FREENANCE Ad

フリーランスに産休・育休はある? 個人事業主向けの育児支援制度も解説【FP監修】

FREENANCE Ad

育児のためには必須といえる「産休・育休」。これらはフリーランスでも取得することができるのでしょうか。

結論から言えば、制度として産休・育休を取得することはできませんが、工夫次第で実質的な産休・育休を取ることはできます。ただし、休んでいる間の収入減少などには上手に対処しなければなりません。

この記事では、フリーランスや個人事業主が産休・育休を取る方法について解説します。利用できる育児支援制度や保活についてもまとめました。

監修:齊藤颯人
監修:齊藤颯人

FP事務所『トージンFP事務所』代表、ファイナンシャル・プランナー。Workship MAGAZINEのマネー担当として、フリーランスや副業にまつわる記事の執筆・監修を行う。自身もフリーランス経験豊富で、当事者ならではの情報発信に強み。

フリーランスに産休・育休はない

「産休(産前産後休業制度)」と「育休(育児休業制度)」とは、出産や育児のために仕事を休める制度です。制度の概要は以下の通り。

制度 給付金 対象 取得日数
産前産後休業制度 出産手当金
出産育児一時金
健康保険の被保険者である女性(要件あり) 出産予定日6週間前から出産翌日より8週間まで
育児休業制度 出生時育児休業給付金 雇用保険の被保険者で原則男性 最大28日
育児休業給付金 雇用保険の被保険者で女性・男性 子どもが1歳になるまで(例外あり)

出産手当金は社会保険の被保険者、分かりやすく言えば会社員のみ受け取れる手当のため、フリーランスは対象外です。同様に育休中の給付金も雇用保険を財源としているため、雇用関係のないフリーランスは原則受け取ることはできません。

つまり「フリーランスに会社員と同じ産休・育休はない」といえます。

フリーランス女性の約59%は産後2か月以内に仕事を開始している

では、産休・育休がないフリーランスは、どのように育児や体調の回復と向き合っているのでしょうか。結論から言えば、産休・育休がないことは、フリーランスの女性に大きな影響を与えています。

そもそも、出産後6~8週間は「産褥期」と呼ばれ、出産後の体が妊娠前の状態に戻る期間。産後3週間までは休養を優先するように推奨されています。実際、労働基準法においても「産後に仕事復帰できるのは、本人の希望と医師が認めた場合のみで、最短6週間後(約2か月後)から」となっています(労働基準法第65条)。

ところが、フリーランス協会のとりまとめた『フリーランスの課題と実態』によると、フリーランス女性が仕事に復帰するタイミングは産後2か月以内が59%産後1か月以内は44.8%と、本来働くことが望ましくない期間に仕事復帰を余儀なくされていることが明らかになっています。

一方、会社員は産後8週間までは産後休業中です。産休後、育休を取得せずに仕事に復帰した人の割合は8.7%(※)でした。約90%の会社員が育休まで取得しており、フリーランスとの差は歴然です。

▲会社員と個人事業主の収支比較(出典:フリーランス協会)

※ 厚生労働省『第一子出産前後の妻の継続就業率・育児休業利用状況

フリーランスが出産・育児時に休みをとるには?

フリーランスに産休・育休はありませんが、工夫次第で休みをとることは可能です。確かに収入や取引先との関係など不安点も多いと思いますが、母体の健康を考えれば最低でも産休相当の休みは取得したいところ。

ただし、そのためには妊娠がわかった時点でさまざまな備えを講じておく必要があります。

ステップ1. 産休・育休期間中の貯蓄をしておく

まずは産休・育休期間中の生活に備えて貯蓄をしておくことが大切です。「動ける時間は働きたい!」と考えている人もいると思いますが、産後の母体の状態や産まれてくる我が子の性格などは千差万別です。

妊娠前まで体力に自信があった人も、産後は家事ができないほど疲れ果ててしまう人もいます。授乳の頻度や夜泣きなども赤ちゃんによって差があるので「自分は大丈夫」と思わず、仕事がまったくできないケースを想定して貯蓄しておくことをおすすめします。

備えあれば憂いなしです。もしすき間時間に働けたとしても、体調を崩したときにその備えがあれば、しっかり身体を休めることができます。

ステップ2. 産休・育休の期間を決める

つぎに出産予定日を中心に休む期間を決めます。フリーランスは基本的に自分で休む期間を決められるので、臨月でも働きたい人は働いてもいいと思います。しかし、お腹が大きくなると胸やけやダルさなど体調も変化するものです。もしものことを考えて、出産予定日ギリギリまで働くような配分にならないように注意してください。

具体的に休む期間をイメージしづらいときは、一般的な産休・育休期間を参考に出産予定日の約2か月前後としてもよいでしょう。しっかり貯蓄できているならもう少し延ばしてもいいと思います。

ステップ3. 取引先に休む期間を伝える

休む期間を決めたら、仕事量を調整するために取引先に妊娠の報告とともに休む期間を伝えます。妊娠の報告は安定期に入ってからがよいでしょう。もし共同経営者や従業員がいるなら、産休・育休中の業務の進め方について話し合っておいてください。

