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「私、就職せずにフリーになる」と宣言した娘を、父が全力で褒める理由

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我が子が、大卒でいきなりフリーランスになると宣言したら、「でかした!」と褒めてくれる父親はそんなに多くないはずです。いや、ほぼ皆無でしょう。

新卒カードをなぜ捨てる? 会社員を数年経験してからでも遅くない、若造が仕事を取れるわけがない……。良識のある親なら、全力で阻止するはずです。

しかし、私は逆に独立することを応援していました。むしろ就職のリスクを強調して、フリーの道に背中を押したほどです。

「無謀にも思えるリスキーな選択を、なぜ歓迎できたのか」「就職のリスクとは、いったいどういうことか」などを、親目線で書いてみたいと思います。

私たち親子の関係性

本題に入る前に、親子関係について触れておくと、我々には「ロードバイク」という共通の趣味があります。

▲すごく速く走れる自転車です

私の趣味に娘が興味を示し、大学入学と同時に1台買い与えたところ、これにどハマり。美術部出身で物づくりに没頭する性格もあってか、なんと自転車をテーマにしたYouTubeを始めてしまいました。

大学4年間で順調にチャンネル登録者数を伸ばし、業界ではそこそこ知られる存在になりました。

夢中になれることに出会えたのは素晴らしい、と微笑ましく思っていた反面、「卒業して就職したら、YouTubeはどうするのだろうか」という心配もありました。

その想いは娘も同じだったようで、3年生になるころから身の振り方を真剣に考えるようになり、雑談交じりの相談を何度か受けたのを覚えています。

相談は「フリーになる」のが前提で、そのために不安を解消して道を切り開きたい、というトーンでした。私はその考えを尊重し、実現のために年単位で計画しようと伝えました。てっきり否定されると予想していた娘は、拍子抜けしたと思います。

では、なぜわが子に就職ではなくフリーランスを勧めたのか。理由は3つあります。

就職せずにフリーランスになることを歓迎した理由

理由1. 就職より「やりたいことがある」なら良いと思ったから

わが子がフリーランスになることを歓迎した理由としては、まず独立が目的化しておらず、好きを極めるための手段として独立を検討していたことが挙げられます。

「フリーは響きがかっこいいから」「組織に属するのは好きじゃないから」くらいの理由だったら反対したでしょうが、そうではありませんでした。

夜な夜なアナリティクスで分析し、他のクリエイターと学び合い、新しい技術を身に着け、アルゴリズムを研究し、何かに取り憑かれたように一人でPDCAを回す様子は鬼気迫るものがあり、「彼女がYouTubeを捨てることは絶対にない」のは私の目にも明らかでした。

就職してYouTubeを趣味に格下げはしたくない。卒業後もがっぷり四つで取り組んで食っていきたい。それができるのはフリーしかない。ならば、リスクは許容して挑戦するしかない、という考えを、親とはいえ否定できる空気ではなかったのです。

今では笑い話ですが、後に本人から「もし『YouTubeなんか辞めて就職しろ』と迫られていたら、勘当されてでもやり続けるつもりだった」と聞かされました。

そこまで言うかと驚くと同時に、「あぁ、その覚悟があるなら大丈夫」と、むしろ頼もしく思ったくらいです。

▲台北での自転車ショー「Taipei Cycle 2023」にて

理由2. 就職して「築いた資産」を捨てることが本当のリスクだから

4年間で築いたチャンネル登録者の資産を、(全てではなくとも)就職したらいったん手放すことになってしまうのが2つ目の理由です。

数万フォロワーがいて、マネタイズできているSNSを持つ人ならわかると思いますが、活動を止めてしまうのはあまりにもったいない。

週2ぺースで動画を出し続けるのは融通のきく学生だからできたことで、平日昼間に自由時間がない会社員にはほぼ不可能です。よって、会社員との二足のわらじで続ける選択肢は、現実的ではありませんでした。

