「給与で勝てない中小企業」はどこで勝負すべき?採用コンセプトを決めるコツ

都会でも田舎でもない、都心部に出やすい郊外の駅近くにそっと社屋を構える、ここは株式会社健王建材。

しがない総務兼人事担当である人事 ひよ吉(じんじ ひよきち)は、またしても深い溜息をつき、もはや抱える頭はほかにない、というくらいに頭を抱え込んでいた。

彼のデスク上にあるのは、競合他社の求人票。そこには「月給30万円〜」「年間休日125日」「最新の福利厚生完備」という、眩いばかりの条件が並んでいる。

対する自社といえば、初任給月22万円、年間休日は110日。福利厚生といえば、申し訳程度の退職金制度くらいだ。

「……無理ゲーでしょ、これ。どう頑張っても、大手みたいな給与や福利厚生は出せないし。うちみたいな地味な会社には、まともなアピールポイントさえないっていうのか!」

思わずデスクに突っ伏したひよ吉。そこへ、待ってましたと言わんばかりの足音が近づいてくる。こ、この堂々たる自信に満ち溢れた靴音は! 人材サービス業界歴20年のベテラン・ミスターHRだ!

【話し手】

ミスターHR
ミスターHR

歴20年のベテラン採用コンサルタント。このたび健王建材の人事部に採用コンサルとして参画することになった。

【聞き手】

人事 ひよ吉(じんじ ひよきち)
人事 ひよ吉(じんじ ひよきち)

健王建材の総務兼人事担当。「若くてリテラシーのある人」を採れと社長に言われている。これまでの施策を惰性でなんとなくやっているが、応募数は右肩下がり。うーん、どうしたもんかしら。

無理な条件勝負は、離職の連鎖を生む

ミスターHR:
おやおや、ひよ吉さん。また「大手には勝てない」という中小企業病の初期症状が出ています。だーいぶ、重症ですねえ。

迷える人事:
だって、そうじゃないですか。同じ仕事内容なら、誰だって1円でも高いほう、1日でも休みが多いほうを選びますよ。うちが条件で勝てる要素、どこにもないです。

う〜〜ん、やっぱり社長を脅してでも給料を上げるしか、応募を増やす方法はないんでしょうか……。

ミスターHR:
もちろん、それができるに越したことはないですよ。給料はもちろん、待遇面が良くなれば、そのぶん応募者が増えるのは確実だと思います。

ただ、それだけで万事解決! ってわけにはいかないんですよねえ。

迷える人事:
え? どうしてですか?

ミスターHR:
仮にひよ吉さんが無理をして、大手に負けないくらいの高待遇を、一時的にでも求人票に書いたとしましょう。それで優秀な人が採れたとして、その後どんな未来が見えますか?

迷える人事:
えっと……、優秀で若い人が入ってくれて、既存の社員は仕事が楽になって、みんなハッピー?

ミスターHR:
はい! 大間違いで〜す! 残念ながら、それは楽観的な予測にすぎません。

なぜかというと、条件勝負で採った人材は、ほかにより良い条件の会社が現れた瞬間に、秒速であなたの会社を去っていくからです。

迷える人事:
ぐぅっ、な、なるほど。条件だけで繋がっている関係は、脆いってことか。金の切れ目は縁の切れ目、と。

ミスターHR:
まあ、そういうことです。採用は口説き、プロポーズだと何度も何度も言っているでしょう? お金だけを目当てに近づいてきた恋人と、ずっと一緒にいたいと思いますか?

中小企業が無理な条件勝負に打って出るのは、ドーピングをして100メートル走を走るようなもの。一瞬は勝てるかもしれませんが、いずれ経営を圧迫し、離職の連鎖を生むだけです。

本当に中小企業が勝負すべきなのは、条件という名のスペックではなく、採用コンセプトなんですよ。

効果的な採用コンセプトの決め方とは?

迷える人事:
前回はペルソナについて教えてもらって、今回は採用コンセプトですか。言葉はカッコいいですけど、具体的にどう決めればいいんでしょうか?

ミスターHR:
採用コンセプトの切り口は、大きく分けて4つあります。

  • 給与(報酬・インセンティブ)
  • 成長・やりがい(仕事のおもしろさ、裁量、使命感)
  • 働きやすさ(休日、残業、人間関係、心理的安全性)
  • 安定性(企業の歴史、福利厚生、将来性)

中小企業が勝つコツは、この4つすべてをアピールしようと「しない」こと。これだけは絶対に負けない!ここを一番大事にしている! という価値に絞り、ほかを切り捨てることです。

迷える人事:
切り捨てる、ですか。それは勇気がいりますね。

ミスターHR:
採用がうまくいかない会社ほど、全部をまんべんなく、そこそこ良い会社に見せようとします。「給与もそこそこ、働きやすさもそこそこ、やりがいもそれなりにあります!」という具合にね。

その結果、何が起きるか。結局、何が一番の強みなのかわからない会社に見えてしまう。誰の心にも刺さらない、つまらない会社に見えてしまうんです。

迷える人事:
うーむ、納得です。じゃあ、具体的にどうアピールすればいいんですか?

ミスターHR:
たとえば「うちは給料は安い。でも、どこよりも早く成長できる環境がある!」と言い切る。あるいは「派手な仕事はない。でも定時には全員かならず退社して、家族との時間を確保している!」と言い切る。

採用コンセプトとは、「うちに来るなら、この価値を一番に味わってくれ!」という宣言なのです。

魅力の棚卸し「従業員サーベイ」で本音を暴け

迷える人事:
採用コンセプトの重要性はわかりました。でも、自社のどこを軸にすればいいか、自分たちでもよくわかっていないんです。弊社の魅力って、どんなところにあると思います?

