突き詰めると、僧侶とデザインの仕事は同じだった。仏教の教えから本質を考える - 勤息義隆

副業・複業を推奨する会社が増え、本業以外の分野でも、自由にキャリア形成ができる時代となった昨今。

フクギョウワーカー特集も4回目。今回お話を聞くのは、京都・大恩寺で僧侶を勤めながら、Web制作管理やデザインなどの仕事を行う勤息義隆さん。

僧侶とITワーカーという、真逆にも見える世界を軽やかに行き来する勤息さんの生き方からは、「本質を大切にする」ことを教えてもらいました。

勤息義隆

勤息義隆(Gonsoku Yoshitaka)
勤息義隆(Gonsoku Yoshitaka)

佛教大学文学部仏教学科にて僧侶の資格を取得。卒業後、音楽業界を経てweb制作の道へ。25歳にヒッチハイクで日本一周を決行し、沖縄以外の全国を制覇。同年に浄土宗大恩寺の副住職に就任。その後、農業ベンチャー企業へ就職し、自社サイトのすべてを制作・運営する傍ら、僧侶として布教活動も行う。2012年にso designとして独立。京都を中心にWebサイト制作・グラフィックデザイン制作を行う。もちろん僧侶としても活動中。

「仕事というよりも、生き方」として2つのキャリアを形成

杉田本日はどうぞよろしくお願いします。
勤息さんは、京都・大恩寺で僧侶を勤めながら、webサイト制作管理やグラフィックデザインを行うフリーランスのデザイナーとしても働かれているとお聞きしています。どちらが「本業」という認識ですか??

勤息義隆お寺での勤めを「仕事」という風に捉えたくはないと思っています。仕事よりも、むしろ生き方のような感じですね。なので「本業」「副業」という言葉は、私の場合はしっくりこないかもしれません。
僧侶としての自分の世界を中心に、デザイナーとしてのキャリアがあります。

杉田なるほど……。現在、具体的にはどのようなお仕事をされていますか?

勤息義隆私が副住職を勤める大恩寺では、日々の法務を行っています。具体的には本堂でのお勤めや、檀信徒の墓地管理や先祖供養などですね。
それと並行して、在宅フリーランスとして、企業のWeb制作管理やデザイン、プロジェクトのディレクションを行なっています。紙媒体のチラシやパンフレットを制作することもありますね。

杉田お寺の僧侶とデザイナー、とても面白い組み合わせですね! どのような経緯でデザインの仕事を始めたのでしょうか?

勤息義隆僧侶としてよりも、実はデザイナーとしてのキャリアの方が先なんです。確かに生まれはお寺で、大学も仏教関係のところに通っていたのですが、3人兄弟の次男なので、必ず寺を継ぐ必要はないと思っていました。
大学を卒業したあと、お寺とは違うことを経験してみたく、音楽関係の会社に就職しました。ここで3年間勤め、グラフィックデザインに関わる仕事も経験させていただきました。

勤息義隆その後に会社を退職するタイミングで、やはりお寺に関わりたいと思い、大恩寺の副住職になることを決心しました。ただ、副住職になったあともデザインの仕事は続けていましたね。ゆくゆくはお寺でお勤めをしながらデザイナーとして働くことを目指し、HTML、CSS、Javascript、PHPなどの言語を独学しました。

勤息義隆その後、あるベンチャー企業のインハウスデザイナーとなる機会があり、Webサイトの制作管理を経験。その3年後に独立し、「so design」を立ち上げていまに至ります。

勤息義隆1

杉田デザイナーとして、一般企業で働いた経験があるんですね。仏教界からすると、ちょっと珍しいのではないでしょうか?

