エンジニアの副業は週1からでも可能?副業の例や探し方も解説
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大切だとは知りつつも、本音を言えばあんまり払いたくないのが「税金」。とくにフリーランスは対策をしないと膨大な税金が発生してしまうため、節税に励む方も多いです。
そんなフリーランスの節税対策としてよく挙げられるサービスが『小規模企業共済』。しかし制度の詳細や具体的な節税効果をよく知らない方も多いのではないでしょうか。
そこで、この記事ではフリーランスとして活動するFPが、「小規模企業共済」の制度や節税効果を検証! 類似制度である『iDeCo』との違いや、両制度のメリット/デメリットを解説していきます。
FP事務所・トージンFP事務所 代表。ファイナンシャル・プランナー(AFP)。Workship MAGAZINEのマネー担当として、フリーランスや副業にまつわる記事の執筆・監修を行う。自身も現役フリーランスで、当事者ならではの情報発信に強み。
目次
小規模企業共済とは、小さな企業の経営者や役員などにむけて展開されている積み立て式の共済制度です。経済産業省所管の独立行政法人「中小企業基盤整備機構(通称:中小機構)」が提供しています。
小さな企業の場合、大企業とは異なり廃業または退職後の退職金がすくない、または支払われない傾向があるため、リタイア後の生活が課題になります。中小機構はこうした課題を解決するため、月ごとに1,000円~70,000円までの掛金を支払ってもらう代わりに、廃業または退職時に所定の料率(経済状況などによるが、おおむね1%前後)を上乗せした共済金を返還しているのです。
……しかし、こう見ると「あれ、フリーランスって小規模企業の経営者でも役員でもないような?」と思うかもしれませんが、安心してください。
以下に、小規模企業共済の加入要件をまとめました。
- 建設業、製造業、運輸業、サービス業(宿泊業・娯楽業に限る)、不動産業、農業などを営む場合は、常時使用する従業員の数が20人以下の個人事業主または会社等の役員
- 商業(卸売業・小売業)、サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)を営む場合は、常時使用する従業員の数が5人以下の個人事業主または会社等の役員
- 事業に従事する組合員の数が20人以下の企業組合の役員、常時使用する従業員の数が20人以下の協業組合の役員
- 常時使用する従業員の数が20人以下であって、農業の経営を主として行っている農事組合法人の役員
- 常時使用する従業員の数が5人以下の弁護士法人、税理士法人等の士業法人の社員
- 上記「1」と「2」に該当する個人事業主が営む事業の経営に携わる共同経営者(個人事業主1人につき2人まで)
(出典:中小機構)
ややこしく見えるかもしれませんが、かんたんに言うと個人事業主(つまりフリーランス)も加入資格があります。
廃業、退職時の一時金がないのはフリーランスも同じなので、同じように制度を利用できるのです。
小規模企業共済を使うとどんなメリットがあるのでしょうか。おもにフリーランスの視点から考えてみました。
<小規模企業共済のメリット>
- 掛金が全額所得控除になる
- 金融知識が一切いらない
- 1000円から始められ、いつでも掛金を変えられる
- 20年経てば元本割れの心配がほぼゼロになる
- 7つの貸付制度を利用できる
「掛金が全額所得控除になる」のは小規模企業共済最大のメリットです。小規模企業共済には、さきに触れたように元本に加えて上乗せがあるので、掛金の分だけ節税でき、資産も増えることになるのです。
具体的に仕組みを解説します。
そもそもフリーランスが払わなければならない税金のひとつに、所得税があります。所得税は「課税所得(売上から経費や各種控除を引いた額)」に税率を掛けて算出されるものです。
課税所得が300万円だった場合、税率は10%なので所得税は202,500円(課税所得195~330万円の場合、97,500円の控除があるため)。これは所得を得た翌年度に支払わなければならない税金になります。
しかし小規模企業共済の掛金は、全額が上記の「各種控除」にあたります(小規模企業共済等掛金控除)。たとえば毎月30,000円を支払っていた場合、所得300万円から360,000円が差し引かれて所得は264万円。同じ10%の税率を掛けると、所得税は166,500円まで減少します。36,000円の節税効果がありますね。
つまり、上記の例では制度を利用しなかった場合に比べ「36,000円の節税効果」と「将来的な360,000円プラスアルファのリターン」が得られるのです。とてもお得ですね……!
