母集団形成の7つの課題と改善策|採用がうまくいかない原因を解説
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フリーランスから国家公務員という、なかなかの急ハンドルでキャリアチェンジした夏野。
このミニ連載では、フリーランスからの「正社員回帰」傾向が高まるなか、夏野はなぜ勤め人(サラリーマン)へのキャリアチェンジを決断したのか?勤め人生活のメリット・デメリット、転職時のエピソードなどを追いかけていきます。
連載第2回にあたる今回のテーマは「組織に属すメリット」。
学生時代から一度も就職せず、一匹狼でやってきた夏野はサラリーマン生活のどのような点にメリットを感じているのか?社会的信用・生活の安定・成長実感という3つの軸で整理します。

フリーランスの編集者・ライター。コンテンツマーケティングやディレクション、マネジメントに仕事の幅を広げ、2021年7月に会社を設立。非常勤の国家公務員になり、2026年2月で会社を畳む。博士(京都大学)。趣味は無限に歩くことと放浪。(X:@Natsuno_Kaoru)
ローンの審査や賃貸契約、クレジットカードの作成など、フリーランスにとって社会的信用は何かと気になるテーマです。実際に夏野も、「なんか胡散臭い人だと思われてんな」と感じる場面は多々ありました。

▲友達に仕事を説明しづらい夏野
では、会社を畳んで就職してみて、社会的信用は上がったのか。
結論から言うと、ローンの審査などの場面では、特に大きな変化を感じていません。
というのも、就職前の夏野は、零細とはいえ一応「経営者」だったからです。会社として仕事を受け、上場企業を中心に取引をし、一定の収入を得ていたので、純粋な個人事業主よりも信用を得やすく、何らかの契約を結ぶ際にも、とくに困ったことはありませんでした。
ただし、気持ちの面で、安心感はアップしたような気がします。
たとえば何らかの契約を結ぶときに、勤務先や職業欄を記入して、「これで信用してもらえるのか?」「怪しいビジネスをしていると疑われないか?」と不安に思うことはゼロ。なんてったってお国から給料もろてますので。
自己紹介するときも同じです。フリーランス、会社経営、編集長、研究者……と肩書きを並べると、「で、結局何をしている人なんですか?」みたいに怪訝な顔をされることがありました。
それが今や、一発で安心してもらえる。個人的には、所属は何の本質でもなく、信用できるかどうかとは別だろ、と思っていますが……実際のところ、「分かりやすい肩書き」が役に立つ場面があるのは事実かもしれません。
もう少し特殊な話をすると、研究職として就職したことで、アカデミアでは明確に扱いが変わりました。
たとえば、学会から何かの依頼が来るようになったり、研究機関に所属している前提で話が進んだり。得られるチャンスが格段に増えたと感じます。
フリーランス時代も研究はしていましたし、論文も書いていました。博士号も取りました。なので、やっていること自体が急に変わったわけではありません。
そのうえで扱いが変わったということは、「この人は組織に所属するという責任を負ったうえで、研究者として継続的に活動している人なんだな」と認識されたのでしょう。
これに繋がる話ですが、組織に属しているからこそ閲覧できる資料や、話を聞ける人も増えました。
特定の肩書きや所属があるからこそ入っていける場所、アクセスできる情報、任せてもらえる仕事がある。つまり、「中の人」にしか得られない経験があるというのは、研究職に限らず、どの業界でも同じだと思います。仕事の幅を広げたい人にとっては、これはかなり大きなメリットかもしれません。
社会的信用の話をしたところで、安定性についてはどうなのか? 収入面だけでなく、生活面からも振り返ってみました。
まずは生活リズムの安定です。これについては、「起きられるかな」という不安が一番大きかったです。
夏野は1日8時間睡眠を死守しており、どれだけ高給でも睡眠時間を削る仕事には就かない、と決めています。それなのに、とても心配性なので、翌日の午前に仕事が入ると「起きなければ」という緊張が高まって眠れなくなる始末。片道1時間半かけて、朝9時に職場に到着なんて、果たしてできるのか……?
と思っていたのですが、実際に仕事が始まってみると、体のリズムが完全に固定され、目覚ましをかけ忘れても6時には目が覚めるようになりました。その代わり、21時には眠くなるので、学会の懇親会などがあるとちょっぴりキツい。

▲目覚ましはかけているものの、驚くほどぴったり起きるようになりました
朝バタバタするのは嫌なので、最低限の支度だけをして、そのまま職場へ。30分前に到着し、職場で朝食とコーヒーをとりながら連絡をチェック。帰宅時間は定時ぴったりで、毎日8時間睡眠という感じです。健康的!
ちなみに、どうにもならない場合は、夏野の職場にはフレックス制度があるので、それを利用して朝を遅らせようと考えていました。しかし実際のところ、どうやら夏野は朝型だったみたいです。いい歳になっても意外な一面が見つかることって、あるよね。
あとは、気になる給与面ですね。公務員の俸給表は公開されているので、気になる方は調べていただければと思うのですが、民間企業と比べれば、決して良くはないです。「えっ!?」ってなった。
とはいえ、任期を満了するまで「必ず」この金額がもらえるというのは、なかなかの安心材料です。以前、Workship MAGAZINEのインタビューでGIGの社員さんもおっしゃっていたとおり、収入の見通しが立つことで家計の計画も立てやすくなりましたし、必要以上に将来に悩むこともなくなりました。
「会社員のほうがラクだよ」ってマジ?フリーランス代表として殴り込みかけてきた
Workship MAGAZINE
どれだけ頑張っても1円も給料が上がらないというのは、ちょっと寂しい気もします。とはいえ、そこは発想の転換です。「与えられている業務時間でいっぱい研究すれば、次はもっと給与の高い大学に就職できるかもしれないしな」と考えるようにしています。
就職後、もっとも強く感じているメリットは、「仕事のオン/オフをつけられる」ことです。
フリーランスって、24時間/週7日/365日、どうせ仕事のことを考えちゃうじゃないですか。そんなに即レスする必要はないと分かっていても、お客様から連絡が来たら、「まあ1通くらいいいか」と返信したり……。
その点、今の職場はかなりオン/オフがはっきりしています。というのも、省庁のネットワークは、詳細は省きますが、どう頑張っても自宅からチェックできないんですね。っていうか、無線LANすらないので。
そういうわけで、職場を離れてしまえば、よっぽどの緊急事態でない限り連絡が来ることはありません。唯一あったのは、めちゃ大切な書類を提出しないまま帰宅してしまったときくらいです。そのときは急遽電車を降りて書類を作成し、上司から提出してもらいました。申し訳ねえ……。

