ライターは「こたつ記事」と「取材記事」どちらに特化すべき?

ライターの書く記事には、大きく「取材記事」と「こたつ記事」があります。

前者は足を使って取材したり、インタビューをしたりして書く記事。後者は、在宅で調べたものをまとめたり、自分の経験をコラムにまとめたりする記事ですね。Google検索で上位に表示されることを目的に書く、SEO記事などが代表例です。

イメージでは取材ライターのほうが印象はよく、稼げそうな気もしますが、取材にはどうしても手間がかかります。ライターとして食べていくには、本数を多く書けるこたつ記事に特化したほうがいいのかも? と思うかもしれません。

じゃあ、「ライターとして食べていく」ことを前提にした場合、どっちの記事に特化すべきでしょうか。

少年B
少年B

介護士、建築士を経てフリーライター。ふざけた記事からマジメな記事まで、さまざまなジャンルで執筆中。執筆歴は2017年からですが、mixiには膨大な量の黒歴史日記があります。(X:@raira21

結論:どっちも書くべき

いきなり答えを言ってしまうと、「どっちも書いたほうがいい」と思ってます。

昔は取材記事に特化していた

いまでもわたしは仕事の8割ぐらいが取材記事ですが、一時はほぼすべて取材記事だったことがあります。単価は高いし、「取材:XXさん」のように自分の名前も載りやすいので、名前も売れます。フリーライターにとっては願ったりかなったりな気がしますよね。

さらに、わたしはリスク分散として、「執筆メディアとジャンルの幅を広げる」戦略を取っていました。たとえば10社と仕事をしていれば、そのうち1社がダメになっても、残りの9社でそのぶんの仕事を賄えばいいわけです。

専門ジャンルで書いていれば、いつかはネタ切れする可能性があります。しかし幅広いジャンルで書くことで、その危険性を減らしていたんです。我ながらいい作戦だな、と思っていました。

でもこれ、いま思えばめちゃめちゃリスクの高い働き方でした。

コロナ禍ですべての取材案件を失う

とくにそれが顕著に表れたのは、2020年のコロナ禍です。

ご存知のように、コロナによって県をまたいだ移動ができなくなりました。結果、取材の仕事は激減。まさか10社すべてで取材記事が書けなくなるとは……。そんな事態はさすがに想定していませんでした。

同じ取材でも、これが「報道」や「BtoB」の分野なら違ったかもしれません。社会に密接に関わっている報道は、どんな状況でも必要だし、コロナ禍でもビジネスの現場は回っているからです。

ただ、わたしが関わっていたWebメディアの役割は、観光やグルメ情報の紹介といった「エンタメ」がほとんど。飲食店の取材をしようにも営業を自粛しているし、旅行なんてもってのほかです。

そんな状況でも、こたつ記事なら関係なく仕事があったはずです。だって、家から出ずに仕事ができるんですから。

こたつ記事と聞くと、ちょっとイメージがよくないかもしれませんし、わたしも「こたつ記事だけを書くのがいい」とは言えません。

でも、仕事として考えればこたつ記事にもいいところがあります。フリーライターとして食べていくなら、どちらもある程度書いていくのがいいんじゃないかな、と思っています。

ライターが取材記事を書くメリット

とは言っても、それぞれの記事のメリットとデメリットがわからなければ、わたしがそう言う理由がわかりませんよね。

では、まずは取材記事のメリットから解説しましょう。

メリット1. 名前を売れる

取材記事のメリットは、なんといっても、「記事に自分の名前が載りやすい」のが一番。たまに「○○編集部」みたいな名義で出る記事もありますが、わたしの場合だと取材記事は記名のことが多いです。

取材した人を書くことで、責任の所在をはっきりさせる意味もありそうですね。

メリット2. 実績になり、読まれやすい

また、SNSなどに投稿しやすいのもメリットです。取材記事って、そのお店や人を知らなくても取っつきやすいですよね。わたしも過去に書いた、パチスロデザイナーさんの記事がバズったことがありますが、読者が全員パチスロ好きというわけではないはずです。

