フリーランスが「インボイス制度登録後」にやるべきこと。消費税も確定申告が必要に!

フリーランスを震撼させたインボイス制度。当社が実施した調査も含め、各種調査を見ても「登録する/しない」で対応が完全に分かれている様子が確認できました。

インボイス制度の対応状況

インボイス制度の対応状況アンケート2

もちろん、登録しないのも一つの選択肢ですが、今後の取引への悪影響などを踏まえて登録する選択をした方も多いでしょう。

しかし、インボイス制度は「登録して終わり」ではありません。むしろ、インボイス制度に登録することで、インボイス制度に登録していない人よりも対応すべきことは増えてしまうのです。

そこで、本記事では「インボイス制度に登録したフリーランス」を対象に、経理や仕入れに関係して必要になる対応をまとめてみました。

インボイス制度は「登録して終わり」ではない!

仮にインボイス制度に「登録」しただけで、今までと経理・請求まわりの対応を一切変えなかった場合、どんなことが発生してしまうのでしょうか?

インボイス制度への対応が必要な現実をご理解いただくべく、まずはこちらをまとめてみました。

  • 取引先が仕入税額控除できず、関係悪化につながる
  • 自分が支払った消費税を控除できず、納税負担が増える
  • インボイス制度への対応が不十分となり、取引トラブルが発生する恐れがある
  • 税務調査の対象となるリスクが高まる

なお、仕入税額控除とは、自分が納税しなければならない消費税額から、自分が誰かに支払った消費税を差し引ける制度のことです。

仕入税額控除の仕組み図解

▼インボイス制度の概要

「2割特例」で消費税納税がシンプルに

インボイス制度をきっかけに消費税の納税が必要になったフリーランスは、「インボイスの有無は関係なく、もらった消費税額の2割を納めればいい」という、いわゆる「2割特例」の対象となります。

この2割特例は「フリーランスの納税額が減る!」という観点で歓迎されていましたが、インボイスの受け取りや消費税額の差し引きを行わなくても納める消費税額が簡単に計算できるため、経理負担の緩和にもつながるのです。

ただし、2割特例は2026年9月30日までの期間限定。その後は「簡易課税」という仕組みを使えば消費税の計算は簡単にできますが、一般的なフリーランスであれば受け取った消費税の5割を納税する必要が生じます。

簡易課税は今のところ廃止されるという話は出ていないですが、最低限の認識として「だいたい自分はいくら消費税をもらって、いくら払っているのか」は確認しておくといいでしょう。

インボイス制度登録後にやるべきこと

自分と取引先が損をしないためには、インボイス制度に適切に対応する必要があります。以下で登録後のフリーランスがやるべきことをまとめました。

なお、今回は「2割特例」あるいは「簡易課税」が利用できることを前提に話を進めます。

対応1. 自分の登録番号を把握し、取引先に伝える

インボイス制度への登録が済んだ後、最初にやるべきなのは「自分の登録番号を把握する」ことです。通常、インボイス制度の登録番号は登録時にもらえる「登録通知書」に記載されています。

その番号を把握したら、まず取引先に登録番号を伝えましょう。ただ先ほど書いたように、登録番号を把握できず損するのは取引先も一緒なので、一般的には取引先から「インボイス制度に登録していますか?登録していたら番号を教えてください」とアンケートがくるはずです。

そのため、この対応に関しては、漏れが発生するケースも少ないでしょう。

対応2. 適格請求書を作成する

問題はここからです。いつもクライアントに発行している「請求書」がインボイス制度の規定である「適格請求書」の要件を満たさない場合、フリーランス側がインボイス制度に対応していても、取引先は仕入税額控除ができません。

適格請求書に必要な記載事項は、以下の6つです。

【適格請求書に記載すべき項目】 ・適格請求書発行事業者の氏名(名称)、登録番号 ・取引年月日 ・取引内容(軽減税率の対象品目が含まれる場合、その旨を明記) ・税率ごとの合計請求金額・適用税率(対象品目が10%の場合のみの場合、8%部分の記載は不要) ・税率ごとの消費税額(対象品目が10%の場合のみの場合、8%部分の記載は不要) ・請求先の氏名(名称)