私は昔、個人事業主の産休と育休期間をサポートした経験が2度あります。ただし、その方が出産前にすべての取引先に妊娠の報告をしておらず、休みの期間中に対応がむずかしい仕事の相談がきて、慌てたことがありました。

もちろん限界はあると思いますが、従業員だけで対応が難しい業務があれば、取引先への報告時に期間中の業務内容を調整できるとベストです。

参考:家族の扶養に入れれば税金や保険料が安くなる

もし、配偶者など家族が会社員で会社の社会保険に加入しているなら、妊娠期間中のみ扶養に入る方法もあります。フリーランスは自治体に届け出ることで出産予定日前後の4か月間の保険料が免除されますが、扶養に入れば扶養を抜ける手続きをしない限り、国民年金保険料と国民健康保険料を納める必要はありません。

出産後も仕事量をセーブする場合、月10万8,000円以下(年収130万円以下)の収入なら扶養内のほうが負担も少ないのでおすすめです。産休に入りたいタイミングで収入の要件を満たしているなら、扶養に入る手続きをしたほうが良いでしょう。

扶養に入る要件は加入する健康保険の種類で異なります。健保組合の場合、会社によって自営業者の扶養認定の要件が異なるので、事前に確認をしてください。

フリーランスも対象の出産・育児支援制度

フリーランスは会社員と違って、出産・育児で受けられる支援は多くありません。しかし、一部には公共の出産、育児支援制度もあります。

ここではフリーランスも対象の出産・育児支援制度についてまとめています。手続きをしなければ受け取れないものもあるため、しっかりと覚えておきましょう。

制度1. 妊婦健康診査の費用助成

各自治体が実施するこの制度では、通常は自費診療となる約14回の妊婦健診費用の窓口負担が軽減されます。

妊娠がわかったら、お住まいの自治体の窓口に妊娠届を出して受診券を受け取ります。母子手帳を受け取るときに申請を促している自治体が多いです。

ただし、妊婦健康診査の回数は自治体によって異なります。また、助成の対象外となる検査を受けたときは差額の支払いが必要なケースもあるようです。自治体ごとに仕組みはさまざまなので、不明点はお住まいの自治体に問い合わせることをおすすめします。

制度2. 出産育児一時金

出産育児一時金は、出産後に出生届とあわせて届け出ることで、医療機関に直接支払われる一時金制度です。病院の窓口では出産育児一時金を差し引いた金額を支払えばよいため、経済的な負担が少なくて済むのが特長です。

支給額は2023年4月に一律42万円から50万円に引き上げられましたが、出産費用そのものには地域差があります。厚生労働省の調査によると、出産費用の全国平均額は約45万円に対して東京都は約55万円、沖縄県は約35万円と差があることがわかります。お住まいの地域によっては、自己負担が発生する場合もあるため、費用を備えておくことが大切です。

なお、検査費用や出産までかかった通院費用が、出産育児一時金を差し引いて10万円以上あれば医療費控除の対象です。確定申告のときまで明細は大事にとっておきましょう。

制度3. 出産手当金

出産手当金は産休時に受け取ることができる給付金です。通常、国民健康保険のみに加入しているフリーランスは受け取れない手当金ですが、フリーランスでも同業種で作る国保組合(国民健康保険組合)に加入している場合、組合員を対象とした出産・育児支援があるケースも。

たとえば、以下の国保組合では出産手当金の申請が可能です。ご自身が国保組合に加入しているなら、給付金の内容を確認してみてください。

  • 東京美容国保組合
  • 東京土建国保組合
  • 全国土木建築国保組合

制度4. 子どもの医療費助成

自治体が運営する医療費助成制度も利用可能です。医療機関に通院・入院したときに支払う医療保険の一部が対象となります。対象年齢は一般的に0歳~高校卒業前までですが、自治体によって対象年齢は異なります。

基本的に出生届を出すときに説明を受けるため、覚えておいてください。就学前までを対象とする自治体が多く、なかには所得制限を設けているところもあります。出生届を出す前に知っておきたい方は、事前に確認することをおすすめします。

制度5. 児童手当

児童手当は中学校卒業までの児童を養育している人に支給される手当です。

児童の年齢 児童手当の額(1人/月額)
3歳未満 一律15,000円
3歳以上小学校修了前 10,000円(第3子以降は15,000円)
中学生 一律10,000円

(引用:内閣府 児童手当制度のご案内

児童手当は所得制限があり、扶養人数に対して世帯主の所得が一定額を超えた場合、特例給付5,000円のみ支給されます。2022年10月支給分からは一定以上の所得がある人は特例給付も支給が停止されることになりました。

所得の基準額の計算式は以下のとおりです。

収入 - 所得控除額 - 一律8万円(社会保険料および生命保険料控除相当額)

個人事業主の収入は、年間の売上高から必要経費(青色申告特別控除も含む)を差し引いた金額です。所得控除には医療費控除や小規模企業共済掛金控除などがあります。さらに一律8万円を差し引いた金額を基準に支給が判断されます。