もちろん多くの人に読まれるには、取材対象や媒体のテイスト、タイトルにアイキャッチ画像といった要素も関係してきます。でも、まず「おもしろそう!」と思ってさえもらえれば、けっこう気軽に読んでもらえるような気がします。

実績を積み上げるなら取材記事がおすすめ

つまり、取材記事を書いていると「仕事してる感」「売れっ子感」を出しやすいんです。定期的に「こんな記事を書きました!」と言って、自分の名前で記事をシェアしていると、実績をどんどん積み上げている感じがします。そうすると、すっごく売れてるようなイメージができますよね。

実績が積み上がれば、営業もしやすいし、記事を読んだメディア関係者からのオファーも来やすい。いちど好循環に入ると、あまり仕事に困らなくなるのは取材記事の大きなメリットだといえるでしょう。

ライターが取材記事を書くデメリット

では、デメリットを考えてみましょう。ぶっちゃけ、わたしは割に合わない仕事が多いと思っています。

デメリット1. 移動時間がとられる

これは住んでいる場所にもよると思うんですが、わたしは都内までだいたい片道1時間ちょっとの場所に住んでいます。以前はもっと遠くて、1時間半以上かかっていました。

最近はリモート取材も増えましたが、対面での取材って、だいたい都内でやることが多いんですよね。取材に遅刻するわけにはいかないので、ちょっと余裕を持って出かけると、往復で2時間半~3時間はかかりますよね。

1時間半の場所だと、場合によっては往復4時間かかることも……。1日8時間労働だとして、ほぼ半分が移動に消えてしまうわけです。

デメリット2. 交通費がかかる

交通費もバカになりません。だいたいは経費としていただけるケースが多いですが、「経費込みで」とまるっと原稿料をいただくこともあり、地方取材でいくつもお店を回る取材では、後から計算したらほとんど手元に残らない……なんてケースもありました。

デメリット3. 文字起こしにも手間がかかる

だいたい1時間半〜2時間ほど取材をした後は、家に帰ってから取材音声の文字起こしが待っています。最近はAI文字起こしツールもありますが、それだって完全ではありませんし、お金だってかかります。録音時間の2~3倍の時間をかけて書き起こすか、数千円を課金するか……。悩ましい問題です。

原稿料は高いが、工数も多い

確かに、こたつ記事に比べると取材記事の原稿料は高いんですが、こうした諸々のコストを考えると、結局工数に対して見合ってなくない? と思うこともあります。

実際に、コロナ前は取材記事を月に15本ぐらい書いていた時期があり、周囲には「売れっ子ライター」と見られていましたが、実際の収入は……お察しください。いや、充分な金額をいただけることも多いんですけど……!

やりがいはあるし、とっても楽しいけど、大きな収入にはなりづらいなぁ、というのが取材記事の印象です。とはいえ、PR記事だったり、お固い企業案件だったりすると、めちゃめちゃ割のいい仕事もあるそうです。そういう仕事を知ってるぞって方はこっそり教えてください。わたしもやりたいので。

ライターがこたつ記事を書くメリット

逆に、こたつ記事のメリットを考えてみましょう。

メリット1. コスパがいい

最大のメリットは割がいいこと。もちろん執筆速度にもよるんですが、わたしの場合は最悪でもアルバイトの時給ぐらい。だいたいは時給3,000円ぐらいになるケースが多いです。

単価でいうと取材記事より安いんですが、手間や時間がかからないので、いわば「コスパがいい仕事」なんですよね。

「時給3,000円って、そこまで割はよくないのでは……?」と思うかもしれませんが、わたしは書くのがかなり遅い&集中力が続かないタイプなので、かなり効率が悪いんですよね……。それでもうまくいけば時給換算で5,000円ぐらいになることもありますし、書くのが早い人はもっと稼げると思います。

自分の得意分野なら調べる時間も短縮できるので、ファクトチェック程度で済むと考えると、かなり効率が上がるはずです。

メリット2. 家の中で仕事が完結する

あとは、家から出ないで済むのもメリットといえばメリットかもしれません。起きて10秒で仕事ができるので、外出が苦手な人にとっては最高。人と顔を合わせることもなければ、満員電車にも乗らなくていい。執筆以外の余計な時間を使いません。