適格請求書の書き方をしっかりとマスターし、取引先に迷惑をかけないよう心がけましょう。

対応3. 消費税の確定申告を行う

受け取った消費税と支払った消費税を把握できた、あるいは2割特例や簡易課税を活用して納税額を算出できた後は、今までは必要なかった消費税の確定申告を行う必要も出てきます。作業としてはいわゆる確定申告(所得税の確定申告)より単純ではあるものの、多少なりとも手間が増えることは間違いありません。

また、細かいですが普通の確定申告は「2月16日~3月15日」が一般的な提出期限なのに対し、消費税は「3月31日」が提出期限になるなど、微妙な違いもあります。

なお、フリーランスの大半は「2割特例」を活用したほうが経理の手間や納税額を抑えられるはずなので、2割特例を利用する場合は消費税申告書の「税額控除に係る経過措置の適用(2割特例)」という欄に必ずチェックを入れるようにしましょう。

▲出典:国税庁(一部筆者加工)

以上のように、フリーランスの経理がかなり複雑化することは間違いなく、消費税申告まで考えると税理士への依頼を検討する機会は増えるかもしれません。

対応4. インボイスを7年間保管する

フリーランスが受け取ったインボイスには、原則7年間の保管義務があります。

青色申告に対応している場合、すでに領収書やレシートを7年間保管する体制は整えられていると思いますが、引き続きレシートなどをすぐに捨てないよう注意しましょう。

なお、余談ですが2024年からは「電子帳簿保存法」の猶予期間が終了し、電子的に行われた取引(例:メールで受け取った領収書など)は、紙に印刷せず電子保存することが義務付けられます。こちらへの対応もお忘れなく。

対応5. 2割特例・簡易課税などの適用条件を確認する

税負担を軽減するための制度として「2割特例」と「簡易課税制度」が用意されています。それぞれの適用条件を確認し、自分に合った方法を選ぶことも大切です。

2割特例は計算がシンプルなため「経理の手間を省きたいフリーランス向け」、簡易課税は「売上規模が大きく、仕入れが少ない業種向け」となっています。どちらの制度が自分にとって有利かを確認しておきましょう。

【2割特例の適用条件】

  • 2023年10月1日〜2026年9月30日までの期間限定の特例
  • 「2023年9月30日以前に免税事業者だった人」のみが対象
  • 売上に関わらず、もらった消費税額の2割を納税すればOK(仕入税額控除の計算不要)

【簡易課税制度の適用条件】

  • 前々年(2年前)の課税売上高が5,000万円以下の場合に利用可能
  • 2026年10月以降は「2割特例」がなくなるため、こちらの活用も検討が必要
  • 事業区分ごとに「みなし仕入率」が決められており、売上に対する一定割合の消費税を納税する仕組み

対応6. 消費税納税資金の準備をしておく

インボイス制度の導入によって、課税事業者になった場合は定期的な消費税納税が必要になります。これまで免税だった事業者も、突然まとまった税額を支払わなければならない可能性があるということ。納税資金の管理について、心の準備をしておきましょう。

【納税資金の管理方法】

  • 毎月の売上から納税用の資金を別口座に確保する
  • 会計ソフトで納税額をシミュレーションし、資金計画を立てる
  • 急な納税負担を防ぐため、年度ごとの消費税申告スケジュールを把握する

とくに2割特例を利用している間は負担が軽いが、2026年10月以降に簡易課税や本則課税に移行すると、納税額が増える可能性があります。そのため、売上に対して一定の割合を納税用資金として積み立てておくことをおすすめします。

対応7. 適格請求書の保存・管理方法を決める

前述したように、インボイス制度に登録した事業者は、取引に関する適格請求書(インボイス)を7年間保存する義務があります。瑣末なことかもしれませんが、保存方法が適切でないと、税務調査で仕入税額控除が認められないケースもあります。事前に管理方法を決めておきましょう。

適格請求書の保存方法として「紙の請求書をファイル管理」「PDFやデジタルデータで請求書を管理」の2つの方法があります。

紙の請求書をファイルで管理する場合、取引ごとに適格請求書を印刷・保管し、請求書の日付ごとや取引先ごとに整理する方法を取ります。デジタルデータの場合は、会計ソフトやクラウドストレージを利用します。検索しやすく整理も簡単なので、よっぽどの事情がない限りはデジタルデータでの管理がおすすめです。

