「フリーランスが増えている」は本当か? 統計データをもとに検証

フリーランスが増えている」って本当?

「日本のフリーランスは増えている!」
「これからは組織ではなく個の時代だ!」

働き方が多様化する昨今において、このような声はよく聞きます。

しかしこれらは、統計やデータに基づく「事実」なのでしょうか? 実際、周りにいるのは会社員がほとんどで、街を歩けば多くの大企業があります。

今回の記事では「日本のフリーランスは増え続け、個の時代が来ている」という説を、統計データを用いて検証していきます。

日本のフリーランス人口は増えているのか?

「日本のフリーランス人口は増えているのか」という疑問を解決するために、ここからは以下のデータをみていきます。

  • フリーランス全体の人口推移
  • 狭義フリーランスの実態と人口推移
  • 自営業主全体(広義フリーランス)の人口推移
  • 会社員の人口推移
  • フリーランスと会社員の割合

フリーランス全体の人口推移

クラウドソーシングサービス『ランサーズ』が発表したフリーランス実態調査によると、フリーランス人口は以下のように推移しています。

ランサーズ フリーランス実態調査

▲出典:【ランサーズ】フリーランス実態調査2020年版

調査を見ると、2015年に913万人だったフリーランスは、2020年には1034万人に増加。6年で約10%伸びています。

一方、2017年をピークにフリーランスの数が減少傾向にあるのも事実。2020年は、2017年比で90万人近く減少しています。

「6年前から見ればフリーランス全体の人口は増加しているが、近年はやや減少傾向にある」ことがこのデータから分かります。

ランサーズ フリーランス実態調査

▲出典:【ランサーズ】フリーランス実態調査2020年版

しかしそもそもですが、ランサーズの発表するこの数字は日本の労働人口の約15%にあたります。この数値に対して「多すぎる」と違和感を覚える理由は、「広義フリーランス」の定義が広いためです。

ランサーズが定義する「広義フリーランス」には、「過去12か月のうち、本業によらない収入(副業収入)が1円でもあった人」が含まれています。たとえば普段は会社員で、1年以内に1回だけクラウドソーシングで報酬500円のアンケートに回答した人も含めてフリーランスとみなしているのです。

フリーランス活動を本業としない人も計上しているため、「日本の労働人口の約15%はフリーランス」という結果が算出されています。

狭義フリーランスの実態と人口推移

では「狭義フリーランス」、つまり私たちが一般にイメージするフリーランスはどのくらいいるのでしょうか。

ランサーズ フリーランス実態調査

ランサーズ フリーランス実態調査

▲出典:【ランサーズ】フリーランス実態調査2020年版

ランサーズは、フリーランスを4つのタイプに分類しています。

このうち、一般にフリーランスとしてイメージされる「誰かに雇用されるのではなく、スキルを武器に専業で働く独立した人(=狭義フリーランス)」に該当するのは、「自由業系フリーワーカー」と「自営業系独立オーナー」の数字を合算した345万人と推測されます。

では、この「狭義フリーランス」の人口推移はどのようになっているのでしょうか。過去の「フリーランス実態調査」からみていきます。

フルタイムフリーランス 人口推移

▲「【ランサーズ】フリーランス実態調査2016~2020年版」を参考に筆者作成

狭義フリーランス単体の人口推移も、広義フリーランスを含めたフリーランス全体の推移と大差なく、2015年比ではむしろ減少しています。

また内閣府の政策課題分析では、フリーランス人口が以下のように言及されています。

フリーランス相当の働き方をする者の全就業者に占める割合は、本業及び副業フリーランス合計で5%程度であった。そのうち本業については3%程度、副業については2%程度であった。

これを参考にすると、2019年時点でさきに触れた「誰かに雇用されるのではなく、スキルを武器に専業で働く独立した人」の数は、全就業者数から推定すると約200万人で、フリーランス実態調査よりも少なくなっています。

自営業者・個人事業主の人口推移

総務省労働局の労働力調査を見ると、自営業主は2009年から2019年の10年間で、100万人以上減少していることが確認できます。

労働力調査 自営業者推移

▲出典:労働力調査(基本集計)2019年(令和元年)平均(速報)結果の概要

また内閣府発表の日本のフリーランスについての政策課題分析をみてみましょう。1985年から2015年にかけて、自営業主全体は減少しています。

内閣府 フリーランス調査

▲青の折れ線グラフが自営業主の数(出典:政策課題分析シリーズ17 日本のフリーランスについて)

ただし、「雇用的自営業(特定の発注者に依存する自営業主)」の人口は増加しています。

会社員の人口推移

ここまでのデータから、フリーランスの人口が減っている可能性があることが示唆されました。

では、フリーランスと対比して語られる「会社員」の人口はどのように変化しているのでしょうか。もし、会社員の人口がフリーランス以上に減少していれば、フリーランスは相対的に増えたとも考えられます。