所得制限にかかりそうな場合、所得控除枠を大きくできないか検討する方法もあります。

制度6. 産前産後4か月間の国民健康保険料の免除

国民年金は、従来から産前産後の4か月間は免除されていましたが、2024年1月からは国民健康保険料も免除に向けた対応が進められています。

国民健康保険には扶養の概念がないため、保険料の負担が大きかった世帯もあると思いますが、免除により産休の取得を検討できる人もいるのではないでしょうか。

フリーランスが安心して子育てをしながら働けるように、子育て支援の拡充を期待します。

フリーランスの産前からできる認可保育園入園手続き

フリーランスが育児と仕事を両立するには、子どもを安心して預けられる場所を確保しておくことも必要です。産前からできる認可保育園の入園手続きについて解説します。

ステップ1. 子ども・子育て支援新制度の認定を受ける

認可保育園を利用する場合、お住まいの自治体から「子ども・子育て支援新制度」の認定を受けなければなりません。認定区分は1号~3号まであり、それぞれ利用できる施設が異なります。

認定区分 対象年齢 利用可能な施設
1号認定 満3歳児以上 幼稚園・認定こども園
2号認定 保育所・認定こども園
3号認定 0歳~満3歳児未満 保育所・認定こども園・地域型保育

出産後、認可保育園へ入園を希望するなら、3号認定を受ける必要があります。入園申請は自治体の窓口です。

参考:内閣府 よくわかる「子ども・子育て支援新制度」

ステップ2. 保育の必要性をアピールする

認定区分は保護者の保育の必要性によって異なります。とくに認可保育園は両親ともに働いている家庭の子どもを前提としているものの、在宅で働くフリーランスは保育の必要性が低いとみなされ、審査にとおりにくいといわれています。

保育園の入園審査に通るためのポイントは、以下の記事も参考になさってください。

ステップ3. 入園申請に必要な書類を用意する

認可保育園の入園申請は自治体の窓口で手続きを行います。おもに以下のような書類の提出が必要です。

  • 就労証明書
  • 開業届の控え
  • 確定申告書の控えなど

フリーランスは雇用主がいないため、自身で就労を証明するための書類を用意しなくてはいけません。以下の記事ではフリーランス・個人事業主の保育園入園に必要な書類について、くわしく解説しています。

フリーランスの育児期間の給付支援が検討されている

フリーランス・個人事業主を対象とした子育て支援の拡充に向けて、さまざまな対応が検討されています。その理由と検討されている支援について解説します。

働き方の選択肢を広げるため

国は「こども未来戦略方針」でフリーランスと個人事業主の育児期間中の経済的な給付支援を検討すると発表しています。近年、ライフスタイルの多様化にともない、働き方も多様化しつつあるものの、フリーランスや個人事業主は会社員のように、社会保障制度が充実していません。

育児期間中の給付支援を導入することで、フリーランスや個人事業主の経済的な不安の解消につなげることが可能です。働き方による保障の差を埋めることができれば、仕事と育児を両立しやすい働き方の選択肢の拡充にもつなげられることが期待されています。

この支援措置は、2026年度までの実施を目指して検討が進んでいます。

少子化対策のため

少子高齢化による生産年齢人口の減少は大きな社会問題のひとつです。国は少子化対策として2024年度中を目標に児童手当の拡充が予定されています。検討されている内容は以下のとおりです。

  • 所得制限の撤廃
  • 高校生まで延長
  • 第3子以降3万円

児童手当の拡充は「こども未来戦略方針」の「加速化プラン」に掲げられているものです。

国の検討や対応が進められている施策以外に、各自治体でも独自の保育支援事業を展開しています。たとえば江戸川区の『保育ママ』制度のもとでは、保育園に入園できなかった場合も、子どもを安心して預けることが可能です。ほかにも福島県天栄村矢祭町では子どもが生まれた世帯へ出産祝い金が支給されます。

お住まいの自治体に利用できる子育て支援がないか調べてみてください。

まとめ

フリーランスは産休・育休がないため、妊娠・出産などライフステージの変化に不安を感じている人は少なくありません。育児期間中の給付支援が検討されていますが、制度が目まぐるしく変わるなかでフリーランスとして働き続けるには、自身で利用できる支援制度や補助金などを知ることが大切です。

産休・育休から復帰しても安定した案件を獲得したいなら、フリーランス向けのマッチングサービス『Workship』がおすすめです。

フリーランス専門の求人マッチングプラットフォームWorkship

エンジニアやデザイナー、編集・ライター、ディレクター、マーケターなど多岐にわたる職種の案件が掲載されています。

80%以上がリモートワークに対応しているため、仕事と育児を両立しやすいのが特徴です。トラブル相談窓口も設けているため、安心して働くための仕組みが整っています。

(執筆:吉永ゆくら 編集:少年B 監修:齊藤颯人)

SHARE

  • 広告主募集
  • ライター・編集者募集
  • WorkshipSPACE
週2日20万円以上のお仕事多数
Workship