フリーランスの保険|自分に合った賢い選択をするために必要な知識

会社員を辞めてフリーランスになると、働き方や制度など、さまざまな面で変化があります。

例えば、当たり前のように使っていたオフィスの手配や、仕事を取ってくることなど、文字通りあらゆることを自らの手で行わなければなりません。

経理や総務に関する業務もその一つです。

フリーランスになった後の悩みの一つとして「煩雑な保険や税金などの手続きや支払いをどのようにして良いのか分からない」という声を身の回りでもよく耳にします。

そこで、この記事ではフリーランスが加入しなければいけない保険の種類、加入の仕方や納付方法を紹介します。フリーランスとして安心して働くために知ってほしい情報をまとめましたので、ぜひ独立前の参考にしてみてください。

ちなみに、保険というと医療費の補助などをしてくれる「健康保険」のことを指す場合が一般的かと思います。しかし、日本の保険制度としてはそのほかにも「公的年金」や「介護保険」も保険に含まれます。

これらの保険は、会社員であれば加入も納付も自動的に行われるため、無意識になりがちですが、生活していく上で非常に重要な制度です。また、国民全員の加入が義務付けられているものでもあります。

ここからは、こうした保険制度のうち健康保険と公的年金について解説をしていきます(介護保険は年齢により加入義務がない人もいるため、本稿での説明は割愛します)。

健康保険:基本的には国民健康保険に移行する、退職後2年間は社会保険の継続も可

医療機器 聴診器 診察 

健康保険には、「社会保険」「国民健康保険」の2つがあります。

会社勤めからフリーランスに転向する人の場合、元は会社で加入していた社会保険から国民健康保険(国保)に切り替える、もしくは最大2年間まで社会保険を任意継続するかを選択できます。

収入にもよりますが、2つの間で給付内容に大きな差はないことが多いため、まずは保険料のシミュレーションをしてみることがおすすめです。このとき、保険料に違いが出る要因は扶養の有無です。

社会保険では、被扶養者の人数にかかわらず保険料は変わりません。

しかし、国民健保に切り替えると扶養という考え方がなくなり、加入者の数だけ保険料を払う必要があります。

そのため、家族構成によっては数万円ほど保険料に差が出るケースもあります。また、都道府県や収入によっても支払額が変動します。

保険の切り替え前後で保険料の比較をする際は、まず自身の給与明細で現状の納付額を確認しましょう。

この金額と、各自治体ごとに定められた国民健保の想定納付額を調べ、照らし合わせてみてください(「〇〇区 国民健康保険」などのキーワードで検索してみてください)。

最寄りの年金機構に問い合わせると、どちらがいいかのシミュレーションをして貰えることも多いです。

また、自治体によっては、例えば以下のような国民健保の保険料をシミュレーションできるページを用意している場合もあります(市区町村ごとに異なるので、あくまで概算として利用してください)。

江戸川区 国民健康保険料シミュレーション

それぞれの保険料を算出することで、どちらの保険に加入すれば保険料を抑えられるか知ることができます。この結果をもとに保険を切り替えるか継続するかを決めましょう。

国民健保の切り替え:退職日から14日以内に市町村役場で行う

国民健保に切り替える場合、手続きは全て市町村役場で行います。

切り替え手続きは社会保険の資格がなくなる日、つまり退職の翌日から14日以内に行う必要があります

手続きには以下のものを持参してください。

  • 身分証明書
  • 印鑑
  • 退職日が確認できる書類(社会保険の資格喪失証明書など、市町村によっては不要)

なお、手続きが遅れたり忘れてしまった場合でも、社会保険が失効した時点で強制的に国民健康保険に切り替わります。

しかし、手続きを済ませないうちに病院にかかった場合、治療費は全て自己負担となってしまいます。

つまり、保険に加入しているにも関わらず保険の適用が受けられないという状況になってしまうので、適用できない状況を無くすように気づいた段階で早めに手続きをしましょう。

