【社労士解説】ジョブ型雇用時代におけるフリーランスの生存戦略とは?
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我が子が「就職せずにフリーランスを目指す」と言い出した場合、たいていの親は慌てふためくと思いますが、我が家は「一丁、やってみろ」と送り出しました。
約1年(広く見れば約4年)かけて周到に準備した結果、卒業と同時に順調に軌道に乗れて、父としてもホッとしています。
娘がどのタイミングで何を準備したのか、壁打ちと機会提供に徹した私がどう助言したのか。それぞれの角度から振り返りつつ、答え合わせをしてみます。
目次
大学入学と同時に「Webで発信する」ようになったのがターニングポイントでした。この時点ではフリーランスを意識してはいませんでしたが、その土台になったと思っています。
YouTubeで動画を見てもらうのは簡単ではありません。コンテンツの良し悪しのみで評価されるシビアな戦場です。つまらなかったら見向きもされず、登録者も伸びません。
学生だから、という言い訳のきかない場で鍛えられ、批判も称賛も受け入れるマインドセットを身につけたのは大きかったです。
また、これはYouTubeあるあるですが、万単位のフォロワーが付いて一定の再生数が取れ始めると、アンチコメントに悩まされることも多くなります。
傷つくことも多かったようですが、「匿名になると人はこうも攻撃的になるのか……揚げ足取りに必死になる人の心理とはなんだろう……でも一理はあるし、ここから学べることは何か……」というふうに、自分を振り返り、成長しようとする姿勢を見せてくれました。
会社員兼フリーランスとして、インターネットで働く「先輩」としての立場からすると、20歳そこそこで誹謗中傷への耐性が付いたのはよかったと思います。
最近では「子どもがYouTuberになりたがっていて困る」という親の声を聞くこともありますが、一度やらせてみればいいんじゃないでしょうか。うまくいってもいかなくても、貴重な学習機会になると思います。
YouTubeを始めて半年後、その経験を活かして企業インターンをすることを勧めました。職場はなんと筆者の勤務先です。
べつに一緒に働きたかったわけではないのですが、たまたま自社チャンネルを始めるタイミングで動画編集者が必要だったので、渡りに船で採用になりました。
※このへんの顛末は過去に別メディアでまとめています
お金を稼ぐだけならアルバイトでもいい。あえて早いうちからインターンを勧めた理由は、自分が得意で興味のあるジャンルの企業で働いておくことで「社会人になったその先」をイメージしやすくなるからです。
もっとも確実に子どもが成長できる方法は、「親以外の人間と働く」ことだと思っています。価値観や常識の異なる他人と仕事を進める中で、叱られ、励まされ、褒められる経験は、学校や家庭ではなかなか得られません。
親の100の説教より、上司の1の指摘のほうが堪えるし、記憶に残るものです。
言葉遣いやマナーに始まり、期日を守って質は落とさず、曖昧さを放置せず、臆せず意見や考えを述べ、指示を待たずにボールを拾う……。ロジックと数字で説明するスキルは、インターンのおかげでメキメキと身についたと思っています。
さて、娘はこの時点でまだフリーランスになるかは決まっておらず、普通に就職する可能性もありました。でも、このようなスキルはどのみち社会人として求められる能力なので、インターンは正しい選択だったと思います。
新卒フリーランスを目指すなら、社会で鍛えられるという意味でも、インターンはしておいたほうがいいのではないでしょうか。
フリーランスでやっていくと決めた大学4年生からは、おもに以下の3点に注力していました。
ただの動画編集者だと、作業をこなすだけの「作業者」に留まるリスクがあります。今後AIが動画の領域に浸透してくるのは確実なので、業務レイヤーを高める努力をしようと伝えました。
具体的には、分析、企画、コンサル、できればゼロイチの戦略設計もできるのが望ましいでしょう。インターンにここまで求める企業はあまりないですが、たとえば、
「AよりもBの構成のほうが視聴者の反応が○%良いのは、こういう仮説に基づいているからで、であれば今後の方針はこう変えていくのがいいのではないか」
