【税理士監修】インボイス制度の影響とは。売上300万のフリーランスは収入が20〜30万減る?

知らないとマズいインボイス制度

フリーランスがピンチに!と注目されている「インボイス制度」

インボイス制度とは、2023年10月から始まった、消費税の仕入税額控除に関する制度です。2023年10月から登録番号を持つ課税事業者のみが「インボイス(適格請求書)」を発行する制度となり、適格請求書の受け手において適格請求書を保存することによって、受け手は仕入税額控除の適用を受けることになります。

「なんのこっちゃ?」という制度ですが、これが多くのフリーランスの収入に打撃を与えるとされています。

なかでも大きく影響を受けるのが、消費税の納税が免除されている、基準期間における課税売上高(のちに解説します)が1,000万円以下の免税事業者のフリーランスです。インボイス制度により、最終的な手取りが20~30万円吹き飛ぶ可能性も……。

今回はインボイス制度のポイントと、免税事業者のフリーランスにあたえる影響を説明します。

監修:伊沢成貴
監修:伊沢成貴

公認会計士山内真理事務所 税理士。都内会計事務所勤務を経て、2017年に公認会計士山内真理事務所に入所。会計税務の側面からクリエイター・アート・カルチャー分野の支援に従事。

インボイス制度とは

インボイス制度の正式名称は「適格請求書等保存方式」です。

インボイスは英語で「請求書」を意味する単語ですが、ここでいうインボイスとは「適格請求書」という新しい様式の請求書を指しています。

新しい様式の請求書 = 適格請求書(以下、インボイス)

インボイスという新たな記載方式を採用して、請求書のルールを変えようというのがインボイス制度の大枠です。

まず簡単に説明すると、インボイス制度によって、以下の3点で請求書の書き方が大きく変わります。

  1. 記載すべき必須項目が増える
  2. インボイスを発行するには、登録番号が必要になる
  3. 免税事業者の請求書は、仕入税額控除の対象にならない

1. 記載すべき必須項目が増える

インボイス制度がはじまると、10%と8%の軽減税率の記載や、税率ごとの合計額など、請求書に記載するべき項目が増えます。

なおインボイスの発行は、適格請求書発行事業者の義務となります。

2. インボイスを発行するには、登録番号が必要になる

インボイスを発行できるのは、登録番号を持っている適格請求書発行事業者のみです。

なお登録番号を持てる適格請求書発行事業者は、課税事業者のみがなることができます。

3. 免税事業者の請求書は、仕入税額控除の対象にならない

消費税の納税が免除されている免税事業者は、登録番号を取得できません。そのため免税事業者は、登録番号の記載が必須要件であるインボイスを発行できません。

これのなにが問題かというと、インボイス制度のもとでは、請求書等を受け取る発注元や購入者において、原則「売上に係る消費税額」から「経費に係る消費税額」を差し引く仕入税額控除の対象にならないのです。

インボイス制度を理解するために必要な基本知識

「なんだかややこしい……」というイメージがあるインボイス制度。制度の影響を理解するためには、よく出てくる単語の意味を覚えましょう。

ポイントになるのは、「課税事業者」「免税事業者」「仕入税額控除」「益税」の4つです。

「課税事業者」と「免税事業者」の違いとは

課税事業者と免税事業者の違いは、消費税の納税義務があるかどうかです。

  • 課税事業者:
    基準期間における課税売上高が1,000万円超の事業者。消費税の納税義務がある(任意で課税事業者になることも可能。また、基準期間における課税売上高が1,000万円超以外の要件によって課税事業者となる場合がある。)
  • 免税事業者:
    基準期間(※1)における課税売上高(※2)が1,000万円以下の事業者。消費税の納税義務はない。
    (※1 基準期間:個人事業者はその年の前々年、法人は原則その事業年度の前々事業年度を指します)
    (※2 課税売上高:売上高等から値引額等を控除した残額をいいます。売上高等や値引等は、基準期間において課税事業者の場合には税抜で計算し、免税事業者の場合には税込で計算します)

