2024年11月から始まる「フリーランス新法」とは?要点だけわかりやすく解説
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さまざまなビジネスを立案し、方針を決めて舵を切る。そんな経営者の方々のマインドは、自らの手で道を切り開くフリーランスと通ずるものがあります。
そこで、会社の社長としてご活躍されてきた方々に、「もしも自分がフリーランスになるなら」と仮定して、インタビューを実施することにしました。
今回ご登場いただくのは、定額制宿泊サービス『HafH(ハフ)』共同創業者・大瀬良 亮さん。
株式会社電通にて、自治体の広報業務や、首相官邸のソーシャルメディア戦略を担ったのち、共同で株式会社KabuK Styleを設立。現在は日本サブスク大賞2021グランプリにも輝いた、『HafH』の事業に専念されています。
もしいま、亮さんが25歳に戻れるとしたらどのようなフリーランスを目指すのか。全国各地を飛びまわり、さまざまなフリーランスと関わってきた亮さんならではのお話が聞けました。
【「もしも社長がフリーランスになったら」ルール】
- 年齢:25歳
- 人脈:最初はフリーランス独立前の、前職の繋がりのみ
- 雇用:法人登録はOK、会社として社員を雇用するのはNG(業務委託はOK)
- 一般的にフリーランスとされる働き方を行う
1983年長崎県生まれ。株式会社 KabuK Style代表。筑波大学卒業後、電通に入社。2010年、被爆の実相をデジタルマップで伝える「Nagasaki Archive」でYahoo! JAPAN インターネット クリエイティブアワード特別賞受賞。2015年、首相官邸初のソーシャルメディアスタッフとして内閣広報室に出向。2019年、「世界を旅して働く」をテーマとした『HafH』のサービスを開始。 同年、電通を退社。(Twitter:@ryosera_jp)
フリーランス3年目のライター。旅先で出会った亮さんに軽率に取材を申し込むも、あまりの経歴のすごさに目ん玉をひん剥く。(Twitter:@milkprincess17)
目次
ゆぴ:
もしも、亮さんが25歳に戻ってフリーランスになるとしたら、どのような職種で独立しますか?
亮さん:
うーん、職業名のないような仕事を自分で作るかなぁ。 たとえば、僕は噛み砕いて話すことが得意なので、事業やサービスと顧客のあいだに立って「抽象的なものを、わかりやすく言葉に翻訳する仕事」をするとか。
僕は今までの人生で、与えられた職業をこなせたことがないんですよ。高校時代、バスケで県1位の強豪校にいたんですけど、身長が足りなくてスタメンになれなかったんです。それが悔しくて、「アシスタントコーチ」というポジションを創設し、監督と選手のあいだに立って軋轢を解消するために立ち回っていました。
求められていたと言うより、必要だと思ったポジションを自分で作る方が活躍できる、とそのころから思っていたんです。
みんな、フリーランスになるときに「どれだけ儲けるか」を考えがちで、特に20代は早く上に追いつこうと“最短ルート”を探して、逆算して仕事を選ぼうとするじゃないですか。
亮さん:
僕が20代のときなんて、西麻布の交差点で朝まで遊んでたし(笑)、会社に借金しまくっていてお金も全然なかったし、好きなことだけを追いつづける生活を送っていました。でも、気付いたら好きな地方の仕事をもらい、首相官邸初のSNSディレクターになっていた。
自分が好きなことをきちんと言える勇気を持って、それで仕事をすると腹を括る。前例がなくても、やりつづけていれば仕事になるんです。
ゆぴ:
なるほど…。とはいえ、「好きなこと」を仕事にするって難しいですよね。亮さんならではの秘訣はありますか?
亮さん:
「やりたい」ではなく「悔しい」を原動力にすることです。“ネガティブ”を原動力にすると、絶対に折れないから。
亮さん:
電通時代もそうでした。電通の人たちはみんな多彩で、元Jリーガーから格闘家まで、錚々たる同僚で溢れていて。広告代理店ではドラクエのように案件ごとにパーティを組んで仕事を進めていくんですけど、そのなかで「特技がない」僕は自分に自信がなくなってしまいました。
Webをやろうか、コピーをやろうか、と“自分の武器探し”の迷路に立たされてしまったなかで、そもそも自分は「何をやれないと悔しいか」を考えたんです。
何ができるかを今から探しても誰かの後を追いかけることになる。それよりも今、自分が得意だと感じていて、負けたら悔しいことを追いかけたほうが勝機がある、と。そのとき、役に立つかは置いといて、出身地である「長崎」にまつわることが悔しいんだと気づきました。
長崎が好きな僕は、長崎の案件を他の人に取られるのがめちゃくちゃ嫌だったんです!