労働力調査によると、雇用者(つまり、会社員やアルバイト)の人口推移は以下のようになっています。

労働力調査 自営業者推移

▲出典:労働力調査(基本集計)2019年(令和元年)平均(速報)結果の概要

このように、雇用者の数は右肩上がりに増加しています。2017年を境にやや減少傾向にあるフリーランスの人数と比べると、増え続けていると表現すべきなのは「フリーランスではなく会社員」なのです。

フリーランスと会社員の人口比率

最後にフリーランスと会社員が日本の全就業者数に対して、どれくらいの割合で存在するのかをみてみましょう。

労働力調査で示された2019年の就業者数は6724万人で、自営業主・家族従業者数は675万人となっています。

就業者の89.3%は雇用者であると示されているため、ここから計算すると日本の全就労人口に占める自営業主の割合は約10.7%にしかなりません。

フリーランスは減っていて、会社員は増えている

ここまでの調査で、以下の事実が明らかになりました。

  • フリーランスは2017年を境にやや減少傾向で、就業者の3%~5%程度
  • 雇用者は増加傾向で、就業者の約90%を占める
  • 自営業主は1985年から一貫して減少傾向にあり、現在は就業者の約10%

つまり「日本のフリーランスは増えている!」「これからは個の時代だ!」という風潮には統計的な裏付けが確認できず、むしろ「日本のフリーランスは減りはじめ、これからは組織の時代が来そうだ」と真逆の事実が浮かび上がってくるのです。

なぜ「日本のフリーランス人口は増え続け、個の時代が来た」と言われるのか

では、なぜ統計とは真逆の風潮が広がっているのでしょうか。筆者は以下3つの推測をしました。

推測1. 2017年まではフリーランスの数が増えているから

改めて、ランサーズの示した調査結果を見てみましょう。

ランサーズ フリーランス実態調査

▲出典:【ランサーズ】フリーランス実態調査2020年版

この調査をみると、2015年比ではたしかにフリーランスの総数が増えています。

ただ、このスライドからは「フリーランスの総数が2017年を境に減少傾向にある」という事実は見えず、右肩上がりにフリーランスの総数が増えているように錯覚するでしょう。

なお、この調査の後半部分では「フリーランスの総数が2017年を境に減り続けている」と結果を公表していますが、資料を雑に読むと「フリーランスは増えている」という部分だけをピックアップし、「フリーランスは増加傾向にある」と思い込んでしまう可能性があります。

実際、「フリーランス 人口」関連のキーワードで検索エンジン上位に表示されるサイトのなかには、最新の状況とはやや異なる情報を収集/発信しているものが多くあります。こうした記事が拡散されていくことにより、誤った、もしくは古いフリーランス情報が世の中に浸透している可能性が考えられるのです。

推測2. 政府が多様な働き方を推進しているから

2019年4月から、政府は重要政策として「働き方改革」を掲げ、関連法案を施行しました。

働き方改革は政府によって以下のように定義され、会社員の労働環境だけでなくフリーランスや副業もその対象に含まれました。

働く方々が個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を自分で「選択」できるようにするための改革

フリーランサーや副業ワーカーは「働き方改革のモデルケース」として好意的に解釈されるように。

また2019年には、内閣府によるフリーランスを対象にした政策課題分析、2020年には内閣官房によるフリーランス実態調査が行われました。

このように2019年の働き方改革を境に政府がフリーランスに目を向け始めたため、「フリーランスの時代が来た」という認識が広まったと推測されます。

推測3. 「フリーランス」への関心・認知度が上昇したから

以下のグラフは、Googleで検索されるキーワードの人気度を測るツール『Googleトレンド』において、2004年から現在までの「フリーランス」「個人事業主」のキーワードを調べた結果です。

フリーランス Googleトレンド

フリーランス/個人事業主どちらのワードも右肩上がりとなっていますね(一部飛び抜けている部分は、コロナ関連の補助金や給付金の影響と推測されます)。

このグラフから「フリーランスの人口は減少していても、フリーランスへの関心や認知度は日増しに高まっている」と分かります。

近年はIT分野を中心にしたフリーランスの注目が高まっており、企業によるフリーランス活用の事例も増加。世の中でフリーランスの存在が認知・浸透した結果、フリーランス人口が増えているように感じるのではないでしょうか。

まとめ

本論の要点を改めて整理します。

  • フリーランスの数は2017年を境に減少している
  • 会社員の数は2017年以降も伸びている
  • フリーランスの働き方が社会的に認知され、存在感が増したことで「フリーランスが増えた」というイメージが浸透した

「フリーランスの数は増え続け、個の時代が来ている」という風潮に、統計的な裏付けはありません。

しかし、「社会全体でフリーランスへの認知度が上昇している」ことは間違いなく、これがフリーランスへの追い風になっています。コロナ禍でも「フリーランスへの社会保障」が議論され、いくつかは支援策として実行に至りましたよね。

こうした政府の活動や、企業によるフリーランス活用が進んでいけば、今度こそ本当にフリーランスの数が増え続ける「個の時代」が来るかもしれません。

(執筆:齊藤颯人 編集:Kimura Yumi)

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