共通で「事業計画書」「確認書」といった「自分ひとりでは制作できない書類」もあるため、早めはやめの準備が欠かせません。

事業再構築補助金のスケジュール・審査フロー

第11回の事業再構築補助金については、以下のスケジュールで進行すると公表されています。

  • 公募開始:2023年8月10日(木)
  • 申請受付:2023年9月13日~10月6日(金)18:00
  • 応募締切:2023年10月6日(金)18:00
  • 結果発表:2023年年12月下旬~1月上旬ごろ(予定)

事業再構築補助金は「採択されて終わり」ではなく、その後も継続的な事業報告などが必要になります。第11回の結果発表後の動きはまだわかりませんが、こちらも参考のために第6回の採択後スケジュールを掲載します。

事業再構築補助金 採択後のスケジュール

▲出典:事業再構築補助金公式HP

審査・加点(減点)項目

事業再構築補助金は、審査項目と加点(減点)項目がそれぞれ公表されています。こちらも枠ごとに違いがあるものの、大きく以下のようになります。

【おもな審査項目】

  1. 補助対象事業としての適格性
    →「補助対象事業の要件を満たすか」「付加価値額を達成する取組みか」
  2. 事業化点
    →「市場ニーズなどに応えているか」「自社の優位性を確立し、差別化できているか」「中・長期的な課題を検証できているか」「人材、財務状況などが事業遂行に適切か」
  3. 再構築点
    →「事業再構築の必要性が適切に分析され、認識されているか」「大胆な事業の再転換が行われているか」「費用対効果が高く、効果的な取り組みか」「イノベーションに貢献できるか」「コロナ禍など、危機に強い事業になっているか」
  4. 政策点
    →「日本経済の構造転換に貢献できるか」「日本の経済成長を牽引し得るか」「コロナ禍を乗り越えてV字回復を達成するために有効な投資内容か」「ニッチ分野で差別化を果たし、グローバル市場でも通用するか」「地域の特性を生かし、地域の経済成長に貢献できるか」「複数事業者の連携などによる生産性向上が期待できるか」

【おもな加点項目(フリーランスでも活用可能なもの)】

  1. 大きく売上が減少しており業況が厳しい事業者に対する加点
  2. 経済産業省が行う EBPM の取組への協力に対する加点
    →EBPM:証拠に基づく政策立案。政策の企画をその場限りのエピソードに頼るのではなく、政策目的を明確化したうえで合理的根拠(エビデンス)に基づくものとする取り組み
  3. 事業再生を行う者に対する加点
    →中小企業活性化協議会などの機関から支援を受けている

【おもな減点項目】

  1. 過去に採択されている事業者(グリーン成長枠、産業構造転換枠)
  2. 事業による利益が第三者のものになる事業に取り組む場合

事業再構築補助金の申請方法

事業再構築補助金は、採択に際して審査があるため申請方法も少し複雑です。以下では、具体的な申請方法を解説します。

ステップ1. 事業計画を策定する

まず、事業再構築補助金の申請に必要な「事業計画」を策定しましょう。こちらは先ほども触れたように「認定経営革新等支援機関」の協力・確認のもとで制作する必要があります。

事業再構築補助金 事業計画の策定

▲出典:事業再構築補助金資料

認定経営革新等支援機関は、こちらのリンクから検索できます。商工会などに加盟している人や、融資を受けている人は商工会や金融機関の無料相談を活用できますが、そうでない人は認定を受けているお近くの税理士や弁護士、中小企業診断士などに相談することになるでしょう。

そうなると、基本的には相談費用がかかります。料金体系は機関によってさまざまですが、おおむね着手金として10万円前後、成功報酬として補助額の10%程度がかかるケースが多いようです。

ただ、月次支援金などのように「形式的な確認」をしてもらうわけではなく、審査を通過するための書類をともに制作するパートナーを探すことになります。機関の実力は採択結果にも関係しやすいと思われますので、普段の経営や事業の事情をよく理解してくれている顧問税理士などに依頼できるのがベストです。

なお、事業計画の策定には時間がかかるほか、機関側のスケジュールにも左右される部分が大きいので、余裕をもって早めに準備するようにしましょう。

ステップ2. GビズIDを取得する

事業再構築補助金は電子申請の必要があるため、申請に必要な行政サービス用ID『gBizIDプライム』を取得しなければなりません。

GビズIDにはgBizIDプライム、gBizIDメンバー、gBizIDエントリーという3種類のアカウントがありますが、用途によって必要なIDが違うため、間違えないようにしましょう。取得の流れは以下の通りです。

  1. アカウント申請に必要なものを準備する(スマートフォン、印鑑証明書(法人)/印鑑登録証明書(個人事業主)、登録印)
  2. パソコンでgBizIDプライム申請書を作成する
  3. 申請書を印刷し・押印する
  4. 申請書と印鑑(登録証明書)を郵送する
  5. 1週間程度で審査完了メール受け取り

こちらは取得に際して書類審査があり、上にも書かれているように発行までに1週間程度の時間がかかります。早めの準備を心がけたいところです。

ステップ3. 必要書類を準備する

先ほど説明したように、それなりに多くの書類を準備する必要があります。情報公開から申請開始までに時間があることを踏まえ、申請開始までに書類をそろえておけるとベストです。

ステップ4. 申請項目を入力する

申請が開始されたら、申請画面に項目を入力していきます。おもに入力する内容は、以下の7つです(詳細は枠によって異なります)。

  1. 申請者の概要
  2. その他の事業実施場所(存在しない場合は入力不要)
  3. 応募申請者の概要(個人事業主は入力不要)
  4. 事業概要
  5. 補助事業等の実績(これまでに補助事業を実施していない場合は入力不要)
  6. 経費明細表、資金調達内訳
  7. 審査における加点

基本的には、画面の指示と公式の「電子申請マニュアル」に従って入力を進めていけばOKです。スクリーンショット付きで丁寧に解説されているので、ある程度スムーズに進められるでしょう。

事業再構築補助金 申請マニュアル

▲電子申請マニュアルの記載例(出典:事業再構築補助金電子申請マニュアル)

ステップ5. 書類を添付し、申請する

情報入力の完了後は、必要書類を添付して送付します。必要な書類が多いほか、ファイルサイズにも100MBの制限があるので注意してアップロードを進めましょう。

ファイルをすべてアップロードできれば、最後にチェックリストと宣誓事項を確認し、情報を送付して手続きは終了です。

まとめ

事業再構築補助金について詳しく見てきました。第10回から制度としての立ち位置が変わりはじめ、フリーランスにとっての使い勝手は少し悪化したといえるでしょう。

しかし、今でも事業の落ち込みを挽回するための大胆な事業転換には有効で、賃上げ要件がない枠もあります。準備は大変ですが、採択されれば大きな補助を受けられます。事業転換の際は、活用を検討してみてもいいかもしれません。

【各種資料・リンク】

(執筆:齊藤颯人 編集:少年B)

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