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フリーランスという働き方が広まりつつある昨今、契約書を交わさずに口頭やメールで業務を引き受けることもあるでしょう。
しかし、契約書なしで業務を引き受けてしまうと、無用なトラブルに巻き込まれてしまうこともあります。このようなトラブルを避け、自分の利益をまもりながら仕事をするためにも、フリーランスにとって契約書は必要です。
本記事では、フリーランスにおすすめの業務委託契約書テンプレートや、業務委託契約書に書くべき項目、契約書作成の注意点などをご紹介します。
本記事の制作にあたり、弁護士の河野冬樹先生監修のもと、フリーランスの方が自由に使える業務委託契約書のテンプレートを作成しました。
法律事務所アルシエン 弁護士。主に個人クリエイター向けにリーガルサービスを提供している。ミステリをこよなく愛する活字中毒者。(Twitter:@kawano_lawyer)
こちらのテンプレートは、以下ボタンより「無料」「会員登録/個人情報の入力」なしでダウンロード可能です。ぜひお使いください。
なお、本テンプレートを活用するうえでの注意点などについて、河野先生よりメッセージを頂いています。ご活用の前に、こちらもぜひご一読ください。
フリーランスの方への成果物の制作依頼は、えてしてトラブルになりがちです。なかでも特にトラブルになりやすいのが、以下3つのケースです。
- 成果物について依頼主が納得がいかず、何度もやり直しを命じられるケース
- 権利の取り扱いをちゃんと決めていなかったためにもめるケース
- 代金の支払いが引き延ばされるケース
この契約書では、1の「やり直しの基準」については互いの合意で決めることにして(第3条)、2の「権利」については譲渡して依頼主の側で自由に使えるものとし(第5条)、3の「代金の支払い」は納品の翌月末と定めています(第4条)。
もちろん、上記が唯一の正解、というわけではありません。
他のパターンとしては、1の場合だと「修正の回数を事前に何回と決めておく」、2の場合だと「権利については自分に留保しておき、一定の範囲で許諾する形とする」などが考えられますので、その場合には、適宜条項を修正のうえご使用ください。
いずれにせよ、特に上記の点については、依頼主との間でよく話し合って決めることが重要です。
以下では、業務委託契約書に関する基本的な知識を、Workship MAGAZINE編集部が解説しています。
業務委託契約書を交わすときには、できれば以下の15項目を記載しましょう。テンプレートをつかう際も、以下の項目をなるべく網羅しているものを選ぶと手間を減らせます。
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そもそも、その書類が契約書であることを分かりやすくするために「契約書の表題」はつけておきましょう。とはいえ、表題は「業務委託契約書」と書くだけで構いません。
書類を整理する際や、内容を確認する際に、表題があると書類の識別がかんたんになります。
今回の契約が「誰と誰の間で結ばれるものなのか」をしっかり明記しておきましょう。会社や法人名は正式名称で、人名も戸籍通りの正確な漢字で記載する必要があります。
名前などを間違えていると「名前が違うから契約したのは私じゃない」とトラブルに発展する可能性があるからです。
契約書を作成する最大の目的を果たすためにも、「〇〇と△△は業務委託契約を締結します」といった一文は必須です。しっかりと契約の事実を明記することで、契約の証拠を残せるからです。
業務委託には「請負」と「委任(準委任)」、2つの契約形態があります。
ただし、契約がどちらになるかは明記されていないことがほとんど。報酬の対象が少し変わるため、不安な場合は契約書に記載しておきましょう。
契約形態の違いは、以下になります。
業務委託契約書で明確に業務内容を定めていないと、仕事内容の認識に違いが生まれ、トラブルになる可能性があります。
たとえばフリーランス側の場合は「報酬をもらえない」「事前に話していた内容以外の業務を任される」などのトラブル、そして企業側の場合は「指示した業務を行ってくれない」「求めていたものとは違った成果物を提出される」などのトラブルがあります。このような事態を避けるために、業務内容は具体的に記載しましょう。
なかにはコンサルティング業務や保守点検業務など、日々の業務内容を把握しにくい職種もあります。定期的にミーティングをする、月末に作業報告レポートを提出するなど、チェック体制について記載しておく必要があります。
また、具体的に決めにくい業務がある場合は「別途、発注書にて定めた業務」「甲乙間で合意した業務」など、後ほど話し合いによって追加できるような記載の仕方をするのがおすすめです。
業務委託契約書には、報酬を受け取るための条件や報酬額、支払日、支払方法などをくわしく書いておきましょう。
お金に関わることはもっともトラブルになりやすく、最悪のケースだと報酬をもらえないこともあります。
また、外税か内税か、振込手数料はどちらが負担するのかなど、細かな点も書いておくとトラブルを回避できるでしょう。そのほか、着手金の有無や分割または一括支払いなのかについても、あらかじめ定めておくと安心です。
成果物の納品から実際に報酬が支払われるまで、大きく間が空いてしまうこともあります。納品月の末日締め、翌月末の支払いに設定しておくと、スムーズに報酬を受け取ることができるでしょう。
通信費や交通費など、かかった経費を負担するのはどちらなのかを明確にしましょう。
経費の取り扱いによっては、せっかくの報酬が減ってしまう場合もあるので気をつけましょう。
契約期間や更新/解除の方法を、事前に明確にしておきましょう。
契約期間を定めておかないと、突然の契約解除や納期遅れなどのトラブルになる可能性があります。
契約更新や解除の条件も定めましょう。契約の更新については、自動更新にしておくことで双方の手間が省けます。