▲ある書類の締切を完全に見落としており、急遽ホームで作成する羽目に。簡易な書類で良かった…
業務として研究をすることになったので、土日の学会参加が業務扱い(つまり休日出勤)となり、振替休日が発生するようになりました。
これまでは、学会参加費を自己負担するのはもちろん、振替休日なんて発生しようがありませんでした。「だり〜から今日は休みにしちゃお」と自主的に休むくらいで。
それが、権利として振替休日が発生するようになったので、これを利用して、割と自由に勤務を組めるようになりました。
夏野の職場は前4週間、後8週間の間に取得することになっているので、毎週末が出張!という学会シーズンなどは、振替休日が4日くらい発生することも。うまくやれば、土日と合わせて6連休も夢ではありません(身体がキツいですが)。
ずっと休みの話をして申し訳ないのですが、これも権利として、年休(いわゆる有給休暇)も取得できるようになりました。15分単位で取得できるので、ちょっとした調整にも使えます。
これは何が嬉しいかというと、万が一、うっかり寝坊したときにリカバリーできるんです!「寝坊したらどうしよう」という緊張感も、フェイルセーフがあると分かり、かなり気が楽になりました。
年休とは別に、「必ず3日連続で取得する」ことが義務づけられている夏季リフレッシュ休暇も与えられます。要するにお盆休みのことなのですが、夏野の勤務先の場合は、定められた期間内(7月〜9月)ならいつでも取得してOKというルールです。
年休とリフレッシュ休暇を組み合わせれば意外としっかり休めるので、「もし放浪したくなったら、こういうのを使ってくれればいいから……」と上司に言われています。私、なんだと思われているんだ。
最後に、未来に向けた話として、成長実感についても触れておきます。
就職してから、人事評価を受ける機会がありました。職場が研究者に対して何を求めているのかを確認し、自分に足りていない部分を洗い出す、よいきっかけになったと思います。
評価にあたっては上司との面談もありました。私は任期付きの職員なので、現在の仕事ぶりについて評価を受けるだけでなく、任期満了後を見据えて、「今後の転職に備えて、こういうことに取り組むといい」といったアドバイスももらえました。
ちなみに、気になる評価はというと、「今の仕事ぶりに問題はないので、もっと休みを取った方がいい」「きちんと権利を行使してください」と言われました。私、働きすぎを怒られている?
フリーランスの場合、納品物に対するフィードバックを受けることはあっても、自分の働き方や今後のキャリアまで含めて評価してもらう機会は、あまりありません。定期的に立ち止まり、自分の現在地を確認できるのは、かなり貴重だと感じました。
評価があるということは、評価される時期に向けて行動しなければならない、ということでもあります。
任期があと何年あって、今年度はどのような位置づけなのか。年度末までにどのような成果が必要で、そのためには何月までに何をしておかなければならないのか。そうしたスケジュールが、ある程度自動的に決まっていきます。
つまり、調子が良かろうが悪かろうが、コンスタントに結果を出さざるを得ません。フリーランス時代は、仕事が忙しい時期には研究を後回しにすることもできましたが、今は研究そのものが仕事なので、「今年はあんまり研究する気分じゃないな」で済ませるわけにはいかないんですね。
ただこれは、成長するために必要な負荷でもあると思います。無理をしすぎてパニックゾーンに入るのはよくありませんが、慣れたことだけを繰り返すコンフォートゾーンから、少し背伸びが必要なストレッチゾーンに押し出される感覚があります。
たとえば、英語で論文を書かなければならないとか……書かなければならないんですよ。嫌すぎ。
ちなみに、やや特殊な話をすると、こまめに学会発表をするようになったことで、参考文献リストや図解など、研究に使えるパーツが少しずつたまるようになりました。一度作ったものを、次の発表や論文に合わせて調整しながら使い回せるので、その点では以前より少し楽になっています(楽とは言っていない)。

▲きっかけがないとコンフォートゾーンに留まってしまいがち。「苦手だけどやらなきゃ」のモチベを与えてもらえるのはありがたい
就職したことで、収入や生活リズムだけでなく、働き方やキャリアにも一定の見通しが立つようになりました。休む権利があり、仕事をしない時間を確保できる一方で、定期的な評価や任期があるため、研究者として結果を出し続ける必要もあります。
安定したから楽になった、というよりは、余計な不安に使っていたエネルギーを、研究や次のキャリアに向けられるようになった、という方が近いかもしれません。
少なくとも今のところ、就職は私にとって、立ち止まるための選択ではなく、もう一段先へ進むための足場になっています。とはいえ、とりあえず働きすぎはなんとかしなきゃですね。
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