会社や個人事業主の売り上げには、通常「消費税」が含まれています。この消費税は、国に納付するものです。そして消費税の納税義務を負っている事業者を「課税事業者」と呼びます。

しかし売り上げが小さい事業者は、特例として消費税の納税が免除されます。この免除されている事業者を「免税事業者」と呼びます。

(参考:国税庁 納税義務の免除

課税事業者の「仕入税額控除」とは

もうひとつ、インボイス制度で大きな影響を受けるのが「仕入税額控除」です。

仕入税額控除とは、課税事業者が消費税を国に納めるときに、「売り上げに係る消費税額」から「仕入(経費)に係る消費税額」を差し引くことをいいます。この差し引いた金額が消費税の納税額となります。

仕入税額控除 = 売上に係る消費税 - 仕入に係る消費税 = 国に納める消費税

下記の図では、小売業者の売上100,000円に含まれる売上に係る消費税額10,000円から仕入70,000円に含まれる仕入れに係る消費税額7,000円を差し引いて、3,000円が消費税の納付税額になるという計算となっています(納付税額D)。

このように、「売上に係る消費税額」から「仕入に係る消費税額」を差し引く計算を仕入税額控除といいます。この仕入税額控除制度があることによって、下記の図の小売業者、卸売業者、完成品製造業者において、二重、三重に税が課されることのないよう、税が累積しない仕組みとなっています。

2023年10月のインボイス制度開始以後は、この仕入税額控除を行うとき、適格請求書を受け取り、保存をすることが要件となります。

適格請求書の発行ができない免税事業者から受け取った請求書は、適格請求書ではありません。そのため、免税事業者からの仕入については仕入税額控除が制限されます。

発注元としては、仕入税額控除が制限されると、国に納める消費税が増えてしまうため、発注元が免税事業者と取引を行うことを避ける可能性があります。

免税事業者の益税問題

免税事業者は消費税を納税する義務がないため、納税すべき消費税は「そのまま収入」になっていました。

先程の例で小売事業者は3,000円の消費税が納税額となると説明いたしましたが、もしこの小売事業者が免税事業者である場合にはこの3,000円を納税することなく、その事業者の利益となります。

これをいわゆる「益税」といいます。

今回のインボイス制度により免税事業者の益税が減り、財務省は約2,000億円の増収になるという試算を発表しています。つまり「免税事業者を減らすことにともない、益税を減らし、消費税の税収を増やそう」というのがインボイス制度の狙いのひとつです。

これが、インボイス制度で免税事業者のフリーランスが打撃を受ける大きな理由です。

インボイス制度の開始スケジュール

インボイス制度は2023年10月から開始されました。

その開始時期に向けて、請求書の記載の方式が変わっていきました。

どのような点が変わっているのか、時系列でご説明します。

2019年10月までの請求書の書き方【請求書等保存方式】

2019年10月以前の段階で、請求書に載せるべき必要項目は以下の5点でした。

  • 請求書発行者の氏名又は名称
  • 取引年月日
  • 取引の内容
  • 対価の額(税込)
  • 請求書受領者の氏名又は名称

免税事業者からの請求書も、仕入税額控除が可能となっていました。

2019年10月からの請求書の書き方【区分記載請求書等保存方式】

2019年10月からは、記載必須項目に下記の2点が追加されました。

  • 軽減税率の対象品目である旨
  • 税率ごとに合計した対価の額(税込)

