NDA(秘密保持契約)ってよく聞くけど、フリーランスとして何に気をつければいいんですか?【弁護士直伝!】

実際にクライアントさんと契約を結ぶにあたり、NDA(秘密保持契約)を結んだことがある、というフリーランスの方も多いと思います。

しかし秘密を守れ、守秘義務がある、といっても、「何をどう守ればいいのか」「フリーランス仲間との情報交換もダメなのか」と疑問に思う方もいるかもしれません。

そこで、今回はわかるようでよくわからないNDAについて、弁護士の河野冬樹先生にいろいろとお話を伺ってきました。

河野 冬樹(かわの ふゆき)
河野 冬樹(かわの ふゆき)

法律事務所アルシエン 弁護士。主に個人クリエイター向けにリーガルサービスを提供している。ミステリをこよなく愛する活字中毒者。(Twitter:@kawano_lawyer

聞き手:ぽな
聞き手:ぽな

こたつとお布団、コーヒーをこよなく愛するフリーライター。法学部出身のはずが、なぜか卒論のテーマは村上春樹であった。やれやれ。(Twitter:@ponapona_levi

NDA(秘密保持契約)とはなんですか?

ぽな:
NDA(秘密保持契約)って単語は頻繁に聞くんですけど、その意味はよくわかってない……というフリーランスの方も多いと思います。そもそも、NDAっていったい何なんでしょうか。

河野:
なるほど。まず「NDAがなぜ必要なのか」というところから話を始めてみましょうか。

なぜNDAを結ぶのかというと、もちろん結ぶ必要があるから結んでいるわけです。というのも、NDAがなかったら、その会社にとって営業秘密が守れないケースというのがかなりあるんですよ。

たしかに「不正防止競争法」のような、営業秘密を勝手にばらすような行為を規制する法律もあります。でも、この法律で保護されている営業秘密の範囲って、かなり狭いんです。だから、契約できちんとコントロールしていないと、守れない機密情報もたくさんあるんですよ。

ぽな:
たしかに、「秘伝のタレの配合」みたいなものすごい秘密でなくても、流出してしまうとクライアントさんが困ってしまう情報ってありますもんね。原稿料の額とか。

河野:
そうですね。特に最近問題になりやすいのが、SNSでどこまで書いていいのかということです。

本来、NDAの契約って、そうしたSNSで公開していい情報の範囲ですとか、そのあたりのすりあわせをクライアント・フリーランス間でするためのものなんですよ。

だから、たとえばNDA契約の内容を決めていく段階で、「実績は公開したいので、そこだけはNDAから外してください」とか、そういった提案をフリーランス側からしたっていいんです。

ぽな:
なるほど……。お互いにどこまで言っていいのかわかっていれば、気持ちよく仕事を進められますもんね。私も、NDAを結ぶことになった場合には、ダメもとで実績公開についてはお願いするようにしています。

仕事のギャラに関する発言、SNSでしても大丈夫?

ぽな:
一方、SNSで「△△さんから報酬○○円のお仕事もらっちゃいました!イエーイ!」みたいな発言をした結果、クライアントに怒られて仕事自体が消滅した、みたいな事例も聞いたことがあるのですが……。

河野:
ああ、ありますね。

ぽな:
実際、Twitter見てると、報酬の話題している人って結構多いですよね。

河野:
うーん……。どちらかというと契約以前の問題というか、前にお話した「怪しいビジネスや人の見分け方」に似た論点が出てくると思うんですけど。

ほら、やたら「俺って偉い人と親しいんだぜ!」ってアピールしてくる人は信用できない、という話をしたでしょう?

ぽな:
はい、権威に頼りたがる人は信用できない、という話でしたね。

河野:
そうそう。だから、「高額案件ゲットしたぜ」みたいな話をSNSに書いている人はそもそも信用できないって話なんですよ。

それって結局のところ、守秘義務を守れないいい加減な人か、そもそも大したビジネス上の秘密が絡むような仕事をしていなくて話を盛っているか。そのどちらかだと思うんですよね……。

ぽな:
今回も切り込みますね、先生(笑)。

じつは私もSNSでは、いわゆる「○○円報酬獲得しました」「今月は○円稼ぎました」系の話題には近づかないようにしています。ライターとして活動する上では、明らかに公開する必要のない情報ですし。特に、クライアントさんに見られた時の印象を考えたら……。表立ってお金の話を発信することにメリットが感じられないんですよね。

