フリーランスの開業資金はいくら必要? 独立後に「創業融資」を受けてわかったこと

フリーランスとして独立を目指す際、「開業資金はどのくらい準備すればいいんだろう」という疑問が出てきます。

私は起業してそろそろ5年目になるのですが、フリーランスとして独立し、必要な資金計画と低コスト開業を実際に行い、創業時だからこそ利用できる創業融資も利用しました。その経験を踏まえ、フリーランスが成功するための開業費用について解説します。

まてぃ
まてぃ

デジタルマーケティングプロデューサー/株式会社Rdesign factory代表取締役。企画×コンテンツ×マーケティングで価値の最大化を支援している。ツールを活用した仕事効率化には強く、Backlogを13年活用中。(Twitter:@matty3com

開業資金ゼロでもフリーランスになれる

独立の際に気になる開業資金ですが、資金ゼロでもフリーランスになることは可能です。

開業時には、さまざまな手続きが必要ですが、自分で行えば費用はかかりません。個人事業主になるために必要な手続きは、開業届を地域の税務署に提出するだけです。

個人事業主になると、年に一度確定申告の義務が発生しますが、たとえば「青色申告承認申請」も費用はかかりません。

フリーランスとして仕事を始めるための環境整備も、高価なオフィススペースは必要ありません。自宅で仕事をすればもちろん料金は取られませんし、近くのカフェ、場合によってはコワーキングスペースを使ってもOKです。

私自身は独立直後、家ではなかなか集中できなかったので、コワーキングスペースを借りて毎日出勤していました。会社員だった期間が長いので、場の切り替えを作ることで“仕事スイッチ”が入りやすかったのも理由のひとつです。

開業時にかかるフリーランスの初期費用

絶対にかかるお金はないものの、最低限準備したいのが、働く環境づくりとお金に関する準備です。働き始めてから取りかかろうとすると、意外と時間が取れなくて慌てやすいので、事前に準備できると後々スムーズです。

1. 必要最低限の設備費用(パソコン、机、椅子、名刺)

まず必要なのが、パソコン、机、椅子、名刺です。パソコンは「会社で支給されているもの以外にない!」という方は買っておく必要があります。業務によって必要なスペックは異なるので、ご自身の職業に合わせて選びましょう。

机と椅子については、まず自宅にあるもので対応する形で問題ないと思います。自宅がメインオフィスになる場合は、いずれ身体の負担が軽くなるオフィスチェアを用意できると、作業効率が上がり、疲労度がかなり軽減します。

私は自宅に簡易机とありあわせの椅子があったので、独立直後はそれを使っていましたが、すぐに疲れるのが嫌になって買い換えました。

とくに椅子は椅子コンシェルジュのサポートを受けて身体に合うものを選んでから、首凝り・肩凝り・腱鞘炎がかなりよくなり、座ることで起こるストレスが激減しました。

名刺は、今は様々なサービスができて、自分でも作れるようになりました。たとえばCanvaAdobe Expressなどのツールを活用すれば、テンプレートを使い、好きなデザインを選んで必要事項を入力すれば、そのまま印刷まで完了できます。

2. ネット代や会計ソフトの利用料

フリーランスにとって、安定した通信環境と効率的な会計管理はとても重要です。このコストは初期費用として、あらかじめ計上することをおすすめします。

通信環境については「家でどのタイプのWi-Fiを選ぶか」を最優先で考えていいと思います。オンラインミーティングはもちろん、データのアップロードやダウンロードなど、日々の業務がインターネット速度に大きく依存するためです。

ちなみに、私の自宅のWi-Fiの回線は「マンションタイプ」。インターネット回線をマンション全体で共有しているため、独立して家で仕事をするようになると、回線の遅さが際立ってついイライラ。

最終的に、マンションの管理組合に戸建て用の回線を個別に引く許可を取り、電柱から直接回線を引く工事をしました。お金も時間もかかりましたが、今の回線速度には満足しています。

また、仕事を始める際に、会計が得意ではない方は、最初から確定申告まで一気通貫で管理できる会計ソフトを導入することをおすすめします。

計算が得意な方はエクセルで管理できるかもしれませんが、その時間を使って別の仕事をしたほうがいいと思いませんか? 会計ソフトを使ったほうが、会計全般にかける時間をずっと短縮・効率化できますし、ミスも防ぎやすいです。

私はマネーフォワードMEで個人のお金の管理をしていたので、口座連携が楽になることもあって、機能を拡張する形で「マネーフォワードクラウド確定申告」を選びました。ぽちぽち記入するだけで確定申告の準備も進められるので、年始に慌てる必要がないのもすばらしいです。

