エンジニアの副業は週1からでも可能?副業の例や探し方も解説
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フリーランスには「人づきあい」が大切だとよく言われます。仕事で知り合った相手はもちろん、古くからの友人の紹介で新たな仕事が決まることもあり、人づきあいはフリーランスの業務の一環ともいえます。
しかし、人づきあいには何かとお金がかかるもの。ランチ会を開いたり、飲み会に行ったりすれば、それなりの費用がかかります。こうした「接待」や「交際」にかかる費用は、経費にできないものなのでしょうか。
結論から言えば、フリーランスの人づきあいは、「接待交際費」という名目で経費にできる場合があります。ところが、この接待交際費については誤解されているポイントも多く、扱いに注意が必要な側面も……。
そこで今回は、多くの人が正しく扱えていない接待交際費のルールについてご紹介します。
FP事務所『トージンFP事務所』代表、ファイナンシャル・プランナー。Workship MAGAZINEのマネー担当として、フリーランスや副業にまつわる記事の執筆・監修を行う。自身も現役フリーランスで、当事者ならではの情報発信に強み。
改めて、「接待交際費」のキホンについて確認しておきましょう。
接待交際費とは、帳簿付けの際に経費を分類する際の通称で、正式には「交際費等」と呼ばれます。交際費等の内容を、国税庁は以下のように説明しています。
交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為(以下「接待等」といいます。)のために支出するものをいいます。
(引用:国税庁)
つまり、飲み会・パーティー・接待ゴルフ……のような形で、「業務上の関係者に接待のような対応」をした場合の費用ということです。
上記の接待交際費についての取り決めは法人税法や租税特別措置法といった法律に記されているもので、基本的に法人(≒企業)を対象にしたものとなります。ただ、フリーランスについてもおおむね同じように捉えて問題ありません。
なお、法人の場合は接待交際費の損金(法人税法上の費用)算入に厳しい制限がありますが、フリーランスの場合はこうした制限がなく、業務上妥当と判断されるレベルであれば全額を経費にできます。
法人の話題にも触れるとややこしくなってしまうので、以下ではフリーランスのみに焦点を当てて接待交際費について解説していきます。
「飲み会やゴルフを経費にできる」と聞くと、サイコーな制度のように感じられます。しかし、接待交際費はいくらでもズルできてしまう都合上、ほかの勘定科目に比べて決まりごとが多いのも特徴です。
まず、国税庁は「接待交際費っぽいけど接待交際費にカウントされない支出」をまとめています。内容は以下の通り。
- 従業員のために行われる運動会、演芸会、旅行などの費用
- 参加者1人当たり5000円以下の飲食などにかかった費用
- カレンダー、手帳、扇子、うちわ、手ぬぐいなどのプレゼント費用
- 会議の際に提供される、お茶や弁当などの費用
- メディアによる座談会や取材などの費用
「この費用が経費にならないの……!?」と誤解してしまいがちですが、実際は「接待交際費」という科目にならないだけで、別の科目で経費にできる可能性が高いのでご安心ください(例:会議費、福利厚生費など)
なかでも2番の「参加者1人当たり5,000円以下の飲食などにかかった費用」については、フリーランスもよく支払うはず。この場合、5,000円以上なら「接待交際費」、5,000円以下なら「会議費」として記帳するのが一般的です。
しかし、もちろん上記にあてはまらない接待費用なら全部経費にできるわけではありません。
経費算入の基準は公開されていませんが、一般的には「仕事を進めるうえで必要な出費だったか」が判断基準になるとされます。もっと具体的に言うと、以下の条件にあてはまる支出であれば接待交際費といえるでしょう。
- 客観的に見て「仕事に必要な出費」と説明できる根拠があること
- 取引先や仕入先など、事業に関係ある人のために使われた費用であること
- 金額や回数が売上、事業規模に対して常識的であること
上記を見て「なんか基準があいまいじゃね……?」と感じた方も多いかもしれません。そう、接待交際費を理解するうえで最大の難関は「基準があいまいなこと」にあります。
つまり、私たちは自分の事業と支出の関連性をしっかり理解し、客観的に見てこの支出がどのように思われるか、税務署の気持ちを想像しながら判断する必要があるのです。
ここまで、接待交際費の複雑なルールを解説してきました。
そしてこう考えた方もいるはずです。「結局、どこからどこまでが接待交際費として経費になるの……?」と。
結論としては、後述するように最終的な判断を下すのは税務署になるので、私たちがハッキリした結論を出すことはできません。ただ、さまざまな判例や税理士の見解などにより、「おおまかな正解」は導き出すことができます。
