Webライターが「得意ジャンル」を複数持つべき理由。「専門特化」はリスク大!?

Web上で目にする記事には、無数のジャンルがあります。わたしが過去に書いただけでも「グルメ」「道路/交通」「観光/旅行」「プログラミング」「農業」……などなど。他にも色んな記事があって、挙げていくと数え切れないほどです。

Webライターとして働くにあたっては、「1つのジャンルに特化すべき」「専門性がないと稼げない」みたいな意見もよく目にします。でも、自分の得意ジャンルってどうやって見つければいいの……? そもそも専門性って絶対ないとダメ……?

今回はフリーライターとしてさまざまなジャンルの記事を書いている少年Bが、「Webライターが得意ジャンルを複数持つべき理由」をお伝えします!

少年B
少年B

介護士、建築士を経てフリーライター。ふざけた記事からマジメな記事まで、さまざまなジャンルで執筆中。執筆歴は2017年からですが、mixiには膨大な量の黒歴史日記があります。(X:@raira21

「専門ジャンルに特化すれば稼げる」とは限らない

ライターを始めるにあたって、たぶん多くの方は「どんな分野に特化したライターになろう」と考えるんじゃないでしょうか。

でも、そもそも「専門性を活かして1つの分野に特化すること」って本当に大事なんでしょうか。個人的には、専門ジャンルはあればいいけど、そこまで固執しなくてもいいんじゃない? と思っています。理由はシンプルで、専門ジャンルだけに特化するのはいろいろとリスクがあるからです。

リスク1. ネタ切れ

1つめのリスクは、ずばり「ネタ切れ」です。

たとえばわたしは、日本一ぶどうを食べているぶどうマニアですが、「ぶどうの記事を100本書いてください!」と頼まれたら困ります。だって、そんなにネタがないんですもん。

ほかにも、趣味の「旅行」だって、自分で開拓しなきゃ本当におすすめできる旅先は見つからないわけで、書くにしたってたくさんのお金や時間が必要になります。いわば経験を食いつぶしているようなもので、いつかは絶対ネタが切れるわけですよね。

もちろん、ジャンルによってはネタに事欠かないものもあります。たとえば鉄道。毎年のようにダイヤ改正がありますし、新型車両も登場します。「前と比べてどう変わったのか」を解説できる人材には需要があるでしょう。

こういった「ネタ切れのない専門性」がある人は大事にしたほうがいいと思います。

リスク2. メディアの制約

ネタ切れしないジャンルに特化していても安心はできません。そもそも、相性の良いメディアに限りがあるケースも多いからです。

たとえば、わたしの専門分野である「ぶどう」には、専門メディアがありません。「農業」や「グルメ」まで広げれば成立するでしょうが、これらの専門メディアだってそんなにたくさんはありません。

さらに、「グルメライター」のように需要の多いジャンルを専門にやっていたとしても、書ける媒体は多くて2~3社じゃないですか。そうなると、1社が潰れた場合のダメージがでかいんですよね。代わりを見つけるのは容易じゃありません。それに、同じジャンルの記事ばっかり書いていると「このネタはどこに持っていこう……」って迷いませんか?

こうやって物理的なメディア数の制約に悩まされることもあります。

リスク3. ジャンルそのものの需要減

ジャンル自体の需要がなくなってしまえば、当然その専門性の価値も下がってしまいます。たとえば仮想通貨は、一時期めちゃめちゃに需要のあるジャンルでしたが、あれから数年経って、だいぶ落ち着いているように見えます。

2023年現在は、画像生成AIの話題が大人気ですが、数年後はどうでしょうか。今より広く定着する可能性もあれば、一気に廃れて需要が見込めなくなる可能性もあります。

「仮想通貨や画像生成AIを専門にするな」と主張しているわけじゃありません。ジャンル自体の需要が下がってきた時のことを考えて、二の矢・三の矢を用意していたほうがいいんじゃない? と言いたいんです。

