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旅をしながら働きたい。そう思いながらも、「自分には無理」と諦めてしまっている人も多いのではないでしょうか。私もそのひとり。思いっきり諦めていました。
そんななか、Twitterを徘徊していたときに目に入ったのが、ルイス前田さんのアカウント。世界83ヶ国を旅しているというルイス前田さんのタイムラインには、毎日、海外の風景が投稿されています。
どうやったらこんな生活が送れるようになるのだろう…?と気になっていたところ、ご縁があり、ルイス前田さんにインタビューを実施する機会をいただきました。
せっかく話が聞けるなら「これを読めば、すぐ海外フリーランスになれるレベルの記事を書こう」と思い、海外フリーランスに必要な準備やお金、税金、仕事事情について聞きたいことを全部質問しました。
旅をしながら働きたい。一度でもそう思ったことがある方は、ぜひご覧ください。
大学時代、海外ボランティアサークルに所属していたころが人生1番輝いていたと思っているライター(Twitter:@___izumiii)
目次
もし海外フリーランスを目指すとなれば、気になることは無数にあります。今回はそのなかでもとくに気になる「貯金」「ビザ」「税金」「銀行口座」「英語力」「人脈(仕事)」について、最低限どんな準備が必要なのか聞きました。
泉:
海外を旅しながらフリーランスとして働くには、貯金がかなり必要というイメージがあるのですが、実際はいかがですか?
ルイス前田:
もちろん貯金はあればあるほど良いですが、フリーランスとしてすでに仕事をもっている人であれば、多額な貯金は必要ではないと思いますよ。というのも、物価や生活費が安い国に滞在していれば、日本で働くよりもお金が溜まりやすいためです。
日本だと、生活費は1人あたり、最低でも月10万〜15万くらいかかるじゃないですか。でも、たとえばジョージアなら月5万円、タイなら月9万円ほどで暮らせるんです。なので、もともとフリーランスとして仕事をもっていて、生活費が安くすむ国に滞在するなら貯金もあまり必要ないかなと。
泉:
生活費、そんなに安いんですか……!
ルイス前田:
驚きますよね。ただ、「これから脱サラして海外フリーランスになるぞ!」みたいな人は、ある程度余裕をもって貯金しておくのをオススメします。滞在する予定の国で最低6ヶ月、できれば1年くらい無収入でも生きられるくらいの生活費を貯金しておくと精神的に安心して暮らせます。
泉:
あと気になるのがビザで……。現地の企業で働くうえでは就労ビザは必須だと思うのですが、海外にいながら日本での仕事を受けるフリーランスの場合はどうなるのでしょうか?
ルイス前田:
ビザって「よくわからない領域」ですよね。そもそも従来の就労ビザが、フリーランスの働き方を想定できていないんですよ。フリーランス・ノマドワーカーをどう扱うかは、国によっても大きく見解がわかれています。
ただ、世界的にフリーランス・ノマドワーカーが増えてきたことで、「ノマドワーカービザ」を用意する国もでてきました。
泉:
ノマドワーカービザ?
ルイス前田:
ノマドワーカービザは、就労ビザより取得条件が簡単で、観光ビザより滞在出来る期間が長い、フリーランス・ノマドワーカー向けのビザです。
ビザの発行条件のひとつである「一定額以上の収入」の基準が低いのが、ノマドワーカービザの大きな特徴。ジョージアなら2000ドル以上、ブラジルは月額1500ドル以上、メキシコなら月額1620ドル以上の月収があれば、基準を満たせます。(※2023年1月時点)
収入以外の基準には、
などがあり、国によって細かい規定は異なりますが、就労ビザよりは確実に取得しやすいといえます。
2023年1月時点で、世界43カ国がノマドワーカービザを発行しています。行きたい国がある人はぜひ調べてみてください。
【ノマドワーカービザを発行、準備している国々】
- ヨーロッパ
アイスランド、アルバニア、(イタリア)、 エストニア、キプロス、(北マケドニア)、 ギリシャ、クロアチア、ジョージア、 スペイン、(セルビア)、チェコ、ドイツ、 ノルウェー、ハンガリー、ポルトガル、 マルタ、(モンテネグロ)、ラトビア、 ルーマニア- カリブ諸国
アンギラ、アンティグア・バーブーダ、 キュラソー、グレナダ、ケイマン諸島、 セント・ルシア、ドミニカ、バハマ、 バミューダ諸島、バルバドス、モントセラト- 中南米
アルゼンチン、エクアドル、コスタリカ、(コロンビア)、パナマ、ブラジル、 ベリーズ、メキシコ- アジア
スリランカ、タイ、台湾、ドバイ、(バリ島・インドネシア)、マレーシア- アフリカ
カーボベルデ、セーシェル、ナミビア、(南アフリカ共和国)、モーリシャス※カッコ内の国・地域は準備中
(出典:ルイス前田『海外ノマド入門』扶桑社)
ルイス前田:
ビザと同様に、税金も難しい領域ですが、基本的には日本か、海外の居住先で支払う必要があります。ごくたまに、どこにも税金を払っていない海外フリーランスもいますが、例外的かつリスクもあるので、ちゃんと収めていたほうが安心です。僕は海外を転々としていますが、税金は日本に払っています。
ちなみに、ノマドワーカービザを発行している国などでは、フリーランスを対象とした優遇措置が用意されていることがあります。たとえばジョージアなどであれば、「スモールビジネスプログラム」があり、税率は売上の1%です。
泉:
税率1%!? え、絶対海外で納めたほうがお得じゃないですか……!!
