Workship MAGAZINEの人気連載「健康で文化的なADHDフリーランスのお仕事ハック」が書籍化されました!
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「結婚相手に求める条件」としてよく挙げられるものに「社会的地位」があります。
収入が高く安定した仕事に就いている人を「社会的地位が高い」と見なす傾向にあり、例として医師や弁護士、公務員などに対して結婚しやすいイメージを抱いている方も多いのではないでしょうか。
一方、フリーランスの社会的地位はまだまだ高くありません。大多数の人はそもそもフリーランスの実態を知らないため評価の対象にならず、フリーランスのことを知っている人にも「仕事が不安定」というイメージを持たれがち。この点から、「フリーランスは結婚できない」と言われることも多く、たとえ結婚できても、その不安定さから「子どもをつくるのは難しい」と噂されます。
しかし、それは果たして本当なのでしょうか?
今回は「フリーランスの結婚」に関する統計データを検証し、その実態に迫ります。
フリーランスの結婚状況を知るために、配偶者の有無を割合で示した「有配偶者率」、そして「子どもの有無」をフリーランスと日本全体で比較していきます。
フリーランスの有配偶者率は、フリーランス協会の調査『フリーランス白書2020』の「回答者属性」に示されています。同調査によると、「配偶者がいる」と答えたフリーランスは61.8%です。
また、内閣府の調査『日本のフリーランスについて』や、リクルートワークス研究所の調査『データで見る日本のフリーランス』を見ても有配偶者率はおおむね55~60%前後。
以上から、フリーランスの2人に1人以上は配偶者がいると分かります。
なお配偶者とパートナーシップや内縁関係にある場合も考えられますが、この数字はほぼそのまま「現在結婚している人数」となります。なお、この数字は「“現在”配偶者がいる人」の割合を示しているため、配偶者と死別/離別した人数を合わせれば、「結婚を経験したフリーランス」の割合はもう少し増えるでしょう。
一方、日本全体での有配偶者率は、『令和2年国勢調査』から算出すると55.6%。
国勢調査と『フリーランス白書2020』には以下のような違いがありますが、フリーランスの有配偶者率と日本全体の有配偶者率はほぼ同じです。
- 国勢調査は15歳~19歳のデータ(回答者の約5.1%、有配偶者率0.3%)を含んでいるのに対し、『フリーランス白書2020』には20歳未満の回答者がいない
- 国勢調査は回答者の約39.1%が60歳以上の高齢者なのに対し、『フリーランス白書2020』ではわずか1.2%
子どもの有無についても、『フリーランス白書2020』の回答者属性データが示されています。
「子どもがいる」と答えたフリーランスは、全体の45.2%(妊娠中と回答した1.2%を含む)。
さきに見たリクルートワークス研究所の調査では、子どものいる割合が53.3%と少し多くなりますが、全体として子どものいる割合は50%前後と分かります。
一方、大手コンサルファームのPwC Japanグループがまとめた『結婚観・家族観に関するアンケート』によると、全国の15歳~49歳の男女のうち、子どもがいる割合は41.9%です。
フリーランスの割合より低く感じられますが、これは以下の理由によるものと考えられます。
- 回答者の約11.9%が15歳~19歳の男女である
- 50歳以上の男女が含まれていない
これらを考慮すると、子どもの有無についてもフリーランスと日本全体で大きな乖離はないことが分かります。
ここまでの調査から、以下のことが分かりました。
つまり「フリーランスは結婚できない」「フリーランスは子どもをつくるのが難しい」というイメージに統計的な裏付けはありません。
では、なぜこうしたイメージが広まったのでしょうか。
『フリーランス白書2020』によればフリーランスの55.1%が「収入がなかなか安定しないこと」、32.2%が「社会的信用を得るのが難しいこと」を事業継続の課題に挙げており、「フリーランス=不安定、社会的信用が低い」という傾向にあるのは事実です。
しかし、そもそもの問題として「社会的地位が低い=結婚できない」というのは本当なのでしょうか。
婚活サービスを運営する株式会社パッションの調査によると、「既婚者が結婚相手に求めていた条件」の上位5項目は以下の通り。
性格の良さ | 66.5% |
優しさ、包容力 | 61.6% |
誠実さ | 45.2% |
