なぜエース社員は辞めるのか?組織崩壊を招く「構造的な欠陥」と防止策を徹底解説
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中堅社員やエース社員の退職が続き、「なぜ彼らは辞めてしまうのか」「どうすれば引き留められたのか分からない」と悩んでいませんか?現場からは疲弊の声が上がり、採用は思うように進まず、育成に割く余力もない──このままでは組織が回らなくなる、そんな強い危機感を抱いている企業も少なくないでしょう。
この記事では、中堅社員が辞める会社に共通する構造的な原因を整理したうえで、退職の予兆をどう察知するのか、引き留めはどこまで有効なのか、そして離職を前提とした組織・採用戦略をどう描くべきかまでを一気通貫で解説します。
筆者は現役エンジニアとして、またフリーランスとして多くの現場を経験し、中堅社員が退職を決意する“瞬間”や、表には出にくい本音を数多く目の当たりにしてきました。組織の内と外の両方を知る立場だからこそ見える、中堅層離職のリアルと向き合いながら、企業がいま取るべき打ち手を具体的に言語化していきます。

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目次
中堅社員の退職が相次いでいる背景には、個人の価値観の変化だけでなく、企業や社会構造そのものの変化があります。かつては「安定層」と見なされてきた中堅社員に、いま何が起きているのでしょうか。まずはデータや現場の実感をもとに、退職が増えている現状を整理していきます。

ビズリーチ WorkTech研究所の調査によると、直近1年間で「退職者が増加した」と回答した企業は約6割にのぼり、特に大企業では7割を超えるなど、深刻な状況が浮き彫りになっています。なかでも企業が最も問題視している退職者層は、新卒入社から5~10年程度の中堅社員です。(参考:退職者状況の調査結果|株式会社ビズリーチ)
現場業務を担う即戦力人材の流出が、組織運営に直接的な影響を与えている現状が浮き彫りになりました。その背景には、終身雇用を前提としないキャリア観の浸透や、社員一人ひとりが自身の市場価値を意識する「キャリア自律」の広がりがあります。企業側には、従来以上に「社内でどのようなキャリアの選択肢を提示できるか」が問われるようになりました。
中堅層の流出は単なる人手不足にとどまらず、育成コストの損失や組織力の低下にも直結するため、企業運営に与えるインパクトは非常に大きいと言えるでしょう。
中堅社員の退職が増えている背景には、労働市場とスキル要件の構造的な変化があります。かつて主流だった終身雇用モデルは崩れつつあり、「同じ会社で勤め上げること」が必ずしも合理的な選択ではなくなりました。
特に中堅層は、一定の実務経験と専門性を持ち、市場からの評価を受けやすい立場にあります。そのため、社内での昇進停滞や役割の固定化が続くと、「社外に出た方が成長できる」「年収や裁量を上げられる」と判断しやすいのです。
またIT化やDXの進展により求められるスキルの変化も速く、企業側が十分なリスキリングやキャリア設計を示せない場合、キャリア自律志向の中堅社員ほど離職に踏み切りやすくなっています。
中堅層の離職は、企業にとって単なる人数減少にとどまらず、組織全体に複合的な損失をもたらします。なかでも特に影響が大きいのが、採用・育成コストの増大です。即戦力となる人材を外部から採用するには多くの時間と費用がかかり、既存社員と同等のスキルレベルに育成するまでには数年を要するケースもあります。
また、中堅社員は業務プロセスや顧客対応に関する知識・経験を豊富に蓄積しており、その多くは文書化しにくい暗黙知です。離職によってこれらが失われると、業務の属人化が進み、引き継ぎ不足によるミスや生産性低下が顕在化しやすくなります。顧客との信頼関係が特定の個人に依存していた場合、品質低下や取引継続への影響が生じる可能性もあります。
採用難が常態化する現代において、中堅社員の離職は企業にとってこれまで以上に致命的な問題となっています。特にミドル層は新卒のようなポテンシャル採用が難しく、かといって管理職ポストも限られるため、転職市場では常に需給が逼迫し、企業間での奪い合いが激しくなっているのです。
欠員が生じても短期間で代替人材を確保することが難しいため、現場への負荷は一気に高まります。組織の中核を担う中堅層が抜けることで、残された社員の業務量が増え、長時間労働や疲弊、モチベーション低下を招くリスクも無視できません。