ルイス前田:
ただし、ジョージアで税金を納める場合のルールは日本とは異なりますし、プログラムの対象になるためには条件があります。当然、国によっても税率は異なるので、気になる場合は調べてみてください!
ルイス前田:
僕は銀行口座も日本のものを使用しています。海外で働くフリーランスも、日本企業と仕事している人は、基本的に日本の口座を使うはずです。クライアントから振り込まれる先が、日本の口座になるので。
海外の現地企業と取引する場合は、現地の銀行口座が求められますが、国によっては口座を開設するのが大変なので注意が必要ですね。あくまで僕個人の意見になりますが、取引や納税のことを考えると、銀行口座は日本で用意しておくのがいいと思います。
泉:
海外で暮らそうとすると、やっぱり英語は話せないとダメですよね……?
ルイス前田:
話せなくても、ぜんぜん暮らせますよ。日常生活で、難しい英単語や文法は必要ないので。買い物するときは、レジ画面に表示されたお金を支払えばいいですし。「語学ができない=海外に住めない」ではないです。
ただ、孤独は感じると思います。リアルで誰とも話せないとやっぱり寂しいじゃないですか。
だから、英語含め現地の言語を学んでおくのは、必須ではないけどオススメ。英語が通じない国もあるので、行ってみたい国の言葉を調べて学んでおくと絶対楽しいと思います。行ってから学ぶのも良いですね!
泉:
海外で働きながらフリーランスとして働くとなると、日本にいるときに人脈を広げておかないと食いっぱぐれるんじゃないかと不安です……。
ルイス前田:
人脈はなくてもいけると思いますよ! というより、旅を通じて人脈を広げていけるかなと。
泉:
えっ、それはどういうことですか?
ルイス前田:
海外にも日本人はいるので現地で出会えますし、SNSで旅をしていることを発信すれば、オンラインでのつながりもできます。
それも「旅」「海外」という共通の趣味を通じて出会う人たちなので、友達になりやすいんですよね。僕も、旅のなかでたくさんの人と出会うなかで、著名人とも会いましたが、最初は有名な人だなんて露知らず。、現地で仲良くなって話していくなかで、実はすごい人だと分かって。僕がライターや動画編集者をしていることを話すと、仕事を依頼してくれることもありました。
仕事目的で人と出会うわけではないからこそ、結果的に友達と仕事ができる最高な状況を作れるんですよね。なので、旅のなかで人脈を広げる工夫をするのが、めちゃくちゃ良いと思います。
ルイス前田:
前提として、いわゆる在宅ワーク・リモートワークができる仕事であれば、海外フリーランスになれると思います。コロナ禍のとき、多くの人がリモートワークに切り替わったじゃないですか。だから、職種の縛りはあまりないかなと。
ただ、場所や時間の融通が効く仕事、フリーランス向けの仕事が多い職種は、その分海外でも案件を獲得しやすいと思うので、以下の職種はオススメですね。フリーランスになりやすい職種は、海外でも働きやすいというイメージです。
ちなみに、「海外ノマド入門」で行った調査では、約14%の人が会社員のまま、海外ノマドワーカーとして働いているので、必ずしもフリーランスになる必要はありません。いまリモートワークをしている会社員の方は、上司に相談してみると、前向きに検討してくれる可能性もありますよ!
ルイス前田:
これも一般的なフリーランスや副業と同じですね。知人や友人からの紹介、フリーランス・副業向けマッチングサービス、クラウドソーシングサービス、SNS経由などで仕事を獲得していきます。
海外フリーランスだからといって特別なことはあんまりないんですよね。現地の仕事を獲得しようとする人もあまりいません。これは、報酬が現地の物価基準になるので、日本の案件より割安になりやすいためです。
オーストラリアなど日本より生活費・物価が高い国なら現地での仕事を獲得するのも良いと思いますが、アジアや南米などであれば日本の仕事をしたほうが収入を考えると効率的。現地の仕事も楽しいんですけどね。
泉:
海外フリーランスとして仕事をするうえでの注意点などはありますか?