仮にジャンル自体が安定していたとしても、メインジャンルの他にサブジャンルがあれば、「万が一何かあっても大丈夫だ」と、精神的な余裕に繋がりますしね。

リスク4. 「自分」の需要減

ジャンルの需要があっても安心はできません。自分の得意ジャンルに有力ライターがいる場合もあります。

たとえば超人気ライターのヨッピーさん(@yoppymodel)は「サウナ」関連の記事を数多く書いています。ヨッピーさんはライター界の大御所で実力者ですし、自身もSNSで数多くのフォロワーを持つインフルエンサー。初心者が同じ土俵で闘ってもそうそう勝てませんよね。

つまり、いくらサウナに詳しくても、切り口などを工夫しない限り「サウナ」という専門性はかなり価値の低いものになってしまう可能性があるんです。じゃあ、ヨッピーさんみたいなつよつよライターが、いきなりぶどうのおいしさに目覚めてしまったら……?

この仮定はかなりレアケースだと思いますが、後からライターを始めた人がじつはそのジャンルに超絶詳しくて、大学で研究をしていたとか、先輩ライターがTVに取り上げられたことをきっかけにそのジャンルの顔的な存在になったとか、そういう可能性はいくらでもあります。

こういった場合、ジャンルそのものの需要が下がるわけではありませんが、ジャンル内において「自分の需要が減る」ことはぜんぜんあるんですよね。

「書ける記事はなんでも書く」も考えもの

「専門特化がダメなら、なんでも書けるオールマイティーなライターになればいい」と考える方もいるかもしれません。でも「書けるジャンルだから」といって安易に飛びつくのは考えものです。

文章を書いて世に出し、対価をいただく……というのは、責任の重い仕事です。デマを書けば大問題になりますし、場合によっては他人に迷惑をかけてしまうことになります。だからこそ、下調べによる情報の精査が大切になってくるわけですね(とはいえ、人間なので間違えてしまうこともあるんですが……)。

と、口で言うのは簡単ですが、下調べだってけっこう大変です。たとえば、わたしが「英会話ジャンルの記事を書いてくれ」と言われたら、書くこと自体はできると思います。でも、パスポートを持っていないわたしにとって、英会話は興味のないジャンルなんです。

そうなると、イチから行う下調べが大変になります。原稿料を他の10倍いただければ喜んでやりますが、そんなことはそうそうありませんよね。すると、原稿料が同じなら、稼働時間に対して割が合わなくなります。なので、「英会話」は書けるジャンルであっても、得意ジャンルではないんです。

じゃあ、いったいどんなものが得意ジャンルなのか。わたしは「下調べが苦にならない」ジャンルのことを「得意ジャンル」と呼んでいます。

複数の「得意ジャンル」を持つべき理由

わたしはこの「得意ジャンル」を複数持つべきだと思っています。

まず、得意ジャンルを複数持つことでネタ切れ対策ができます。たとえば、しばらくはぶどうネタが思い浮かばなかったけど、他のジャンルを書いてるあいだに○×県で新しいぶどうの品種が誕生した……となれば、そこで1本の記事が書けるわけです。

需要リスクの分散もできるし、このジャンルはこのメディアで書くと決めてしまえば、書くメディアも迷いません。ちょっとしたことですが、気持ちの面ではずいぶん楽になるんですよね。

さらに、最初から興味がある分野なので、下調べ時間も短縮できます。わたしの場合はぶどうマニアなので、常日頃からぶどうのニュースや品種図鑑なんかには目を通しています。そのため、ぶどうの記事なら下調べの時間をあまりとらなくても、事実の再確認だけでしっかりした記事が書けるんですよね。

また、わたしは交通インフラにも興味があり、道路の開通情報や鉄道のダイヤ改正にはよく目を通しています。Googleマップをあてもなくスクロールしてあれこれ眺めるのも趣味のひとつ。旅行も好きなので、お休み前には旅先のおいしいお店や温泉をリサーチしていますし、旅先での経験値もそれなりにあるわけです。

日頃から色んなものに触れておくことでジャンルの幅が広がるし、短い時間でいい記事を書けるようになる、ということですね。「いい企画、いい記事」がつくれるジャンルを複数持っておけば、ライターとしての価値もグッと上がるはずです。