社会保険の任意継続:退職日から20日以内に年金事務所で行う

社会保険を任意継続できるのは在職中に2カ月以上社会保険に加入しており、退職日から20日以内に手続きを済ませた場合のみです。

1日でも期日を遅れると、いかなる理由があっても任意継続ができないので注意が必要です。

社会保険は企業によって加盟している組合が異なるので、例として政府が管轄している「協会けんぽ」を任意継続する場合をみていきます。

手続きは居住地を管轄する支部で行います。その際、記入した「任意継続被保険者資格取得申出書」を持っていきましょう(※リンク先は協会けんぽの書式)。

家族を被扶養者として手続きする場合は、上記の任意継続被保険者資格取得申出書に加えて「任意継続被保険者被扶養者(異動)届」も記入します(※同上)。

場合によっては、扶養していることを証明できる書類の準備を求められる場合もあるので事前に協会けんぽ支部まで確認を取っておくと安心です。

健康保険は「国民健康保険組合」に加入したほうが保険料が下がる場合も

テーブル 絵の具 クレヨン 色鉛筆 チョーク

国民健康保険に加入すると多くの方が「保険料が高い…」と実感するでしょう。

フリーランスになって加入すべき保険の種類が変わることで、勤務先が負担する保険料分(労使折半の事業者負担分)がなくなり、個人としての保険料の負担額が増加するからです。

さらに、国民健康保険は報酬によって保険料が変動するため、事業が軌道に乗って収入が増えれば保険料も比例して増えていきます。

そこで知っておきたいのが国民健康保険組合(国保組合)です。

国保組合とは、近しい業界に従事しているフリーランスを組合員とした国民健康保険の組合です。

組合は業界・業種ごとに存在していますが、例えばWebデザインやイラスト制作、ライターとして活動している人であれば文芸美術国民健康保険組合(文美国保)が広く知られています。

なお、組合に入るためには、まずその組合に加盟している業界団体に入会する必要があります。ライターの場合は日本デジタルライターズ協会など、Webデザイナーの場合は日本イラストレーション協会などが文美国保に加盟している業界団体です。

文美国保の場合は、こちらの加盟団体一覧表から自身の業種に合う団体を探してみましょう。団体によっては入会するために組合員からの推薦を必要とする場合もあります。

また、エンジニアやプログラマーを本業にしている方については、加入できる国保組合が現状はありませんが、市役所など行政に確認をすると良いでしょう。

国民健保と文美国保はどのくらい保険料に違いが生じるのか?

文美国保 トップページ イラスト

『出典:文芸美術国民健康保険組合

今回は文芸国保を例に挙げて国民健保の保険料との違いを見ていきます。

結論を先に述べると、目安として賦課標準額(前年の世帯収入から、必要経費と控除を引いた金額)が300万円を超え、家族構成が独身もしくは配偶者との2人である場合は文美国保の方が安く済みます。

一方で、家族が3人以上もしくは年収が1000万円を超える場合は国民健保の方が安く済むため、保険料の比較をしてから決めましょう。

文美国保のWebサイトでは、国民健保と文美国保での保険料の比較を行うことができるので、大まかに保険料がどれくらい変わるのか知りたい方は活用してみてください。

保険料 計算 比較

『出典:文芸美術国民健康保険組合

ちなみに、業界団体に加盟するには入会費や年会費を払うケースが大半です。保険料を定額に抑える目的のみで申し込むには少々面倒に感じたり、あまりお得にならないケースもあるので注意が必要です。

保険料の納付方法

保険料の納付方法は保険の種類によって異なります。

国民健保の場合:口座振替か納付書の2通り、自治体によってはクレジットカード払いも可

⑴口座振替

各市町村役場に用意されている「口座振替依頼書」や「自動振込利用申込書」などに必要事項を記入し、ポストに投函します。

すると、登録した口座から毎月末日に保険料が引き落とされます。口座は1世帯に1つだけつくることができるため、他の家族も加入している場合、その分もまとめて引き落とされます。口座振替の場合、一括納付は出来ません。

⑵納付書

市区町村から送られてきた納付書を使い、市区町村役場、銀行、郵便局、コンビニエンスストアなどの窓口で支払うことができます。

納付書の場合、1年分の保険料を一括で支払うことができますが、前納することによる大きなメリットも特にないので一括払いにこだわる必要はありません。

⑶Yahoo!公金

限られた自治体のみですが、Yahoo!公金を利用することで、保険料をクレジットカートで支払うことも可能です。

納付金額が1万円を超えると決済手数料が別途かかりますが、支払った保険料に応じてクレジットカードのポイントを貯めることができます。また、Tポイントを利用して支払うこともできます。

Yahoo!公金で保険料を納付できる自治体は下記のページで確認できます。

Yahoo!公金支払い|国民健康保険

社会保険を継続する場合:口座振替か納付書の2通り

社会保険を継続する場合は期限厳守がマストです。

1日でも納付が遅れると任意継続被保険者の資格を喪失するため、余裕を持って納付するようにしましょう。

⑴口座振替

「保険料預金口座振替依頼書・自動払込利用申込書」を協会けんぽ支部へ提出することで、毎月の保険料を口座から自動引き落としで納付することができます。

ただし、口座振替の申し込みをしてから実際に引き落としが始まるまで2〜3カ月かかるため、それまでの間は(2)の納付書での納付となります。口座振替では前納はできません。