【補足】2割特例と簡易課税が使えない場合にやるべきこと

おそらく、インボイス制度をきっかけに消費税の納税が必要になった場合、2割特例の対象となるため細かな経理は不要になります。

しかし、売り上げの規模が大きく2割特例や簡易課税が使えない場合、以下のようにかなり複雑な経理対応を求められます。

また、皆さんに案件を発注している企業側は以下の対応を強いられているケースがほとんどです。あくまで参考程度ですが、企業側の経理負担を知っておく意味でも、2割特例と簡易課税が使えない場合に必要な対応をまとめてみました。

対応1. 仕入先(購入先)のインボイス対応状況を確認する

先ほど見たように、企業は「仕入先」のインボイス対応状況を一つひとつ確認する必要があります。

理由は簡単で、仕入先がインボイス制度に対応していない場合、企業側は仕入税額控除を受けられず税金を損してしまうからです。

仕入れの幅は非常に広く、以下のような行為はすべて仕入れ(正確な用語でいえば課税仕入れ)となります。

  • 事業で使うPCを購入する
  • 打ち合わせの飲食費を支払う
  • 事務所の光熱費を支払う
  • 会計ソフトをサブスクで契約する

つまり企業が完璧に税金を抑え、仕入税額控除を適用するためには「ペンを1本買う程度の取引先も含め、すべての取引先がインボイス制度に対応している必要がある」ということになります。そのため、企業側は以下のようにそれぞれの取引先のインボイス対応状況を確認しなければなりません。

  • 事業で使うPCを購入する→PC販売店のインボイス対応状況
  • 打ち合わせの飲食費を支払う→飲食店のインボイス対応状況
  • 事務所の光熱費を支払う→電力会社のインボイス対応状況
  • 会計ソフトをサブスクで契約する→会計ソフト販売元のインボイス対応状況

補足:インボイス対応していない可能性が高い取引先の特徴は?

購入先がインボイス対応しているかどうかは、購入先の規模や業種、所在地によります。具体的には、以下のような購入先はインボイス対応しているケースが多いハズです。

  • 大手企業
  • 企業直営のチェーン店
  • 法人との取引が中心の企業(例:会計ソフト販売元など)

一方、以下のような購入先はインボイス対応していない確率が上がると考えられるため、慎重に確認したほうがいいでしょう。

  • 外資系企業
  • 中小企業
  • フランチャイズのチェーン店
  • 個人店

とくに外資系企業の場合は『Peatix』など有名サービスでもインボイス対応していないケースはありますし、一見大手企業でもフランチャイズ店舗の場合、店舗単位ではインボイス対応していないケースも想定されるでしょう。

ただ、インボイス対応している店に欲しいものがあるとは限らず、場合によっては消費税分をこちらが負担しても安上がりなケースもあるでしょう。仕入税額控除を意識しつつも、総合的なコストから購入先を判断することになります

対応2. 請求書の規格を確かめ、インボイス対応の有無ごとに帳簿付けを行う

売り上げ規模の大きい企業にとって、消費税は払って、もらって終わりではありません。もともと消費税分はフリーランス以上に細かく記録していましたが、今後はさらに「請求書は適格請求書になっているか」「仕入れ先はインボイス制度に対応しているか」を意識しながら帳簿付けも行っていく必要があります。

とくに仕入税額控除と関連する「払った消費税」の把握は重要で、仕入れ先がインボイス制度に対応していない場合は時期によって控除できる金額が変わってきます。このあたりを把握するためにも、細かな取引の分類が重要になります。

消費税の確定申告に対応できるクラウド会計ソフト3選

消費税の確定申告は、普通の確定申告と同じくクラウド会計ソフトを活用しないと面倒で、正直やってられません。

すでにクラウド会計ソフトを使っている方も多いと思いますが、これまで消費税申告は限られたフリーランスのみに必要だったため、上位プランでしか対応していないケースもあります。

クラウド会計ソフト業界の大手3社が提供するフリーランス向けソフトを「消費税申告」という視点から、価格や使い勝手を比較しました。

【消費税申告機能を利用できる最安値】

1. やよいの青色申告オンライン

▲出典:やよいの青色申告オンライン

やよいの青色申告オンライン』は、会計ソフト界の老舗である弥生製のクラウド会計ソフト。「会計ソフトといえば弥生」というブランドを築いているのは間違いなく、歴史と実績から生まれる信頼性は抜群です。

