年上フリーランスがZ世代の発注者と付き合うために必要なこと

年上フリーランスがZ世代の発注者と付き合うために必要なこと

フリーランスがプロジェクトに参画するにあたり、発注元企業の担当者がZ世代、というケースは今や珍しくありません。

「なんだかコミュニケーションがうまくいっていない気がする」
「業務連絡のレスポンスに、どことなく違和感がある」

そう感じるなら、その原因は性格の不一致ではなく、世代特有の傾向にあるのかもしれません。

もちろん、「人にはそれぞれ個性があるのだから、年代でひとくくりにするのは乱暴だ」という考え方もあるでしょう。ただ、労務や働き方のプロである社労士(社会保険労務士)としてさまざまな現場を目の当たりにしていると、Z世代特有の傾向を理解することが解決のヒントになる場面も少なくありません。

物心ついた時からスマートフォンやSNSが身近にあったZ世代は、上の世代とは異なる独特の価値基準で動いています。

今回は、「世代による感覚の差」を理解することで、年上世代が陥りがちな落とし穴を避け、Z世代のパートナーと気持ち良く、かつ最速で成果を出すためのコツを整理します。

もひもひ
もひもひ

開業社会保険労務士(東京都社会保険労務士会所属)、特にIT/Web業界を中心に支援している。趣味は同人活動で、評論同人サークル「さかさまダイアリー」より同人誌「村上春樹っぽい文章の書き方」シリーズなど発行。(X:@mo_himo

Z世代が仕事に求めるもの

Z世代と働くうえで、多くの人が壁に当たる最大の理由。それは、彼らが仕事に求める前提条件が、上の世代(1995年頃以前に生まれた世代。以後、「年上世代」)と大きく異なっていることです。

バブル崩壊後からリーマンショック、東日本大震災までの不況期を知る年上世代には、失業して路頭に迷うことへの不安が常にあります。

そのため、「まずは稼ぐこと」「会社・組織で生き残ること」が第一であり、やりがいや自己実現は後からついてくるもの、あるいは、ついてきたら嬉しいものという感覚が一般的でした。

一方のZ世代は、社会に出てから一貫して、人手不足の売り手市場で過ごしています。

同時に、青春期にコロナ禍が重なったことで、生きる楽しみが社会に左右されるトラウマも経験しています。

彼らのなかでは、「自分を欲する職場はたくさんある」「自分は選ぶ立場である」という感覚が前提になっています。その一方で「ゲームチェンジが起こり、自分が井の中の蛙になるのは怖い」「時代の変化に取り残されるのではないか」という不安も抱えています。

そのため、Z世代は今いる職場でどううまくやっていくかよりも、「この仕事の本質は何か」「本当に必要とされているのか」「誰かの役に立っているのか」「自分がこの仕事に注力する意義はあるのか」という納得感を強く求めます。あわせて、「自分のキャリアがガラパゴス化しないか」「オワコン(時代遅れ)になりはしないか」という感覚にも敏感です。

では、この価値観は仕事にどのような影響を与えるのでしょうか。

ここでは、仕事を「栗拾い」にたとえて考えてみます。

栗がたくさん落ちている状況で「栗を拾え」と言われたら、年上世代は「まずはとにかく、目の前の栗を必死に拾おう」と考え、走り回ります。数多く拾うなかで、「こうすれば一度に2つ拾える」とコツを掴んだり、見える範囲の栗を拾い終えたあとに「次はどこを探せばいいだろう」と悩んだりします。

一方、Z世代は、栗を拾い始める前に、その場で立ち止まって考え込む傾向があります。

頭の中では、たとえば次のような思考がめぐっています。

「そもそも、なぜ今拾うべきものが栗なのだろうか」→「栗に価値があるからか」→「でも、価値のあるものを集めるのが目的なら、より単価の高い松茸を探しに行くべきではないか」→「そもそも栗拾いは、自分より足の速い人のほうが向いているのではないか。自分は別の役割を担ったほうがよいのではないか」→「松茸を探し出すような希少性の高いスキルを身に付けなければ、自分の市場価値が下がるんじゃないだろうか」、などなど。

▲年上世代、 Z世代がそれぞれ仕事に求めるもの

年上世代からすると、「松茸探しは難易度の高い業務なのだから、いきなりは無理だ。若いうちは栗拾いで場慣れして、中堅になってからチャレンジするものだ」と言いたくなるかもしれません。場合によっては、屁理屈をこねてサボっているように見えるかもしれません。