⑵納付書

保険料を毎月分割して納付する場合、月初めに送付される納付書を使い、その月の10日までに金融機関、もしくはコンビニエンスストアなどから納付します。

ちなみに4月〜9月分もしくは10月〜翌年3月分までの6カ月分の前納、4月〜翌年3月分の1年分の前納も納付書を使って行うことができます。

年金:国民年金(基礎年金)のみ、個人型拠出型年金も合わせると安心

年金には「厚生年金」「国民年金」(基礎年金)の2つがあります。

フリーランスの場合は強制的に国民年金へ加入することになるので、フリーランスへ転身するときには会社員が加入する厚生年金からの切り替え手続きが必要です。

年金の切り替えは退職から14日以内、居住地の市町村役場・国民年金窓口へ

厚生年金から国民年金へ切り替えは自分で行う必要があります。手続きをする際に必要なものは以下の4つです。

  • 年金手帳
  • 印鑑
  • 退職日が証明できるもの(離職票、退職証明書など)
  • 身分証明書(免許証、パスポートなど)

配偶者が扶養の場合は、配偶者の年金手続きも必要になりますので覚えておくようにしましょう。国民年金では扶養の概念がないため、配偶者も個別で国民年金に加入し、保険料を二人分支払う必要があります。

また、手続きが遅延したり切り替えを忘れてしまうと、退職日から遡った国民年金の納付書が送付され、一度に多大な出費に繋がる恐れがあるのでなるべく早いうちに済ませましょう(一括払いが難しい場合は相談しましょう)。

年金の納付方法は口座振替、クレジット、現金のいずれか。前納すると割引が適用される

国民年金の納付方法は3つです。

フリーランスになったばかりであれば毎月分割して納付するのが安心ですが、国民年金の場合、前納による割引が設定されているため、余裕がある場合は利用するのも良いでしょう。

⑴口座振替

近くの年金事務所で手続きを行うことができます。口座振替を希望する場合は事前に口座振替依頼書を記入しておきましょう。

口座振替で前納した場合、最大で年間7820円の割引が適用されます(※2年分の前納をした場合)。

⑵クレジットカード

年金の場合、保険と異なって誰でもクレジットカードを利用して納付することができます。

クレジットカードでの納付を希望する場合、記入を済ませたクレジットカード納付申出書を年金事務所に提出すればOKです。

クレジットカードで前納した場合、最大で年間7200円の割引が適用されます(※同上)。

⑶納付書

送付される納付書を持って、銀行・コンビニ・郵便局などの窓口で現金払いをします。

現金払いの場合もクレジットカード同様、前納することで最大で年間7200円の割引が適用されます(※同上)。

国民年金だけでは足りない老後の資金を補う方法

日本の年金制度は、よく家にたとえて説明されます。

フリーランスが加入する国民年金は「1階」と表現され、日本国民であれば必ず全員が加入しており、いわば家屋の土台になるような部分です。

これに加えて会社員や公務員が加入する厚生年金が「2階」になり、国民年金に上乗せされます。また、企業によっては独自の企業年金制度を設けている場合などもあるので、中には自身の年金が「3階建て」になっている方もいるかもしれません。

ただし、フリーランスには厚生年金の加入資格がないので、この方法では1階しかない状態です。

実際に、フリーランスは老後に受け取れる年金が会社員と比べ、必然的に少なくなります。

厚生労働省によると、2015年の国民年金の平均支給額は1カ月あたり約5万5000円だったのに対して、厚生年金は約14万7000円と、およそ10万円の差がありました(参照:「厚生年金保険・国民年金事業の概況(平成27年度)」)。