仮に経験が買われて新卒でマーケ部門に配属され、YouTube担当になり、自由に采配を振るうことができたとしても、自分のチャンネルが後回しになるのは変わりません。そもそも、そんな奇跡は起きるわけもないでしょう。

YouTubeで鍛えた強みが発揮できないのなら、資産を失う上に、己の強みが死んでしまう。就職で得られる安定した給与や社会保障を天秤にかけてなお、企業に属することで被る損失のほうが大きいのではないか? と考えたわけです。

理由3. 会社員にはいつでもなれる

多くの人は、会社員になって経験を積んでからフリーになればいい、と言います。もっともなご意見ですし、大半のケースで正しいと思います。

ですが、私はその逆で、フリーの経験をもとに会社員になる道があってもいいと考えます。自分の腕だけでサバイブして培った知恵や経験は、会社員には持ち得ない貴重なものですし、それが勤め人として活きることもあるでしょう。

企業もそういう人材は放っておかないし、私が採用する側だったら、多様な経験の持ち主の方に興味を惹かれます。

「新卒フリー=一生勤め人にはならない」と決める必要はなく、タイミングやご縁を大事にしつつ、しなやかに「会社員とフリー(or法人)」の波を乗り移ればいいんじゃないでしょうか。

……と考えるのは、私が18年ほど「会社員兼フリーランス」を続けていて、53歳という年齢のわりに働き方に関しては思考が柔軟なことも影響していると思います。

▲現役競輪選手の低酸素トレーニングに挑戦する様子

余談ですが、私が働くWeb業界では、

「会社勤めしながら、他で業務委託をしています」
「フリーになったのを機に地方移住したら、収入もQOLも爆上がりです」
「アドセンスとアフィリエイトで食えているけど、いちおう会社員もやってます」

という人は珍しくありません。

型にはまらない働き方、大いにけっこうじゃないですか。新卒時にそれができるスキルや人脈があるのなら、就職ではない道を試してみればいいのです。

就職せずフリーランスになるために設定した3つの条件

ここまでさんざん「理解ある父」のようなことを書いてきましたが、甘いばかりではありません。

後悔しないためにも、大学卒業までに3つの条件をクリアするよう伝えました。さもないと、茨の道が待っているからです。

条件1. スキルセットと専門知識があるか

スキルと知識はフリーにとって生命線です。娘は、動画編集とアナリティクスの分析は完全に独学で身につけましたが、独学のみでは知識の偏りが生じやすいです。

それなら他の分野も勉強して、YouTube全般に関する専門知識とスキルを身に付けたほうがいい。BtoBやBtoC、お堅いビジネス系、ポップなエンタメ系など、複数の企業のチャンネルの企画・編集・出演を通じて、経験の幅を広げるように助言しました。

「そんなことをしても、YouTubeがオワコンになったら潰しが効かないのでは?」という娘の不安は自然な感情だし、その可能性は否定できません。とはいえ、どうとでもなるだろうという確信もあります。

なぜなら、プラットフォームの流行は変われど、企画を立てて形にする発想力が不要になることはないからです。

結局のところ、面白いコンテンツを創造する能力があれば、どんなプラットフォームでも活躍できるんです。そこも含めて、継続的なスキルアップに励むという条件付きではありますが……。

条件2. 自己管理ができるか

自己管理能力は極めて重要です。フリーランスには上司もいなければ評価面談もないので、油断するとだらけます。ただ、娘は夏休みの宿題を7月中に終わらせるタイプで、自分を律することのできる性格でした。

「勉強しなさい!」と叱った記憶はゼロですし、中高時代は門限すら設けていません。その必要がないほど、何もかも自分で決めてこなしていたからです。じつにフリーランス向きなキャラクターなので、この点は安心でした。

さらに、先輩のフリーランスや経営者に会いに行き、信頼の築き方から健康管理、品質管理にいたる心構えや、トラブルを避けるための注意点を学んで、心に刻んでいたようでした。

