高収入フリーランスのための、社会保険料を賢く抑える方法
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フリーランスにとって頭の痛いテーマの一つが、社会保険料。収入が増えるほど保険料も高額になり、経済的なプレッシャーを感じることもあるはず。会社員時代は勝手に天引きされていたけれど、フリーランスになった今、「何か工夫をして、賢く抑える方法はないんだろうか」と悩んでいる人も多いのではないでしょうか。
本記事では、社会保険料を合法的かつ効率的に抑え、コスパを上げる方法をわかりやすく解説します。社会保険のプロフェッショナルである社労士(社会保険労務士)の私が、日々相談を受ける中でフリーランス(個人事業主、法人化を検討中の方、ひとり法人の代表)のみなさんが疑問に感じていそうな内容にお答えします。
開業社会保険労務士(東京都社会保険労務士会所属)、特にIT/Web業界を中心に支援している。趣味は同人活動で、評論同人サークル「さかさまダイアリー」より同人誌「村上春樹っぽい文章の書き方」シリーズなど発行。(X:@mo_himo)
社会保険料のうち、ウエイトが大きいのは「健康保険」と「年金」です。
このうち「健康保険」は収入に応じて負担が大きく増加する仕組みなため、国民健康保険に加入している場合、年間所得が700万円だと年間の保険料は約80万円(40歳以上だと介護保険料も乗るため、併せて約100万円。いずれも自治体により金額差あり)と負担感が強いです。
一方の「年金」は、基礎年金と厚生年金の「2階建て」構造。フリーランスは一般的に、基礎年金(1階部分)にあたる国民年金のみに加入するため、保険料は年間約20万円(月額約17,000円)ほどです。
金額だけ見ると「健康保険」より負担感が低いですが、「1階部分」だけだと60歳まで40年間完納しても、老後に貰える年金額は年間80万円弱(月額にして68,000円)。この金額ではあまりに心もとないので、国民年金基金やiDeCo、その他の私的年金などを追加で負担する方が多く、結果的に負担が大きくなります。
▲日本の公的年金は「2階建て」(出典:厚生労働省)
なんとかして社会保険料を賢く抑えて、コスパを上げる方法はないのでしょうか。
社労士である私から、3つの方法をご提案します。
節税の観点では一般に、課税所得が年間700〜800万円ほどを超えると法人化のメリットが大きいと言われます。加えて、自ら設立した法人を社会保険の適用事業所にし、自分自身を「被保険者」にすることで、社会保険料の観点からも恩恵を受けられます。
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法人化すると、社会保険料は「法人が支払う役員報酬の額」に応じた金額を、法人と個人が折半して支払う形になります。
通常、1人法人であれば役員報酬は自分で決められるでしょうから、役員報酬を抑えることで社会保険料も下げることができます。なおかつ、法人が負担した分の社会保険料は法人の経費として計上できるので、節税効果もあります。
役員報酬を極端に低く設定すると、税務署に否認されるリスクもあるため、税理士に相談するなどして適正水準を維持する必要がありますが、特に配偶者を扶養しているような場合(配偶者が年収130万円未満で社会保険に未加入)であれば、配偶者分を含めた2名分の国民年金を支払う必要がなくなるため、かなりの負担減が見込めるでしょう。
会社員が病気やケガによって働けなくなったときに支給される、傷病手当金。いわゆる休業補償の立ち位置ですが、法人化をして健康保険に加入すれば、もしもの際には傷病手当金として給与のおよそ「3分の2」が最長1年半、支給されます。これは、自治体の運営する「国民健康保険」では通常は支給されないケースが多いので、法人化して健康保険に加入するメリットと言えるでしょう。
法人化により厚生年金に加入することで、老後は基礎年金と厚生年金の「2階建て」での受給が可能です。「本当にもらえるの?」とネガティブな印象を持たれがちな年金制度ですが、支払いが終身に及ぶことを考えれば、「万が一、貯蓄がないのに長生きしてしまったリスク」への備えとしては、どんな金融商品よりも自信を持ってオススメできます。
会社員からフリーランスに転身するケースに限定される話ですが、健康保険には、退職後も会社員時代の保険に最長2年間は継続して加入できる制度(任意継続制度)があります。
ただし、注意すべき点として、会社員時代は会社と個人で折半をしていた保険料が、退職後には全額負担となる(自己負担額が会社員時代の2倍になる)ことが挙げられます。
「任意継続」中の保険料は原則、退職時の給与水準をもとに計算され続けるため、「会社員時代の退職時点での給与はかなり低かったが、フリーランスになって所得が一気に増えた」人や「扶養家族が多い」人にはメリットが生まれます。
社会保険の被保険者の範囲は徐々に拡大しており、従業員51人以上の企業で「週の所定労働時間が20時間以上」かつ「賃金が月額88,000万円以上」などの要件を満たすと、パート・アルバイトなどの雇用形態であっても、社会保険の対象になります。
つまり、フリーランスで働いている人も、たとえばWワークとしてアルバイトを「週20時間・月給10万円」程度で始めると、社会保険料はこの「10万円」のアルバイト給与に対してかかるわけです。(社会保険の観点では、このアルバイトの方がいわば「本業」という捉え方になるため。)
さらに、この社会保険料は勤務先と折半できるので、前述の「月給10万円」の場合だと「健康保険が月額約5千円、厚生年金が月額約9千円」と、負担が大幅に抑えられます。
昨今は、節税や社会保険料の節約を目的にしたコンサルティングやスキームが横行しています。その違法性を判断するのは裁判所なので、本記事で個々の評価はできませんが、制度趣旨に反するような方法は、今後規制が強化されたり、税金や社会保険料を遡って徴収されたりするリスクを孕みます。
特に、「法人と個人事業との売上を都合よく付け替える」とか「実態のない法人・事業を悪用する」スキームはリスクが大きいため、税金は税理士、社会保険は社会保険労務士といったプロに相談の上、慎重に判断するようにしましょう。
社会保険料の負担は大きいですが、合法的かつ効率的に負担を抑え、「コスパ」を上げる方法は確かに存在します。法人化、健康保険の任意継続、社会保険への加入など、正しく理解して適切に活用することで、安心して節約が可能です。
同時に、不適切なスキームに手を出すことはリスクを伴うため、注意が必要です。
賢い節約の鍵は、「目先の美味しい話にすぐ食い付かず、長期的な視点で計画すること」にあります。ぜひ本記事の内容を参考に、あなたの事業に合った方法を見つけてみましょう。
▲出典:Workship
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(執筆:もひもひ 編集:夏野かおる)