この給付金の差を埋めることはもちろん、自分が老後の生活で必要な資金を捻出するために準備をする必要があります。

そのための方法として、もちろん独立後に稼ぎを増やすことで、それを元手に投資や貯蓄などをするプランもあるでしょう。

ここでは、そういったいわば「攻め」の方法とは別に「守り」の方法を2つ紹介します。それが国民年金基金と個人型確定拠出年金です。

国民年金基金

フリーランスになると厚生年金には加入できませんが、2階部分になる制度として「国民年金基金」があります。

国民年金基金は、国民年金の加入者であれば任意で加入できる制度です。

全部で7種類の給付パターン(型)があり、それぞれ給付額や期間が異なります。この7つの型を組み合わせて最大で6万8000円まで掛け金を設定することができます。

※給付型の詳細

http://www.npfa.or.jp/system/type_benefit.html

※掛け金のシミュレーション

http://www.npfa.or.jp/check/simulator.html

国民年金基金に加入するメリットは、フリーランスの年金の2階を補ってくれることのほかにも、掛け金の全額が所得控除になるため、節税にもなります。

また、加入後も掛け金を調整することが可能なため、その時どきの状況に合わせた積立をすることが可能です。

加入の際は地域別の基金、もしくは職能(業種)別の基金の中から1つを選ぶことになります。それぞれ窓口が異なるため、どの基金に加入するかを確認してみてください。

なお、どの基金に加入した場合も保証内容は同じです。

※加入手続きの詳細

http://www.npfa.or.jp/procedure/flow.html

個人型確定拠出型年金(iDeCo)

ここまで紹介してきた年金は、全て「公的年金」と呼ばれており、国が国民に保証している制度であり、義務でもあります。

一方で、個人型確定拠出年金(iDeCo)は「私的年金」と呼ばれ、加入するかどうかが任意なのはもちろん、積み立て方などに選択の幅があります。

iDeCoでは、ほかの私的年金との組み合わせなどに応じて、毎月5000円〜6万8000円の定額の掛金で投資信託商品を運用するものです。運用で得られた利益が給付金として将来的に返ってくる仕組みです。

iDeCoを利用するメリットは、大きく以下の3つです。

  • 掛金全額が所得控除の対象
  • 通常の投資信託などと違い、運用で得た利益が非課税
  • 年金として受け取るとき、国民年金と合算して公的年金等控除の対象

また、iDeCo向けの運用商品であれば、購入時の手数料はかからず、運用管理費用の年率も通常の投資商品よりもかなり低めに設定されているため、運用コストをかなり低く抑えながら資産形成に取り組めます。

運用を始める場合、任意の金融機関で口座を開設する必要があります。手数料や扱う商品数など、いくつか自分なりの観点で選ぶとよいでしょう。

なお、iDeCoには注意点もあります。

通常の金融商品よりも金銭的な優遇がされている一方、あくまで年金という位置づけなので、60歳になるまでは引き出すことができません。

また、投資商品なので、運用の結果次第では元本以上の給付金を受けられる可能性がありますが、元本割れするリスクもあることを覚えておきましょう。

健康保険や年金に加え、さらに手厚い保障を得たい場合はフリーランス協会を

BENEFITS 手書き 福利厚生

ここまでに紹介した健康保険や年金に加えて、さらに手厚い保障や福利厚生を受けたい場合には、2017年1月に設立された「フリーランス協会」への加盟もおすすめです。

年会費1万円が発生しますが、案件をこなす中で賠償責任がおきた場合の保険や、最長1年の所得補償制度が割安で利用可能で、さらに保険を手厚くすることができます。

そのほかにも会計サービス、法務税務相談のサービス優待や、福利厚生サービスの利用、コワーキングスペースの割引などが受けられます。

詳しい保障内容はフリーランス協会|ベネフィットプランから確認できます。

フリーランス協会 ベネフィットプラン 表 福利厚生 保険

『出典:フリーランス協会

また、政府が組成を検討している「所得補償保険」、いわゆるフリーランスの失業保険が実現した場合は、フリーランス協会に加入していることが条件になるとのことです。

近年、政府はフリーランスの働き方改革を進めており、フリーランス協会はその動きに呼応した形で発足しています。

今後の動向に注目し、必要に応じて入会を検討してみてはいかがでしょうか。

まとめ

健康保険や年金の加入は、義務でもあり、自身の生活をサポートしてくれる制度でもあります。

会社員の場合は加入している意識が薄れがちではありますが、独立を期にこれらの制度についてあらためて見直してみることをおすすめします。

また、年金については義務付けられているものに加入しただけでは安心できない面もあります。

この記事で紹介した国保組合やiDeCoの他にも、もし利用できる共済などがあれば検討してみることもよいでしょう。年金や共済は節税にもなるので、その点でも加入するメリットがあります。

ここまでの解説も参考にしていただきながら、保険についての理解を含め、自分に合った賢い選択ができるようにしましょう。

※本コンテンツは、分かりやすく理解していただくために、一部説明を簡潔に記載しております。

監修者:ファイナンシャルプランナー 工藤 崇

SHARE

RELATED

  • お問い合わせ
  • お問い合わせ
  • お問い合わせ