こうした状況が続けば、現場の不満が蓄積し、さらなる離職を誘発する悪循環に陥る可能性があります。中堅離職は一時的な人員不足ではなく、組織全体の安定性を崩す引き金になり得る点で、極めて重大な経営課題と言えるでしょう。
中堅社員の退職は、個人の価値観やキャリア志向だけでなく、企業側の構造的な課題によって引き起こされるケースが少なくありません。ここでは、中堅社員が「この会社に居続ける理由を見失う」7つの典型パターンを整理します。

中堅社員が離職を考える大きな要因の一つが、社内で自身の将来像を描けないことです。若手時代は目の前の業務に取り組むだけでも成長を実感しやすいものの、一定の経験を積んだ中堅層になると、「この先どのような役割を担い、どこまで成長できるのか」という視点が重要になります。
しかし、昇進・昇格の基準やキャリアの選択肢が明確に示されていない場合、努力の方向性が見えず、不安が募ります。その結果、「この会社にいても数年後の自分を想像できない」と感じ、社外に活路を求めるようになるのです。
特に専門性を磨いてきた人材ほど、社内に明確なキャリアパスが用意されていないことを致命的に受け止めやすく、離職の意思決定につながりやすい傾向があります。
評価制度の不透明さは、中堅社員のモチベーションを大きく損なう要因の一つです。成果を上げていても、その評価理由が明確に説明されなかったり評価者によって基準が異なったりすると、「どれだけ頑張っても正当に報われない」という認識が社内に広がります。
特に中堅層は、難易度の高い業務に加え、若手の育成やチームの成果創出といった見えにくい役割を担う立場にあります。それにもかかわらず、こうした貢献が評価に反映されない状況が続くと、不満や不信感が蓄積しやすくなるのです。
評価と報酬・昇進が連動していない場合、社内で努力を続ける合理性が失われ、自身の市場価値を確かめるために転職を選ぶケースも増えていきます。
多くの企業では、特定の中堅社員に業務が集中する「属人化構造」が生じています。経験や現場理解があるがゆえに、「あの人に任せれば早い」「結局中堅が対応する」といった判断が積み重なり、業務が偏っていくのです。
その結果、担当業務は増え続け、若手育成や業務改善といった本来注力すべき活動に時間を割く余裕が失われていきます。責任は重い一方で、裁量や意思決定権は限定的という状況が続けば、心身ともに疲弊するのは避けられません。
このような構造を放置すると、「ここに居続ける限り負荷は減らない」という認識が生まれ、「辞めることでしか状況を変えられない」と考える中堅社員が増えていきます。中堅層から順に離職が進む悪循環に陥ってしまうのです。
上司やマネジメント層への不信感も、中堅社員の離職を加速させる大きな要因です。指示が曖昧なまま現場に判断を委ねる、方針が頻繁に変わる、部下の意見に耳を傾けないといったマネジメント上の問題があると、中堅社員は現場と経営の板挟みになりやすくなります。調整役を担う立場である中堅層にとって、上司の判断軸や価値観が不明確であることは大きなストレスです。
「この人の下では成長できない」「この上司についていきたいと思えない」と感じた瞬間、心理的な離職はすでに始まっています。マネジメントの質は、単なる業務効率の問題ではなく、組織に対する信頼や帰属意識を左右する要素といえるでしょう。
中堅社員は、より高い視座で物事を捉え、一定の裁量を持って意思決定に関わることを求める段階に入っています。しかし、失敗を過度に恐れる組織文化やトップダウン色の強い企業では、新しい取り組みや権限移譲が進まず、中堅層が「任されている実感」を持ちにくい点が大きな課題です。
決められた業務をこなすだけの状態が続けば、成長実感を得られないまま仕事が次第にルーティン化していきます。特に外部環境や技術の変化が激しい時代において、挑戦できない環境は「このままではスキルが陳腐化するのではないか」という強い不安を生みやすくなります。
こうした不安が積み重なることで、より成長できる環境を求めて社外に目を向ける動きが加速してしまう傾向があるのです。
中堅社員は、自身の市場価値を比較的冷静に把握できる層でもあります。転職サイトやスカウトサービスの普及により、他社の給与水準や待遇を知る機会が増えた結果、「現在の待遇が市場相場と比べて見劣りしている」と気づくケースも少なくありません。