3. 確定申告の外注費用

フリーランスにとって避けられないのが、確定申告です。確定申告は上記のように会計ソフトを使い、自力で行うこともできます。しかし、税務に関する知識がなかったり、インボイス制度などが絡んでくると、専門家の助言が必要なことも。

税理士に依頼した場合は、法令違反を防ぎ、場合によっては節税につながるアドバイスをもらうこともできます。確定申告のストレスや時間の負担を大幅に軽減できるのも、大きなメリットです。

依頼する費用については、依頼する仕事の範囲はもちろん、税理士の経験や専門性、地域によっても異なります。過去に税理士の先生に話を聞いた記事を見ると「最低1回10万円~が目安」との回答でした。

この費用を高いと考えるかどうかですが、個人的には節税効果や時間の節約、精神的な安心感を考慮すると、合理的な投資かと思います。

私はもちろん、独立当初から税理士の方にお願いしています。税務に関する専門知識を私自身が学んだとしても、とても信頼できません……。インボイス制度が始まったいま、自分だけで正しく税務処理を行うのは至難の業だと思うからです。

開業後の資金不足に悩まないために確認したいポイント

独立後の資金不足問題を避け、安定した経済基盤を築くために、開業前にいくつか確認しておきたいポイントがあります。

1. 稼げるスキルがあるか

開業前に、自分が提供できるスキルやサービスに需要があるかどうかを確認しましょう。市場調査を行い、自分のスキルがどのように収益化できるかを考えます。

フリーランスになってみるとわかりますが、競合他社がありすぎて、自分の存在のちっぽけさにうなだれることもあります。

特に会社員時代、社内で「何でも屋」をやっていた方は要注意です(私です!!!)。器用で何でもできると言えば聞こえはいいですが、逆に言うと「専門分野がない」ように見えてしまいます。

また、「何でも屋」は価格競争に陥りやすいです。何でも安く引き受けるフリーランスや企業が山ほどいて、そこと戦う状況に自分を置くのは不毛すぎます。

だからこそ、これまで培ってきた専門知識やニッチな技能を言語化・商材化し、積極的にPRすることが長期的な成功につながります。

2. 自分のスキル単価はいくらか

会社員として行っていた業務をフリーランスになって行なう方も多いと思います。その場合、会社員としていただいていた単価と同じ金額で仕事を受注できるケースは非常に少ないです。会社で請ける価格には、会社の看板(ブランド)が影響しているからです。

業種によって事情が異なるとは思いますが、フリーランスにつけられている市場単価の平均値をあらかじめ調べ、自分が独立した際に以下のざっくりとした見積もりを立ててみましょう。

  • どのくらいの単価で
  • どのくらいの案件数を
  • 何時間程度稼働ができそうか

なお、フリーランスの単価は、「Workship」のようなマッチングサービスや、「クラウドワークス」「ランサーズ」「ココナラ」などでチェックできます。

ただ、自分で営業し、クライアントに見積もりを提示して仕事を獲得する場合は、市場価格より高い単価で引き受けることができます。どのスキルで、どういった方法で仕事を獲得するかのイメージを持てると強いです。

3.貯金額は十分か

フリーランスとして活動を始める前には、ある程度の貯蓄があると安心です。

収入が安定するまでの期間、経済的なプレッシャーを軽減できますし、開業初期は収入が不安定になりやすいので、最低でも3ヶ月分の生活費をカバーできるぐらいの貯金があると心強いです。

私がフリーランスに「創業融資の利用」をおすすめする理由

フリーランスとして独立を考える際、多くの方が自己資金のみでのスタートを考えると思います。自己資金なしに独立できるのも、フリーランスならではだからです。ですが、あえて私は創業融資をおすすめしたいです。

私自身、お金を借りるつもりはなかったんですが、創業融資を受けると「銀行から信用されやすい」と聞きました。

なぜ信用がつくかというと、創業融資を受けるには、ビジネスプランの作成や収支計画の策定したうえで、融資先に対するプレゼン経て、審査を通過する必要があります。

一度金融機関から融資がおりると、次に銀行に相談に行く際、「借りた実績があり、きちんと返済している」こと自体が信用となります。借りたお金は使わずに口座に置いておくだけでいいんです。

お金を借りずにビジネスを行うことがベストですが、独立すると何が起こるかわかりません。そんなとき、「口座にお金がある」だけで、不安も和らぐんです。

たとえば積極投資をしたくなって、資金が必要になることもあります。逆に、仕事が思ったように進まず事務所の賃料や税金の支払いが苦しい……と思ったりすることもあるでしょう。そんなときに、借りたお金が役立ちます。

私自身は、創業融資を受けるために、東京都の創業支援センター・銀行・保証会社・税理士の方の助けを借りました。ビジネスプランを立て、自分がこれから使うお金と稼ぐお金を説明していく過程は、自分がどんな働き方をしたいか考えるいい機会になりました。

独立当初は、「できることならなんでもやってみよう」からスタートしましたが、計画していることが思い通りに進むことはほとんどありません。それでも、設計し、資金計画・返済計画を立てることで、自分が独立してどういう未来を作りたいかを真剣に考える機会になります。

せっかくなら、創業時だけの機会を有効に使ってみるのはいかがでしょうか?

