ARマーケティングことはじめ。押さえておきたい5つのAR活用

モバイルデバイスを通じて売上を伸ばしブランド価値を高めるために、「AR(拡張現実)」は今後新たな武器となります。

今日の市場は、以前よりも消費者のニーズに応じて変化しやすい傾向があります。そして技術が進歩するにつれて、消費者のニーズは変化しつづけるため、ブランドはその変化に歩調を合わせる必要があります。

そんな中でARは、マーケティングおよび販売戦略の中で近年急上昇しているトレンドです。ARを通じてブランドは、モバイルデバイスの機能を活用した独自の体験を顧客に提供できるようになりました。

今回はARを用いたマーケティング戦略を行う際に絶対押さえておきたい、ARの5つの用途をご紹介します。

1. 購入前に製品を試してもらう

多くの見込み客は、製品を購入する前に「まず試してみたい」と感じています。試着室、化粧品サンプル、自動車の試乗……その他多くの事例が「試してもらうこと」の有効性を証明しています。

ARで拡張されたショッピング体験は、これからの小売業界におけるトレンドのひとつです。ARを使用すれば、見込み客は化粧品、衣料品、およびさまざまな家庭用品を「直接触れることなく」試すことができます。 また顧客のニーズを最も満たすものを探すために、何十、何百ものアイテムを商品棚から都度持ってきて提案する必要もなくなります。

この分野のARアプリケーションは、すでにいくつも開発されています。特にFacebookがこの分野に注力しているようです。最初のFacebook ARの広告では、顧客がスマートフォンのカメラを使って仮想のサングラスを試着できるシステムが提供されました。

化粧品業界もまた、昨今AR技術を受け入れることに積極的なようです。SephoraL’OrealPerfect Corpなどのブランドは、顧客が化粧品を使うとどのように見えるか確認できるような仕組みを提供し始めています。多くの見込み客は、自分自身が化粧品を試すことによってその良し悪しを判断しているため、ARは化粧品業界のオンライン販売戦略にとって特に価値がある技術といえるでしょう。

ARが特に活用される可能性があるもうひとつの分野がファッション業界です。仮想の試着室として活用が検討されています。顧客が服を購入する場面において、更衣室は「必要悪」の要素でした。これまでの試着のフローでは、まずは顧客が衣料の束を更衣室に持ち込み、その後に従業員が品物をもとの場所に戻す必要があります。さらに実際に衣服を提供する際にも、店は手持ちの在庫によって販売数を制限されてしまいます。AR試着室ではその面倒の大部分を取り除き、顧客がデバイス上で衣料品のデジタルライブラリーを閲覧できるようになるのです。TopshopTimberlandのようなブランドは、すでにAR試着を実際に開発し、顧客が衣服を選びやすい仮想体験を提供しています。

2. ARツアーを提供する

ARを利用することで、企業の製品に対してデジタル要素を加えられます。たとえば顧客が製品またはオブジェクトをスキャンすることで、ARを通じて製品に関する追加情報を表示できたり、または何らかの形で補足的な経験を得られるのです。こういったARの活用方法は、多くの産業、市場に適用可能です。

たとえば、チケット販売会社のStubHubがARアプリを開発したことにより、ユーザーはスーパーボウルが開催されるスタジアムの「3Dディスプレイ」を見られるようになりました。さまざまな席からのフィールドの見え方を確認できるようになったことで、ファンがそれぞれにとって最適な席を選べるようになったのです。

スターバックスは、店舗を訪れた経験をデジタル化するためにARに目を向けました。ユーザーは店舗内のオブジェクトをスキャンしてバーチャルツアーにアクセスすることで、お得情報などの追加コンテンツを受け取れます。

自動車業界でもARアプリケーション活用が進んでします。Hyundaiはドライバーのための補完マニュアルを業界で初めて作成し、Mercedesはこれをさらに進化させました。Mercedesのオーナーは、AIアシスタントとARインターフェースを組み合わせたシステム『Ask Mercedes』と呼ばれる機能にアクセスすることで、ドライバーが抱く多くの質問に回答することができます。

3. コンテンツを強化する

ARは仮想の要素を用いて、名刺やパンフレットなどブランディングに関わるコンテンツをレベルアップできます。

例えばユーザーが、自分のモバイルデバイスで印刷物をスキャンすることで、ブランドにかかわる動画やテキストをAR空間上に表示することができます。あるいは名刺にQRコードを導入し、それを読み取ることで、AR空間上にメール / 電話番号 / SNSアカウントなどの情報が表示され、またそれをユーザーがタップすることでアクセスできる仕組みも作れます。