……誰ですか、「そのぶんSNSにいるじゃないか」とか言っている人は。

工数が少ないのがこたつ記事のメリット

というわけで、こたつ記事のメリットをまとめると「工数が少ない」に尽きます。

日程調整や移動、音源の書き起こしに先方確認といった、取材記事に必要な手間が一切かからないので、純粋に執筆に集中できるんですよね。

当然、単価も取材記事に比べれば安いんですが、その時間や手間を考えると、むしろ割はいいんじゃないかな、と思います。

ライターがこたつ記事を書くデメリット

最後に、こたつ記事のデメリットについても紹介します。

デメリット1. 「読まれてる感」がない

とくにSEO記事の場合、SNSに投稿してもほぼ伸びません。その情報を必要としている人が、あなたの周囲にいるとは限らないからです。

こたつ記事は「その情報が必要な人のニーズを満たす」ことが目的なので、ライター個人の属人性もとくに必要ないし、拡散されることもないんですよね。人知れずめちゃめちゃ読まれている記事もありますが、外部に知られることはまずありません。

なので、フリーライターとして個人の名前を売っていきたい……という人には、メリットが少ないような気がしています。

デメリット2. エッセイやコラムは需要が少ない

同じこたつ記事でも、エッセイやコラムは属人性が強く出る仕事です。拡散もしてもらいやすいし、個人の名前も売れるので、そういう意味では一番ありがたい仕事かもしれません。

ただ、エッセイやコラムって、書きたい人が多い割に、メディア側からの需要が少ないんですよね。定期的に仕事がもらえるようになればありがたいんですが、そうなるまでがけっこう大変です。

メンタル的には厳しい部分も

SEO記事の場合、たとえ上位表示されたところで「読んでもらってる感」が少ないので、やりがいはちょっと感じづらいかもしれません。無記名で実績として発表できないと、何をやってる人なのかがわかりづらくなってしまう問題も……。

エッセイやコラムなら、そのあたりも含めて充実したお仕事だと思うんですが、書きたい人も多いジャンルなので、とにかく狭き門。筆力はもちろん、自分ならではの視点など、人と違う能力が必要になってきます。

そういう意味では、メンタル的になかなか報われないことも多い仕事かもしれないな……と思ったりします。

大事なのは「ライフワーク」と「ライスワーク」のバランス

お金をもらっても、自分の名前が出ないのはさみしい。でも、名前が出るだけじゃ食べられない……。なんというか、まぁ人生なかなかうまいこといかないなぁ、という感じがしますよね。でも、だからこそ「どっちも書く」生き方が必要なんじゃないかな、と思います。

「ライフワーク」と「ライスワーク」として、どっちも書きつつ切り分けていく。名前の出ないこたつ記事や編集で生活費を稼ぎ、名刺代わりの取材記事は生きがいのつもりで書く、という考え方です。

取材記事とこたつ記事は仕事の両輪。どっちかだけで食べていくのも不可能ではないでしょうが、かなり厳しい道です。少なくとも、かつてのわたしには無理でした。うまいことバランスを取って、食べていきたいものですね。

わたしの場合は、それでもだいぶ取材記事に偏っているのと、こたつ記事でもコラムやエッセイの割合がだいぶ多いので、ちょっとバランスが悪いかもしれませんが……。それでも、一時期のほぼ100%取材記事!みたいな状況は脱したし、いまなら取材記事が全滅しても、もうちょっとうまいこと生活できるような気がしています。

こたつ記事、とくにSEO記事というと、どうしてもちょっと一段下に見られるような風潮があるような気がするんですが、ライターとして生活していくうえでは大切なお仕事です。フリーライターたるもの、いただいたお仕事には全力で向き合っていきたいものですよね。

さて、それではわたしはSNSに戻りたいと思います。さようなら。

(執筆:少年B 編集:北村有)

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