価値観の一致 | 43.8% |
家庭的かどうか | 28.7% |
こう見ると、上位には社会的地位に関する項目が出てきません(求める条件に「高収入」と回答したのは上位10番目の12.2%でした)。
一方で同様の質問を未婚者にぶつけた調査もあり、「高収入」と回答した割合は19.7%となっています(上位11番目)。つまり、既婚者よりも未婚者のほうが結婚相手に求める条件として「経済力」を挙げる傾向にあるのです。
また、同調査では「既婚者に聞いた結婚の決め手」も示されています。
人柄に惚れた | 37.7% |
安定した生活を手に入れたかった | 13.0% |
良き理解者が欲しかった | 12.8% |
苦楽を共にする相手が欲しかった | 12.0% |
人生を豊かにしたかった | 10.2% |
こちらでは「安定した生活を手に入れたかった」との回答が2番目に多いです。しかし「人柄」を結婚の決め手にした方は37.7%と、安定を選んだ方の2倍以上となっています。
つまり、イメージ通り社会的地位を求める人もいるものの、結婚の決め手は人柄を含め「内面的な要素」になりやすい。このことがフリーランスの有配偶者率がそれほど落ち込まなかった理由のひとつでしょう。
フリーランス婚活の障壁は「出会いの少なさだ」とよく耳にします。
実際、国立社会保障・人口問題研究所による「出生動向基本調査」でも、結婚のきっかけとなる出会いの28.1%は「職場や仕事」でのもの。自宅やリモートで働く機会の多いフリーランスは出会いの機会が少なくなりやすいです。
しかし同調査で、昨今は職場や知人の紹介、お見合いなどではない「その他」での出会いが増えていると示されています。1982年の調査では0.3%だった「その他」での出会いは、2015年の調査で5.0%まで上昇。この「その他」という回答の増加原因として考えられるのが、「婚活サービスの普及」です。
リクルートブライダル総研がまとめた「婚活実態調査2021」によれば、2000年時点で同年の婚姻者に占める婚活サービスの利用率は15%でしたが、2020年には33.1%まで増加。
この利用者のうち49.9%は婚活サービスを通じて結婚した(2000年は9.2%)と回答しており、利用率、成婚への結びつきともに右肩上がりとなっています。婚活サービスはもちろんフリーランスの方でも気軽に利用できるため、職場での出会いの少なさをフォローしてくれる存在になりうるのではないでしょうか。
「フリーランス=結婚できない」というイメージが、データに基づいたものではないことを示しました。フリーランスが結婚に不利なことはありません。実際、筆者もフリーライターですが既婚者です。
またフリーランスは、会社員に比べると自由な時間が多い傾向にあります。これは前回の連載で、以下のように解説しました。
『全国就業実態パネル調査 2021』によると、フリーランスの平均的な労働日数や労働時間は以下のとおり。
- 週平均労働日数:4.7日(会社員5.1日)
- 週平均労働時間:32.6時間(会社員42時間)
フリーランスは会社員よりも、労働日数/労働時間ともに少ないことが分かります。
また「勤務時間、勤務日数を自分で選べたか」という設問では、
- 労働時間を選べるフリーランス:56.0%(会社員18.0%)
- 労働日数を選べるフリーランス:56.6%(会社員20.6%)
という結果が出ており、会社員と比べ労働時間/労働日数を選べるフリーランスが多いようです。一方、4割以上のフリーランスは労働時間/労働日数を自分で選べていないと回答しています。
こうした自由度の高さは、婚活や結婚生活にもプラスに働くでしょう。
とくに、結婚後は家事や育児にあてられる時間の多さが強みになるので、パートナーが多忙な人ほどフリーランスの優位性は高まると考えられます。
ここまで、フリーランスが結婚に不利ではない事実と、むしろ有利になりそうなポイントを解説してきました。
しかし、データや既婚者の立場から「結婚できる」と言われても、
という方もいるかもしれません。
そんな方々のお悩みに答えるべく、Workship MAGAZINEでは既婚フリーランスの皆さんに出会いのきっかけや結婚生活の実態を聞く「フリーランスの結婚相談所」という連載を組んでいます。フリーランスの結婚をさらに詳しく知りたい方は、こちらもぜひ読んでみてください!
「フリーランスの成婚率は高い」結婚相談所の代表が語る、フリーランス婚活の戦略論
Workship MAGAZINE
(執筆:齊藤颯人 編集:Kimura Yumi)