フリーランスのなかには資産運用に興味のある方もいるかもしれませんが、効果的な資産運用には金融知識を身につけなければいけません。ときには元本割れリスクを背負うこともあります。
一方の小規模企業共済は、掛金を決めてひたすら積み立て続けるだけ。短期で解約したり、資産運用に頭を悩ませたりする必要はありません。
株式や不動産投資の場合、そもそも投資を始めるにあたりまとまった資産が必要になるケースも多いです。
しかし小規模企業共済なら月額1,000円からコツコツ積み立てられます。毎週ジャンプを買ったり、Netflixのスタンダードプランに加入したりするよりも安い金額から始められるのです。生活費に余裕のない方や、大金を預けるのが不安な方でも大丈夫。
また積み立て期間中に自由に掛金を変えられるのもメリット。500円単位で設定できるのも魅力です。「大きく出て毎月50,000円積み立て始めたけど、ちょっとキツいな……」「1,000円から始めたけど、もっと積み立てたい!」といった状況の変化にすぐ対応できます。
加入期間が通算20年を超えれば、原則元本割れの心配がなくなります。
国のバックアップがある中小機構の制度なので、倒産や制度の改悪による元本割れリスクが低いのも嬉しいポイントです。
小規模企業共済の加入者は、掛金の納付金額に応じて以下のような7つの貸付制度を利用できます。
フリーランスは金融機関からの借り入れが難しいですし、すぐに借りなくとも「いざとなれば借り入れ先がある」状態は心の安定につながります。
総合的に見て、小規模企業共済がメリットの大きい制度であることは間違いありません。しかし、いくつかのデメリットもあります。
<小規模企業共済のデメリット>
- 短期解約は基本的に損である
- オンラインでできる手続きがほぼない
- ネットバンクやゆうちょ銀行に対応していない
- 自分で掛金を運用できない
- 所得ゼロの場合、節税効果は薄い
「20年積み立てれば元本保証になる」メリットは、すなわち「20年未満での解約は元本割れする」ことを意味しています。かんたんに言えば短期解約すると損な制度だと覚えておいてください。
もっとも、月額1,000円まで掛金を減らせる都合上、資金不足による解約は考えにくいでしょう。しかしフリーランスには何が起こるか分かりません。急にまとまったお金が必要になったり、泣く泣く廃業を余儀なくされたりすることも考えられます。そのときに解約してしまうと、損をする可能性があるのです。
筆者としてはとても大きなデメリットなのですが、小規模企業共済の加入や積み立て中の手続きにオンラインで完結するものはほぼありません。
問い合わせ用のチャットボットはあるものの、加入申し込み、掛金/登録情報の変更、解約手続きなどはすべて郵送対応。または小規模企業共済を取り扱う代理店窓口(各種銀行や商工会議所など)で手続きしなければいけません。
積み立てるだけならいいのですが、掛金や登録情報の変更は加入期間中にたびたび行う可能性があります。また代理店の特性上、平日昼しか受け付けていない手続きも多いです。
ただし、中小機構の発表によれば、2023年度中に「加入手続き」「掛金月額・住所変更の手続き」
「控除証明書(共済掛金払込証明書)発行」が、2025年度中には「共済金の請求」「契約者貸付」「その他手続き」がオンライン化される予定です。続報を待ちましょう。
小規模企業共済の手続きだけでなく、口座振替に対応しているのも中小機構と業務提携している代理店だけ。この中には各種ネットバンクやゆうちょ銀行などが含まれておらず、かなりの制約があります。
小規模企業共済のために口座を作ってもいいのですが、その手間や資産管理の煩雑さを考えれば、こちらも手痛いデメリットでしょう。
小規模企業共済は積み立て金を運用してもらう形なので、自分の意思で運用できないのもデメリットになり得ます。
株価や債券価格が下がっている場面ならいいのですが、上がっている場面では「中小機構に任せるよりも自力で運用したほうが結果を出せる!」と思ってしまうかもしれません。自力で運用したい方は、小規模企業共済を利用するべきではないでしょう。
先ほど触れた小規模企業共済の節税効果の項では、「所得300万円」の場合を例に計算しました。しかし、たとえば事業に失敗して赤字経営をしている場合は効果が薄くなります。なぜなら所得を算出する「売上-経費」の計算結果がマイナスになってしまい、そもそも所得が0円というケースが想定されるからです。
所得が0円なら、税率を何パーセントかけても0は0。当然、所得税も0円です。そうなると、最初から支払う税金がないので、節税効果も何もありません。このケースで毎月10,000円の掛金を支払っていたと想定すると、120,000円分の控除は無意味になり、「将来的な120,000円とプラスアルファのリターン」だけが残ります。
この場合でも資産運用として意味はあるのですが、節税効果がないのがネック。ほかの運用方法を検討する、もしくは現金として手元に持っておくほうがメリットが大きいと感じる方もいるでしょう。