新しく導入された軽減税率の品目ごとに、どれが消費税8%で、どれが消費税10%かを記載する必要があるということや、税率ごとの税込金額の合計額を表示する変更です。

飲食料品を扱う事業者など、業界によっては請求書を作成する手間が増えました。

このときもまだ、免税事業者からの請求書も、仕入税額控除が可能となっています。

2023年10月からインボイス制度の正式運用がはじまる【適格請求書等保存方式】

正式にインボイス制度がスタートするのは、2023年10月からです。

これまでの変更に加え、インボイスには以下の2点の記載が必要になります。

  • 登録番号
  • 税率ごとの消費税額および適用税率

登録番号があることで、インボイスは登録を受けた課税事業者である適格請求書発行事業者のみしか発行できなくなります。つまり免税事業者は、そもそもインボイスを発行できません。

そして免税事業者が発行した請求書(登録番号がないもの)は、請求書の受け手において仕入税額控除が制限されます。

また、適格請求書発行事業者はインボイスをかならず発行しなければならず(交付義務あり)、偽った内容を記載した場合は罰則が設けられています(不正交付)。

【インボイス制度で変わること】

  • 登録番号を持てない免税事業者は、インボイスを発行できない
  • 請求書の受け手はインボイスを受領できないと仕入税額控除が制限される

インボイス制度で免税事業者のフリーランスが直面する問題点

ここまでインボイス制度とはなにかを説明してきました。ここからはインボイス制度が実質的にどんな影響を与えるのか、くわしくみていきましょう。

インボイス制度で大きな問題と考えられているのは、以下の2点です。

  1. 免税事業者は、インボイスを発行できない
  2. 請求書の受け手はインボイスを受領できないと仕入税額控除が制限される(免税事業者との取引は仕入税額控除が制限される)

これにより免税事業者であるフリーランスは、収入にダメージを受ける可能性があると考えられています。

仕入税額控除ができないと取引先が損をする?

インボイスを発行できないのは免税事業者ですが、それにより発注元である課税事業者も影響を受けます。前述のとおり、免税事業者から受け取った請求書は仕入税額控除が制限されるからです。

仕入税額控除が制限されるため、発注元である課税事業者は、インボイス制度開始前より多くの消費税を納めることになります。

免税事業者が発行する請求書で仕入税額控除ができなくなると、どう変わる?

免税事業者から請求書を受け取った際の課税事業者の仕入税額控除の対応を、インボイス制度前と後でくらべてみます。

もし、税込10,000円の請求書を受け取ったとしたら……

【インボイス制度実施前】

請求額10,000円のうち10%の消費税910円を、国に支払う消費税額から差し引ける

【インボイス制度実施後】

免税事業者からの請求書では仕入税額控除が利用できず、「消費税分の910円」を「売上に係る消費税額」から控除することができなくなります。

したがって、インボイス制度において、免税事業者と取引をした課税事業者は、課税事業者と取引をした場合と比較して、910円分の消費税を多く国に納めることになります(経過措置終了後)

免税事業者と取引する課税事業者が受ける影響の大きさ

「たったの910円」と思うかもしれません。しかし全体で見ると、課税事業者が受ける影響はかなり大きくなります。

たとえば課税売上高1,000万円の事業者が、年間200万円分を免税事業者と取引をしていたら、インボイス制度下においては消費税20万円分を多く支払うことになります。

【例:消費税10%、売上高1,000万円、免税事業者との取引200万円、経費300万円(金額はすべて税抜。経過措置終了後。)】

課税事業者の消費税支払い額 売上にかかる消費税 免税事業者との取引にかかる消費税 その他経費にかかる消費税 最終的におさめる消費税額
インボイス制度開始前 100万円 20万円 30万円 50万円
インボイス制度開始後 100万円 0円(仕入税額控除が制限されるため) 30万円 70万円

免税事業者との取引ボリュームが大きい課税事業者ほど、取引を見直す必要にせまられるでしょう。

インボイスを発行できない免税事業者は売り上げがダウンする?