得意ジャンルは「人生経験」のなかから見つかる

では、得意ジャンルはどう見つけたらいいのでしょうか。わたしは「得意ジャンルは自分の人生そのものじゃないか」と思ったりもします。

思えば、わたしはいろんなものに「そこそこ広く、それなりに深く」ハマってきた人生でした。「インターネット」「旅行」「ぶどう」「道路」なんて、もう方向性がめちゃめちゃじゃないですか。趣味の話が全部通じる人なんて、そうそういません。もうちょっと親和性のある趣味だったらな……と思ったことも一度や二度ではありませんでした。

でも、ライターという仕事を始めた瞬間に、これまでバラバラに取っ散らかっていた趣味が「得意ジャンル」として急にひとつになって、自分の中に一本の芯ができたんですよね。

「書くことは人生に等しい」なんて言うとカッコつけすぎな気がしますが、自分の人生そのものが得意ジャンルになっている感覚があります。

もちろん「人生経験がなきゃダメ」というわけではありません。やったことはなくても興味が持てそうなジャンルがあるなら、そこを主戦場にすればいい。そもそも、調べたり勉強するのが苦にならないという人なら、何でも書けるってことになりますよね。うらやましい~!

「書き方」や「伝え方」に特化するのも方法のひとつ

ライター初心者のうちは、つい「記事のジャンル」に特化する方向で考えがちです。

でも、「書き方」や「伝え方」に特化するのもひとつの手段です。わたしは「インタビュー」という書き方と、「初心者向け」な伝え方を得意としています。

インタビュー:さまざまなジャンルに応用できる定番技術

「インタビュー」は、どんなジャンルの記事を書くときにも役に立つ技術です。最初は緊張するかもしれませんが、いちど手法を身に付けてしまえば、グルメや観光ならお店のかた、農業なら農家さん、交通なら鉄道やバス会社、行政など、誰にでも取材できるようになります。

わたしは元々「自分ひとりでは知ることのできない、他人の仕事や人生の話を聞く」のが趣味のひとつでした。インターネットで知り合った人と軽率に会って飲みに行く……なんてことも、コロナ前はよくやっていました。

他人の人生をエンタメとして楽しむのは、あまりいい趣味とは言えないような気もします。でもライターになってからは、これが圧倒的な強みになりました。仕事として気になることを根掘り葉掘りなんでも聞けるんだから、最高ですよね。

こういう性格だと、相手のことを何でもあれこれ聞きたいので、ただの一問一答にならないんですよ。本筋を無視して暴走するのはダメですが、聞くべきことを聞いたうえでの脱線はOK。

そういった余談から会話が盛り上がり、結果的に記事の質が上がったこともたくさんあります。好奇心が旺盛なかたは、インタビューの技術を高めていくと、マルチに活動できるかもしれません。

初心者向け:「推し」を布教する気持ちが読みやすい記事をつくる

もうひとつ、わたしは「初心者向け」という「伝え方」にも特化しています。

「誰に向けて書くかが大事」という話は前回しましたよね。「中学生が読んでわかるように」などとよく言われますが、わたしが意識しているのは「友達に推しを布教するように」です。

ほら、推しの布教ってゴリ押しじゃダメじゃないですか。人を沼に引きずり込むためには一般化したわかりやすい話から入って、ちょっとずつ興味を持ってもらうみたいな工夫が必要ですよね?(オタク特有の早口)

取材対象を好きになってもらえるような文章を書こうとすると、「こんなにおもしろい人がいるんだよ!見て~!!!」ってスタンスの文章になり、結果的に初心者が取っつきやすい「中学生がわかる」ような難易度になります。わたしにとって、書くことは推し事なんですね。

ちょっと特殊な方法かもしれませんが、さまざまなジャンルの記事をこういうスタンスで書く人って、あんまりいないような気がします。書籍だと専門書もありますが、とくにWeb媒体だと、初心者も対象としたエンタメ性のある読みものになることが多いので、このスタンスも仕事に結びついている気がしてます。

いろいろと書きましたが、専門性を身に付けるもよし、得意ジャンルを見つけるもよし、「伝え方」に特化していくもよし。最終的には「無理せずに自分が書けるものを探すといいよ!」ってことですね。

簡単な記事ならAIでもざっくり作れてしまう時代、どうせなら「自分が書く意味のある」文章を書いていきたいものです。

(執筆:少年B 編集:北村有)

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