フリーランスが就職で失敗しないために、絶対に考えておきたいこと
- 【連載】34歳フリーランス、会社をたたんで公務員になる
- フリーランス/個人事業主
- 働き方
こんにちは、Workship MAGAZINE編集長の夏野です。
突然ですがご報告があります。
夏野、2026年2月末で経営していた会社を畳み、今は国家公務員として働いています。
「えっ、公務員って副業できるの?」
「フリーランスはやめたってこと?」
はい、はい、分かってます。いろいろ気になるところですよね。
というわけでこの連載では、
などをお話ししたいと思います。結論から言うと、まだまだWorkship MAGAZINE編集長を辞める気はありませんので、どうぞ末長くお付き合いお願いします。

フリーランスの編集者・ライター。コンテンツマーケティングやディレクション、マネジメントに仕事の幅を広げ、2021年7月に会社を設立。非常勤の国家公務員になり、2026年2月で会社を畳む。博士(京都大学)。趣味は無限に歩くことと放浪。(X:@Natsuno_Kaoru)
2025年6月。博士号を取得した夏野は心身ともに疲れ果て、世界一周放浪の旅に出発しました。
ざっくりとしたルートは決めつつも、「太陽が見たいから…スペインかな!」「仕事が溜まってきたから、物価の安いチェコでしばらく頑張ろう」なんて気ままに移動。
バックパック1個であちこち彷徨い、ユーラシア大陸の端を目指したり、AIに騙されてスペインの田舎に辿り着いたり、ローマで詐欺師に勝ったりして楽しく過ごしていました。

▲チェコの首都・プラハをペトシーン展望台タワーから一望

▲ユーラシア大陸の西端、ロカ岬(ポルトガル)。早朝に行ったら知らん犬がついてきた
んでもって、この期間に夏野、34歳の誕生日を迎えることになりました。
記念すべき日をどこで迎えるか?と考えて、思い浮かんだのはギリシャ・アテネ。旅するなかで「やっぱり研究は辞められないよな」と考えるに至り、学問の聖地で夕日を眺めながら過ごすことに決めたのでした。

▲アクロポリスの丘から見た夕日。欧米系の人が、日が沈むと同時に「FOOOOO↑↑↑↑↑」とビールを撒き散らし始めて、感性の違いを感じた
旅トークはこのへんにしておくとして、このときの夏野は、さまざまな面で「これから」を検討するタイミングでした。
会社:もっとも大きなお取引先様との契約を終了。新規クライアントを開拓するのか、自社事業にチャレンジするのか。(ビジネスの岐路)
研究:博士号を取得したので、科研費など、公的予算を獲得できる立場に。しかしこれらは研究機関に所属していなければ獲得できない。今後も自費で研究を続けるのか、就職して予算を獲得するのか。(アカデミックキャリアの岐路)
年齢:アカデミアの「若手」は35歳まで。若手対象の各種プログラムに応募できるのは2026年度が最後。(決めるなら今)
ざっくりこういう事情があり、要するに「ビジネスを立て直すのかい?研究に注力するのかい?どっちなんだい!」というのを決めなければならなかったのです。
Workship MAGAZINEでも何度も書いてきたとおり、夏野、仕事…というかお金が大好きです。
頑張れば頑張るほど結果に反映されるってシンプルに素晴らしいですし、お金があればチャレンジの機会も増えます。頑張る→お金を獲得→チャンスを獲得→…というサイクルを回す生活はかなりやりがいに溢れていました。
1人法人の売上限界は「3000万円」。会社を作って良かったことと、感じる課題
Workship MAGAZINE
その一方で、Web関連のビジネスってどうしても、時の流れとともに消滅してしまう運命にあるんですよね。せっかく頑張って作ったものが「白紙」になるというか。しかも、夏野の成果物には名前が記載されないことも多いので、頑張ってきた証がまったく残らないことに、一種の虚しさを覚えたのも嘘ではありませんでした。
では研究の世界はというと、率直に言ってかなり厳しい世界です。研究費は「競争的資金」なので、研究を仕事にしているプロ同士で、「私はこういう実績を残してきた研究者で、こういう結果を出せるはずなので、投資しろ!!」みたいなアピール合戦をしなければなりません、
「若手」枠なら競争率は多少(多少…)下がりますが、一般の公募枠ともなれば、ガチのマジの実力者かつ有名人と同じ土俵で戦っていかなければなりません。
そして日々の給料もまあ…ニュースをご覧になっている方ならなんとなく分かると思いますが、トップ研究者がじゃんじゃん海外に引き抜かれるくらいの水準です。
というわけで、「金」に着眼すれば、研究ってな〜んのメリットもありません。同じエネルギーをビジネスに投資した方が、絶対に絶対に儲かります。
だけど、悲しいことにこれは魂の問題なんですよね。知りたいことがあって、その内実が明らかになれば、日々の生活が助かる人がいる。ならやるしかないじゃんという話でして、「一回きりの人生、ここらで一丁頑張りますかね」と決意しました。
では、どうやって就活を始めるか。何も分からなかったので、帰国から3日後、いつも参加している学会へ出向き、懇親会であらゆる先生に相談しまくりました。
「君は本当に自由だな」と呆れられつつも、皆さん優しいので、「こういうプログラムに応募してみるのはどうか」「こういうアルバイトから始めるのもアリ」と助言してくださりました。(本当はもうちょっと特殊なキャリアの話をしているのですが、本筋ではないので、分かりやすい言葉に置き換えています。)
そんななか、直近で夏野がマッチしそうな公募があると判明。準備期間を考えるとギリギリだったのですが、色々な方にアドバイスをいただきながら研究実績や履歴書をまとめ、面接を受けました。