特に責任範囲や業務量が年々増しているにもかかわらず、報酬や待遇が長期間据え置かれている状況では、不満が蓄積しやすくなります。会社への愛着や人間関係だけで待遇差を補い続けることには限界があり、合理的な判断として転職を選択する中堅社員が増えているのが実情でしょう。
社内政治が強い組織では、成果そのものよりも立ち回りの巧さや上司との関係性が評価に影響するため、真面目に成果を積み重ねてきた中堅社員ほど「正当に評価されていない」という不満を抱きやすくなります。また意思決定に時間がかかりやすく、現場発の改善提案や挑戦的な取り組みが進まないことで、組織全体が徐々に停滞していきます。
こうした環境下では、中堅層は現場と経営の間に生じる矛盾を最も強く感じ取る立場に置かれます。そして「この会社は変わらない」「努力しても状況は改善しない」と判断した瞬間、離職は現実的かつ合理的な選択肢として意識されるようになります。
健全な組織運営ができていないことは、目立ったトラブルが表面化していなくとも、優秀な人材を静かに流出させる大きな要因となるのです。
中堅社員の退職は、ある日突然決断されるものではなく、多くはいくつかの出来事や違和感が積み重なった結果、「ここに残る意味があるか」を再評価する分岐点を迎えたときに起こります。ここでは、中堅社員が残留か退職かを判断する具体的な分岐点を整理します。

中堅社員が退職を検討するきっかけには、感情だけでなく、合理的な判断に基づく組織的要因が存在します。代表的な例が、信頼していた同僚や先輩の連鎖退職です。「あの人が辞めるなら、この会社は危ないのではないか」と感じた瞬間、組織への信頼が揺らぎます。
また配置転換や評価結果に対して十分な説明がなく、納得感を持てないまま受け入れを求められたときも、大きな分岐点となります。加えて、業務内容が固定化し、新しいスキルを身につける機会が得られない状態が続くと、「このままでは市場価値が下がるのではないか」というスキル陳腐化への危機感が高まります。
こうしたロジックベースの違和感が重なったとき、中堅社員は静かに転職を現実的な選択肢として捉え始めるのです。
中堅社員の退職の意思決定には、個人的・心理的な要因も大きく影響します。その代表例が、上司への信頼残高の喪失です。日々の言動や評価、意思決定を通じて積み上がってきた信頼が失われた瞬間、「この人のもとで働き続けたいか」という問いが生まれます。
他にも、自身のスキルや経験を通じて市場価値を自覚し、「今なら転職できる」という感覚を持ったことが、行動を後押しするケースも少なくありません。育児や介護といったライフステージの変化により、現在の働き方とのズレを感じ始めることも分岐点となります。
中堅社員の離職には、事前に何らかの兆候が表れるケースが少なくありません。具体的には、次のような行動変化が挙げられます。
このような兆候は、業務への関与度や心理的コミットメントが低下しているサインと捉えるべきでしょう。分岐点で適切に対応するためにも、現場マネージャーと密に連携し、日常的な1on1や業務状況の共有を通じて小さな違和感を拾い上げていくことが重要です。
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中堅社員から退職の意思が示されたとき、企業には迅速かつ冷静な対応が求められます。ここでは、退職意向が顕在化した段階で取るべき「現実的かつ効果的な引き留め策」を整理します。
退職意向が示された際、多くの企業が真っ先に検討するのが、カウンターオファー、いわゆる条件改善による引き留めです。市場価値に比して明らかに待遇が低かった場合や、本人が退職理由として条件面を主に挙げている場合には、カウンターオファーが有効に機能することがあります。
一方で、退職の根本原因が評価への不信感やマネジメントへの不満にある場合、条件だけを上乗せしても問題は解消されません。年収アップや役職提示が短期的な効果をもたらしたとしても、数か月後に再び退職を選択するケースも少なくないのです。
重要なのは、「なぜ辞めたいのか」を正確に見極めたうえで、引き留めが本当に本人と企業双方にとってプラスとなるかを判断することです。感情的に引き留めるのではなく、冷静に意思決定の質を高める姿勢が求められます。
中堅社員の引き留め施策として、「特命案件の付与」や「ポスト提示」が用いられることがあります。本人の成長意欲や承認欲求に応える手段として有効に機能する場合もありますが、使い方を誤ると一時的な延命策に終わってしまう点に注意が必要です。
