「仕事はクオリティで決まらない」前田高志が語る、フリーランスが知るべき“価値”の話

もしも社長がフリーランスになったら

さまざまなビジネスを立案し、方針を決めて舵を切る。そんな経営者の方々のマインドは、自らの手で道を切り開くフリーランスと通ずるものがあります。

そこで、会社の社長としてご活躍されてきた方々に、「もしも自分が、30歳に戻ってフリーランスになるなら」と仮定して、インタビューを実施することにしました。

記念すべき第1回目にご登場いただくのは、前田高志さん。

任天堂に15年間勤めたのち、フリーランスのデザイナーを経て、株式会社NASUを立ち上げた彼。もしいま、前田さんが30歳に戻れるとしたらどのようなフリーランスを目指すのでしょうか。

「もしも」の話を深堀っていくと、見えてきたのは「フリーランスの価値」というお話でした。

【「もしも社長がフリーランスになったら」ルール】

  • 年齢:30歳
  • 人脈:最初はフリーランス独立前の、前職の繋がりのみ
  • 雇用:法人登録はOK、会社として社員を雇用するのはNG(業務委託はOK)
  • 一般的にフリーランスとされる働き方を行う
前田高志
前田高志

株式会社NASU 代表取締役/前田デザイン室主宰/デザイナー。大阪芸術大学デザイン学科卒業後、任天堂株式会社へ入社。約15年プロモーションに携わったのち、2016年に独立。2018年、自身のコミュニティ「前田デザイン室」を設立。著書に『勝てるデザイン』『鬼速フィードバック』(Twitter:@DESIGN_NASU

聞き手:ゆぴ
聞き手:ゆぴ

フリーランス3年目のライター。フリーランスの将来設計が気になる今日のこのごろ。(Twitter:@milkprincess17

慎重派の前田さん、まずは独立半年で基盤を整える

前田高志

▲株式会社NASUのオフィスからお送りいたします

ゆぴ:
もしも前田さんが30歳に戻るとしたら、どのような職種で独立しますか?

前田さん:
なんでもやっていいのかぁ……。でも、やっぱりデザインでやっていくと思います。とくにコーポレートのブランドデザインは、いまの世の中で一番仕事として求められていて、僕自身も嫌いじゃないので。

ただ、じつは僕も、いま本当にやりたいことをやれてるわけじゃないんですよ。

ゆぴ:
えっ、そうなんですか!?

前田さん:
一番やりたいのは、『前田デザイン室』で変なプロダクトや漫画を作ること。みんなと楽しく何かを作るのが好きなんです。そのための基盤作りをずっとやっているんです。

いまはみんな、やりたいことだけ模索していきなりフリーランスになっちゃうでしょ? それで、結局しんどくなって会社に戻ったりする。

僕は慎重派で、「ある程度収入がないとやりたいことができない」と思ってるんです。仮にいま30歳に戻ってまたフリーランスからやり直すとしても、基盤作りはしっかりやるし、会社を辞めるタイミングも同じになると思います。

ゆぴ:
前田さんは38歳で独立されていますが、別の世界線では新卒フリーランスという選択肢も……

前田さん:
絶対ダメでしょ!(笑)

前田高志

▲安定思考の民

前田さん:
仮にいきなりフリーランスになってたら、すごいやらかしてると思います。

新卒はどんな会社にも入れるチャンスがあるんですよ。フリーランスなんかいつでもなれるのに、それを最初から捨ててフリーランスになるのは損だと思います。

僕は任天堂でいろんな仕事をしてきたけど、そこでしか経験できないことがたくさんあったから、30歳までは会社に行ったほうがいいと思いますね。

……それにしても、「元任天堂」ってこんなに言っている元任天堂社員は僕ぐらいだと思うけど(笑)。

ゆぴ:
でも、「元○○」って大きいですよね。

前田さん:
そう。元○○も自分の実績だと思うし、それで信用してくれる部分も大きいので、独立初期のころはフル活用しまくりでした。あ、今もだ(笑)。

ゆぴ:
いつかはフリーランスになるにしても、まずは会社で経験を積んだほうがいいと。では、実際に独立してからは、どのように基盤を整えていきますか?

