【社労士解説】ジョブ型雇用時代におけるフリーランスの生存戦略とは?
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こんにちは、フリーライターの少年Bです。
会社を辞め、フリーランスになって最初に言われたことは「事業用のクレジットカードを作ったほうがいいよ」でした。
ところがわたしは「めんどくさいし……」と2枚のクレジットカードを区別せず使い続け、とんでもないことになってしまいました。
どうしてクレジットカードを分けないといけないのか。そして個人事業主がクレジットカードを分けないと、どうなってしまうのか。実体験を交えてお伝えします!
フリーランス7年目のライター・編集者・ぶどうマニア。めんどくさがりで、口癖は「まぁいいや」。でも、だいたいの場合はまぁよくないし、後で「あのとき、こうしておけばよかった……!」と後悔しています。反省してください。(X:@raira21)
目次
じつは、会社員のころからクレジットカードは2枚持っており、MastercardとJCBを場面に合わせて使い分けていました。お店によっては特定のブランドが利用できないケースがあったからです。
メインのMastercardは、ネット銀行で発行していてポイント還元率が高く、サブのJCBはTポイントカードのついでに申し込んでいました。
なので、基本的にはメインのカードを使い、Tポイントが貯まるお店とか、Mastercardを使えない場合にサブのカードを利用するという感じでした。
ちなみに、それぞれのカードで紐づけた銀行口座も違っていたので、いま思うとカードを分けるのがめちゃめちゃ楽な状態でしたね……。
ところが「クレジットカードを分けるって何? めんどくさいし、事業用とか言われてもよくわかんないし……」とサボっていたところ、フリーランス1年目のわたしは大変な目に遭うことになります。
それが確定申告です。確定申告とは、1年間で稼いだお金と、それに対する所得税などの額を計算して確定させる手続き。つまり、1年間に使った経費を総ざらいしなきゃいけないわけです。
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Workship MAGAZINE
クレジットカードを分けていないと、これがマジで地獄です。わたしはライターなので、とくに経費が多くなりがち。たとえば交通費や、料理を作る記事で材料を買ったり、インタビュー前に先方の書籍を読んでおいたりなど、まぁこまごました支出が多いんですよ。
もちろん、その都度ちゃんと確認すればいいんですが、クレジットカードの明細に「○○スーパー」とだけ書いてあった場合、記事を執筆するための材料を買ったのか、晩ごはんの材料を買ったのかがわからなくなってしまいます。
年度末の忙しい時期に、2枚のカードを行ったり来たりしながら、どの支出が経費なのかを突き止めていく……。想像するだけでも頭が痛くなりますよね。「ちくしょう、毎月こまめに記入していれば……」と頭を抱えても、「いっそカードが1枚ならよかったのに……」と嘆いても、後の祭りです。
しかも、フリーランス1年目は5月まで会社員だったので、そのぶんの所得税を計算する必要があります。確定申告は絶対に行わなくてはなりません。
そこでわたしが取った方法は……「個人事業分の申告を諦める」でした。
というのも、わたしは強い意志で「独立するぞ!」と思ったわけじゃなく、会社員を辞めて無職を謳歌していたら、たまたま会社員時代に書いていたブログ経由でお仕事の依頼をもらって、ライターになったんです。
そのため、1年目のライター収入は合計で5万円ほどでした。
当時は手間と時間のかかる記事ばかり書いていたので、経費がかさんでいました。さらに、ライターとして応募するためのポートフォリオ代わりとして、ブログも積極的に活用しており、何だかんだで1年目の収支は2ケタ万円の赤字になっていたんですよね。ヤバすぎる。
そんなとき「赤字でも確定申告をすれば、税金も安くなるよ」と友達に教えてもらったんですが……あまりの煩雑さに申告を断念。正確には途中まではがんばったんですが、期限に間に合わず、会社員としての収入だけを申告することにしたんです。あれ、いま考えてもめちゃめちゃもったいなかったな……。
【監修者のひとこと】
たとえ事業の収入が赤字でも、確定申告を行うことで利益から損失を差し引ける「損益通算」という制度を利用できます。会社員生活で得た利益(給与所得)から事業活動で発生した赤字を差し引くことで、税金計算上の利益が減り、税金を抑えられる仕組みです。
しかし、この赤字については、自分で「赤字額」を確定申告しなければなりません。赤字を申告できない、あるいはしなかった場合、損益通算はできないので注意しましょう。
とはいえ、実際のところ個人事業主はクレジットカードを分けてるのでしょうか?
そこで「個人事業主はクレジットカードを分けているのか」についてアンケートを取ってみました。
■67%がクレジットカードをプライベートと分けている
フリーランス・副業者に「クレジットカードの使い分け」について聞きました。分けている派が多く、理由のほとんどは「会計のラクさが全然違う」という結果に!
確定申告をラクにしたければ、クレカ使い分けは必須かも…? pic.twitter.com/JhtRfAYwYg
— Workship|フリーランス・副業向け 案件検索プラットフォーム (@goworkship) January 25, 2024
調査の結果、おおよそ2/3が「クレジットカードを分けている」ということが明らかになりました。理由のほとんどは「会計の楽さが全然違う」というもの。
そう、わたしの失敗を見てもわかるように「会計」がクレジットカードを分ける大きな理由になるんですよね……。
というわけで、会計で痛い目を見て反省し、翌年にメインカードをプライベート用、サブカードを事業用に分けることにしたわたし。みんな、マジでクレジットカードは絶対に分けておいたほうがいいぞ……!
それから、大前提として事業用カードに紐付ける銀行口座は、事業用の口座にしておきましょう。というのも、カードだけ分けたって、あんまり意味がないからです。カードと一緒に口座も分ける! はいここテストに出ますよ。
上にも書いた通り、事業用のカードを分けておくと、圧倒的に経費処理の手間がはぶけます。なんたって、事業用カードの利用明細書が、基本的にはそのまま月の経費になるわけですから……!
