エンジニアの副業は週1からでも可能?副業の例や探し方も解説
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「自由とリスクは隣り合わせ」と言われることも多い個人事業主・フリーランス。さまざまなリスクがあるなかで、ベテランフリーランスほど強調しがちなのが「健康面のリスク」です。
フリーランスが体調を崩したり、ケガをしたりして働けなくなると、業務が完全にストップします。会社員と違って労災の加入ハードルも高く、自分の健康には細心の注意を払う必要があります。しかし、いくら自分が健康や安全に気を付けても、クライアントが無頓着な場合、やむを得ず危険な環境で作業しなければならないこともあるでしょう。
しかし、朝日新聞デジタルの報道によれば、これまで労働者の安全と健康を確保するために制定されていた「労働安全衛生法」の対象者に、個人事業主も加えられる見込みとなりました。
この記事では、労働安全衛生法の改正予定や、個人事業主にとっての影響などを分かりやすく解説します。
「労働安全衛生法」は、一言でいうと「労働者の安全と健康を確保するため」の法律です。つまり、この法律は労働者がとんでもない環境で働かされ、健康や安全を害することのないよう、「事業者(≒会社)」側に働く環境を整備する義務を発生させます。一方、労働者側にも、事業者が行う措置の遵守および協力義務が発生します。
具体的にどのような義務が課されるかというと、大まかなに言えば以下のようになります。
わかりやすいところで言うと、会社員の方が必ず年に1回健康診断を受診できるのは、この法律のおかげといっていいでしょう。
しかし、先ほどからこの法律の保護対象は「労働者」と明記されているように、労働者しか保護の対象にはなりません。労働者とはわかりやすく言うと「誰かに雇われてお金を稼ぐ人(例:会社員)」なので、個人事業主は労働者ではないのです。
つまり、現状の労働安全衛生法では、個人事業主が快適に働ける環境を整備する義務もなければ、事故防止のための対策を行う必要もありません。ものすごく極端に言えば、個人事業主が作業中に命の危険を感じるような環境で作業させても、(労働安全衛生法上では)なんの問題もない状態でした。
労働安全衛生法で個人事業主が保護されないことは、たびたび問題視されてきました。とくに、建築現場などで働く一人親方のような人たちが危険な環境で働くことが多かったからです。
そこで2023年4月には、労働安全衛生法に基づく省令改正により、作業を請け負わせる一人親方なども労働者と同等の保護が図られるよう、新たに一定の措置を実施することが事業者に義務付けられました。
ただ、この法改正は「危険有害な作業が発生する環境」、つまり建築現場などを想定したものであり、たとえばITフリーランスなどにはほとんど影響がなかったといえます。
しかし、2023年7月31日には、労働安全衛生法の改正によって個人事業主が対象に加えられる見通しになったと報じられました。以下では、厚労省の公開した有識者会議の議事録と報道ベースで具体的な法改正ポイントを見ていきます。
これまで、発注者は作業を依頼する個人事業主が負傷、あるいは死亡しても、国に報告を行う義務はありませんでした。そのため、個人事業主の事故の実態を国が把握する方法がなく、闇につつまれていたといえます。
しかし、法改正によって「労働者と同様にフリーランスらが業務上の事故で死亡するか4日以上休業するけがをした」場合、仕事を発注したり現場を管理したりする企業などに「労働基準監督署への報告義務」が課される見通しです。これにより、国は個人事業主の事故を正確に把握できるようになるでしょう。
また、個人事業主がブラック労働によって脳・心臓疾患や精神障害になった場合は、本人が国に報告できる仕組みの整備も行われるよう。たとえばITエンジニアが、睡眠時間も確保できない働き方を強いられて体調を崩した場合、そういった事態を国に報告できる仕組みができるということです。
国はこうして得た情報を分析、公開し、業界団体などに注意喚起することも進めていく方針です。
こちらはITフリーランスにも非常に大きな影響がある法改正で、国が個人事業主に対する年1回の健康診断を勧めることになるようです。実際、フリーランスの毎年健康診断受診率は50%を切っており、健康面でフリーランスを続けられなくなる人は過去にも数多く見てきました。
フリーランスや副業者の皆さんに「健康診断の頻度」を聞きました。
毎年健康診断を受けている方は、なんと半分以下😱
フリーランスは身体が資本なので、今年こそは健康診断を受けてみてください!#フリラボ pic.twitter.com/1CFpj1fTuA— Workship|フリーランス・副業向け 案件検索プラットフォーム (@goworkship) July 6, 2023