本人の志向や強みと結びついていないミッションを与えた場合、「結局、都合よく使われているだけだ」と受け取られかねません。また、肩書きだけが変わり、実質的な権限や裁量が伴わないポスト提示も、期待外れに終わるリスクがあります。
特命案件やポストは単なる役割追加ではなく、本人が「この会社で次のステージに進める」と実感できる内容になっているかどうかが、リテンション成功の分かれ目となるでしょう。
退職意向が出た直後の1on1では、説得や引き留めを急ぐのではなく、まず徹底した傾聴が求められます。本人自身も「なぜ辞めたいのか」を整理しきれていないケースがあるため、反論や正当化を挟まず、本人が感じている違和感や不満を言語化してもらうことが重要です。
対話を通じて組織要因と個人的要因を切り分け、残留の選択肢も含めて一緒に整理していくことで、たとえ最終的に退職に至ったとしても、双方にとって納得感のある意思決定になります。1on1は引き留めの場である以前に、意思決定の質を高める場だと捉えるべきでしょう。
退職理由が特定の業務内容や人間関係に起因している場合、配置転換や異動が有効なリテンション策となることがあります。環境をリセットすることで心理的な負荷が軽減され、新たな視点で仕事に向き合えるようになるケースもあるためです。
ただし、この提案も唐突に行うと「問題の先送り」と受け取られる可能性があります。重要なのは、異動の目的と期待役割を明確に伝えることです。「とりあえず異動」ではなく、「なぜこのポジションなのか」「どんな成長が期待されているのか」を具体的に説明する必要があります。
また、本人の意向を無視した異動は逆効果になるため、あくまで選択肢の一つとして提示し、納得感を持ってもらう姿勢が求められます。
中堅社員の退職が組織に与える影響が大きい場合、経営層との対話を検討する価値があります。この対話は単なる慰留や条件交渉の場ではなく、会社としての姿勢を明確に伝えるために設計されるべきものです。
経営層との対話では、「組織としてどのような役割を期待しているのか」「中堅社員をどのように位置づけ、今後どう向き合っていくのか」といった、会社としての本気度を言葉にして示すことが重要です。現場マネージャーの裁量だけでは解消が難しい構造的な課題がある場合にこそ、経営の視点からのメッセージは強い意味を持ちます。
一方で、退職の意思がすでに固まった後に慌てて場を設けてしまうと、「今さら何を言っても変わらない」という印象を与え、かえって不信感を強めてしまう恐れがあります。対話のタイミングと目的を事前に明確にし、中堅社員が「この会社は本気で変わろうとしている」と感じられるような設計が求められます。
中堅社員の離職を本質的に防ぐためには、個別対応や一時的な引き留め策だけでは不十分です。ここでは、中堅層の流出を防ぐために企業が取り組むべき恒久的な組織設計のポイントを整理します。
中堅社員の離職対策が後回しにされがちな理由の一つに、「どれほどの損失が発生しているのか」が可視化されていない点があります。採用コスト・育成コスト・戦力化までに要する時間・ナレッジ喪失による生産性低下など、離職が企業にもたらす影響を定量化し、金額や工数として示すことで、はじめて離職問題を経営課題として捉えやすくなります。
経営層を巻き込むうえで重要なのは、人事部門だけで課題を抱え込まず、事実と数字に基づいた形で資料化することです。「中堅社員が1人離職した場合、企業にどれほどの損失が生じるのか」を明確に示すことで、離職対策に対する投資の必要性や優先度を、経営判断として検討しやすくなります。
キャリア自律支援とは、会社が一方的にキャリアを決めるのではなく、社員自身が主体的に将来を考え、その選択を組織が後押しする考え方を指します。中堅社員の離職を防ぐうえでは、「社内にいながらも自分のキャリアを選択できる」という感覚を持ってもらうことが欠かせません。
その具体策として有効なのが、社内公募制度の導入です。異動や新規プロジェクトへの参加を社員自らが手を挙げて選べる仕組みを整えることで、「社外に出なくても挑戦できる」という安心感が生まれます。中堅社員にとってはキャリアの行き止まり感を解消する手段となり、結果として組織への定着や離職防止につながります。
