フリーランスは健康診断を受けるべき?健康診断の受け方やメリットを解説【FP監修】

会社勤務であれば毎年受診する「健康診断」。フリーランスになってからはつい忘れがち、あるいは受診すべきか悩んでいる方も多いのではないでしょうか。

実際、クリニックTEN渋谷の調査によれば、年に1回健康診断を受けているフリーランスはわずか28%という結果が出ています。

しかし、そもそもフリーランスは健康診断を受けるべきなのでしょうか。健康診断を受診するメリットや、健康診断の受け方などについて理解すれば、健康診断を受診するべきかどうか判断できるはずです。

本記事では、フリーランス時代から健康診断を受診することを選択してきた筆者が、フリーランスが健康診断を受診する意味について解説します。

監修:齊藤颯人
監修:齊藤颯人

FP事務所『トージンFP事務所』代表、ファイナンシャル・プランナー(AFP)。Workship MAGAZINEのマネー担当として、フリーランスや副業にまつわる記事の執筆・監修を行う。自身もフリーランス経験豊富で、当事者ならではの情報発信に強み。

フリーランスが健康診断を受けるべき理由

理由1. 健康寿命を保ち、長く仕事ができる

フリーランスは体が資本。発熱して数日休まないといけない、怪我をして数週間も入院しなければいけないなど、万が一のことがあったときに守ってくれる後ろ盾(=企業)はありません。仕事の質を保つことも大切ですが、その土台となる“健康”が損なわれてしまったら、元も子もないのです。

自分を守ることは、取引先を守ることにも繋がります。クライアントは、たとえ自社の従業員ではなくフリーランス相手だとしても、信頼して仕事を任せています。成果物の納品が滞ってしまえば、プロジェクト全体の進行が遅れるなど迷惑をかけるでしょう。健康を保ち、長く仕事を続けられることは、周りの人のためにもなります。

理由2. 生活習慣を見直すきっかけになる

とくに若いうちはなかなか気づけないかもしれませんが、生活習慣を良好に保つことが健康に繋がります。以下3つの基本的なポイントを日々おさえておくことが大切です。

  • 早寝早起き
  • 適度な運動
  • 暴飲暴食を避けた食生活

しかし、人は誰しも誘惑に弱いもの。ときには睡眠時間を削ってしまったり、お酒を飲みすぎてしまったりすることもあります。定期的に健康診断を受けることで、現時点での“自分の健康偏差値”を把握しておきましょう。生活習慣を見直すきっかけになります。

理由3. 病気を早期発見できる

重い病気だとしても、早期発見であれば治療方法が選べる場合が多々。発見が遅れてしまったことが原因で、根治が難しくなる病気もあります。

とくにデスクワークが多いタイプのフリーランスは、慢性的に肩や首、背中や腰に痛みを抱えているもの。「いつもの肩こりや腰痛だろう」とごまかしていると、知らないうちに隠れた病気が進行していることもあります。自覚症状がない場合も多いのです。自分で判断せず、定期的に健康診断を受けましょう。

フリーランスが健康診断を受けるメリット

自費負担で受診費を支払うだけならば健康診断を受ける意味はないのでは?と考える方もいるかもしれません。

しかし、よほど事情がない限りは定期的な健康診断を受けたほうがいいと筆者は考えています。その理由として、健康診断を受診する経済的なメリットについて2点挙げます。

メリット1. セルフメディテーション税制の要件をクリアできる

第一に、健康診断を受診することでセルフメディケーション税制の要件を満たすことができます。セルフメディケーション税制とは、スイッチOTC医薬品(※)を購入したときに、その購入費用について所得控除を受けられる医療控除の特例制度です。

(※要指導医薬品及び一般用医薬品のうち、医療用から転用された医薬品)