料金の安さも圧倒的で、電話やチャットサポートがない「セルフプラン」なら、なんと利用開始から1年間は消費税申告を含む全機能が無料で使えます。次年度以降の料金も、年額10,300円~と安めです。

自動化機能などはfreeeやマネーフォワードに比べると一歩劣る面もあるものの、最安プランでも消費税申告に対応しているのは、大手3社ではやよいの青色申告だけです。

企業で経理の経験があるなど、会計をしっかり理解している人には抜群の使い勝手を誇るともいわれ、「経理に自信のあるフリーランス」におすすめのソフトといえるでしょう。

特徴 ・信頼の弥生製
・経理担当者の使い勝手抜群
・1年間の利用料無料
便利機能 スマホ確定申告対応/明細自動取り込み/レポート作成機能など
料金(消費税申告) 10,300円~(1年無料)

2. マネーフォワード クラウド確定申告

マネーフォワード クラウド確定申告のトップページ

▲出典:マネーフォワード クラウド確定申告

マネーフォワード クラウド確定申告』は、一般的な会計ソフトのUIや用語といった「会計ソフトらしさ」を踏まえつつ、明細の自動取り込み機能などクラウド会計ソフトならではの強みも搭載したソフトです。

消費税申告に関して言うと、最安プランの「パーソナルミニ」では対応不可能なものの、次点の「パーソナル」プランで対応可能なため、やよいの青色申告オンラインと大きな価格差はありません。

便利機能で会計が効率化できる一方、「会計ソフトらしさ」もあるため、使いこなすには会計の知識が求められます。しかしそれらを丁寧に学べば「会計ソフトが何をやっているか」がわかるようになるので、ソフトに頼りすぎない確定申告の知識を得られます。

「初心者向け機能を頼りつつも、ある程度は会計について理解できるようになりたい」方におすすめのソフトです。

特徴 ・会計ソフトらしさと使い勝手の両立
・素早い処理速度
・価格の安さ
便利機能 スマホ確定申告対応/明細自動取り込み/レポート作成機能/電子帳簿保存法対応など
料金(消費税申告) 900円/月(年払い)~

3. freee会計

▲出典:会計ソフトfreee

freee会計』の強みは、会計初心者に向けた配慮が徹底していることでしょう。たとえば、以下のような便利機能を備えています。

  • 初心者でも扱いやすいUI
  • 「貸方」「借方」などの複雑な会計用語を使っていない
  • (日々の記帳に加え)〇×形式の質問に答えれば確定申告書ができる
  • 控除額などの自動計算機能が充実している

しかし、freee会計は消費税申告に対応しているものの、月1,980円~の「スタンダード」プランのみの対応となっており、ここまで見てきた2ソフトとの価格差はかなり大きいと言わざるを得ません。

とはいえ、家計簿をつける感覚でカンタンに難しい複式簿記での記帳もできる強みは変わらないため、「多少高くついたとしても、かんたんに青色申告がしたい」という方にオススメのソフトです。

特徴 ・初心者でも扱いやすいUI
・複雑な会計用語の排除
・会計まわりの書類作成一元化
便利機能 スマホ確定申告対応/明細自動取り込み/レポート作成機能/電子帳簿保存法完全対応など
料金 1,980円/月(年払い)~

まとめ

ここまで、適格請求書の書き方を解説してきました。適格請求書の発行や消費税申告など、インボイス対応に頭を悩ませる方も多いかもしれません。

適格請求書の発行などの雑務に追われるのを避けたい方は、フリーランス・副業向けマッチングサービス『Workship』の利用がおすすめです。

Workshipでは、フリーランスが稼働時間や作業内容を「作業実施報告書」に記入するだけで、報酬額や支払通知書が自動算出・作成されます。さらに、サービス内に請求書の作成機能も完備しており、必要に応じて請求書も準備できます。

時給1,500円~10,000円の高単価案件のみをそろえており、さらなるランクアップを目指したいフリーランスの方におすすめです。

(執筆:齊藤颯人 編集:Workship MAGAZINE編集部)

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