変化の激しい時代において、中堅社員が不安を感じやすいのがスキルの陳腐化です。この不安を解消する手段として、副業解禁や越境学習の推進が注目されています。社外での活動を認めることで、社員は新しい知識や視点を得られ、本業への還元も期待できます。
重要なのは、副業を「離職の前段階」と捉えるのではなく、「学習と成長の機会」として位置づけることです。越境学習によって視野が広がることで、むしろ自社の課題や魅力を再認識するケースもあります。社内だけで成長を完結させようとせず、外部との接点を組織的に許容する姿勢が、中堅社員の定着につながります。
評価への不信感は、中堅社員の離職を招く大きな要因です。その対策として有効なのが、360度評価やコンピテンシー評価の導入です。
360度評価とは、上司だけでなく、同僚・部下・場合によっては他部署や関係者など、複数の立場から評価を行う仕組みを指します。一人の上司の主観に依存せず、日常的な振る舞いやチームへの貢献度を多面的に捉えられる点が特徴です。特に中堅社員が担いがちな「調整役」「育成役」「現場の潤滑油」といった、成果として見えにくい価値を評価しやすくなります。
一方、コンピテンシー評価とは、成果そのものだけでなく、成果を生み出す過程でどのような行動・思考を取ったかに着目する評価手法です。たとえば「主体的に課題を見つける」「周囲を巻き込む」「意思決定の質が高い」といった行動特性を、評価基準として明文化します。
これらを組み合わせることで、「誰が評価しても同じ基準で評価されている」という納得感が生まれ、中堅社員の評価不信や離職リスクを下げる効果が期待できます。
中堅社員のモチベーション低下は、必ずしも報酬水準そのものが原因とは限りません。「自分の仕事をきちんと見てもらえていない」「正当に評価されていない」という承認不足が、長期的に蓄積しているケースも多く見られます。こうした状況への対応策として有効なのが、スポットボーナスやインセンティブの活用です。
成果や貢献に対してタイムリーに報いる仕組みを設けることで、日々の努力が組織に認識されているという実感を持ってもらえます。この際に重要なのは、金額の大小以上に「なぜ評価されたのか」を明確に伝えることです。評価理由が言語化されることで、行動と評価の因果関係が理解され、納得感が高まります。
中堅社員の離職を防ぐためには、個人の努力に依存した働き方から脱却し、業務構造そのものを見直すことも非常に重要です。特定の中堅社員に業務や判断が集中する属人化状態は、負荷の増大や慢性的な疲弊を招き、離職リスクを高めます。
こうした状況を防ぐために、業務プロセスの標準化やマニュアル整備、適切な権限分散といったオペレーション設計が求められます。あわせて、業務量を可視化し、チーム全体で負荷を平準化する取り組みも重要です。「できる人に任せ続ける」構造を改め、誰かが抜けても回る仕組みを整えることが、属人化を前提としない組織づくりにつながります。
中堅社員の離職を完全に防ぐことが難しい以上、企業には「辞めない前提」の発想から脱却した採用戦略が求められます。ここでは、一定の離職を織り込みながらも、組織の競争力を維持・強化できる体制づくりの考え方を整理します。

従来の要員計画は、「欠員が出たら補充する」という後追い型が主流でした。しかし中堅社員の流動性が高まる現在、この考え方では常に人手不足に陥ります。
そこで重要になるのが、離職率を前提にした要員計画です。過去の中堅層の離職率、採用リードタイム、戦力化までの期間といった指標をもとに、「いつ・どの層が・どれくらい抜ける可能性があるか」をあらかじめ想定しましょう。あわせて、採用プロセスのどこにボトルネックがあるのかを可視化することも重要です。
書類選考、面接、内定承諾など、どの工程で時間がかかっているのかを把握することで、改善余地が明確になります。
【まず着手すべきこと】
・過去2~3年分の中堅社員の離職率を把握する
・戦力化までにかかる期間(オンボーディング期間)を整理する
・採用リードタイム(募集開始~入社)を数値で把握する
・離職を前提に、「いつ・どの層が抜けるか」を想定した要員計画を立てる
・要員計画をデータ付きで経営と共有する
中堅社員が抜けた際に組織ダメージを最小化するためには、即戦力採用のスピードを高めることも重要です。
そのためには、採用要件の再定義が重要になります。理想像を詰め込みすぎた結果、いつまでも採用できない状態に陥っている企業は少なくありません。すべてを満たす人材を探すのではなく、「入社時点で必須な要件」と「入社後に育成可能な要件」を切り分けることで、採用の間口は広がります。