セルフメディケーション税制を簡単に説明すると、疾病予防や健康維持に日ごろから取り組んでいる人を対象に、日常的に使う一部の医薬品を購入した分の所得控除を受けられるという内容です。その健康維持への取り組みの一環として、健康診断受診の証明が必要になります。なお、年間12,000円(税込)以上の指定医薬品の購入が控除の条件です。

普段まったく医薬品を使わない方ならメリットを感じないでしょうが、スイッチOTC医薬品の一覧を見ればわかるように、対象には軟膏や肩こり用の温湿布なども含まれます。日ごろから医薬品を購入する機会のある方は節税効果を期待できるので、ぜひ詳細を参考にしてみてください。

なおこのセルフメディケーション税制は、医療費控除と併用することはできません。また、健康診断の受診費そのものは医療費控除の対象外です。それを踏まえて、年間の医療費が医療費控除の条件を満たしている場合は、控除額の大きさをよく比較しましょう。

メリット2. 健康状況による事業停滞のリスクを軽減できる

そもそも定期健康診断を受診する最大の目的は、個人事業主の健康体を維持することにあります。会社と違って、フリーランスは自分が病に倒れたら事業を続けられません。不健康な状態で働くことは、最大の経営リスクとも言えるでしょう。

定期健康診断を受診すれば、自分の体の変化をプロの医師の目で確認してもらうことができます。オプションを加えても年数万円の出費で大病を未然に防げるならば、経営維持のコストとしてはむしろ安く感じるのではないでしょうか。

フリーランスの健康診断の費用はいくらかかる?

健康診断の費用について解説します。

あなたが会社の従業員の場合、健康診断の受診と費用負担は企業が行うことが法律で義務づけられています。したがって、企業に所属しつつ働く副業フリーランスやパラレルワーカーであれば、健康診断の自費負担は原則必要ありません。

一方、自身が個人事業主であり、フリーランスとして健康診断を受診する場合、基本的には自費負担になります。その具体的な価格帯や診断先について解説します。

健康診断の費用は数千円~1万円強(オプション費別)

健康診断の費用は、数千円~1万円程度が一般的です。ただし、これは厚生労働省が公開している「一般健康診断」の項目を受診した場合で、オプションを追加するとさらに高くなります。内視鏡検査など高額なオプションは2万円ほどかかることもあるので、事前に確認しましょう。

なお、健康診断を実施している病院のWebサイトを見ると、受診できる内容や費用が確認できることが多いので、詳しい価格はお住まいの地域の総合病院から調べてみてください。

年齢に応じてオプションを追加したほうがいい

健康診断受診の内容については、自分の年齢を基準に判断しましょう。というのも、老いればそのぶん生活習慣病やがんになるリスクは高まり、病気の早期発見の重要性が増すからです。

オプション費を考えて気乗りしない方も多いでしょうが、健康な体がなければフリーランスとして働くこと自体に支障が出ます。ミドル世代になったら、ある程度の投資は覚悟しておきましょう。

安く済ませたいなら市町村の健康診断がおすすめ

できるだけ安く健康診断を受診したい場合は、自治体や市町村が主体となる健康診断に参加するのがおすすめです。

各市町村では、定期的に最寄りの公共施設にて健康診断を開催しています。料金体系は各地域によりますが、病院より安いことがほとんどです。

ちなみに筆者が住む地域の場合は、町内会の回覧板で年1回定期検診のお知らせが回ってきます。病院と比較すると4分の1程度の破格で受診できる一方、地区センターで開催されるため設備に限界があり、オプションは追加できないとのことでした。安いぶん制限があるかもしれませんので、詳しい条件を調べてから判断するといでしょう。

会員制優待サービスを活用して、健康診断を安く受診できる

▲Workship PREMIUM Club Offの「健康」カテゴリ

フリーランスエージェントやマッチングサービスなどが提供している、会員制優待サービスを活用することで、健康診断を安く受けられることもあります。

たとえば、無料で使える会員制優待サービス『Workship PREMIUM Club Off』では、人間ドックやがん検診などを通常価格より安く予約することができます。そのほかのカウンセリングや遺伝子検査といったヘルスケアサービスも充実。