ミスターHR:
魅力が分からないんだったら、直接聞いちゃえばいいんですよ。ひよ吉さん、従業員サーベイ(満足度調査)を行ったことはありますか?

迷える人事:
サーベイ? そんなオシャレな名前、初めて聞きました。従業員に聞くことといったら、たまに「最近どう?」「飲みに行かない?」って話しかけるくらいですかね。

ミスターHR:
ひよ吉さん、それはサーベイではありません。ただの雑談です。まずはGoogle フォームで十分なので、匿名で、従業員の本音を吸い上げる仕組みを作りましょう。それによって、普段は出てこない本音をすくい上げるんです。

迷える人事:
な、なんてこと提案するんですか!そんなの、怖くて聞けませんよ! 「社屋がボロい」「給料が安い」「ひよ吉がウザい」とか、ボロクソに書かれたらどうするんですか。

ミスターHR:
それでいいんです!むしろ悪い意見が出てくるほうが好都合、儲けものですよ。本当に手遅れな会社は、サーベイしても「言ってもムダ」って感じで、無難な意見しか上がってきませんから。

従業員サーベイは、いわば会社の健康診断みたいなものです。良いところが見つかったら生かす、悪いところが見つかれば対処する。「なんとなく社内の雰囲気が悪いな〜」「ちょっとしたミスが目立つようになってきたな〜」と問題を放置して離職が相次ぐようでは、採用以前の問題になってしまいます。

従業員サーベイで社員の本音を聞き出せば、採用コンセプトも明確になります。

たとえば以前、とあるWeb制作会社では、「経営陣が何を考えているかわからない」という意見が多く出ました。でもね、同時に「現場のチームワークは最高だ」という強みも見つかったんです。

迷える人事:
ほう、弱みと強みの同時発見ですね。

ミスターHR:
経営陣が何を考えているか不透明……いわゆる風通しが悪い状況は、何をどうしたってポジティブに変換できない弱点です。「改善の余地あり」として、解決策を練るべきかと。

一方で、それと同時に発見できた「現場のチームワークが最高」というポイントは、ぜひ積極的にアピールしていきましょう。

改善とアピールを同時に進めていく。これが、従業員サーベイの効用です。ちなみに、従業員サーベイも「一回やって終わり」ではダメ。半期に一回は行って、改善が進んでいるか確認するのも大切です。

ポジ&ネガの両面提示で、信頼を勝ち取る

迷える人事:
ミスターHRのアドバイスに従って、さっそく従業員サーベイをやってみました。やはり「給料は良くない」「休日が少ない」といった意見が目立ちます……うう。

ミスターHR:
匿名にしたからこそ浮き出てくる、忌憚のない意見ですねえ。

迷える人事:
でも、「人間関係のストレスはなく業務が円滑に進められる」「有給消化の申請はスムーズ」といった見解もあります! うんうん、そうなんだよな。人間関係のストレスが少ないっていうのは結構デカいと思うな〜。

それはそうとミスターHR、強みを洗い出してそれを打ち出すのはいいんですけど、やっぱり「給料は良くない」とか「休日が少ない」みたいな弱みは、やっぱり上手く隠したほうがいいですよね?

ミスターHR:
いえいえ、それは採用においては避けたほうがいいですよ。

迷える人事:
えっ、ぜんぶ正直に言ったほうがいいってことですか?

ミスターHR:
その通りです。

心理学に「両面提示」という言葉があります。メリットだけを伝えるより、デメリットも合わせて伝えるほうが、人間は相手を信頼しやすくなるんです。

迷える人事:
「この人、悪いことも言ってくれて、信用できるな」ってやつですね。

ミスターHR:
求人票で「アットホームな職場で残業なし!」とだけ書いてあるより、「正直、繁忙期は残業が月30時間を超えることもあります。その分、閑散期には一週間のリフレッシュ休暇を全員に付与しています」と書かれているほうが、圧倒的に説得力があるでしょう?

迷える人事:
確かに。入社後の「こんなはずじゃなかった」というミスマッチも防げそうです。

ミスターHR:
弱みを隠すのではなく、「こういう点はデメリットだけど、こういう点ではメリットがある、という言い換えをするんです。

たとえば、「教育制度が整っていない」を、「マニュアルがないからこそ、自分で仕組みを作れる楽しさがある」と言い換える。そうすれば、「人に指図されず、効率のいい働き方を編み出したい」タイプの人にはむしろ刺さります。これが、正しい採用コンセプト設計です。

採用コンセプトが決まれば、すべてが決まる

迷える人事:
なんだか視界が晴れてきました。心なしか本当に天気が晴れてきたような気も!? うちも従業員サーベイを継続して、自社の魅力を採用コンセプトに盛り込んでみます!

ミスターHR:
いいですね、その意気です。採用コンセプトが決まれば、求人票のキャッチコピーも、採用サイトの写真も、面接での質問項目も、すべてが一本の串で貫かれたように一貫性を持ち始めますからね。

「無名企業」であることを嘆くのは、今日で終わりにしましょう。

大手には大手の、中小には中小の戦い方があります。たった一人でも運命の人に出会えれば、それでいい。あなたの会社で働きたい、と応募してくれる理想の人材が、必ず現れるはずですよ。

迷える人事:
ありがとうございます! よ〜し、あらためてサーベイの結果を見直すか!

ミスターHR:
フフフ、期待していますよ、ひよ吉さん。

(執筆:北村有 取材・編集:夏野かおる)

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