「これまでCの切り口でコンテンツを企画してきたが、流入キーワードから推測するに、Dという未開領域があるのではないか。調査した結果、再生数と登録数が○%上積みできると算出できたので、成長カーブをこれくらい上昇できる」
……と、勝手に提案すればいいわけです。
データに基づいた改善提案を嫌がるクライアントはいません。できることが増えて、クライアントも喜ぶ。一石二鳥です。
インターン先以外にも、自力でクライアント開拓することも勧めました。つまり、営業ですね。
営業といっても、資料片手に売り込みに歩く……的なモノではなく、カジュアルに人と会って課題を共有してもらい、解決の相談に乗る機会を設ける、くらいのアクションです。
Z世代の娘も御多分に洩れず、「営業ってしんどそう」という先入観がありました。しかし、Facebook上の知り合いに独立の挨拶がてら課題をヒアリングしに行き、フラットなお悩み相談を受けるぐらいのテンションでいいよと伝えると、実践してくれました。
その場ではお仕事にはならなくても、半年後に実を結んだご縁がいくつもあったようです。
「学生だけど、気持ちはすでにフリーランス」のつもりで仕事に励んでいたおかげで、お仕事は増えました。
一方で、
といった苦労も味わったようです。
こういった経験も、致命傷にならなければ勉強代と割り切れるものです。
ただし、同じミスを繰り返さないよう、トラブルがあったら親子で共有しあって、「こういう状況ではこう返す」「地雷を察知するサインはこれ」「譲れない条件は◯◯。ここの合意形成ができなかったら請けない」などの対策も練りました。
卒業の半年前からは、いよいよ具体的な独立準備を始めていきました。
Twitter、Instagram、Facebookは1年生の時から地道に続けてきたこともあり、世間一般を上回る繋がりが作れていました。
noteとfolioは自己紹介時に送るリンクなので、フォロワー数は全く気にしていません。
いよいよカウントダウン。諸手続きを終わらせておくタイミングです。
ちなみに、娘の屋号は「ねこのて」といいまして、「猫の手も借りたい時にお役に立ちますよ」という意味が込められています。
屋号をつけるのは、我が子の名前を決めるのにも似た行為。意外に難しく、数日やそこらでは決まりません。そのとき役立ったのが「Word Cascade」というサイトです。
たくさんの単語が画面の上から下へと、エンドレスに流れていくWebサイトで、アイデアを出したい時に重宝します。「猫の手」というワードが降ってきたとき、「これだ!!」と閃いたそうです。
このとき、親子でWorkship MAGAZINEの「FREELANCE カテゴリ」の記事を片っ端から読み、大いに助けられました。
様々な手続きのノウハウ、お金や税金の話、心構えや教訓、実体験の振り返りなど、フリーランスになる準備に関しては、Workship MAGAZINEを読んでおけば大丈夫です。これは自信を持って断言できます。
読んだ内容をもとに、Googleドキュメントに「todoリスト」を作り、ひとつひとつこなしていったことで、抜け漏れがゼロの状態で卒業を迎えることができました。
なお、法人化に関しては一瞬脳裏をかすめましたが、軌道に乗ってからでも遅くありません。税金や会計事務が面倒なので、まずは身軽なフリーランスを選んだようです。
フリーランスから法人化(会社設立)して思った3つのこと
Workship MAGAZINE
フリーになってちょうど1年になるので、答え合わせも兼ねて、娘にもコメントを求めてみました。
後悔はほぼないんですが、強いて挙げるならこのあたりです。
このような準備もあってか、フリー1年目は大きなトラブルもなく、無事に過ごすことができ、親としても安心しています。この記事が公開される頃には、娘はフリーランス2年目に突入しているわけですが、さらに仕事の領域を広げようと格闘しているようです。
父親として、業界の先輩として、今後もアドバイスはしていきますが、あとは本人の自由です。フリーランスを極めるもよし、いつか仕事に行き詰まったら会社員になるもよし、はたまたどちらでもない何かに挑戦してもいいでしょう。
何にでも挑戦できる若さがあって、自由な働き方ができる環境が整った令和のいま、こういった身の振り方もアリなんじゃないでしょうか。ひとつの事例として、参考になれば幸いです。
(執筆:中山順司 編集:少年B)
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