インボイスが発行できない免税事業者には、どのような影響があるでしょうか。

まず考えられるのは、取引先から消費税額分の見直しを要求されることです。税込10,000円で発行していた請求書に対して、「仕入税額控除ができないから、消費税分を引いた金額で請求して」と要求される可能性があります。

【例:消費税10%、請求額10,000円(税込)の場合】

売上 消費税(10%) 請求額(税込)
インボイス制度開始前 9,090円 910円 10,000円
インボイス制度開始後 9,090円 0円 9,090円

そうなると10,000円だった取引が、10%ダウンしてしまうことに。

もちろんこれは可能性の話です。現実的には取引先と交渉し、金額を維持するという選択肢もあります。

なお、発注元は発注先に対して適格請求書発行事業者の登録や値下げを一方的に行うことは、独占禁止法により禁止されている「優越的地位の濫用」に該当したり、「下請法に違反」する場合があります。

経過措置を利用し、6年間は免税事業者から受け取った請求書でも仕入税額控除ができる

このように、課税事業者・免税事業者ともに大きな影響を受けると考えられているインボイス制度ですが、制度開始からすぐに仕入税額控除の全額が制限され、不利になるわけではありません。

開始から6年間は、免税事業者との取引の一部を仕入税額控除の対象にできる経過措置が設定されています。

  • 2023年10月から3年間は、免税事業者の仕入税額の80%が控除対象に
  • 2026年10月から3年間は、免税事業者の仕入税額の50%が控除対象に

これにより、課税事業者は免税事業者の取引金額の一部を、仕入税額控除の対象にできます。免税事業者との取引は仕入税額控除が制限されたからといって、すぐさま消費税負担が取引先にかかるわけではありません。

売上高300万円のフリーランスの、インボイス制度開始後の手取り金額シミュレーション

大きな影響があるとされるインボイス制度。正式に開始すれば、フリーランスの収入に響く可能性があります。現実的にフリーランスの稼ぎは、どのように変化するでしょうか。

売上高300万円の免税事業者を例に、以下の3パターンで現在の手取りとの差を比べてみましょう。

  1. パターン1:
    課税事業者になって消費税を納税する
  2. パターン2:
    免税事業者のまま売り上げが10%ダウンする
  3. パターン3:
    課税事業者になって簡易課税制度を適用して消費税を納税する(フリーランスエンジニアで簡易課税制度の第五種事業に該当する場合)

【インボイス制度開始前:売上330万円、仕入55万円(ともに税込)= 手取り約262万円】

売上(A) 3,300,000円
仕入(B) 550,000円
所得税及び復興特別所得税(C) 132,200円
手取り金額(A-B-C)

*個人住民税・個人事業税・社会保険料は計算上考慮していません。

2,617,800円

【インボイス制度実施後 パターン1:課税事業者になって消費税を納税するケース = 手取り約239万円】

売上(A)/売上に係る消費税額(10%) 3,300,000円300,000円)
仕入(B)/仕入に係る消費税額(10%) 550,000円50,000円)
所得税及び復興特別所得税(C) 106,600円
納める消費税(D) 250,000円
手取り金額(A-B-CーD)

*個人住民税・個人事業税・社会保険料は計算上考慮していません。

2,393,400円

課税事業者は基準期間における課税売上高が1,000万円超となった年度のほか、1,000万円以下の場合でも任意でなることもできます

【インボイス制度実施後 パターン2:免税事業者のまま売上10%ダウンするケース = 手取り約234万円】

売上(A) 3,000,000円
仕入(B) 550,000円
所得税(C) 101,500円
収入(A-B-C)

*個人住民税・個人事業税・社会保険料は計算上考慮していません。

2,348,500円

課税事業者になる場合、納める消費税分の約22万円が手取り額から減ります。一方で免税事業者を続けた場合は、売上減少により約27万円のマイナスです。

上記のとおり、フリーランスの収入に影響が生じるでしょう。

また、簡易課税制度(※3)という消費税の計算の方法を使用することで、消費税の納税額を上記より抑えられる場合もあります。

(※3 簡易課税制度:中小事業者の納税事務負担に配慮する観点から、事業者の選択により、「売上げに係る消費税額」を基礎として「仕入れに係る消費税額」を算出できる制度です。「売上げに係る消費税額」に、事業の種類の区分に応じて定められた「みなし仕入率」を乗じて算出した金額を「仕入れに係る消費税額」として、納税する消費税額を計算する方法です。基準期間における課税売上高が5,000万円以下となる場合に適用が可能となります)

