「専門スキルを伸ばす VS 幅広い領域に挑戦する」フリーランスの生存戦略討論
- スキル
- フリーランス/個人事業主
- 座談会
最近は副業・複業を推奨する会社が増え、本業以外にも積極的に仕事をする人増えてきました。
今回はWebディレクターをしながら、終業後や休日に音楽活動をされている菅原靖之さんにお話を伺いました。
退路を絶ってミュージシャンを目指す人もいる中、「いまはWebの仕事を辞める気はない」と語る菅原さん。Webディレクターの仕事と音楽活動の意外なシナジー効果や、二軸で生きていくリアルな姿を見せていただきました。
本日はどうぞよろしくお願いいたします。早速ですが、菅原さんの現在のお仕事を教えてください
普段はWebディレクターをしています。現在はiOSアプリの開発ディレクションやWebメディアの運用業務、サイト制作ディレクションなどを行なっていますね。
大学を卒業して最初に入った会社でWebメディアのライターをした後に、Webサイトのディレクションをするようになり、それからもう8年くらいWebディレクターをしています。
ミュージシャンとしてもご活躍されていると伺いました。音楽活動を始めたのは、いつからですか?
高校生のときにバンドでドラムを叩き始めて、その後に作曲もするようになりました。そこから現在まで、ずっと音楽を続けてきましたね。
音楽でお金が少しもらえるようになったのは社会人になってからです。
いまも4つものバンドで活動されているんですよね
そうなんです。現在は『miida』『ecke』『SYMBOL』『Low Fu』というバンドに関わっています。最近結成したmiidaは『ねごと』の元メンバーである沙田と一緒に始めた音楽ユニットです。
沙田とライブを見に行ったとき、「音楽は続けるから、よかったら一緒にやりたい」と誘ってくれて。
音楽活動ではお金は発生しているのですか?
ライブでは「サポートメンバー」として他のバンドに出ることがあるのですが、そういうときは仕事として報酬をいただくことがあります。あと自分たちの活動では、ライブや物販、CDや配信などで売り上げが発生します。
就職するタイミングで、本業をしながら音楽活動も続けるという選択をしたのはどうしてですか?」
もともと音楽で稼ごうと考えていなかったので。生活基盤となるお金を仕事で稼いで、その上で音楽もやろうと思いました。周りに音楽で稼いでいる人はいなかったし、音楽でお金を稼いで暮らすということが、当時あまりイメージできなかったのもあって。
でも、今は少しずつ考えが変わってきてる部分もあります。
本業を持ちながら音楽活動を行ったことで、気づけたことは何かありますか?
Webディレクターとして社会人を経験したことで、「稼働に見合った報酬をもらう」ことの大切さに気づけましたね。
音楽を始めた当初はその辺りがよくわかっていなかったので、仕事を安請け合いしちゃってたんです。「〇〇円しか払えないんだけど、1曲作ってくれない?」みたいな案件も、よく考えず受けていました。
けっこう無理がある仕事も引き受けていたんですね……。
音楽活動であっても、それに見合った報酬はきちんともらうべきだと思います。またしっかり自分がステップアップしていくためにも、自分の価値も上げていかないといけないなと気づけました。
音楽の世界には単純に「好きだからやる」ってスタンスの人も多くて、それは本当に正しいと思うんですが、お金の面を意識してステップアップすることも大切だと最近思っています。
特にWebディレクターの仕事が、音楽活動に活きたことは何かありますか?
当たり前のことなんですけど、きちんと予算感を見積もるようになりました。Webディレクターがやっていることと本当に一緒で、どんな工程が必要で、どれくらい時間がかかるのかを見積もって、提案できるようになりましたね。音楽でも、どうしてもお金が必要になる場面は多いので。
Webディレクターの「全体の枠組みをつかむ能力」が、音楽の仕事にもすごく活きているんですね」
ものづくりの観点では、Webも音楽も一緒だと思っています。音楽の作品づくりでも、必要なことを決めて、スケジュールや予算、誰に頼むのか、どういう順番でやるのかを考えて進めていくのが大切だなぁと。この前バンドでアルバムを作っていたときに感じましたね(笑)。
Webディレクターをしていなかったら、いまの進め方はできていなかったなと思いますか?
そうですね、それこそ学生のときはできていませんでした(笑)。CDを作るにしても知らないことばかりだったので、お金が予想以上にかかってしまったり、CDが期限内に完成しなかったり、完成しても流通先を決めていなかったり……全然うまくいきませんでした。
ビジネス経験を積んだからこそ、できるようになったことだなと思います。
逆にミュージシャンとしての経験が、Webディレクターの仕事に活きたことはありますか?
関わってくれている人への感謝を、いままで以上に感じるようになりましたね。音楽活動の中で、お世話になる方が増えていくのを感じていて。バンドのグッズをデザイナーさんにお願いしたり、レコーディングのときはエンジニアさんにお世話になったり、レーベルに担当者さんができたり。
協力してくれる人たちのおかげで、プロジェクトができているという思いが強くなりました。
菅原さんはミュージシャンとしてもかなり活躍されている印象ですが、Webディレクターをやめようとは考えないのですか?
僕の場合、まず自分の生活が成り立っていないとダメなんですよね。音楽がお金になっていないわけではないんですが、収支がまだ不安定なところもあるので(笑)。
一時期、アルバイトをしながら音楽活動をしていたときもありました。でもそれだけだとどうしてもお金が減っていく一方で、当時はけっこう辛かったんです。
仕事を辞め、退路を絶ってミュージシャンを目指す人もいますが、僕の場合は生計を立てる方法を音楽とは別に持ったうえで音楽をやるほうが、いまは性に合っていますね。
なるほど。あくまで生活基盤があったうえでの音楽活動なんですね
そうなんです。でも今後、もし音楽だけでやりくりしていけるとしても、学生のときから興味があったWebには関わり続けると思います。いろんな仕事をしたいなと思っているし、どちらも好きなんですよね。
会社と音楽活動の二軸で生きていきたい人は多いと思います。そのような方に、何かメッセージがあればお願いします
就職するタイミングで音楽を辞めていく人は多いですが、音楽が好きだったら全然両立できると思うんですよね。ずっと働きづめの環境なら難しいかもしれないけど、別にそうでないなら、音楽を続けた方がいいと思います。
ちなみに僕はWebの仕事以外の日は、だいたい音楽活動をしています。本当はNetflix見てダラダラする時間も欲しいんですけどね……(笑)。
確かに、社会人だからといって音楽を捨てる必要はないですもんね。
ただ、趣味ではなくしっかりやっていきたいと思うなら、ビジネス的視点は絶対に持っておいた方がいいです。
音楽の世界では感覚や感性が優先されがちだけど、自分の音楽の価値がどれくらいか、どうやったら少しでもお金になるのかを少し意識するだけでも変わると思います。
フクギョウワーカー特集
2つの仕事でセカイをひろげる働き方
「レシピを無視すると良くないのは、料理も開発も同じ」ランチクリエイターの副業で世界を広げる若手エンジニア - 井土元樹
「覚悟がないから、のびのび副業できるんです」 Webディレクター×ライターでスキルと繋がりをひろげる - 千鳥あゆむ
polca、one visa……人気サービスの開発を経てたどり着いた、本業と副業の両軸ワーク - 土谷 光
突き詰めると、僧侶とデザインの副業は同じだった。仏教の教えから本質を考える - 勤息義隆
音楽だって「ビジネス視点」が大切。miida菅原が考えるリアルな生き方
「お金を払って撮っていたら、お金をもらって撮れるようになった」映像編集者×カメラマン - 森川亮太