▲履歴書って、いざ作り始めると地味に時間かかりますよね…
応募準備は、正直なかなかしんどかったです。というのも、これまでの研究は言ってしまえば「道楽」だったんですね。自分の金で、自分の知りたいことを研究して、何か分かったら公開すればいいや、みたいな。明確な研究計画もなかったですし、それがどう社会実装につながるのか?みたいなことも考えてきませんでした。
しかし、研究機関に就職するということは、研究活動によってカネをもらうということです。となれば、当たり前に研究計画や成果の見通しが必要になりますし、それを分かるように話す(アピールする)必要もある。このへんのギャップがなかなか理解できず、今思えば、あのときの応募書類は「怪文書」レベルでした。
それでも「若いから」とポテンシャルを評価していただき、なんと採用。入職まで時間がないなか、必要な書類やら何やらの準備に走り回りました。
さて、就職した先は?というと、あまり詳しいことは書けないのですが、結論から言うと非常勤の国家公務員になりました。マジ?
「えっ、じゃあ経営してる会社は?」ですが、非常勤の場合、事前に相談しておけば問題なく副業ができます。怪しいビジネスとかでなければ、問題なく認められるはずです。
それに加えて、ちょうど最近、常勤職の副業についても規制が緩和されました。
見直しの背景や認められる範囲については人事院の資料を確認してほしいのですが、事前の相談・承認があれば、公務員であっても一定の範囲で副業は可能です。どうしても続けたい仕事があって、本業に差し支えない程度の時間数なら、いったん相談してみると良いでしょう。
人事院 令和7年12月19日「自営兼業制度の見直しについて~自己実現・社会貢献につながる兼業が承認可能に~」
こぼれ話:
国家公務員は癒着とか賄賂とかを防ぐために、マジで1円も不審なカネを受け取ってはならないというルールがあります。それは当たり前にそうすべきですが、このルールゆえに、「趣味のバンドでライブに出るけど、そのライブではチケット代500円を徴収するので、(たとえその人が報酬を受け取らなくても)『有償での興行に参加する』扱いになり、参加できない」みたいなことが起こっていたそうです。
これはさすがに本来の趣旨から離れて、私生活を制限しすぎじゃね?みたいな議論があり(そして、これを敬遠して優秀な人材が就職してくれないという切実な問題もあり…)、割と最近、「ケースバイケースで、事前に相談してくれれば認められるかもよ」というシステムになったっぽいです。
ただ、このあたりの運用は別途、省庁独自ルールもあるので(各省庁で、利害関係の生じどころが違うのでね)、必ず事前に職場のルールを確認し、相談するようにしましょう!
さて、会社経営と公務員が両立できることは分かりましたが、これはあくまでも私と勤務先の関係についての話。
実は、一部の研究費には「民間企業の役員は応募不可」という条件がつけられているのです。ダメじゃん!
研究費を獲得できないのでは、そもそも就職した意味がありません。というわけで、とても寂しい気持ちにはなりましたが、2026年2月末で会社は解散(清算)し、現在はいち個人事業主として諸々のお仕事を受注する立場になりました。
今は目安として週4日、9時〜17時30分で職場に通い、残りの1日でWorkship MAGAZINEの仕事や、個人的に進めている研究などに取り組んでいます。
「いや休日も研究してるんかい」と思われるかもしれませんが、研究職として就職するということは、職場の目標に沿ったテーマに貢献しなければならないということ。自己満足的な研究は別途、業務時間外でやるしかないのです。
「好き」を仕事にするって、そういうことだから……。
1本目のこの記事では、会社精算→国家公務員へのキャリアチェンジについてお話ししました。
サラッと書きましたが、この決断に至るまでには、当然いろいろな葛藤がありました。大体のことは0.2秒で決める私が、3ヶ月も放浪したくらいですからね。到底書ききれないような背景や思いがあったのですよ。
それでも、色々な景色を見て、色々な人と会い、ときにワケのわからんトラブルに遭い……を重ねた結果、「もうカネのために生きるのは飽きたぜ」と思ったわけです。だからこれは、キャリアチェンジの話というより、人生のプライオリティ(優先度)の話として受け止めてもらえたら嬉しいです。
ちなみに先日、入職後4日目で応募した研究プロジェクトに見事採択されました。採択率5%台なので上司も相当驚いていました。人生、そういうタイミングってあるのかもしれませんね。
【連載】34歳フリーランス、会社をたたんで公務員になる
自由、安定、信用、評価。元フリーランスが考える働き方の選び直し