【インボイス制度実施後 パターン3:課税事業者になって簡易課税制度を適用して消費税を納税するケース(フリーランスエンジニアで簡易課税制度の第五種事業に該当する場合。) = 手取り約248万円】

売上(A)/売上に係る消費税額(10%) 3,300,000円300,000円)
仕入(B)/仕入に係る消費税額(10%) 550,000円売上に係る消費税額300,000円×50%(第五種事業のみなし仕入率)=150,000円)
所得税及び復興特別所得税(C) 116,900円
納める消費税(D) 150,000円
手取り金額収入(A-B-C-D)

*個人住民税・個人事業税・社会保険料は計算上考慮していません。

2,483,100円

簡易課税制度は状況によって、原則的な消費税の計算(パターン1)よりも、消費税額の納付税額が少なくなる場合があります。今回の例では、パターン3はパターン1より手取り額が約9万円多くなりますね。

さらに簡易課税制度は、原則的な消費税額の計算と比較して、簡便な計算となります。

このように、簡易課税制度にはメリットがある場合がありますので、課税事業者になる場合には、簡易課税制度の適用を検討するのも良いでしょう。

登録事業者/免税事業者のメリット・デメリット

2023年10月のインボイス制度で、課税事業者(登録事業者)になるのか、免税事業者で居続けるのか。

それぞれのメリット・デメリットをまとめました。

インボイス制度が開始したら メリット デメリット
適格請求書発行事業者になる
  • インボイスの発行ができるので、発注元で仕入税額控除のの制限がない。そのためインボイスが発行できないことによる値下げや取引排除を避けられる
  • 消費税の納税義務が発生する分、手取り金額が下がる
  • 消費税申告書の作成・提出の手間がかかる
免税事業者を続ける
  • 消費税の納税の必要がないため、売上が下がらなければ手取り金額をキープできる
  • 消費税申告書の作成、提出が不要
  • インボイスの発行ができないことから、発注元で仕入税額控除が制限されるため、取引先から値引きや取引排除されるリスクがある

適格請求書発行事業者になるためには

基準期間における課税売上高が1,000万円以下でも、消費税課税事業者選択届出書を提出することで、課税事業者になることができます。

なお、適格請求書発行事業者の登録申請書を提出し、免税事業者が2023年10月1日から2029年9月30日までの日の属する課税期間中に登録を受けることとなった場合には、登録日(※4)から課税事業者となる経過措置が設けられています。

(※4:2023年10月1日より前に登録の通知を受けた場合であっても、登録の効力は登録日から生じることとなります)

この経過措置の適用を受けることとなる場合は、登録日から課税事業者となり、登録を受けるにあたり、消費税課税事業者選択届出書を提出する必要はありません。

インボイス制度の適格請求書発行事業者になるための手続きは、2021年10月から

登録事業者の受付は、2021年10月から開始しています。そのためインボイス制度開始の2023年10月1日から登録事業者として活動するには、2023年9月30日までに登録申請書の提出が必要です。

なお、従来は下の図のように「2023年10月1日から登録事業者として活動するには、2023年3月31日までの申請が必要」とアナウンスされていました。しかし、制度変更により、制度開始日までに申請を完了すれば開始日から登録事業者になれるようになっています。