「再委託の可否」についても確認しておきましょう。これは、業務を受注した以外の第三者へ再委託するのを許可するか、禁止するかという項目にあたります。トラブルの原因となりますので、再委託をどう念のため確認しておきましょう。
成果物の知的財産権がどちらに帰属するのかを明確にしましょう。
成果物を制作した時点では、フリーランス側に著作権があります。しかし納品後に譲渡する契約内容であれば、企業側に著作権が移ります。
特にイラストや写真などは、二次利用や編集の可否など、具体的に決めておく必要があるので覚えておきましょう。
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秘密情報の取り扱い方法と範囲を明確にしましょう。
たとえば、
といった項目を確認しておく必要があります。これは万が一情報漏えいが起きたときに、損害賠償を請求できるようにするためです。
ただし、秘密保持契約は業務委託契約書内で取り決めるのではなく、別で秘密保持契約(NDA)を結ぶケースが一般的です。
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成果物の修正期間や方法を明確にしましょう。
修正についての決め事が曖昧だと、フリーランス側は過去の作業をどこまでも遡って修正しなければいけない可能性もあります。
「納品後いつまでに検収完了とするのか?」「修正の場合は回数制限を設けるのか?」など、具体的に定めましょう。
損害賠償の範囲と上限額を明確にしましょう。
フリーランス側が損害賠償を請求されるケースは以下のような場合があります。
このような事例は多いため、フリーランス側であれば損害賠償の範囲や上限額を少なくしましょう。そして企業側は、できる限りフリーランスに責任を追求できる範囲と上限額にする必要があります。
万一トラブルが裁判にまで発展してしまったときには、どの裁判所で管轄してもらうのかまで確認しておきましょう。
フリーランス側と企業側が同じ地域に在住していれば問題ありませんが、遠隔地で作業をしている場合は、お互いの中間地点にある裁判所を設定しておくと、トラブルが少なく済むでしょう。
テンプレートは非常に便利なので、うまく活用すればかんたんに業務委託契約書を作成できます。しかし、ポイントをしっかり押さえておかないと、契約後に大きなトラブルへ発展する可能性もあります。
ここでは、テンプレートを活用して業務委託契約書をつくる際のポイントを整理します。
テンプレートを活用する際に一番気をつけたいのが、「信頼できる人がつくるテンプレートだから大丈夫!」と内容を全然読まずに契約に進んでしまうパターンです。
そもそも、業務委託契約書に何が書いてあるかを理解できていないと、業務遂行中に「何をやってはいけないか」「どこまで我慢が必要か」などを判断できません。契約違反をした後に「テンプレートを使っただけだからよく知らなかった!」と言い訳しても遅いです。
また、同じ業務委託契約書でも、実際は「少しフリーランスorクライアントに有利な書き方になっている」など微妙な違いはあります。可能なら、利用するテンプレートの特徴まで抑えられるといいでしょう。
世の中の業務委託契約書テンプレートは、おおむね一般的なケースに合わせてつくられていることが多いです。しかし、業務委託契約を結ぶ場合、作業が専門的なものになることも当たり前。必然的に、契約書も作業に合わせてアレンジする必要があります。
たとえば、「発売後に印税が発生する」「一定の成果を出したらボーナス支給がある」などの契約を結ぶ場合は、その旨をしっかり契約書にも反映させましょう。
業務委託契約を読んでいると「この条項って本当に必要なの?」「ちょっと自分に不利な気がする……」など、あいまいな点や不安な点が出てくることもあると思います。そんな時は、疑問を放置せず必ず対応するようにしましょう。
契約書は一度結んでしまうと、条項を途中で変えることは困難です。気になった点は契約相手と相談し、最適な形を模索してみてください。
業務委託契約は、フリーランスにとって身近な一方、理解の難しいものであることも事実です。自力ではどうしても解決が難しい場合、抱え込まずプロに相談するようにしましょう。内容への相談は、法律のプロである弁護士を頼るのがいいでしょう。
場合によっては、業務委託契約書そのものの作成をプロに依頼することもできます。書類の作成はおもに行政書士の本職で、おおむね1部1万円前後からの依頼が可能です。
各種契約書の締結には、「収入印紙」と呼ばれる紙を契約書に貼る必要があるものもあります。フリーランスの業務委託契約書には必要なのでしょうか。
結論から言えば、フリーランスの結ぶ契約形態が「請負契約」または「委任契約」のどちらに当たるのかで、収入印紙の必要性が変わります。委任契約の場合は収入印紙が不要で、請負契約の場合は収入印紙が必要です。
請負契約と委任契約の違いは、非常にざっくり言うと「結果に対して責任を負うかどうか」です。請負契約の場合は成果を完成させる必要があり、委任契約の場合は成果を完成させるまでの過程も含めて報酬支払いの対象になります。
請負契約の場合は、業務委託契約書の法律的な種類が「2号文書」もしくは「7号文書」となり、収入印紙が必要となります。ただし、電子契約の場合は印紙代を支払わなくていいので、電子契約のほうが経費を節約できます。
詳細は以下の記事でも解説していますので、合わせて参考にしてください。
業務委託契約書に収入印紙は貼るべき? 必要なケースを解説
Workship MAGAZINE
フリーランスにとって必要不可欠である業務委託契約書について、書いておくべき15項目とおすすめテンプレート、収入印紙について解説しました。
フリーランスと企業、お互いが気持ちよく仕事をするために、無用なトラブルを避けられる契約書の書き方をあらためて確認しておく必要があります。今後、仕事を受注するときの参考にしてください。
(執筆&編集:Workship MAGAZINE編集部)