個人事業主の子は保育園に入りにくい?経験者が必要書類や審査のポイントを解説

フリーランス 保育園

「個人事業主だと保育園に入りにくい」と聞いたことはありませんか?

結論から言えば、個人事業主やフリーランスの子どもでも保育園に預けることはできます。ただ、保育園の入園審査は基本的に点数制のため、点数が高いほど入りやすいというのが特徴です。その点数を決めるためには、就労証明書や確定申告書の控えなどを提出しなければなりません。

しかし、個人事業主では就労証明書をどう書けばいいのか悩みますよね。また仕事のために預けるわけですから、利用料金を経費にできるかも……? と考える人もいるでしょう。

そこで今回は、個人事業主・フリーランス向けに保育園入園の必要書類や継続利用のポイントについてまとめました。

個人事業主やフリーランスでも保育園に子どもを預けられる

個人事業主やフリーランスだと自宅で仕事をしている人も少なくありません。そのため、一般的にいわれる入園基準となる「保育に欠ける環境」ではないように感じます。

しかし、個人事業主やフリーランスでも子どもを保育園に預けることは可能です。子どもの預け先となる保育施設には、以下のような種類がありそれぞれ特徴が異なります。

保育施設 種類
認可保育施設 認可保育園 公立保育園
私立保育園
公設民営保育園
幼保連携型認定こども園 幼保連携型
幼稚園型
保育園型
地方裁量型
地域型保育事業 家庭的保育
小規模保育
事業所内保育
居宅訪問型保育
認可外保育施設 無認可保育所
託児所
ベビーシッター(無認可)
ベビーホテル
企業内保育施設

認可保育園は、国や自治体の補助金を受けて運営されており、保育料が安いことから人気が高いのが特徴です。認定子ども園は、保育園と幼稚園の機能を備えた保育施設です。保護者の就労を問わず子どもを預けられるため、人気が高まりつつあります。認可保育施設は基本的に保育料が安いため、人気が高いのが特徴です。

一方、認可外保育施設は入園に審査はなく、入りやすいメリットがあります。ただし、国や自治体からの補助金を受けていないため、保育料は高めです。

認可保育園の入園審査は基本「点数制」

認可保育園に入るためには、入園審査の選考に使われる各指数を理解しておかなければなりません。かんたんにいうと、家庭の保育状況をポイント化した「点数制」です。

これは、おもに家庭の保育状況や保護者の就労状況を点数化し、保育の必要性を数値化したもの。基本指数から保育指数を求め、調整指数をあわせて入園を判断する指数とします。

基本指数 父と母の就労時間や状況に応じて定められた点数を合計したもの
調整指数 世帯や保護者個人、児童の状況に条件を定められた点数を合計したもの
優先順位 保護者の就労や育児休業中、休職中など状況別に定めた優先順位

これらの指数は自治体ごとに異なります。まずはお住まいの自治体の基準を確認してみましょう。

なお、認可保育園は保護者の就労状況が重視されますが、保護者の収入を選考に利用することはありません。そのため扶養内で働いている人や産休・育休中で収入がなくても入園の申請は可能です。

なかには、自治体によっては課税所得額の高い世帯を優先するケースもあります。ただし、必ずしも保護者の所得が選考に用いられるわけではありません。

個人事業主が保育園の入園申請に必要な5つの書類

個人事業主は事業を運営していることを示すために、さまざまな書類の提示が求められます。自治体で異なりますが、おもな必要書類を5つご紹介します。

書類1. 就労証明書

国分寺市の就労証明書

▲出典:国分寺市

就労証明書はパートや正社員で勤めている場合、雇用主となる企業側が作成する書類です。勤務先や勤務時間などを記載します。ただし、個人事業主・フリーランスは基本的に自身で作成しなければなりません。自営業者向けに「就労状況申告書」が用意されている自治体もあります。

書類2. 開業届の控え

個人事業主として事業を営んでいることを示すために、開業届の控えの提示を求められることがあります。事業の実態を把握するために提示を求められる書類には、ほかに営業許可証や登記事項証明書、業務委託契約書などがあります。

書類3. 所得税申告関係書類の控え

個人事業主として収入を得ていることを証明するために、税務署の収受日付印が押された確定申告書や青色決算申告書(収支内訳書)などの控えの提出を求められることもあります。

電子申告で控えがない場合、マイナンバーカードがあればe-Taxより電子申告をした「電子申告等証明書」の交付申請が可能です。申請は無料で届くまでに日数がかかるため、電子申告をしたい人はゆとりをもって申請することをおすすめします。

書類4. 仕事内容や取引を証明する書類

開業届を出していないフリーランスで、確定申告するほど所得がない場合は、取引を証明できる書類として請求書や売掛金の入金が確認できる通帳のコピーを提示します。

1つの書類では証明にならないため、必ず複数の書類を用意しておきましょう。事業として認められやすいのは、業務委託契約書や請負契約書です。判断が難しいときは、自治体に問い合わせてみてください。

書類5. 職場が違うときに添付する書類

個人事業主の中には自宅以外の場所で仕事をしている人も少なくありません。賃貸物件を借りているなら物件の賃貸契約書など自宅外で働いていることを示す書類を提示します。

企業に常駐して働いている個人事業主は、企業と交わしている業務委託契約書の控えを提出してください。

補足:嘆願書の提出は必要?