亮さん:
そこで、「長崎県人会」を立ち上げたり、長崎のWebサイトを作ったりして、長崎をPRしていたことがきっかけとなり、僕のキャリアが拓けていきました。だから、まずはこれまでの経験から、知識量や行動量で「(負けたら)悔しいこと」を探してみることが突破口になっていくんじゃないかな。
それは、鉄道、音楽、仮想通貨など、なんでもいいと思います。僕の場合は今のところ「長崎」「ホテル」「SNS」ですね。
ゆぴ:
フリーランスとして独立するにあたって、まずは何から始めますか?
亮さん:
まず、前提として「自分はこんなことをやっている人です」と言える目処が立っていない限り、今いる会社を辞めるべきではないと考えているので、しばらく会社にはいる……というか、複業ができる会社なら、絶対に会社にいますね。
僕も本当は「電通やりながら社長やってます!」って言いたかったですもん。電通は叩かれがちだけど、本当に素晴らしい同僚ばかりなんですよ。ずっと繋がっていたかった……。
亮さん:
ただ、会社にいると似通った業界の人としか出会えないことが多いから、いろんなコミュニティに顔を出すと思います。実際に僕は25歳のころから、NPOや商社の人たちのなかに飛び込んでいきました。
会社に所属していると、ネームバリューで信頼も得やすいし、出会いのチャンスは広がりやすいし、仕事に繋がりやすいので、会社にいるうちに「働く場の多拠点居住」は積極的にやっていきますね。
ゆぴ:
「働く場の多拠点居住」、いいですね! ゼロから人脈を築くコツはありますか?
亮さん:
地方に行くチャンスがあったら、知り合いやSNSに向けて「誰か面白い人いませんか?」と聞いて紹介してもらうようにしています。地方にいる人は、自分の知らない生き方や働き方をしていて、すごく面白いんですよね。
亮さん:
「おもしろそうな発信している人に突撃して話を聞きにいく」というのもやっています。実際に会えるかどうかはさておき、まずは連絡をしてアポを取ってみる。意外と会えるんですよ。僕も大学生から連絡が来たら、ほぼ会うようにしています。
ゆぴ:
いかに躊躇なくアタックできるかですね。でも、コミュニケーションが苦手な人はどうすれば……?
亮さん:
いきなり人と会うのに抵抗がある人は、旅をしたり、コンテンツに触れたりするのもいいと思います。自分を成長させる一番の方法は、いかに自分の心身を移動させるかなんです。
旅が物理的な移動だとしたら、小説や映画などは次元的な移動。疑似体験をしたり、知見を得たりすることで、自分自身が面白い人になれる。新しい出会いや仕事を呼び寄せることもあります。
僕が25歳のときは、小説を読んだり、映画を観たり、美術館に足を運んだりしていました。たとえもう一度20代をやるとしても、この習慣はやめませんね。
ゆぴ:
フリーランスとして仕事を受注するために、亮さんはどんな営業や戦略を立てますか?
亮さん:
SNSには得意意識があるので、SNSの発信は今以上に意識すると思います。発信するスキルは、令和時代のフリーランスにとって、とても大切なスキルの1つだと思うんです。
たとえいいコンテンツやスキルを持っていても、知られないことには仕事も頼まれないから、自分が感じていることや、やってきたことを自己発信すること。これが苦手な人はフリーランスのハードルが高いかもしれないね。
ゆぴ:
個人のSNSの運用って、どうしても発信内容に迷いますよね。何か気をつけていることはありますか?