勤息義隆実はお寺でお勤めをしつつ、他でも仕事を持っている人は意外と多いんですよ。学校の教師をされていたり、公務員や企業に務められていたり。
お寺のお勤めは「仕事」とは少し違う概念なので、僧侶というものは昔からマルチな存在だったのではと、私は思っています。わたしはデザイン関連のフリーランスという道を選択しましたが、それも決して珍しいことではないかなと。
「世の中のことを知り経験を積む」という意味でも、一般の世界で仕事をすることは、僧侶である自分にとって大切なことだと思っています。

勤息義隆私は大学を卒業して会社に務めましたが、それはそれで、会社という狭い世界しか知らなかったんです。僧侶は人々を導き、手助けをすることが役目だと思っているので、僧侶としての力をつけるために、最初の会社を退職したタイミングで日本一周ヒッチハイクをして全国を訪ねたり、また今でも日常的に仏教界以外の人々と交流したりと、外にも目を向けようと意識しています。

杉田そうなのですね。それでは、お寺の関係者さんやご家族も、デザイナーとしての活動に協力的なのでしょうか。

勤息義隆そうですね。私は結婚して子供も3人いますが、デザイナーの仕事は在宅でしているので、家族との時間きちんと確保できるのです。
またいつ参拝者の方いらっしゃっても対応できるので、在宅でデザイナーができる今の環境は気に入っています。お寺が無人になる時間はなるべくつくりたくないので。

人々の悩みに耳を傾け、それを解決する道筋を探す。それは僧侶もデザイナーも一緒

杉田お寺での僧侶としての経験が、デザイン活動に活きたことはありますか?

勤息義隆僧侶ということで良い印象を持っていただけることも多く、ありがたいなと思っています。名前も変わっているので、すぐに覚えて頂けるのもメリットですね。
また「ものごとの本質に目を向ける」という仏教的な考え方は、デザイナーとしての仕事にも活きています。

勤息義隆

勤息義隆「ものの見方を変え、いま目の前にあるものに気づき感謝する」というのは、ひとつの仏教的考え方だと思いますが、それってデザインの世界でも共通する考え方ですよね。商品のプロデュースひとつにしても、価値の本質や伝えるべきポイントをしっかりと把握する必要がありますし。
つまるところ、企業さんの相談事や困りごとを聞いて、その解決のために道筋をたてるのがデザイナーの仕事です。そしてお寺でも、人々の困りごとに耳を傾け、それを解決しようとします。私の中で両者の活動は、実は深い部分で繋がっているんです。

杉田確かに、そう言われるとしっくりきますね! 逆に、デザイナーとしての経験が、お寺での活動に活きたことはありますか?

勤息義隆仕事を通し、さまざまな業界の人々に出会えるのが一番です。こうした出会いが、僧侶としての自分の経験値を高めてくれます。
社会の在り方や人々のニーズを常に肌で体験しつつ、その経験を日々のお寺での勤めに活かしています。

杉田これから挑戦したいことはありますか?

勤息義隆お寺でのお勤めに、デザインのノウハウをもっと取り入れて、お寺から発信できるコンテンツなどを作っていきたいですね。
人々のお寺離れは、仏教界全体で議論されていることです。もっと一般の人々にも近しい存在になれるよう、努力しなければと思います。最近は、一般の方にお寺という場所を身近に感じてもらうために、お寺の本堂を解放して、実験的に使ってもらうイベントを開催したりもしました。

勤息義隆また、観光などでせっかくお寺を訪れても、お坊さんに会えないことが多いですよね。私の場合は在宅で仕事が出来るからこそ、お寺に行ったらちゃんと会える、そんな存在になれたらと思っています。

勤息義隆他のお寺にも、デザインのノウハウを広めていけたら嬉しいですね。デザインの世界は目まぐるしく変わっていくので、常にキャッチアップを怠らないようにしたいと思います。

杉田最後に、副業・複業を始めてみたい人に何かメッセージはありますか?

勤息義隆副業をする前に繋がりをつくっておくこと、これが一番大切です。
また今の仕事が嫌だから……というネガティブな理由から始めないことも、大切だと思います。

杉田ありがとうございました!

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