フリーランスが開業時に使える支援制度

意外と知られていないのが、地域自治体が行っている創業支援や助成金です。使わなくても問題ありませんが、知っているとちょっとしたときに無料相談ができますし、思わぬ支援が得られることもあります。

1. 地方自治体の起業・創業支援サービス

たとえば東京都の場合、都が創業・起業する方を応援する「東京都創業NET」という情報プラットフォームがあります。コンシェルジュへの起業相談から、事業計画、開業支援、創業者同士の交流などを進める場です。

私が最初に利用したのはここで、丸ノ内と多摩地区に無料で使える「Startup Hub Tokyo」というラウンジがあります。起業に関するビジネス書が揃い、起業に関するさまざまな相談ができ、無料で使えるスペースもあります。

都が運営するだけあって、至れり尽くせり。起業に関する無料ウェビナ―開催もありますし、専門家に無料で起業相談できるのも魅力です。

予約必須なため、好きなタイミングで相談できないのが残念ですが、起業に関してどこから手を付けていいかわからないときは、こちらに足を運ぶと、何かきっかけをつかむこともできます。

都内にある私の居住区にも同様の施設があり、何度か足を運びました。その区で起業すると、区の助成金が出たり、区がスタートアップ向けに開放している施設のスペースを格安で借りられる等のメリットもあります。

ちなみに私は地方都市の出身ですが、地元の起業支援も調べたところ、起業家が集まる支援施設にオフィススペースがあり、オフィスを安価に借りられるほか、起業家コミュニティへの参加や中小企業診断士による無料の定期経営診断、先輩経営者によるブラッシュアップ支援などもありました。

地元に帰るつもりはありませんでしたが、当時は支援の手厚さに少し心が揺れたりもしました。

調べてみると、たいていの地域にはもそういった支援があります。ひとりで悩むくらいなら、ぜひ一度足を運んでみてください。会社員時代と違った発想やモノの見方に切り替える視点を得られたりもしますし、気分転換にもなります。何より普通に楽しいです。

2. 助成金や補助金

助成金や補助金は、特定の条件を満たす事業やプロジェクトに対して提供され、返済の必要がない点が大きなメリット条件としては、新規事業、特定の技術の研究開発、地域社会への貢献などが多いです。

制度を利用するには申請手続きが必要で、競争も激しいため、申請には事前の準備と戦略が必要になります。

社労士や税理士事務所で申請サポートを行なっているので、お世話になっている方がいる場合は、相談してみるといいでしょう。意外と支払いやすい金額で、がっちりサポートしていただけます。私は毎回ご相談しています。

ITを生業としていると、先行投資が必要な場合も多いです。そういった内容に対応している助成金や補助金もあります。時折チェックして、できるものは申請し、上手に活用しながら自分のビジネスを細く長く続けられるよう基盤を築いていけるといいですよね。

自力運営だけでももちろん問題ありませんが、せっかく納めた税金が還元される機会を自ら作っていくのも、フリーランスならではと思います。

各種制度については、地方自治体のウェブサイトや経済産業省、中小企業庁のウェブサイトで詳細を確認することができます。下記にフリーランス向けの情報がわかりやすくまとまっていますので、こちらが参考になります。

まとめ

フリーランスとしての開業は、極端な話、資金ゼロからでも可能です。

重要なのは、順調に行かなかったときの備えです。リスクを減らして独立したい場合は、開業に必要な最低限の手続きや初期費用を理解し、適切に準備したいところ。とくにご自身が持っている稼げるスキルの確認と市場価格、適切な単価設定が独立後に安定して働けるかどうかのカギとなります。

独立したての頃は、創業時だからこそ利用できる起業・創業支援のほか、助成金や融資などの資源を活用し、経済的なリスクを軽減することもできます。積極的に調べてみてください。

この記事がフリーランスとしての独立に向けた確かな一歩を踏み出す具体的なガイダンスとなることを願っています。また、副業しながら独立の準備を進めるなら、「Workship」もぜひ試してみてください。

ご自身のスキル評価やスキル単価を確認できる場として活用しながら、あなたらしい開業の糸口をつかむきっかけが得られると思います。

(執筆:まてぃ 編集:少年B)

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