亮さん:
バズるコンテンツを狙うのではなく、僕が「わかってほしいと思う人にだけわかるもの」を作ること。そのために、あらゆるものへの小さな違和感を大事にしています。
たとえば、僕は電通が働き方改革で22時完全消灯になったとき、「働き方改革なのに“働くな”ってどういうこと?」と違和感を覚えたんです。
亮さん:
もちろん、働きたくない仕事に長時間残業を強いられ、体調を崩すようなことがあっては絶対いけない。でも、めちゃくちゃ仕事にやりがいを感じていて、あと1時間頑張れば成果が上がると見えているような人が「時間なので終わり」と言われるのは違うんじゃないか。
それぞれに働くスピードみたいなものがあるとして、なぜ日本の社会人が軒並みスピードを揃えようとするんだろう、と強く思ったんです。
そんな、当時誰もが違和感を抱きながら口にしなかったことを、noteに書いてみたら多くの反響がありました。
小さな違和感に気づくことが、自分だけのアイデンティティになり、自分の想いに共感する人にフォローされるようになる。そうすると、密度の濃い関係性に恵まれるし、自分のやりたい仕事にも繋がりやすいと思います。
ゆぴ:
小さな違和感を発信する。これはすぐに実践できそう!
ゆぴ:
亮さんがフリーランスとして仕事するうえで、大切にしたいマイルールはありますか?
亮さん:
相手の期待の「ちょっと上」を返すことです。
まず、定番だけど「即レス」。たとえば「相談がある」という連絡をしばらく放置してしまうと、相手の熱感は下がってしまうので、なるべく早く返すようにしています。特に今、自分は忙しいと思われがちなんですが、、だからこそ即レスするだけで相手が「嬉しい!」と思ってもらえる可能性が高いんです。
電通には「電話は1コールで取る」という暗黙のルールがあったんだけど、その思いを踏襲しているのかも。相手の想像以上のスピードで取ることで、相手を喜ばせる。だから、移動中もSlackやSNSをずっと見ています。もちろんできないときもあるけど……(笑)。
ゆぴ:
「即レス」するだけで他のフリーランスと差別化できるのは大きいですね。
亮さん:
あと、「途中でも出す」というのもオススメ。
完成したものを納品するのではなく、作っている途中でコミュニケーションを多めに取るようにしています。進捗状況を相手に小まめに伝えて安心を与えることもできるし、方向性の確認を都度していくことで、結果的に修正回数も少なくて済む。
やればいいのに、意外とみんなやらないんだよね〜! フリーランスの人こそ、ぜひ実践してみてほしいです。
ゆぴ:
(今度やってみよう…)
ゆぴ:
亮さんは全国を飛びまわるなかで、多くの若手フリーランスにお会いしていますよね。活躍できるフリーランスの条件は何だと思いますか?
亮さん:
会社を辞めるときに「会社で学べるものをすべて学んだ」と感じていることです。僕が最近一緒に仕事をした若手フリーランスは、勢いのあるITベンチャー企業で3年間経験を積まれた方。「即レス」はもちろん、斜め45度の質問に対しても、代替案をつねに2〜3個持っていて、打ち合わせもスムーズで感動しました。
会社員の「仕事のできるスキルリテラシー」は、フリーランスの平均値に比べて高いと感じます。だからこそ、そこをしっかりやれるかやれないかで、分かりやすく差が出ます。
亮さん:
先ほど、「相手の想像以上のものを返す」という話をしましたが、これって正直会社員としては当たり前のことなんですよ。電話を誰よりも早く取ることも、進捗確認をしながら案件を進めていくことも。でも、フリーランスのなかには会社を経験していない人もいるし、若いうちに辞めてしまった人もいます。
だからこそ、会社での経験を無碍にせず、他のフリーランスとは違う自分を作る意識が高い人は活躍できる。
僕も、20代後半で独立しようと考えたこともあったけど、「まだ吸収しきっていない!」と思いとどまりました。今、フリーランスになりたいと考えている人は、会社に入っているあいだに、学べることをすべて吸収しきってからフリーランスになることで他との差別化ができると思いますよ。
「時間や場所に囚われない自由な働き方」としてフリーランスに憧れを持ち、「新卒フリーランス」を選択する若手も多いなかで、警鐘を鳴らしてくれた亮さん。
大切なのは「会社員として働いた期間」ではなく、いかに会社員のあいだに密度の高い仕事ができたかどうか。
現在フリーランスの人は改めて自分の仕事スタイルを見直してみること。そして、フリーランスへの転向を考えている人は、自分のスキルセットを冷静に俯瞰し、足りないものをすべてを吸収すると決めて目の前の仕事に打ち込んでほしいなと思います。
そんな亮さんが運営する定額制宿泊サービス『HafH(ハフ)』。
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(取材&執筆:ゆぴ 編集:少年B 写真:じきるう)
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