しかし、彼らはサボりたいわけではありません。

社会のルールが激変する様子を見てきた彼らは、「栗を拾うべき」という目の前のルールを真剣に疑っています。だからこそ、「上司が言うのだから、まずは言う通りに栗を拾おう」「石の上にも三年」という考えは通用しません。

このような価値観が根底にあるために、Z世代は一貫して時間外労働を拒む傾向があり、毎日定時で帰る人も珍しくありません。その一方で、週末には自腹で勉強会に参加することも。一見すると矛盾した行動で、年上世代からすれば理解に苦しむでしょうが、彼らはそれが「合理的な生存戦略」だと信じているのです。

「黙って栗を拾っておけば怒られることはないだろう」と考え、ひたすら栗を拾っていた年上世代と比べると、Z世代のこうした価値観は、「能動的にキャリアを考える習慣がある」とプラスに捉えることもできます。

とはいえ現場の本音としては、やはり違和感があることも事実でしょう。以降では、Z世代の担当者と付き合うコツを具体的に見ていきましょう。

年上フリーランスがZ世代の企業担当者と付き合うときの落とし穴

Z世代の担当者と付き合ううえで、とにかく避けるべきは、自分の主張を押し付けることです。Z世代は、「自分の価値観が受け入れられているか」「自分が尊重されているか」にとても敏感だからです。

一例として、フリーランスがZ世代の企業担当者からドキュメント(業務指示書など)を受領する場面を考えてみましょう。このドキュメントは、そのZ世代担当者がまだ作成したことがない種類のもので、かつ社内にマニュアルが存在しないものだったとします。

年上世代の感覚では、「マニュアルがないなら仕方ない」「とりあえず分かる範囲で叩き台(ベータ版)を作って、レビューしてもらい、たくさんダメ出しを受け、修正しながら完成に持っていく」のが自然な仕事の進め方です。

しかしZ世代は、SNSやスマホゲームによる「即時のポジティブな承認」に慣れているので、自分が頑張って作ったものにダメ出しを受けるという「初手からのネガティブなフィードバック」は受け入れられません。

「なぜはなから否定されなければならないのか」「そもそもマニュアルがないのだからどうしようもない」「これでは心理的安全性がない」「自分の強みや個性が活かせていないし、向いていない業務だ」と捉えてしまいます。

ここで慌てて、「初めてにしてはうまくやっている方だと思うよ」とか「俺が若い頃よりずっと優秀だ」とか「次からうまくやればいいじゃないか」とフォローしても、彼らの心は閉ざされたままです。

こうなると最後、Z世代は「この仕事は自分には不向き」と割り切りモードに入ります。いくらコラボレーションを進めようにも「最低限の出力」しか引き出せず、うまくいきようもありません。

▲世代間で注意すべき落とし穴

こうした事態を防ぐために、どんなコミュニケーションを取るべきなのでしょうか。

立場の「上」「下」ではなく、キャリア構築のパートナーと思われるために

フリーランスと発注者は、契約上は受注と発注の関係にあり、「営業する側/される側」という関係性になることもあるでしょう。ただZ世代と付き合ううえでは、「上下」の意識は一度横に置くことが得策です。彼らがパートナーとして真に求めているのは、指示を完遂することではなく、自分の仕事の価値や市場価値を共に高めてくれる存在だからです。

Z世代は自社の評価制度ではなく、外部市場から見た自分の市場価値を常に気にしています。そこで、社外のマーケット感覚を持つフリーランスだからこその視点を、「上から目線のアドバイス」や「下からへりくだったお世辞」にならないように気をつけながら、フィードバックに混ぜてみてください。たとえば彼らの成果物に対し、「この視点まで考慮できている人材は稀少なので、〇〇の文脈でも活きる場面があると思いますよ」といった所感を伝えます。

上司の査定とは別の、プロの専門家からのフィードバックは、彼らにとって何よりの報酬になります。単なる外注先ではなく、自分のキャリアを共に高めてくれる貴重な存在として認識されれば、自ずと「次もこの人と組みたい」という長期的な信頼関係、そして次の発注へと繋がっていくはずです。

▲Z世代と心を通わせるコミュニケーション

結論

Z世代と年上世代との間にある「目に見えない壁」はやっかいですが、よくあるパターンの原因と対策を把握すれば、その大半は乗り越えられます。

「今どきの若い人の考えることは分からん」と投げ出すのではなく、彼らなりの合理性を理解して、うまく成果につなげていきたいものです。

(執筆:もひもひ 編集:夏野かおる)

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