また、選考プロセスを簡素化し、意思決定のスピードを上げることも重要です。中堅層の即戦力採用では、スピードそのものが競争力になるという認識を持つ必要があります。
【まず着手すべきこと】
・採用要件を見直し、盛り込みすぎている条件を削る
・要件を「入社時必須」と「入社後に育成可能」に切り分ける
・理想像ではなく、現場で本当に必要な役割ベースで要件を定義し直す
・選考フローを簡素化し、内定までのスピードを上げる
・内定までの日数をKPIとして可視化・管理する
アルムナイ(出戻り)採用とは、一度自社を離れた人材を再雇用する採用手法です。過去に在籍していた人材のため業務理解が早く、カルチャーフィットの不確実性も低いとされています。再入社後の立ち上がりが早く、採用リスクを抑えやすいのがメリットです。中堅社員の離職をすべて「損失」と捉えるのではなく、将来的に再接続できる人材プールとして考える視点が求められます。
そのためのポイントは、退職時に関係を断ち切らないことです。円満な退職プロセスを設計し、アルムナイ向けの情報発信やコミュニティを通じて継続的な接点を持つことで、「また戻れる会社」という認識が生まれます。
離職を前提とする時代において、アルムナイ採用は持続的な採用戦略の一つとして有効な選択肢と言えるでしょう。
【まず着手すべきこと】
・過去に退職した中堅社員のリストを洗い出す
・退職理由や在籍時の評価を整理し、再雇用候補になり得る人材を特定する
・退職時に円満な関係を維持するためのプロセスを見直す
・アルムナイ向けに、会社の近況や募集情報を発信する手段を用意する
・「出戻りは歓迎される」という経営・現場の共通認識をつくる
採用難が続く中で、信頼性の高い採用チャネルとして注目されているのがリファラル採用です。社員からの紹介による採用はスキルやカルチャーのミスマッチが起きにくく、定着率も高い傾向があります。特に中堅層の採用では、現場を理解している社員の目利きが大きな価値を持ちます。
ただし、制度だけ用意しても機能しないケースが多いのも事実です。紹介しやすい仕組みやインセンティブ設計、紹介後のフィードバック共有など、運用面の設計が求められます。リファラル採用を「個人の善意」に頼らず、戦略的な採用手段として組み込むことが重要です。
【まず着手すべきこと】
・リファラル採用を「やっていい制度」ではなく正式な採用手段として位置づける
・社員が紹介しやすいよう、求める人物像を簡潔に言語化する
・紹介後の流れ(選考・結果共有)を整理し、ブラックボックス化を防ぐ
・紹介して終わりにならないよう、結果のフィードバックを必ず返す
・金額よりも納得感を重視した、シンプルなインセンティブ設計を用意する
中堅社員の離職を前提にするなら、正社員だけで組織を完結させようとしない発想も必要です。副業人材やフリーランスといった外部人材を活用することで、欠員による業務停滞リスクを抑えることができます。特に専門性の高い業務や短期的なプロジェクトでは、外部人材の柔軟性が大きな武器になります。
外部人材を一時的な穴埋めではなく、組織戦略の一部として位置づけることが重要です。業務の切り出しや受け入れ体制を整えることで、必要なときに必要なスキルを取り込める組織になります。離職前提時代の次世代組織とは、内外の人材を組み合わせて価値を生み出せる組織だと言えるでしょう。
【まず着手すべきこと】
・正社員で抱え込んでいる業務を洗い出し、外部に切り出せる業務を特定する
・「人が欲しい」ではなく、任せたい業務・成果物ベースで要件を定義する
・中堅社員が担っている業務の一部を、副業・フリーランスで代替できないか検討する
・外部人材を受け入れるための窓口・契約・オンボーディングの流れを整理する
・採用難時代の選択肢として、外部人材活用を経営・現場と共有する
「副業・フリーランス人材を活用したいが、どこから探せばよいかわからない」と感じている企業にとって、有力な選択肢となるのがWorkshipCAREERです。即戦力となる副業・フリーランス人材を柔軟に活用することで、中堅社員の離職リスクにも耐えられる組織づくりを進めることができます。
外部人材の活用方法としては、採用代行や採用コンサルティングを活用する選択肢もあります。自社の採用課題に応じた支援内容を知りたい方は、あわせてこちらの記事も参考にしてみてください。