ブランディング素材にARを活用すれば、動的な仮想要素を挿入でき、エンゲージメントを高められるのです。

4. 話題を喚起する

これまでのARアプリケーションは、販売促進のための直接的なマーケティング戦略に注力していました。しかしこれからは、ブランド自体の価値を高めるためにも使用できます。

ARを適切に使うことができれば、独創的でアッと驚かすような、あるいはシンプルにユーザーがおもしろいと感じられるAR体験を提供できるでしょう。そこからブランドに関する大きな話題を喚起することができます。

ARはほとんどの人にとって、まだまだ新しい体験です。そのためうまく設計されたAR体験を提供することによって、人々が自然と話題にあげて、ブランドを認知してもらうのに有効です。

人は、幸福感、満足感を提供するブランドを好むという調査結果もあります。ARを用いたポジティブな露出は、結果として永続的な利益を生み出すでしょう。

ARを使用して話題を喚起したパーフェクトな事例として、バス停に設置されたペプシのキャンペーン広告が上げられます。ペプシはバス停の壁にARの「仮想窓」を設置しました。その仮想窓を通して、襲い来るトラやUFO、ロボットに出会う体験を提供し、バスを待つ時間も楽しめるコンテンツが提供されました。その結果この仮想窓は話題になり、ペプシのブランド価値も向上しました。

この事例の後、Uberもまたチューリッヒで類似のキャンペーンを行い、乗客のためのAR体験を生み出し、YouTubeでは100万回を超える視聴数を記録しました。

このような戦略を採用することで、結果として企業は数百万ドルの利益を生み出すことがでました。特に競争の激しい市場では、ARキャンペーンを差別化要因として、同業他社から抜きん出て継続的な話題性とブランド認知を向上させられるでしょう。

5. B2Bに活用する

ARは、B2Bの顧客やベンダーの経験をさまざまな方法で変革できるポテンシャルを秘めています。B2Bの販売プロセスには、顧客の期待とベンダーが実際に提供できるものの間に、常に隔たりがあります。ARを活用することで、販売プロセスの全チェーンにおいて大幅な改善をもたらせる可能性があります。

ARがB2Bの売上に最も効果を上げる分野のひとつとして、動的な販売プレゼンテーション資料の作成が挙げられます。これまで営業担当者には、パンフレットやチラシ、そしてPowerPointの資料が使われてきました。一方でSalesforceでは、デジタルデバイスを装備することで、カスタマイズされたARアプリケーションから360度仮想的に製品ラインを見ることができます。またどの営業チームが上位を占めているかも一目でわかります。

ARを営業ツールとして使うことで、ざっくりとした概要から個々の詳細な要素まで、顧客が望むあらゆる方法で製品に関する情報を提示できます。製品をARで会議室に持ち込むことで、決定を下すために必要な情報をより多くの角度から提供できるのです。

カスタマイズオプションを扱う場面において、ARはさらに大きな役割を果たします。一般論として、顧客はできるだけ多くのカスタマイズと、自分用に特別に整備された製品、ソリューションを求めています。ベンダー側がこのあらゆる要望を管理することは、決して容易ではありません。

ARツールは、顧客が製品設計について積極的に参画するきっかけとなります。意見をリアルタイムでベンダー側に伝えられ、スムーズな一連のフィードバックを提供でき、顧客が欲しいものを正確に判断・提供できるようになります。 ARによって、顧客の期待とベンダーとの間に架け橋を作れるのです。

販売後のサポートに関しても、同様に大きな影響を与えます。多くの場合、販売後の顧客はユーザーマニュアルやオンラインの情報収集に頼っていますが、これらはそれほど役に立たない上、欲しい情報を探すのが困難です。それがフラストレーションにつながり、結果として顧客が他の会社で契約し始めることにも繋がります。

カスタマーサポートの分野でのARソリューションも、今ようやく現実味を帯び始めている段階です。得られる利益も非常に期待値が高いとされています。

ARマニュアルから、ARを介した遠隔サポートの可能性まで、ARはB2Bサービスをよりインタラクティブで即時性の高いものに押し上げるでしょう。

まとめ

ARは、単なる目新しいゲームや新たな境地以上の存在であり、今後10年の販売・マーケティング分野における革新のひとつとなり得ます。

すでに将来を見据えている企業は、ARを使用することで顧客に高い価値を提供し始めています。あなたの会社でもぜひ、検討してみてください。

(原文:Andrew Makarov 翻訳:Tomomi Takei)

 

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