人手不足なのに40代を採らないのはなぜ?|採用基準の見直し方【人事歴30年が解説】

人手不足なのに40代を採らないのはなぜ?|採用基準の見直し方【人事歴30年が解説】
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「人がいない」と嘆く会社に、就職氷河期世代が「働けます」と手を挙げても、会社はまた「人がいない」と言うばかり。X上では、こうしたすれ違いを皮肉った投稿が定期的に話題になっています。

即戦力を求める会社は多く、40代は経験を積んだ働き盛りの世代です。それなのに、なぜ40代の採用は進みにくいのでしょうか。

今回は人事歴30年の視点から、人手不足の企業が40代の採用をためらう理由と、採用基準の見直し方を解説します。

松尾隆弘
松尾隆弘

人事ジャンルを得意とするフリーライター。30年の会社員生活では、一貫して人事に従事。人事コンサルタントとして企業の組織改革や採用課題の解決なども経験。現在は主にHRメディアの記事やコラム記事を手掛けている。

人手不足でも40代の採用に年齢の壁が残る現状

人手不足に悩む企業は多いのに、40代以上の多くは、いまも転職で年齢の壁を感じています。

政府は2026年4月、「新たな就職氷河期世代等支援プログラム」を決定しました。支援の対象となる世代のうち、中心層とされる1974〜1983年生まれは、いまの40代の多くと重なります。

参考:「新たな就職氷河期世代等支援プログラム」KPI(内閣官房)

一方で、企業の人手不足は続いています。日本・東京商工会議所が2024年9月に公表した中小企業の調査では、人手が「不足している」企業が63.0%に上りました。

参考:就職氷河期世代の採用に係る取組について(日本商工会議所)

ところが、産業雇用安定センターが2025年10月、10年以内に転職した40〜59歳の正社員2,000人に調査を行ったところ、転職時の不安として「年齢による採用の厳しさ」(52.2%)が最も多く挙がっています。

参考:「転職経験のあるミドルシニア世代の転職に関する意識調査」結果概要(産業雇用安定センター)

そもそも募集・採用で年齢制限を設けることは、労働施策総合推進法で原則として禁止されています。厚生労働省も、書類選考や面接で年齢を理由に採否を決めることは、法の規定に反すると示しています。求人票では年齢を問わないはずなのに、転職を経験した40〜59歳の半数超が、年齢の壁を不安視していたのです。

参考:募集・採用における年齢制限禁止について(厚生労働省)

「人がいない」という企業の悩みと、40代以上が感じる年齢の壁が、同時に存在しているのが現状です。

人手不足の企業が40代の採用をためらう理由

40代の採用が進みにくい原因は、40代の能力よりも、企業側の採用基準や社内の仕組みにあります。日本の企業は、新卒を一括で採用し、社内で育てながら長く雇う慣行のもとで人事の仕組みを組み立ててきました。年齢制限の禁止にも、長期勤続によるキャリア形成を図る観点から若年者等を募集する例外があります。

参考:その募集・採用 年齢にこだわっていませんか?(厚生労働省)

厚生労働省は、この例外を「日本の雇用慣行との調和を図るために設けた」と説明しています。しかし、こうした若手中心の人事の仕組みが根づいている企業では、経験を積んだ40代を迎えるための採用条件や処遇が十分に整っていないことがあります。そのため、人手が足りなくても、応募者の経験をどう評価し、どのような役割や給与で迎えるかを決められず、採用をためらってしまうのです。

40代の採用が進まない具体的な理由として、主に次の3つが挙げられます。

1. 「即戦力」の条件を狭く設定しすぎているから

「即戦力」を「同業種・同職種の経験」とほぼ同じ意味で使うと、応募できる40代はごく一部に限られます。40代には、長いキャリアのなかで異動や職種の変更を経験した人も多く、条件にぴったり当てはまるとは限らないからです。

本来見るべきなのは、入社後に任せたい業務をこなせるかどうかです。しかし、任せたい業務が具体的な言葉になっていなければ、応募者の経験がその仕事に生かせるかを判断できません。すると、経歴の表面だけで合否を決めることになり、採用が進まないのです。

2. 社内の給与や役職と釣り合うかを懸念するから

年齢と給与・役職が連動した仕組みでは、40代の中途入社者をどの等級で迎えるかが課題になります。年功的な給与テーブルに当てはめると高い等級になりやすいため、同じ等級の既存社員と役割や給与の釣り合いが取れるかを懸念し、採用をためらいやすくなります。