正式な入園申請書類ではありませんが、保育が必要な現状を園側に訴える「嘆願書」を制作したほうがいい、という声もあります。

しかし、そもそも本当に困っている家庭なら、点数にも窮状が現れるはずです。嘆願書を出したことで、入園審査が急に有利になることは考えにくいでしょう。

ただし、自治体によっては同居家族がいると減点対象となるケースもあります。もし同居家族が病弱であったり、高齢であったりと保育を代われない場合、嘆願書を出すことで検討してもらえる可能性もあります。

なので、確実に有利に働くわけではありませんが、補足として提出を考えてみてもよいでしょう。

個人事業主が認可保育園に入りにくい理由

認可保育園は基本的に保護者が働いていることが条件です。働いていることを証明できなければ入園申請がむずかしくなります。個人事業主が保育園に入りにくいとされる理由について解説します。

理由1. 保育に欠けていると認められにくい

個人事業主は自宅保育ができるとみなされて、点数を低めに設定している自治体があります。どのような働き方なのか実態がつかみにくいことも理由かもしれません。

保育の必要性を訴えるには就労を証明する必要があります。業務委託契約書などでふだんの業務量を提示できる書類を用意しておきましょう。

理由2. 夫婦で個人事業主だと減点になることも

新宿区の「令和5年度版認可保育園等申込みの手引き」によると、専従者は労働の実態が見えにくいことから、そもそもの基本指数が中心者よりも低めです。

認可保育園の入園審査では、経営の中心者であるかどうかで点数に大きく影響を与えます。夫婦で事業を営んでいる場合、片方が専従者として働くスタイルも珍しくありません。お手伝い程度だと判断されると、自宅保育ができるだろうと減点の対象になる可能性も。

もし、職種が異なるなら夫婦それぞれで開業届を出して、経営の中心者となれば点数アップも望めます。

理由3. 育休がない

個人事業主が保育園入園に不利な理由は、育児休業明けの加点です。会社員はスムーズに復職できるように「育児休業加点」をもらえる自治体があります。育休は雇用保険の被保険者が対象のため、育休を利用できない個人事業主は育児休業明けの加点はもらえません。

ただし、時代に沿った子育て支援として、個人事業主やフリーランスを対象に育休期間中の給付の創設が検討されています。

(参考:内閣官房 全世代型社会保障構築会議 報告書

個人事業主が保育園入園審査をクリアするためのポイント

個人事業主は会社員よりもそもそもの基本指数が低いため、保育園に入園するには加点要素を増やすしか方法はありません。ここでは入園審査がとおりやすくなるポイントをご紹介します。

ポイント1. 開業届を出しておく

個人事業主として社会に認められるには個人事業の開業・廃業等届出書」の提出は必須です。開業届は個人で事業を営んでいる証明になり、保育園の入園申請以外に銀行口座開設などさまざまなシーンで控えの提出が求められます。

小さい子どもがいると税務署に提出しに行くのも大変ですよね。ですが、開業届はe-Taxで作成・提出ができます。クラウド会計ソフトの『freee開業』や『マネーフォワード クラウド開業届』からも無料で作成・提出が可能です。

ポイント2. 保活情報の収集と点数の試算を行う

つぎに住んでいる自治体の保育園情報をチェックしましょう。インターネットで検索するとたくさんの情報を得られますが、保育園の入園基準は自治体によって異なります。なかには保活向けに専用サイトが開設されている自治体もあるのでチェックしてみましょう。

また、自治体のホームページでは入園選考の基準表を閲覧できます。自身の状況と照らし合わせて、何点くらいになりそうか試算を行ってみてください。

ポイント3. 待機児童が少ない自治体へ引っ越す

地域の保育園事情を調べていて、待機児童が多いとわかったら、いっそのこと待機児童が少ない地域へ引っ越してしまう方法もあります。自身の働きやすい環境を選べるのは、雇用契約の縛りがない個人事業主の特権といえるでしょう。

引っ越すなら思い切って、保育環境が充実した園を選ぶのもおすすめです。親子で快適に暮らせる環境を探してみてください。

ポイント4. 0歳児入園を目指す

保育園の入園は産休明けの復職を狙った申請が多く、とくに1歳児の入園は激戦です。入園の可能性を高めるには、産休明けの申請と時期をずらす必要があります。

0歳児入園は育休明けとかぶらず、待機児童も多くありません。「1歳をすぎていればいいのでは?」と思う人もいるかと思いますが、人気の保育園になると待機児童として申請することさえも拒否されることもあります。