通常の登録事業者の申請スケジュール

インボイス制度の申請期日

▲出典:国税庁

申請手続きの進め方や注意点に関しては、以下の記事をご覧ください。

登録申請までに免税事業者が検討すること

前述の通り、インボイス制度開始までに、免税事業者は、納税義務者になるかどうか、検討をする時間があります。

インボイス制度がはじまるまでは、免税事業者として納税義務が免除された状態で活動し、売上を伸ばしつつ準備するというのもひとつの方法です。

インボイス制度の激変緩和措置

(※2022年12月追記:以降、トージンFP事務所代表・齊藤颯人による解説です)

ここまで見てきたように、免税事業者、課税事業者の双方に大きな影響を与えるインボイス制度。制度のインパクトは非常に大きく、とくに免税事業者のフリーランスから非難が殺到しました。

結果、政府は「2023年度与党税制改正大綱」にて、従来の経過措置に加え、さらなる「激変緩和措置」を盛り込みました。その内容は、以下の2点です。

  • 小規模事業者の消費税納税額が「売上税額の上限2割」に
  • 1万円未満の取引はインボイスなしでも仕入税額控除OK

全体的に事業者の負担軽減措置といえますが、細かな条件がいくつかあるため、以下で詳しく見ていきましょう。

小規模事業者の消費税納税額が「上限2割」に

こちらは、ここまで見てきた消費税の計算方法である

仕入税額控除 = 売上に係る消費税 - 仕入に係る消費税 = 国に納める消費税

の結果にかかわらず、国に納める消費税の上限が「売上に係る消費税の2割」で済むようになった、という措置です。仕組みとしては従来からある簡易課税制度に近いですが、簡易課税よりも必要な税負担が少なくなるケースが多く、基本的にお得な措置といえます。

ただし、2023年10月1日~2026年9月30日までの間に、免税事業者から課税事業者に転換しなければ措置を受けられません。つまり、従来は免税されていた事業者の利用が想定されているため、軽減されたとはいえ負担増につながることは変わりません。

また、この措置は2023年10月1日~2026年9月30日まで、つまり3年間の時限措置であり、2026年10月1日以降の取引からは通常の税負担に戻ってしまいます。

1万円未満の取引はインボイスなしでも仕入税額控除OK

こちらの措置は、請求書の受け手と免税事業者の双方に大きな関係があります。そもそもインボイス制度の根幹は「免税事業者はインボイスを発行できず、請求書の受け手は仕入税額控除ができなくなる」という部分にありました。

しかし、1万円未満の取引であればインボイスがなくても仕入税額控除を使えるようになるため、請求書の受け手と免税事業者に以下のメリットがあります。

  • 請求書の受け手:
    インボイスがなくても仕入税額控除が使えるため、課税事業者への転換を求めなくて済み、事務負担も増えない
  • 免税事業者:
    課税事業者に転換する必要がなく、税負担を抑えられる

ただし、1万円を超えるとインボイスがないと仕入税額控除ができなくなるので、活用できる事業者は限られます。少額取引が多く、1万円を超える取引をほぼ行わない事業者以外にはあまり関係ない措置といえるかもしれません。

また、こちらも適用には「基準期間における課税売上高が1億円以下(または、特定期間における課税売上高が5000万円以下)」という条件を満たす必要があり、期限も2023年10月1日から2029年9月30日までと、6年間に限定されています。

まとめると、2つの激変緩和措置は一定の効果こそあるものの、インボイス制度の負担増を根本的に解消できるものではなさそうです。

まとめ

(※2023年7月追記:以降、Workship MAGAZINE編集部による解説です)

ここまで、インボイス制度について詳しく見てきました。インボイス制度の影響は甚大で、フリーランスはダメージを最小限に抑える必要があります。

インボイス制度による手取り減を補うには、インボイス制度で減少する分よりも手取りを増やす、つまり事業を成長させるしかありません。

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(執筆:サトウカエデ 編集:Workship MAGAZINE編集部、齊藤颯人 監修:公認会計士山内真理事務所 税理士 伊沢成貴)

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