役職についても調整が必要です。管理職のポストが埋まっていれば、年下の上司のもとに配置することになり、双方がやりにくいのではないかと心配する企業もあります。

つまり、40代の採用をためらう背景には、どのような役割を任せ、どの程度の給与や役職で迎えるかという、配置と処遇の見通しが立たないことがあります。

3. 正社員経験の長さで実力を測ってしまうから

書類選考で雇用形態や在籍期間を重く見すぎると、実務の力がある人まで見落としてしまいます。

いまの40代には、新卒時に正社員の採用枠が狭く、非正規で働いたり転職を重ねたりしながら経験を積んできた人もいます。ところが、書類で「正社員として働いた期間が短い」「転職を繰り返している」という点だけを見ると、担ってきた業務の中身が見えなくなります。その結果、即戦力になりうる人を、選考の入口で外してしまうことになるのです。

中堅層が抜けた会社が40代を採用するための取り組み

40代の採用を進めるには、年齢ではなく「任せたい業務をこなせるか」を軸に、募集・処遇・選考の3点を見直すことが近道です。

1. 任せたい業務を書き出して「即戦力」を定義する

まずは「即戦力」の中身を、入社後に任せたい業務の単位で書き出します。現場の責任者と一緒に、入社後半年から1年で担ってほしい業務を洗い出すと、求める人物像が具体的になります。そのうえで、「入社時点で必須の経験」と「入社後に覚えればよいこと」を分けてください。

こうすれば、業界や職種の完全一致にこだわる必要がなくなります。書き出した内容は、そのまま求人票の仕事内容や応募条件に反映させましょう。厚生労働省のリーフレットも、年齢を問わずに募集する際は、業務内容と必要な能力などを明示するよう呼びかけています。

参考:その募集・採用 年齢にこだわっていませんか?(厚生労働省)

▼求人票に何をどう書けばよいかは、以下の記事で詳しく解説しています

2. 年齢ではなく役割で処遇を決める

給与や等級は、年齢や前職の年収ではなく、自社で担ってもらう役割から決めます。先に任せる役割と責任の範囲を決め、それに見合う処遇を設定すれば、既存社員との釣り合いも説明しやすくなります。年下の上司のもとに配置する場合は、役割分担と期待する内容を、入社前に本人と上司の双方へ伝えておくことが大切です。

既存社員への説明も欠かせません。なぜその役割と処遇にしたのかを社内に伝えておけば、不公平感を抑えやすくなります。

3. 職歴は雇用形態より経験した業務の中身で見る

書類選考では、雇用形態や転職回数だけを理由に不合格にしないようにします。そもそも、年齢を理由に書類選考や面接で不合格にすることは、法の規定に反する点にも注意が必要です。

面接では、担当した業務、そこでの工夫、成果を具体的に聞き、自社の業務に置き換えられるかを確かめます。異なる業界の経験も、自社で生かせるかどうかという視点で見てください。

参考:募集・採用における年齢制限禁止について(厚生労働省)

産業雇用安定センターの調査では、転職経験のある40〜59歳の6割が、異業種または異職種へキャリアチェンジしていました。経験の中身を見れば、業界が違っても通用する力は見つけられるのです。

参考:「転職経験のあるミドルシニア世代の転職に関する意識調査」結果概要(産業雇用安定センター)

4. 年下の上司からも学ぶ姿勢があるかを確かめる

40代の中途採用がうまくいくかどうかは、経験の量よりも、新しい職場で学び直す姿勢に左右されます。

私が人事責任者として採用した中途社員にも、対照的な例がありました。

うまくいったのは、知識が豊富でも経験をひけらかさず、年下の上司のもとでも気にせず学ぶ姿勢を見せてくれた人です。やがて、実績のある若手社員まで、その人に「他社ではどうしていました?」と意見を求めるようになりました。その結果、その人は「相談できる同僚」として職場に溶け込み、売り上げの向上にもつながりました。

一方、大手企業出身のとある人は、プライドが高く、中小企業を見下す面がありました。若手社員からの指示や指摘にも反発するようになり、次第に孤立して、最終的には退職に至りました。

2人の違いは年齢ではなく、新しい職場で学ぶ姿勢にありました。

前向きな姿勢を持つ人を迎えるために、面接では、「前職と違うやり方を求められたときにどう対応してきたか」「年下の人から教わった経験があるか」を聞いてみてください。答えの内容だけでなく、自社のやり方に関心を示しているかどうかも判断材料になります。

40代を年齢で見ると、採用をためらう理由ばかりが目に入ります。しかし、任せたい業務をこなせるか、学ぶ姿勢があるかで見直せば、40代は中堅層が抜けた会社の有力な採用候補になるはずです。人手不足を嘆く前に、自社の採用基準が40代を入口で外していないか、一度振り返ってみてください。

即戦力の定義や処遇を含めて採用活動を見直したい場合は、Workship CONSULTINGにご相談ください。

(執筆:松尾隆弘 編集:夏野かおる)

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