ルイス前田:
海外に滞在していることを、事前にクライアントに共有しておくのは絶対ですね。打ち合わせの時間を配慮してくれたり、海外や旅に関連した仕事を依頼してくれたりする場合もあるので。海外に興味ある方であれば、雑談も盛り上がります。
あとは、「Facebookを積極的に利用しろ!」ということですかね。
泉:
なぜ、Facebookなんですか?
ルイス前田:
まず、Facebookは本名で登録する必要があるため、信頼性が高く仕事につながりやすいんです。僕は、Facebookに自分で握った寿司の写真を投稿していたところ、寿司職人の仕事をいただけました(笑)。
あとは、海外ではFacebookが標準的なSNSだからです。現地の友達ともつながりやすいですし、旅好きな人はだいたいFacebookをよく利用しているので、人脈も広げやすい。なので、海外フリーランスをやるならFacebookは絶対使うべきだと思います。
海外フリーランスを検討している人が気になるであろう「海外フリーランスに適した国」「時差への対策」「結婚・子育て事情」を聞きました。
泉:
海外フリーランスを始めるのに、オススメの国を教えてください!
ルイス前田:
文句なしにオススメできるのがジョージアです!
生活費が月5万円ほどで格安なのはもちろん、銀行口座も作りやすく賃貸マンションも借りやすい。比較的、行政面のサポートも整っていて、現地で法人を設立したいときも半日ほどで手続きできます。英語が通じるのでコミュニケーションも取りやすいですね。そして、アジアなどと異なり車やバイクの数が少ないので、とても静か。生活も仕事もしやすい環境です。
あえてデメリットをあげるとしたら、日本から遠いところです。日本との時差が5時間あるため仕事をするうえで少し慣れが必要なのと、直行便がないため帰国に1日以上かかることもあります。
とはいっても、身体が慣れてしまえば時差は問題ないですし、急に帰国する必要があることもそんなにないと思うので、海外フリーランスを考えている人は一度検討してみてください!
ルイス前田:
ビーチや自然が好きな海外フリーランスに人気なのが、インドネシアのバリ島ですね。南の島でゆったり働きたい人はバリ島をオススメします。
生活費は月8万〜10万ほどとジョージアほどではないですが、安く済みます。なにより、バリ島の人ってめちゃくちゃ穏やかで優しいんですよ。温かい気温、豊かな自然もあって心が間違いなく洗われます。
不便なのは、エリアをまたいだ移動は渋滞が多い点です。首都ではないので、バリ島を拠点とした旅行がしにくいところくらいですね。
ルイス前田:
タイのバンコクもオススメです。食事の種類が豊富で、大きなショッピングモールもあって必要なものはそこで揃う。電車もあるので移動も簡単。日本との直行便もあり約7時間くらいで帰国できる。Wi-Fiも高品質で仕事もしやすい。日本と同じくらい便利ですが、ちゃんと外国感もある環境です。
物価や生活費は年々高くなっていますが、それでもまだ海外フリーランスに向いている国だと言えますね。バンコクに1ヶ月ほど滞在して、海外フリーランスを試してみるのもいいかもしれません。
泉:
海外にいながら日本企業と仕事するとなると、時差が大変そうだな……と思うのですが、ルイス前田さんはどう対策されていますか?