フリーランス・副業向けマッチングサービス『Workship』を通じて取引先と契約が成立したフリーランスであれば、誰でも無料で利用できます。Workshipユーザーの方はぜひチェックしてみてください。

フリーランスが健康診断を受ける方法

方法1. 国民健康保険組合から申し込む

フリーランスが健康診断を受けるには、いくつかの方法があります。少し触れたように、前職の健康保険を任意継続している、または個人事業主として従業員を雇用している場合などは、控除ありの健康診断を受けられます。

そのほか、国民健康保険組合から申し込む方法もあります。市区町村で運営されている国保とはちがい、職種ごとに区分けされたのが国民健康保険組合です。建築、食品、衣服、医療、理・美容師など、個人事業主として特定の職種に就いている方は、組合に入ることもできます。

健康診断を受けられるのはもちろん、組合によっては病気や事故などにより仕事ができない期間があった場合の保険適用もあるなど、フリーランスとして嬉しい制度です。

方法2. 市区町村の健康診断に申し込む

前述したように、少し安価に健康診断を受けられるのが、市区町村に申し込む方法です。住民票のある市区町村において案内がある場合、希望すれば診断を受けられます。市区町村によって診断内容が異なるため、事前に問い合わせましょう。

とくに女性の場合は、乳がん検査や子宮がん検査など、特定の婦人科検診について案内がある場合も。定期的に市区町村の公式サイトを確認するのをおすすめします。

市区町村の健康診断を受ける場合は、ほかにも年齢制限や受けられる診断の制限などがあります。

方法3. 病院に直接申し込む

健康診断や人間ドックなど、病院に直接申し込む方法もあります。ほかの方法と比べると費用は数万円ほどになり、割高になってしまう点に注意しましょう。

病院に直接申し込めば、国民健康保険組合に加入しておらず、かつ2〜30代の若いフリーランスでも健康診断を受けられます。費用面はデメリットといえますが、若年でも油断はできません。体が資本のフリーランスこそ、早いうちから健康寿命のために備えておくことが大事です。

フリーランスの健康診断は経費になる?

健康診断の費用の経費計上について解説します。資本となる健康体を維持するための健康診断なので、必要経費と考える方も多いようですが、実際はどうなのでしょうか。

個人事業主の健康診断費は経費にならない

結論から先に言うと、個人事業主として受けた健康診断の受診費は経費にできません。個人事業主は法律で健康診断受診を義務づけられておらず、個人的な通院費などと区別する基準が明確に引けないため、健康診断費はプライベートの支出とみなされてしまうのです。

これと同じ理由で、青色事業専従者として雇用している身内の健康診断の費用も、経費の対象外になります。

法人や事業主から義務付けられた場合のみ経費になる

ただし、自身が個人事業主であっても雇用が発生している場合は、従業員分の健康診断費は経費にできます。法人・個人事業主に関わらず、他者を雇用する立場にある場合、その他者の健康診断受診が法律で義務づけられているからです。

なお、健康診断の受診費を経費するときの勘定科目は「福利厚生費」です。

フリーランスは体が資本。健康診断はできるだけ受診しよう

フリーランスが健康診断を受診する費用は、基本全額自費負担です。経費にすることもできません。しかし、そもそも健康な体こそが資本であるフリーランスにとっては、そのコストを払ってでも疾病予防に努めることは自然なことです。くわえて健康診断を受けていれば、医療費控除の一部であるセルフメディケーション税制の要件をクリアすることもできます。

優待制度による割引や、地方自治体主催のものなど、安く健康診断を受けられる手段を探しつつ、ご自身の年齢や健康状態と照らし合わせて最適な健康診断を受診しましょう。

(執筆:宿木雪樹 編集:少年B 監修:トージンFP事務所)

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