そこで、今回は以下のフリーランスのAさんが支出した費用が、実際に接待交際費として経費にできるかを、具体例とともに考えていきましょう。なお、Aさんは支出の証拠(レシートや参加人数など)を記録し、年間の経費総額も事業規模的に妥当だったとします。
【Aさんのプロフィール】
- 職種:ITエンジニア
- 売上:500万円
- その他:スキルを活かし、IT系ブロガーとしても活動中
まず、クライアントが主催した忘年会に参加した場合の費用はどうでしょうか。
クライアントが関連しているため問題なく接待交際費にできそうなものの、Aさんにしてみれば長い付き合いのクライアントの面々は友人同然。アルコールも入り、あまり仕事の話をしない会だったとしたら、接待交際費になるか不安を感じてもおかしくありません。
この場合も、筆者の感覚では接待交際費になると考えます。上記の3条件に照らして考えてみましょう。
- 客観的に見て「仕事に必要な出費」と説明できる根拠があること
→クライアントとの関係をより円滑にすることは、事業を運営するために必要と判断できる- 取引先や仕入先など、事業に関係ある人のために使われた費用であること
→友人同然とはいえ、れっきとしたクライアント- 金額や回数が売上、事業規模に対して常識的であること
→忘年会で5500円は十分妥当なライン
このように、客観的に見てもクライアントと円滑な関係を築き、継続するための忘年会と判断可能です。接待交際費にカウントされる可能性が高いでしょう。
次は、同じ飲食代でも少し毛色が違う場合のケースを考えてみます。こちらは一見仕事に関係なさそうに思えるものの、一応仕事をしています。
しかし、これは基本的に接待交際費にならないと考えます。先ほどと同じく、3条件から考えてみます。
- 客観的に見て「仕事に必要な出費」と説明できる根拠があること
→単に5分仕事をしただけでは、飲食代が「仕事に必要な出費」だったとはいえない- 取引先や仕入先など、事業に関係ある人のために使われた費用であること
→家族はクライアントではない- 金額や回数が売上、事業規模に対して常識的であること
→金額は常識的
今回は取引先との接待にもあたらず、仕事をした時間も短すぎるため、接待交際費以前に経費にできないプライベートな支出と判断できます。
なお、同じ5分だけ仕事をした場合でも、たとえば出先で緊急対応のためにカフェやコワーキングスペースに飛び込んで作業をした場合の費用は「雑費」などの科目で経費にできる可能性が高いです。
ただの友人と行ったゴルフは、普通ならまず経費にはなりません。しかし、Aさんが運営し、収益化しているIT系ブログに当日の様子を掲載したらどうなるでしょうか。
結論としては、この場合も接待交際費にはならないと思われます。
- 客観的に見て「仕事に必要な出費」と説明できる根拠があること
→IT系ブログにゴルフ記事を投稿する関連性が薄く、無理がある- 取引先や仕入先など、事業に関係ある人のために使われた費用であること
→相手はただの友人- 金額や回数が売上、事業規模に対して常識的であること
→金額は常識的
ただし、ゴルフ代がすべて接待交際費にならないとは限りません。日本には「接待ゴルフ」という言葉があるほど、ゴルフは営業のツールとして知られています。
たとえばAさんが、システム開発に関する商談を進めている企業の社長と一緒にゴルフを行った場合は、接待交際費として認められる可能性があると考えてもいいでしょう。
キャバクラ代は、いかにも経費にならなさそうに思えます。しかし、たとえば打ち合わせ後にクライアントの社長から「お前もキャバクラ行くよな!?」と半ば強引に誘われた場合はどうでしょうか。
この場合はかなり微妙ですが、業務との関連性から接待交際費になる可能性も十分にあると考えられます。具体的な条件から見ていきましょう。
- 客観的に見て「仕事に必要な出費」と説明できる根拠があること
→クライアントの社長の誘いを断れば、業務に支障が出る可能性がある- 取引先や仕入先など、事業に関係ある人のために使われた費用であること
→相手はクライアント- 金額や回数が売上、事業規模に対して常識的であること
→一見高額だが、キャバクラとしては常識的な金額
ただ、キャバクラ代を接待交際費として申告すれば、金額が高額になりやすいので、税務署から「これは本当にプライベートな支出じゃないですよね?」とツッコまれる確率は上がります。税務署を納得させられるだけの証拠はそろえておきましょう。
普通の飲食代だからといって接待交際費になるとは限らず、キャバクラ代であっても接待交際費になるときはなります。接待交際費は「何に支出したか」ではなく「なぜ支出したか」が非常に重要なのです。
ここまでの内容と重なる部分もありますが、改めて「接待交際費計上のポイント/注意点」を解説します。
何度も繰り返しているように、接待交際費か否かを判断するのは私たちではなく税務署です。そのため、仮にフリーランスの99%が「接待交際費だ!」と思う支出でも、税務職が「No」と言えば経費としては認められません。
つまり、接待交際費計上のカギになるのは「どうやって税務職員に納得してもらうか」です。逆に言えば、私たち的には接待交際費とはいえないプライベートな支出でも、税務職員が接待交際費だと判断するものなら、基本は問題ありません。