基本的に、と書いたのは例外もあるため。たとえば、わたしの場合はETCカードが事業用カードに紐づいていたため、私用で高速を使ったときは除外する手続きが必要になります。
でも、わたしの場合は私用で高速に乗ることが少ないので、そこまで面倒じゃありません。事業用と私用、両方で使うものは「どっちのほうが使用頻度が多いか」を考えて紐づけしておいたほうがいいかもしれません。
事業用カードが紐づいているのは事業用口座。プライベートの支払いと引き落とし口座を分けられるため、お金の流れがめちゃめちゃわかりやすくなるんです。
これがごちゃついてるともう大変。上にも書きましたが、仕訳があまりにもめんどくさすぎて、フリーランス1年目のわたしは確定申告をあきらめたぐらいです。
仕訳をしやすくなるということは、それだけ経理管理にかかる時間が減るということですし、ミスもしづらくなります。確定申告をミスなくスムーズにするためにも、カードは分けておいたほうがいいでしょう。
カードを分けていないと、税理士に相談するときに、プライベートで購入したものまで見られてしまう可能性があります。
もちろん、確定申告を自分でやる場合は何の問題もありません。ただ、税理士に相談したいと思っている方は、事業用カードと事業用口座を作っておいたほうがいいと思います。
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これは事業用に限りませんが、複数のカードを持つと、それだけカードを利用しやすくなります。たとえば限度額が100万円のカードを使っていたとして、新たに限度額50万円の事業用カードを作れば、限度額は合わせて150万円になりますよね。
経費になるものを事業用のカードで支払うことで、それだけプライベート用のカードで使える枠が増えるわけです。カード払いにすれば、それだけポイントもつきますし、お得に買い物ができますよね。
……とはいえ、カードの使いすぎは考えもの。ちゃんと自分の収入も計算しながら、無理のないように使いましょう!
わたしのカードは違いますが、一部のカードでは会計ソフトとデータ連携ができる場合があります。
もしこの連携ができれば、さらに確定申告が楽になります。ボタンひとつでそのまま確定申告ができるなんて、どう考えても最高ですよね。
もしこれから事業用カードを申し込もうと思っている方は「使っている会計ソフトと連携できるか」を重視してみるといいかもしれません。
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とはいえ、クレジットカードを使い分けるときには注意点もあります。
カードを分けていると、当然貯まるポイントも別になってしまいます。それだけポイントが貯まりづらくなってしまうわけで、これは明確にマイナスかもしれません。
ただ、カードによってはポイントを提携ポイントに移行できる場合もあります。プライベート用カードのポイントに変更したり、電子マネーやマイルに変えることで、貯まったポイントを有効に使えるでしょう。
事業用のポイントを自分で使っていいの? と不安になるかもしれませんが、個人事業主の場合はとくに問題ありません。
ただし、法人成りをしている場合、会社名義の法人カードで貯めたポイントは会社の財産です。私的利用してしまうと、業務上横領罪に問われる可能性があるので、注意してくださいね。
せっかくカードを分けていても、支払いに使うカードを間違えてしまう場合があります。そうなるともう大変。間違えても確定申告のときに処理できますが、間違える回数が多くなれば、カードを分けている意味もなくなってしまいます。
とはいえ、わたしは使うカードを間違えたことがありません。なぜなら、カード自体の色が違うから。
メインのプライベート用カードは銀色ですが、事業用のカードは緑色なんです。これって地味に大事な気がしています。両方とも同じ色のカードだったら、ついうっかり間違えてしまいそうじゃないですか?
またカードを財布にしまうときに、必ずカードポケットの手前にプライベート用、奥に事業用のカードを入れるようにしています。
……そんなに胸を張って言うようなことでもないような気がしますが、同じ色のカードでしまう場所もバラバラだと、自分だったら絶対に間違えると思います。
年会費がかかるカードを使っている場合は、当然ですが年会費も2枚分必要になってきます。とはいえ、わたしはどちらも年会費無料のカードを使ってますし、使用額によっては年会費がかからないカードもあります。
ちなみに事業用カードに年会費がかかる場合、その年会費は経費にすることができます。覚えておくといいかもしれません。
事業用カードってことは、法人カードを使うべきなのか……? と思う方もいるかもしれませんが、別に個人用でも問題ありません。わたしはどちらも個人用のカードを使っています。
一般的に、クレジットカードの名義は銀行口座の名義と合わせるパターンが多いので、法人成りをしている場合は法人カードを使う必要があるでしょう。ただ、ぶっちゃけ個人事業主が屋号の口座を作っているケースはあまりないと思います。
法人カードは利用限度額が高かったり、ビジネスに役立つ付帯サービス・優待特典が充実していたりすることが多いです。しかし、個人事業主の立場からすると、そこまでは必要ないと感じるものもあります。
また一般的には、個人用のカードのほうがポイントの還元率は高め。使わないに越したことはありませんが、キャッシング機能もついています。個人事業主であれば、個人用カードのほうがちょうどいいと思います。
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わたしの場合はカードを分けやすい状況にも関わらず、ほんの少しの手間をめんどくさがってしまったために、後から大変な目に遭ってしまいました。
冷静になって、メリット・デメリットを出してみると、クレジットカードは分けたほうがいいし、法人用カードを作る必要はないという結論に達しました。でも、いざ自分が個人事業主として仕事をしようと思ったとき、そこまで考えられなかったりもするんですよね……。
こんなことにならないように、この記事を役に立てていただければ嬉しいです!
(執筆:少年B 編集:北村有 監修:トージンFP事務所 齊藤颯人)