「積み立て式、かつ掛金が全額所得控除になる」というのが小規模企業共済の特徴ですが、じつは同じ特徴をもつ似た制度があります。それは『iDeCo(個人型確定拠出年金)』と呼ばれるもので、こちらも老後の資産形成を目的にした年金制度です。
iDeCoの詳細はこちらの記事を参照していただくとして、ここでは違いが分かりづらい小規模企業共済とiDeCoを「徹底的」に比較していきます。
小規模企業共済 | iDeCo | |
制度の目的 | 廃業時、退職時の一時金積み立て | 国民年金に加算する形で年金を積み立て、老後の資産を形成する |
掛金 | 1000円~70,000円 | 5000円~68,000円 (フリーランスの場合) |
掛金の変更 | いつでも | 1年に1回 |
所得控除 | 掛金全額 | 掛金全額 |
元本割れ | 20年以上積み立てれば原則なし | あり(元本保証の商品もある) |
解約 | ◯ | 原則× |
運用方法の選択 | × | 投資適格と判断された金融商品の中から選択可能 |
手数料 | なし | 口座開設に数千円、維持に数百円必要(金融機関により変化) |
受け取りタイミング | 原則廃業、解約したとき | 原則60~75歳のあいだ |
受け取り方 | 一括または分割。両方の併用も可 | 年金または一時金。両方の併用も可 |
受け取り益への課税 | される | される |
貸付制度 | ◯ | × |
ネットでの手続き | × | ◯(金融機関による) |
ネットバンクの対応 | × | ◯ |
窓口 | 代理店 (銀行や商工会議所など) |
運用管理機関 (銀行や証券会社など) |
運営元 | 中小機構 | 国民年金基金連合会 |
こう見てもかなり似ている部分が多い一方、細かな違いが多いのも確か。
とくに「運用に関する負担」「ハードルの高さ」「オンライン対応」といった部分は特徴がわかれました。
結論から言えば、小規模企業共済とiDeCoはともにお得な制度。どちらを選択してもよい結果をもたらしてくれる可能性は極めて高いと言えるでしょう。
また併用もできるので、どちらにおいても小額から始めてみたり、所得額的に掛金上限を超える場合はもう片方も使ってみたりと、色々なパターンが考えられます。
ただし、やはり違いがある以上「小規模企業共済が向いている人」と「iDeCoが向いている人」はいるでしょう。
小規模企業共済には、iDeCoと比べると以下のような特徴があります。
以上のような特徴から、気軽に節税したい人やリスクを避けたい人によりおすすめしたいです。
iDeCoは小規模企業共済に比べるとリスクは少し高くなり、運用の手間もかかります。一方で小規模企業共済よりもリスクをとって収益を狙うなど、自分の好みに合わせた資産運用が柔軟にできるようになります。
そのためリスクをとり、手間がかかることを許容できる人にはiDeCoがおすすめ。
またオンライン化が進んでいるiDeCoは、オンライン上ですべての手続きを行いたい人にもおすすめです。
ここまでの内容から「小規模企業共済にチャレンジしてみよう!」と思った方もいるかもしれません。そこで、最後にフリーランスが小規模企業共済へ実際に申し込む方法をまとめてみました。
小規模企業共済は文字通り「小規模なビジネスをしている人」が対象の制度なので、まず加入資格があることを証明する必要があります。フリーランスの場合、前年の確定申告書の控え(開業間もない場合は、開業届の控え)を準備しましょう。
また、同時に加入用の書類も必要です。中小機構が用意している「契約申込書」「預金口座振替申出書」をホームページ上から入手し、記入しましょう。
書類が準備できたら窓口に持参し、申し込みます。窓口は商工会や商工会議所だけでなく、メガバンクや地方銀行などの金融機関も含まれています(先ほども触れたように、ネットバンクやゆうちょ銀行は対象外です)。
なお、書類の郵送には対応していませんので、注意しましょう。
申し込みから約40日後、審査を通過していれば中小機構から「小規模企業共済手帳」と「小規模企業共済制度加入者のしおり及び約款」が送られてきます。審査と言ってもローンや賃貸のように厳しいものではないため、条件を満たしていれば基本的には加入できるでしょう。
ここまで、個人事業主・フリーランスにとっての小規模企業共済を解説してきました。
小規模企業共済は有事の際の備えにもなりますが、小規模企業共済だけで万が一の保障を完結させるのは現実的ではありません。
充実した福利厚生や保障をお求めの方には、フリーランス向けマッチングサービス『Workship』の利用がおすすめです。
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(執筆:齊藤颯人 編集:北村有)
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