しかし「フリーランスの健康診断って、結局自腹でしょ?」と思う方もいるでしょう。この点に関しても対策が講じられ、「健康診断の費用は、発注企業が支払う報酬の中に盛り込むよう促す」ことも念頭に置いた法改正が行われるようです。
フリーランスからすると、発注者が健康診断費用を払ってくれれば健康診断の受診率は上がるでしょう。一方、ITフリーランスの場合は「実効性に課題がある」という声もありました。具体的には、以下のような懸念の声が出ています。
仮に「1年以上の契約が続くフリーランスに対し、健康診断費用の負担を義務付ける」と法改正された場合、たしかに企業側が「じゃあギリギリ1年に満たない契約期間にしよう」と契約期間を短縮するリスクは十分あるでしょう。
以上のような事情から、あくまで「健康診断の費用は、発注企業が支払う報酬の中に盛り込むよう促す」という表現に落ち着いているのでしょう。
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こちらはやや建築現場などの一人親方を意識した改正かと思われますが、具体的に以下のような事故防止対策が義務付けられる見通しです。
では、労働安全衛生法の対象に個人事業主も加えられた場合、具体的にどのような影響が生じるのでしょうか。
労働安全衛生法が改正されれば、これまでに比べて個人事業主の健康や安全により配慮した形の法律になることは明らかです。
つまり、そうなれば個人事業主はより健康かつ安全な環境で働けるようになるでしょう。個人事業主にとってメリットの大きい法改正であることは間違いありません。
現状、個人事業主の健康診断受診率は非常に低いと言わざるを得ません。しかし、健康診断を受診しなければ病気のリスクが上がるのはもちろん、治療のための医療費も増大して国や地方自治体の財政を圧迫することも想定されます。
そのため、法改正に伴って国からも健康診断の啓発が行われる可能性は高く、個人事業主の健康診断受診率は向上すると思われます。しかし、発注者側に健康診断を受診させることが義務化されるとは思えず、費用が自己負担となる場合では、受診率がほとんど改善されない可能性も捨てきれません。
有識者会議でも指摘されている部分ですが、これまで労働者限定で適用されてきた労働安全衛生法が個人事業主にも適用された場合、個人事業主と労働者の線引きがあいまいになることは想定されます。
もちろん、個人事業主の法的な保護が進み、労働者並みの待遇を得られることは重要です。一方、企業が労働者ではなくフリーランスを採用する背景には、スキルや専門性だけでなく「労働者を雇うよりコストを削減できる」という動機も大きいです。
労働安全衛生法の改正で企業側の義務が増えれば、それだけフリーランスの採用・管理コストも増えることを意味します。そうなると、社員やアルバイトとの差が小さくなり、発注者側がフリーランスではなく社員やアルバイトの雇用を選択する可能性もあるかもしれません。
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IT系フリーランスの特徴として、大企業などから案件を受注する「受注者」の顔をもちつつ、別のフリーランスへ業務を発注する「発注者」でもあるケースは珍しくありません。
現在の労働安全衛生法は、法律に基づく義務が発生する事業者を「事業を行う者で、労働者を使用するもの」と定義しています。わかりやすく言うと「誰かを雇っている事業者」となるので、従業員のいないフリーランスは対象外でした。
しかし、法改正によって対個人事業主にも義務が発生するようになれば、従業員を雇っていなくても「特定の個人事業主に1年以上業務を発注している事業者」のように、労働安全衛生法の適用対象事業者になってしまうおそれもあります。
実際、昨今話題になった「フリーランス新法」の制定時には、「従業員を使用しない事業者(例:フリーランスや法人成りしたひとり社長)が、フリーランスに対して業務委託を行うとき」にも一部の義務が発生しました。
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もちろんすべての労働安全衛生法の義務が課されることはないでしょうが、一部でも義務が発生することになれば、当然負担が増えることは間違いありません。
ここまで、労働安全衛生法の改正について見てきました。
フリーランスが安全かつ健康に働くためには、自助努力はもちろんクライアントの協力が欠かせません。労働安全衛生法の改正によって一歩前進することは間違いないですが、どうしても案件やクライアントに左右される部分はあります。
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(執筆:齊藤颯人 編集:Workship MAGAZINE編集部)