なお、税務署の決定に不服を申し立てることは可能で、場合によっては「税務訴訟」という裁判で決着がつくこともあります。当然、裁判所の判断で税務署が敗訴するケースもありますが、フリーランスの場合は課税額に対して訴訟費用や手間が割に合わないことも多いのが現状です。
税務系の記事だと、よく「飲み会代は接待交際費になる!」みたいな書かれ方をするケースがあります。しかし、ここまで見てきたように接待交際費の基準はそれほど単純ではなく、全く同じ出費でも納税者の職種や場面によって判断は分かれます。
たとえば、先ほどのゴルフの例でいえば、「ITフリーランス」が「友人とゴルフ」をしただけだったので、ゴルフ代はプライベートな支出だと判断しました。
しかし、上記の例でも、ITフリーランスが「プロゴルファー」だったり、友人とのゴルフではなく「取引先とのゴルフ」だったりすれば、また判断は変わってくるでしょう。
つまり、接待交際費の判断は非常に難しく、フリーランスにかかわる総合的な要素から判断されることになります。
接待交際費の判断は、非常に難しいことがご理解いただけたでしょう。「正解なんて分かる気がしないよ!」と思われるのもごもっとも。かんたんな解決策はないのでしょうか。
じつは、少しでも「微妙だな……」と思った支出は、そもそも接待交際費として計上せず、プライベートな支出として処理してしまうのが一番かんたんな対処法です。
分かりやすく言えば、接待交際費は「業務上必要な費用だろうし、これくらいは経費にしてあげてもいいよ!」という税務署のやさしさで成り立っているもの。接待交際費に計上しすぎて怒られることはあっても、接待交際費を計上しないで怒られることはありません。
つまり、極端に言えば接待交際費を1円も計上しなければ頭を悩ませる必要はないのです。税収増につながるので、税務署も喜んでくれるでしょう。
1円も接待交際費を計上しない手法も紹介しましたが、税金の負担が大きくなってしまうのは事実で、可能ならば微妙な支出も接待交際費として計上したいですよね。
そんな場合、おすすめなのが「家事按分」という手法です。家事按分とは、支出を「プライベートな支出」と「事業関連の支出」に分け、事業関連の部分のみを経費とする手法。
たとえば、「仕事の話もしたけど、100%仕事とは言い切れない飲み会」への参加費が12000円だったとしたら、そのうち6000円をプライベートな支出、6000円を接待交際費として計上すれば、プライベートと事業が混在しても大丈夫です。
フリーランスの場合、プライベートと事業の境界があいまいになることも多く、家事按分は非常に有効な選択肢といえます。家事按分を適切に行っていれば、万が一税務調査の対象となっても、しっかりと言い訳ができるでしょう。
さんざん脅すようなことを言った後で恐縮ですが、「これは接待交際費だ!」という確信があれば、自信をもって計上してしまってOKです。もちろん否定される可能性もありますが、自分に確信があれば指摘された際もスラスラと反論でき、認められる確率も上がります。明らかに接待交際費と思える支出があれば、損をしないために計上しておきましょう。
極端な例ですが、仕事がなく苦しむフリーランスが、たまたま発注者と飲み会に行く機会があったとします。発注者はパワハラ気質で無茶ぶりも多く、飲み会で腹踊りまでさせられたものの、案件獲得のために必死に耐えた。……こんな場面で支出した飲食代は、金銭的にも気持ち的にも接待交際費にしたいですよね。
上記は立派な営業行為なので、この支出が5000円以上なら接待交際費に計上して差し支えないと思います。ただし、これほど苦しんだ飲み会でも、数年後には参加者や開催場所などの詳細を忘れてしまうかもしれません。
税務署に疑われた際のことを踏まえ、レシートや領収書を保存するのはもちろん、追加で
接待交際費を支出したのかをメモしておきましょう。こうすれば、税務署に疑われた際もしっかり反論できますし、内容を忘れることもありません。紙のレシートに書き足してもいいですし、会計ソフトのメモ欄などに記入しても構いません。
フリーランスにとって、接待や交際は営業活動や情報交換に欠かせません。しかし接待交際費の計上は線引きが難しく、素人が適切に節税することは困難です。
「しっかり節税したいけど、接待交際費を正確に仕分けられる自信がない……」と思う方は、迷わず税理士を頼ることをおすすめします。税理士は税務のプロなので、接待交際費の線引きについても素人よりはるかに高度な知識を持っているからです。
税理士のなかには税務署を取り仕切る国税庁のOBも多く、私たちには知りようがない「税務調査官の考え」を活かして節税対策をしてくれるでしょう。
接待交際費の計上で思い悩むのはもったいないので、そのぶんを投資して事業に専念するのもおすすめですよ。
(執筆&編集:Workship MAGAZINE編集部 監修:トージンFP事務所)
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