▲自転車業界の先輩方と

こういったことに考えが及び、行動できるかどうかも、自己管理の一種といえるでしょう。

ちなみに、ここまで読んだ方は「積極性があって社交性が高い子だな」と感じるかもしれませんが、じつは娘は極度の心配性です。

最悪の状況を想像しては落ち込む癖があり、そこから脱しようともがいて解決に向かう……という不思議な行動特性があります。親から見ると回り道している気もしますが、結果オーライかなと思います。

条件3. 食べていける収入を稼げるか

好きを極めるといえば聞こえはいいものの、食えなければ絵に描いた餅です。YouTubeの収益だけでは食べていけないので、業務委託など、複数の収入源は必須です(業態にもよりますが、数万フォロワーでは難しいのが現実です)。

「月の売上はいくらあればいいか?」を議論した結果、大卒初任給(23万円)の3倍となりました。ざっと70万円です。

3倍の根拠はとくになく、フリーで初任給と同額では手取りが低くてジリ貧になる、2倍でトントン、3倍あれば多少の余裕はあるでしょ、くらいの計算です。

娘は「さすがにその額は厳しくない?」と怯みましたが、社会保険や福利厚生で不利で、退職金・ボーナス・交通費はなく、パソコンや備品を全部自分で賄うならば、新卒の目標として妥当なラインだよね、ということで落ち着きました。

とはいえ、月商70万円は楽に到達できる額ではありません。達成するにはどれくらいの案件数が必要で、人並みに休む時間を確保するためには時給換算でいくらに設定すべきかなど、現実的に計算して導き出しました。

Web上のポートフォリオや営業先の確保とアプローチ、SNSでの発信活動、名刺、開業の挨拶、Workshipなどのフリーランス・副業向けマッチングサービスへの登録といった準備を進めた結果、卒業3ヶ月前には「いけそうだ」という見通しはついていたようです。

【あえて設定しなかったこと】長期のキャリアプラン

未来は読めないので、長期のキャリアプランは考えていません。長期プランを持つことでむしろ視野が狭まり、可能性を見失うとすら思っています。

ほんの数年のうちにジャニーズが消滅し、Twitterが信じられない名称に変更され、生成AIが仕事を一変させたなんて、数年前には誰も予想できなかったんですから。5年後がどうなっているかなんて、考えるだけムダです。

大事なのは、5年後、10年後にどうしていたいか? という主観や希望的観測ではなく、今年起きる変化に気づけるか? 反応できるか? という感性かなと。「変化を面白がるマインド」と呼んでもいいかもしれません。

未来を考えることを放棄するのではなく、目の前で起きていることに敏感になり、都度考えて行動をチューニングする。水のようなしなやかさがあれば、どう転んでも満足度の高いキャリアを築けると思うのです。

大学1年生のときにノリで始めたYouTubeが、まさか独立のキッカケになるとは想像すらできなかったわけで、つくづく「人生は何があるかわからない」ものです。3年後には、娘は今の仕事の延長線上に軸を置きつつも、今とは違う仕事をしている気がします。それが何なのか、わたしたち親子にも想像がつきません。

心配しなくても、そのうち新たなキッカケの芽をつかむときがくるでしょう。

▲レインボーブリッジで開催されたGrand Cycle Tokyo 2023 にて

まとめ

娘の新卒フリーランスになる過程を見ていて、大事なのは「独立準備は卒業前に終わらせておくこと」だと思いました。卒業してから動いていては遅いです。

タスクの洗い出しと準備にかかる”助走期間”は、少なくとも3ヶ月、理想をいえば半年は必要だと見積って、4年生の秋から動き出しています。まだ学生だけど、気持ち的にはすでに独立している! というマインドで行動したのが、功を奏したのかなと思います。

次回の記事では、卒業1年前、半年前、3ヵ月前に、娘がどんな準備をしたのか、社会人になってからの1年を振り返って、「これはやっておいてよかった」「あれはこうすべきだった」と思ったことについて掘り下げてみようと思います。

(執筆:中山順司 編集:少年B)

“親”から見たフリーランス

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