ルイス前田:
僕は以下3つの対策をしています。
それぞれ詳しく説明しますね。
ルイス前田:
僕は時差・電源・通信速度を「三大ノマド障害」と呼んでいます。電源や通信速度は年々改善されていて、今後障害ではなくなると思いますが、時差だけはどうしようもありません。
僕は、クライアントに海外で働いていることを伝え、可能な限り打ち合わせを減らしてもらったり、打ち合わせ時間の時間を調整してもらったりしています。
ただ、受託の仕事を行う場合、打ち合わせは必ず発生するものなので、すべて無くすことは不可能です。打ち合わせ時間を調整してもらうのが現実的なのですが、時差が±5時間を超えると調整が難しくなります。
そこで、基本的には時差が少ない国に滞在するのがオススメです。具体的には、東はフィジー(+3時間)、西はジョージアやドバイ(−5時間)あたりまでですね。ジョージアの場合、日本が午前10時のとき、午前5時なので、早起きすればなんとかなります。
北中米も魅力的な地域ですが、時差が12時間前後になるので、海外フリーランス最難関の大陸といえるでしょう。逆にハワイまで行けば−19時間で、実質的な時差が5時間になるので、逆に楽になります。
ルイス前田:
せっかく海外フリーランスをするなら時差に縛られずいろんな国に行きたい!という人がほとんどだと思いますので、折衷案もご紹介します。
それは「仕事がヤバいときは、時差が少ない国に滞在。余裕があるときは、遠い国に行く」という方法。半年間バリ島などで仕事を頑張って、残り半年はヨーロッパで余裕をもって働くといった、柔軟なペース配分をしていきましょう。これができるのも、海外フリーランスの特権だと思います。
ルイス前田:
準備期間が必要ですが、受託の仕事を少しずつ減らし、自社事業に投資するのも、時差問題を解決するひとつの方法です。受託の仕事が減れば、打ち合わせも比例して減ります。
なかには自分でYouTubeチャンネルを運営したりしたり、アプリを販売したりして、自社事業だけで生活する人もいますね。
くわえて受託の仕事だけだと、いつ契約終了になって収入がなくなるか不安を感じる人もいると思います。コツコツと自社事業を準備しておくのは、フリーランスの生存戦略でもあります。
泉:
最後にシンプルな疑問なのですが、海外フリーランスって結婚できるのでしょうか? 結婚すると家庭を持つことになるので、あまり自由が効かなくなるのかなと思いまして……。
ルイス前田:
難しい質問です。個人差は大きく出るのですが、海外フリーランスは結婚しにくい働き方といえそうです。。
『海外ノマド入門』のアンケートでも、結婚している海外ノマドワーカーは27%で、半数以上の人が未婚でした。
僕も含めて、友人の海外フリーランスたちがコロナ禍での日本滞在中に結婚したのも「海外を転々としていく中では、関係が深くなりにくい」のかもしれません。
また、海外で日本人に会うことが少ないので、日本人のパートナーにこだわるなら出会いが少なくなります。ただしその分、海外で出会った人とは仲良くなりやすいです。海外フリーランスを行う同士で、価値観も似ていることが多いので。
泉:
たしかにそうですね。価値観があった人同士で結婚すれば、海外フリーランスも続けやすそうです。
あと、子育てはどうですか? 海外にいながらだと、子どもは育てにくいのかな〜と思いました。
ルイス前田:
少数派ではありますね。『海外ノマド入門』の調査では、子どもがいる海外ノマドワーカーは13%でした。
ただしなかには、夫婦ともにノマドワーカーで、子どもと一緒に世界を回っている人もいます。「海外転勤が多い夫婦」と同じ感じなので、意外となんとかなるそうです。インターナショナルスクールは世界各国にあるし、将来的には、オンライン教育を活用して海外にいながら日本の学校に通うこともできるようになるかもしれません。
泉:
旅しながら働くことを夢見ながらも、「フリーランスを続けるだけでも大変なのに、それを海外でなんて……」とこれまで私は思っていました。ただ、ルイスさんが先ほど「日本で暮らすより難しくないですよ」と仰っていたように、だんだんやってみようかな?という気持ちになってきました!
最後にお聞きしたいのですが、海外フリーランスをはじめるのにベストなタイミングってありますか?
ルイス前田:
コロナ禍でリモートワークになって、会社に行かなくても仕事できるじゃん!海外でも仕事できそう!と思った人がたくさんいると思うんです。コロナが落ち着いてきたいま、なんで出勤を再開しなきゃいけないんだろう?と辛さを感じている人もいるでしょう。
コロナ禍ではリモートで出来たじゃんという言い訳ができるいまは、海外フリーランス・ノマドワーカーに挑戦するいいタイミングだと思います!
海外を旅しながら働きたい。海外で暮らしてみたいという人は、ぜひ一度本格的に考えてみてください。家から外に一歩出たら、海外の風景という生活は楽しいですよ!
世界81ヶ国を旅をしながら仕事しているノマドワーカー・ルイス前田氏と56人のノマドワーカーによる、海外ノマドになるための入門書『海外ノマド入門』が販売中です!
「海外ノマドになったきっかけは?」「仕事はどうやって獲得するの?」「現在の収入はどのくらい?」「IT業界が未経験でも海外ノマドになれる?」「海外ノマドのせいで失敗したことは?」「将来への不安に対する準備は?」などなど、気になる質問に56人のノマドワーカーが答えてくれる、旅しながら働きたい人必読の1冊。
海外ノマド、フリーランス、旅。このようなキーワードにピンとくる方は、ぜひ一度読んでみてください!
(執筆:泉 編集:じきるう)