前田さん:
まずは安定した仕事が入るように、自分が頭のなかや、クリエイティブのこだわりを前面に出して、ブログやnoteを書きますね。

仕事って「○○さんにやってほしい」と指名でもらったほうがやりやすいんですよ。誰でもできるような仕事はやってもあんまり面白くないから、自分のブランドを高めながら宣伝していく。

僕はフリーランスになって1年は、不安な状態のまま仕事をしていたんですけど、その不安がなくなった瞬間が明確にあるんです。

前田高志

前田さん:
それは、セミナーを開いたときです。1回目はデザインを学んでいる、僕のブログの読者が来てくれました。でも、2回目は同じ読者でも、デザインの依頼をしたいと考えているクライアント候補の人が来てくれて、100万円の受注が決まったんです。

そのときに、読者がいればクライアント候補の人も増えていくと確信しました。だから、仮にいま30歳に戻ったとしても、ブログやnoteをやるし、ある程度はSNSのフォロワーも増やしますね。

ベンチャー企業を渡り歩き、“タダ同然”で働く

前田高志

▲おしゃれな椅子

前田さん:
次に、ある程度基盤を整えてからは、東京に家を借りてベンチャー企業をまわります。ベンチャー企業って、デザインに困っていることが多いじゃないですか。だからそこで相性が良いところを探していきます。

ただ、はじめからいきなり仕事は来ないと思うので、最初は「タダ同然」で、知名度を上げていくと思います。

……まぁこれ、堀江さん(堀江貴文)が言ってたことなんですけどね(笑)。

ゆぴ:
堀江さんが?

前田さん:
独立を考えていた2014年頃に、堀江さんのメルマガに送った質問がYouTubeで採用されたことがあるんです。

「メーカーでデザインをやってきました。独立しようと思ってます。どんなふうにアプローチして仕事をとっていけばいいですか」って。それに堀江さんが、「ベンチャー企業のデザインを、安い値段でやりまくれ」と。

前田高志

▲完全に受け売りでした

前田さん:
僕にとってのベンチャー企業はオンラインサロンの『箕輪編集室』でした。それが今の僕のコミュニティ『前田デザイン室』につながっているので大正解の選択でした。

ただ、慎重で臆病な僕。最初からベンチャー企業にいけなかったのが心残りで。だから、もしフリーランスに戻れるならベンチャー企業を渡り歩きたいんですよ。

でも、やっぱり手っ取り早いからコミュニティにも入るかな。HIU(堀江貴文イノベーション大学校)とか。HIUが立ち上がったときも知ってはいたけど、そのときは門を叩く勇気がなくて(笑)。

ゆぴ:
(堀江さんが好きなんだな……)ちなみに、オンラインサロンは自己投資のひとつだと思うのですが、フリーランス独立初期はどのようなお金の使い方をしますか?

前田さん:
勉強よりも、知ってもらうための投資をしますね。

仕事って、クオリティだけじゃないんですよ。クオリティで頼むんだったら、実績のある会社に頼めばいい。それよりも、「この人と一緒に仕事したい」って思われることが大事なんです。

もちろん、クオリティが全然ダメなら仕事は来ないけど、ある程度できるのであれば、「知ってもらうこと」のほうが必要なんですよ。

スキルを磨くのは5年やったら十分。あとはSNSでの発信、そして良いブログやnoteを書くためにライターに仕事を頼むとか、そういう投資をしますね。

若いころは「積極的に人にへばりつけ」……?

前田高志

ゆぴ:
フリーランスは「人脈が命」とも言われますが、発信やオンラインサロンのほかに、どのようにして人と繋がりますか?

前田さん:
いまは株式会社NASUや前田デザイン室での活動をベースに向こうから声をかけてくれる人と繋がることが多いですが、独立初期ならこちらからもアプローチすると思いますね。本当に一緒に仕事をしたい人がいたら、手紙を書くとか。

ゆぴ:
手紙!

前田さん:
いまは手軽に、SNSのDMにコピペの営業メッセージを送る人も多いけど、そういうのは普段見慣れちゃってますからね。そんな時代だからこそ、手紙が来たら嬉しいと思うんですよ。

僕も学生からファンレターをもらったことがあるのですが、会ってアドバイスとかしてあげたくなりましたね。

あとは、「人に積極的にへばりつく」のはめちゃくちゃいいと思います。以前、インフルエンサーの5歳さんとも話してたんですけど、意外とへばりついてくる人っていないんですよ。たとえば、5歳さんと同じようなことが彼以上に書けたら、絶対に重宝するじゃないですか。

僕も、僕がやりそうなデザインを僕よりやってる人がいたら、めちゃくちゃ仕事を依頼します。その状態になればちょろいのに、誰もやらないから。

前田高志

▲みなさん! 前田さんにへばりついてください!

