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「レシピを無視すると良くないのは、料理も開発も同じ」ランチクリエイターの副業で世界を広げる若手エンジニア - 井土元樹

井土元樹
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近ごろは副業・複業を推奨する会社も増え、本業以外にもフリーランスとして仕事をしている人は多いのではないでしょうか。でも副業・複業の選択肢は、必ずしも本業の延長線上にある仕事だけとは限りません。

本業とは全く関係のない分野でも、興味のあることに挑戦した結果、普段は出会えないような人とのつながりが生まれ、さらには本業とのシナジー効果が生まれることも……!?

今回はエンジニアの傍ら「ランチクリエイター」として活動し、人気急上昇中の井土元樹さんにお話を伺いました。

井土元樹(Izuchi Motoki)
井土元樹(Izuchi Motoki)

原宿のクリエイティブ会社でフロントエンドエンジニアとして従事しつつ、社内副業でほぼ毎日ランチを提供。他社への出張弁当サービスも行う。料理を始め10ヶ月にして活動が雑誌に特集され、一般家庭向けの料理代行も開始。食品衛生責任者の資格を保持。

一年間で100品以上のレパートリー!料理経験ゼロから広がったランチクリエイターの活動

――井土さんは「ランチクリエイター」の肩書きで活動されています。具体的にどんな副業をされているのか、教えていただけますか。

2018年の7月頃から、会社の同僚と自分を含め4人分のランチを毎日手作りして提供してきました。その活動が広がり、最近は他社の方からオーダーをいただいて出張することも増えてきていて。予算に応じてあらゆる量・メニューでお弁当を考えて作っているので、ある意味クリエイターかなと思って、そんな風に名乗っています。

――本業のエンジニアからは遠い仕事のように思えるのですが、どんなきっかけで活動が始まり、成長していったのですか。

最初は単に、節約のためにお弁当を作り始めたことがきっかけです。

もともとは料理をする方ではなかったので、お米の炊き方もわからないところからスタートしました。まずは冷凍食品を使って、次は野菜を切るようになって、肉を焼くようになって……そんな風に経験を重ねていくことで、もっといろんな料理に挑戦したくなったんです。

でも、スーパーで買った食材は一人だとなかなか使い切れず、無駄にしてしまうこともありますよね。それでどうしようかと思って、ふと周りを見渡したら、同じようにコンビニか高い外食かの二択しかなくて苦しむ同僚が目に入りました。そこで、一緒にお弁当を作れば効率的だし、喜んでもらえるのではと思って提案したんです。「良心的な値段で、お弁当作りますよ」と。それが社内副業の始まりですね。

それからはこの副業の話を聞きつけた友達づてに、他の会社にも出張でお弁当の依頼をいただくようになりました。

また最近は食品衛生責任者の資格も取得し、家事代行サービスのスタッフとしても登録したので、土日は一般家庭に出張で料理を作りにいったりしています。小さなお子さんがいるママさんから独身男性まで、さまざまな方に僕の料理を食べてもらい、喜んでもらえるのが嬉しいです。

――副業になったことで、自分以外の人にランチを食べてもらう機会が増えたのですね。その上で何かこだわっていることはありますか。

凝った料理やレストランの味を目指すのではなく、あえてシンプルな家庭料理を作るようにしています。エンジニアから料理人になることを目指している訳ではなく、食べた人がほっとするようなお弁当を提供することが、僕のミッションなので。

また、毎日3〜4品のおかずを用意しているのですが、週を通して同じようなおかずは作らないようにしています。おかげで料理経験ゼロから1年でレパートリーが100品以上にまで成長しました。

――1年間で100品はすごいですね! これからさらに挑戦したいことはありますか。

料理教室やイベントを開いて料理のコミュニティを作ったり、人と関わることで何かできたらいいなと思っています。あとは、こんな風にちょっとした工夫で本業以外にも楽しい仕事ができる、ということも伝えていきたいです。

――「ランチクリエイター」として発信している中で、ブランディングや情報発信の方法としてこだわっていること、効果的だと思うことがあれば教えていただけますか。

実は情報発信ってあまり得意ではなかったのですが、自分的にクオリティーが低くても、とにかく毎日作った料理はSNSにあげるようにしています。

また、対面の時のときにも積極的にアピールするようにしています。エンジニアでありお弁当屋さん、って言うと多くの方が食いついてくれるので、自己紹介にも困らなくなりましたね。会社の名刺にも「ランチクリエイター」って書いてもらってて(笑)。おかげで、あとでふと思い出して連絡をもらえたりします。

SNSだけではなく、ありがたいことに最近は雑誌に載ったり、人づてで社外に出張の依頼が入ったりしたので、今後は両方のシナジーを効かせていくことで活動の幅も広がるのでは、と期待しています。この記事を読んで気になっていただけた方は、ぜひつながってください(笑)。

本業を真面目に取り組む人こそ、楽しい副業を小さく始めよう

――好きなことや趣味が仕事にまで発展した、最大の理由はなんだったと思いますか。

一番は、お金ベースではなく、人とのつながりベースで始めたことでしょうか。お弁当で人との交流が生まれるのが楽しくてコツコツ続けてきたので、お小遣い稼ぎだけのドライな関係だったらここまで続かなかったと思います。

僕はもともと人見知りで、前職では会社で親しい人もいなくて、なかなか同僚と話す機会がなく寂しかった思い出がありまして。今の会社では、僕が作ったランチを囲んで仕事に関係ない話をしたり、他のメンバーのことを知って、そこからアイデアが生まれたり……といった時間がありますね。それがとても楽しくて、自分自身も対人面で成長できている気がしています。

――ここまで続けてみて、意外な影響などはありましたか。

社外の人との交流が生まれたことや、こうして取材の依頼が来るようになったことも、当初から想定はできていませんでした(笑)。

――本業(エンジニア)と副業(お弁当)を両立していることで生まれた相乗効果などがあれば、お聞かせください。

開発もお弁当も、完成までに一個一個手順に沿って丁寧に作り上げていく特性は共通していると思います。どちらも、仕様書(レシピ)を無視してなんとなくで作ってしまうと、やっぱり残念な仕上がりになるんですよね。それを体感として分かったことで、どちらもより丁寧に作業するようになった気がします。
また、お弁当作りを始めてから栄養バランスにも気をつけるようになり、とにかく病気をしなくなりました。昔は1、2ヶ月に一度は熱を出していたのですが、ここ1年はほぼ病気になっていません。お金を稼ぐ以上に、健康な体で継続して本業に集中できるのは、とてもいいことだと思います。

――これから何か楽しい副業を始めたい人に向けて、伝えたいことやアドバイスはありますか。

本業を真面目に取り組んでいる方こそ、ちょっとゆるくて楽しい仕事をやってみるのをおすすめします。

コツは「まずは小さく始める」ってところかなと。副業を始める、っていうとなかなかハードルが高いように聞こえますが、仕事というよりも遊びやコミュニケーションのためにやるスタンスでいいと思うんです。僕の場合、やっていて楽しいし、周りに喜んでもらえるから続けていて。いつのまにか視野が広がり、本業にもよい影響があったと感じています。

楽しい仕事を小さく始めてみる第一歩として、会社の人や友達など身近な人を巻き込むのは一つの手だと思います。生活の中で彼らにどんなニーズがあるか、一番わかっているし聞きやすいじゃないですか。

自分にとって楽しい内容で、かつニーズに合った仕事をやってみると、みんな喜んでくれるし、それが続けるモチベーションになり、結果として副業になるのではと思います。

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