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中堅社員の離職は構造的な課題である一方、適切な打ち手によって実際に改善している企業も存在します。ここでは、キャリア設計や業務構造、マネジメントの見直しなどを通じて、中堅社員の離職を食い止めた企業の具体的な取り組みを紹介します。
サイボウズ株式会社では、かつて高い離職率が経営課題となっていました。その背景にあったのが、画一的な働き方や評価制度と、社員の多様な事情・価値観とのミスマッチです。
そこで同社は、働く時間や場所を個人が選べる柔軟な制度を導入し、チーム単位での対話を重視する組織運営へと転換。さらに、成果だけでなくプロセスや貢献を可視化し称え合う仕組みを整備しました。
中堅社員が「自分は信頼され、必要とされている」と実感できる環境を実現したことで、社員のエンゲージメントが向上し、離職率は28%から4%へと大幅に改善しました。
参考:サイボウズはいかにして“共創する組織”をつくり上げたのか|Unipos HRコラム
伊藤忠商事株式会社は、平均勤続年数18年、自己都合離職率1.6%(2021年度)という高い定着率を維持しています。その背景にあるのが、入社後の長期的な育成を前提とした明確なキャリア設計です。
総合職では新卒入社後8年間を教育期間と位置づけ、国内外を含む複数のローテーションや海外経験を通じて視野と専門性を広げられます。加えて、毎年のキャリアミーティングやキャリアビジョンシートを通じて、自身の強みや将来像を言語化し、上司と共有する仕組みを整備しました。
OJTを軸に成長実感と将来像を持たせることで、中堅期に差しかかっても「この会社で成長し続けられる」と感じられる環境を構築しています。
参考:実践事例 変化する時代のキャリア開発の取組み|厚生労働省
カネテツデリカフーズ株式会社では、かつて入社3年以内の離職率が50%前後と高く、育成の在り方が大きな課題となっていました。背景には、忙しい先輩社員に遠慮して新人が相談できないことや、指導方法が属人的だった点があります。
そこで2017年に導入したのが「新入社員指導員制度」です。入社2~3年目の若手社員を指導員に任命し、約半年間マンツーマンで指導を行う仕組みを整備しました。
指導計画と月次フィードバックを通じて、育成を組織全体で支える体制を構築した結果、入社3年以内の離職率は10%前後まで大幅に改善。指導する側の若手・中堅社員にとっても成長機会となり、定着率向上につながっています。
中堅社員の退職は、単なる人員の入れ替わりではなく、採用難が続く現在の労働市場において、企業の競争力を左右する最重要課題です。
その背景には、キャリアの不透明さや評価への不信、属人化した業務構造など、個人ではなく組織側に起因する問題が数多く存在します。だからこそ、離職を「防ぐべき事象」として捉えるだけでなく、兆候を早期に察知し、構造そのものを見直す視点が欠かせません。
短期的な引き留め施策に加え、キャリア支援や業務改善、外部人材の活用を組み合わせた持続可能な組織設計へと転換することが、中核人材の退職を組織変革の起点へと変える第一歩となるでしょう。

▲出典:Workship CAREER
中堅社員の退職を本質的に食い止め、組織変革を進めていくためには、「辞めない仕組み」づくりと同時に、「辞めても回る組織」への転換が欠かせません。その有効な選択肢の一つが、副業・フリーランスといった外部人材を柔軟に活用することです。
WorkshipCAREERは、リモートワークやハイブリッド勤務が可能な企業の求人に特化した人材紹介サービスです。全国どこからでも働ける環境を求める人材や、週1~3日の出社など柔軟なワークスタイルを重視するIT人材に向けて、最適なキャリア機会を提供しています。リモートワークを推進する企業とのネットワークを活かし、通勤の制約なくスキルを発揮できるポジションをご紹介できる点が強みです。
専門エージェントが企業・人材双方のニーズを丁寧にヒアリングし、報酬相場や条件交渉まで一貫して支援。中堅社員に過度な負荷を集中させることなく、持続可能な組織づくりを進めたい企業にとって、有力な選択肢となるでしょう。
中核人材の退職をリスクではなく、組織進化の契機に変えたい企業は、Workship CAREERの活用も検討してみてはいかがでしょうか。
(執筆:水無瀬あずさ 編集:猫宮しろ)