前田さん:
連絡なんて返ってこなくて当たり前だから、突撃してみる価値はあると思います。軽く付き合える時代だからこそ、ちょっと重みがあるほうがいいですね。

見てくれのブランディングよりも目の前の仕事を

ゆぴ:
フリーランスって最終的な目標設定が難しいと思うんですけど、前田さんはどのように設定しますか? 最終的には手を動かさなくなる人が多い印象です。

前田さん:
僕の場合、自分でもデザインをやっておかないとフィードバックができなくなるから、デザインはやめないですね。かといって、講師になりたいわけでもない。

どうなりたいかにもよるんですけど、そうだなあ……本を出す。

前田高志

ゆぴ:
いや、ハードルたか。

前田さん:
そうかなぁ。いずれにせよ、何もない状態でコミュニティを作ったり、教えたり、本を出したりしてもあまり意味がないので、まずは目の前の仕事を「いい仕事にする」のが大前提です。その結果、「あれをやった人」という代表作が作られるというのが僕の今の目標です。

「お金」とか「影響力」とか考えず、自分がやっていたら気持ちいいことを突き抜けてやっていったら、自然と影響力もついてくると思いますよ。

なかには変わった肩書きをつける人もいるじゃないですか。僕のデザインは「童心」がキーワードになっているけど、だからといって、「童心デザイナー」にはしない。一時期はブランディング目的で、職人っぽく和服を着ようとしたこともあるけど、これは別にやりたいことじゃないなと思って……(笑)。

そういう見てくれや肩書きよりも、人間性が見えたほうがいいんですよ。どういうことで笑って、どういうものが好きで、どういう人生を送ってきたのかをつねに発信しつづける。そっちのほうがよっぽどブランディングになると思いますよ。

そういう、いい仕事や発信を積み重ねた先に、本などの、自分の集大成となるものを出せるんじゃないかなと。

「価値が理解できる」フリーランスは強い

前田高志

ゆぴ:
フリーランスとして生きるにあたって、大切にすべきことは何だと思いますか?

前田さん:
「価値がちゃんと理解できる」というのはフリーランスのテーマな気がするんですよね。僕も独立したてのころは値付けが安すぎたので、もし戻れたらそこを一番意識するかな。

だいたいみんな「労働時間」や「労力」に値段をつけるけど、本当に見るべきは「価値」なんですよ。他の人でもできる仕事なら、たしかに相場ぐらいで値付けしていいと思います。でも、自分にとってはラクでも、他の人にできない仕事であれば、価値を高く見積もるべきなんです。

ゆぴ:
なるほど。その自分の価値を知るためにはどうすればいいんですか?

前田さん:
まずは相場を知ること。フリーランスって、意外と他の人に仕事の値段を聞かないですよね。でも僕は、単価も年収も聞きまくりますよ? 前田デザイン室のゲストに来た人とは、だいたいお金の話しますもん。

前田高志

▲赤裸々〜

前田さん:
相場を知ってしまえば値段を付けやすいんですよ。僕も最初安かったけど、「これぐらいいけるかな……いけるわ!」と試しながら値段を上げていくのも楽しかったですね。

そして大切にしたいのが、「この仕事でこの値段だったらちょっとワクワクするな」っていう値段をつけること。「この値段かぁ……」という仕事を受けると誰も幸せにならないから、絶対断ったほうがいいです。

逆に、本当にやりたい仕事は0円でもやっていい。その代わり、チャレンジングなデザインでもOKにしてくださいとか、制作過程をnoteに書かせてくださいとか。それだったら全然価値ありますよね。

ゆぴ:
あまり単価について話すことはないけど、ちょっと聞いてみようかなぁ……。

前田さん:
最近つくづく思うのは、フリーランスなのに「メニュー」を出してない人が多すぎるんですよね。値段は絶対に出したほうがいいです。メニューも看板もない飲食店に、注文は来ないっすよ。

フリーランスはお店をイメージするといいと思うんです。

前田さん:
たとえば自分がよく行くお店を、どんな基準で選んでいるか考えてみてほしいんですよ。「おいしい」「好きなメニューがある」「サービスがいい」「近い」とか。

これが価値なんです。たとえば僕のお店は「質」「ニーズ」「サービス精神」「人柄」「近い」の5つが価値だと思ってます。ぜひ自分の店を想像して、価値をどこに置くか考えてみてほしいですね。

前田高志

▲ありがとうございました!

前田さんのお話で印象的だったのが、「仮に30歳に戻っても、自分が歩んできた道と同じような道を辿る」ということ。

つまり、いまの人生に後悔がない(!)とのことで、前田さんがフリーランス時代に大切にしてきたことをそのまま教えていただけました。

フリーランスにとって一番大切なのは「価値」を理解すること。自分のお店や並んでいる商品は果たして自分がほしいと思うものなのか。改めて見つめなおしてみてほしいです。

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(取材&執筆:ゆぴ 編集&写真:じきるう)

【連載】もしも社長がフリーランスになったら

活躍する社長たちは、どんなフリーランスを目指すのか?

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