河野:
そうそう。結局、フリーランスとしてのブランディングの問題になってくるんですよね。もしかしたら、「クライアントの名前は書いてないから、報酬のことを書いても大丈夫」と考える方もいるかもしれません。

でも、特に名前の出るような仕事をしている場合は、仕事が公開されたタイミングと報酬関連ツイートのタイミングをつきあわせれば、クライアント名を伏せていたとしてもどこの誰の話をしているかわかっちゃう場合があります。

ぽな:
ひええええ! たしかにそれはそうですね……。

河野:
SNS上での発言で「オフレコ」は通用しませんからね。気をつけましょう。

ぽな:
たとえ鍵アカでも、自分の言葉として発信していることに変わりはないですもんね……。

ただそうなってくると、気になるのがプロフィールの扱いです。SNSのプロフィールやブログの仕事依頼ページに、「ご依頼は○○円~○○円の範囲でお受けしています」みたいな内容を書いている方もかなりいらっしゃいますが、あれはセーフなのでしょうか。

河野:
それは、その方の料金表みたいなものだから、問題ないでしょう。結局、個々の案件・実績とその報酬額が結びついてしまうとまずいことになる可能性がある、という話なんですよね。

ぽな:
なるほど……。じゃあ、同業者同士の飲み会で情報交換するような場合はどうでしょうか。

河野:
この場合はケースバイケースですかね。やっぱり契約の内容によっては、言ってはいけないことはあるだろうと思います。

ただ、単価の話も含めて情報交換が有用なのも事実ですから、「同業者との交流を一切禁止してくるようなクライアント」には注意が必要かもしれません。

というのも、フリーランス同士で情報交換されるとまずいようなことをクライアント側がやっていることがあるからです。

ぽな:
えっ……。

河野:
自分のところで抱えているクリエイター同士が情報交換するのを嫌がるクライアントって、結構いるんですよ。表では「みんな同じギャラですよ」といいながら、実際には待遇に差を付けているからです。

ぽな:
え、えぐすぎる……。でも、似たような話は聞いたことあります……。

河野:
もちろんNDAの対象になるような話はオフレコの場でも話しちゃだめなんだけど、自分の身を守るための情報交換はしていいと思います。フリーランス同士のタテヨコのつながりって、大切ですからね。

NDAと競業避止義務 〜厳しすぎる契約には注意!?〜

河野:
守秘義務との関係で、センシティブな問題になりやすいのが競業避止義務ですね。この2つはセットで問題になることも多いです。

ぽな:
実はこれ、私もずっと気になっていました。秘密保持とはいっても、仕事を請けるフリーランスの脳は1個しかないわけで。あるクライアントで使った情報やノウハウを、他社でまったく使わない、なんてことはできないじゃないですか。

河野:
そうなんです。いくら秘密保持といっても、クライアント側も「ウチからもらった情報は頭から消してくれ」とか、そこまでは言えないわけです。だからこそ、ライバル企業へのノウハウ流出などを避けるために、守秘義務とセットで競業避止義務が結ばれるということになります。

そして、このときポイントとなるのが、これらの義務が「職業選択の自由」を侵害するような内容なのかどうかということです。

ぽな:
職業選択の自由……。あまりにも競業避止義務が厳しすぎると、実質的にその企業以外との取引ができなくなってしまう、ということですね。

実際問題、フリーランスで、完全に競合企業を避けて仕事をするのはなかなか難しいと思います。イラストレーターさんやWeb制作の方ならまだしも、私のような法律専門ライターだとどうしても取引先が限られます。これで競合先と一切取引しちゃダメ、と言われたら……。

河野:
こうした場合は独禁法との兼ね合いで、競業避止義務をさだめた契約の内容が、公序良俗(民法90条)に反して無効なんじゃないか、という話になってきますね。

どの業界とも取引できる、というタイプのフリーランスであれば、競業避止義務が広めに認められることもあると思いますが、その辺りはケースバイケースじゃないでしょうか。

ぽな:
実際にイラストレーターさんだと、たとえば化粧品の広告イラストだったら契約期間中は他の化粧品メーカーとは仕事しない、という取り決めになっていることはあるみたいですね。

一方でライターだと、A社のダイエットサプリのLP作って、C社のダイエットサプリのLP作って、というケースはそこそこありそうな気がします。不思議です……。

河野:
でも制作系の仕事の場合、仕事の成果はなんらかの形で表に出るわけでしょう。こうした事態を前提にすると、ある程度のノウハウや情報はすでに明らかにされている、といっても過言ではないと思います。