ライバルの少ない0歳児入園を目指して、妊娠期間から保育園情報を収集しておきましょう。

ポイント5. フルタイム勤務をアピールする

基本指数は就労時間で異なり、長ければ長いほど有利です。明確な就労時間を設けていなくても、正社員と同等の就労時間であることをアピールしてください。自身で作成する就労証明書よりも、取引先と交わした業務委託契約書が効果的です。

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ポイント6. 認可外保育所・一時保育を利用する

加点要素を得るために、認可外保育所や一時保育を利用するという手もあります。自宅で保育を続けながら保活するより、認可外施設に預けることで働くうえで保育園が必要なのだとアピールできます。

とはいえ、いきなり慣れない場所へ預けられると子どももパニックになるので心配ですよね。まずは、園庭開放日に積極的に通って子どもが園に慣れるように努めてください。慣れてきたら数時間の一時保育の利用もおすすめです。

こうして認可外の保育実績を積むことで、保育の必要性を強くアピールすることができます。慣れておけば、入園後の慣らし保育の期間も短くて済むこともあります。

ポイント7. 在宅ではなく企業常駐で働く

自宅で働くことにこだわりがないなら、企業に常駐して仕事をする方法もあります。企業常駐案件は契約を結んだ企業のオフィスに常駐する働き方のことです。企業で仕事をしながら育児をするのは難しいため、保育の必要性は明白ですね。

個人事業主が保育園を継続利用するためのポイント

個人事業主は収入が不安定です。保育園に入園できた後も、「収入がない月があると退園させられるのでは?」と不安になる人もいるでしょう。安心して利用を続けられるように押さえてほしいポイントをご紹介します。

ポイント1. もしものときのヘルプ体制も整えておく

個人事業主の働き方は子育てと両立しやすいメリットがあります。ただ、保育園に入園すると感染症などでお休みすることも多いもの。とくに入園直後は小児科通いが多くなるため、もしものときのヘルプ体制を整えておくことが大切です。

私の場合、Web予約できる小児科や病児保育施設が役立ちました。病児保育施設は賛否あると思うので強くおすすめはしませんが、もしものときに知っておくだけでも心の安心材料になります。

ポイント2. 自治体の保育の認定基準を調べておく

保育園は年に1度「現況調査」を行います。新たな審査を受けるために「現況届」や「就労証明書」などの提出が必要です。個人事業主は収入が不安定なため、収入がないと働いていないとみなされて、退園させられるのでは?と不安になる人もいるかもしれません。

基本的に入園時のままなら退園させられる可能性は低いでしょう。収入がなくてもきちんと確定申告をしていれば、現況調査に必要な書類を用意できます。収入がない状態よりも、審査に使用する書類の未提出のほうが退園リスクが大きいため、確定申告をしているなら継続して利用できると考えていいはずです。

ただし、収入がない状態が続いているとわかると保育園や役所から確認が入る可能性があります。これまで得た収入を提示できるようにまとめておくと安心です。

認可保育園の保育の認定基準は自治体ごとに異なります。お住まいの自治体の認定基準を調べておいてください。

個人事業主の保育園利用に関するQ&A

個人事業主が保育園を利用するにあたって、想定される質問について回答します。

Q1. 保育園の利用料金は経費にできる?

原則、保育園の利用料金を経費にすることはできません。保育料は生活費として考えられているからです。保育料を抑えたいなら、個人事業主として経費や所得控除を見直すことで課税所得額を減らすことは可能です。

開業後、収入が上がっているなら青色申告特別控除を利用する方法もあります。最大65万円の控除を受けられるため、課税所得額を大きく抑えることが可能です。

Q2. 退園時間より早めに迎えたほうがいい?

保育園の保育標準時間は自治体によって異なりますが、多くは8時前後~17時前後だと思います。自宅で仕事をしていると、長時間預けることに罪悪感が生まれて「早くお迎えしたほうがいいのかな」と思う人もいるかもしれません。

うちの子どもが通っていた保育園は帰りの会までカリキュラムが組まれていて、時短勤務でも帰りの会以降にお迎えしてほしいといわれていました。知人の子どもが通っていた保育園は、仕事が終わったら直ちにお迎えに!という感じだったので、事前に保育園の特色を調べておくことをおすすめします。

まとめ

個人事業主が保育園に入りにくいといわれるのは、就労証明のしづらさや入園審査の要件などがあるためです。ただ保育園に入園できないわけではありません。必要書類をそろえてきちんと提出していれば正しく審査を受けることはできます。

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(執筆:吉永 ゆくら 編集:少年B)

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