たとえばLPの構成についてもある程度人気のパターンは定型化されているわけだから、それが表に出ちゃってる以上は真似されても仕方がないという見方もできますよね。

ぽな:
なるほど……。

河野:
一方、このクリエイティブで売上がどう変わったとか、そういった細かい数字に関する情報については表には出ないですし、クライアント側からしたら非常にセンシティブな情報なので伏せておいてほしい、というのはあるかもしれません。

ぽな:
結局はケースバイケース、ということになってくるのかもしれませんね。たとえば実績公開不可の仕事では、言っちゃいけない範囲の情報が増えそうです。

河野:
そうですね。ただ、先ほども少し触れましたが、あまりにも厳しい競業避止義務やNDAを課された場合は注意が必要ですね。実質的にその企業の専属になってしまって、フリーランス側の立場が弱くなってしまうということもありますから。

NDAと外注 ~仕事を誰かに依頼する場合の落とし穴〜

河野:
気をつけたいのが、受注した仕事の一部を外注したり、チームを組んで仕事をしている人。自分以外の人もふくめて情報漏えいを起こさないよう、クライアントが求めているのと同等の守秘義務を守らせる必要があります。

外注先が著作権侵害を起こした場合と同じで、「他人がやったことだから、自分は関係ないです」という言い訳はできませんから。

ありがちなのが、クライアント側との守秘義務契約書にはサインしたものの、外注先にはふだん自分が使っている契約書の書式を渡しているパターン。これは本当に危険でして。

というのも、クライアント側が用意したものとは違う契約書を使っちゃうと、クライアントの求める守秘義務の内容と、自分が外注先に求めた守秘義務の内容に差が生じる可能性があるんですよ……。

ぽな:
ひええええ、怖すぎる! だってクライアントがNDAの対象にしているものが、外注先との関係ではNDAの対象になっていないということですもんね。外注先が何かやらかしても、NDAを結んでいない以上は文句を言えないし、責任はぜんぶ自分に来てしまうことに……!

河野:
契約書に入っていない以上は、「あ、やってもいいんだな」と思われても仕方ないですからね。

こういう場合、まずは安全策として、クライアントが提示した守秘義務契約を流用するのがいいかな、と思います。

ぽな:
そうですね。クライアントの求めるものがすべて入っていますもんね。

河野:
実務上は、再委託の条件として「この契約書と同等の守秘義務を負わせること」という内容の条項が契約書内に入っていることも多いですね。

情報漏えい時の損害賠償は恐ろしい!?

河野:
情報漏えいをしてしまうと、不正競争防止法違反の罪に問われたり、多額の損害賠償を請求されたりする可能性もあります。

しかも恐ろしいことに、情報漏えいが起きた場合の損害賠償って、上限がないんですよ。報酬の範囲で済むなんて保障はどこにもない。

ぽな:
ええっ!? それは怖いです! たとえば発売前の人気ゲームの情報を外部のフリーランスクリエイターさんが漏らしたようなケースだと、損害賠償も億単位になりそう……。

河野:
うん。あと、ぽなさんみたいな取材活動をしているフリーランスは、クライアントだけでなく取材先の秘密も守らないといけないことに注意が必要です。

ぽな:
そうですね。オフレコという約束でインタビュイーが話してくれたけど、表に出しちゃいけない話ってたくさんありますよね。

河野:
そういうことですね。そういうわけで、今回もよろしくお願いします(笑)。

ぽな:
おおっと……。おあとがよろしいようで。

スルーはやばいぞ、NDA

今回の取材を通して、NDAはクライアント側にとっては非常に大切なものであるのと同時に、フリーランス側にとっては厄介なトラブルを招くリスクのあるものであることを実感しました。

必要だから結ぶもの、というのは大前提だとしても、「何かおかしいな」「変だな」と思うことがあったら、早めに専門家に相談した方がよさそうです。

一方で、広すぎるNDAも問題になります。河野先生曰く、NDAの雛形によっては「情報の管理状況を知るために作業場に立ち入り監査ができる」という条項が入っていることもあるそうで……。「え、フリーランスの作業場って自宅じゃん!」と思わず青ざめてしまいました。実際にその条項が悪用されかけたケースもあるみたいですので、明らかにおかしなことになりかけた場合は早めに弁護士にご相談を。

ちなみに、弁護士さんには守秘義務があるので、NDAを締結していても弁護士さんに相談するのはOKだそうですよ!

(執筆:ぽな 編集:少年B 協力:河野冬樹弁護士 イラスト:はこしろ)

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