フリーランスのポテンシャルを殺す3つの地雷マネジメント【社労士解説】

フリーランスのポテンシャルを殺す3つの地雷マネジメント【社労士解説】

エンジニアやデザイナーといったプロフェッショナル人材の採用が難しいなか、優秀人材をフリーランスとして活用する企業が増えています。

社員メンバーだけでは成し得なかったチャレンジができる機会である一方、現場のマネージャーやリーダーからは、「プロ人材をマネジメントする自信がない」「能力が高い人を迎えてはみたものの、なんだか働くのが楽しくなさそう」といった悩みをよく聞きます。

フリーランスは単なるビジネスパーソンではなく、「自律した経営者や事業主」としての側面を持っています。そのため、彼らを「管理」する対象と捉えるとやる気を削いでしまうことも。

成果を最大化するには、現場マネージャーやリーダーが、「プロとして最適な成果を出してもらえるよう、環境を整備する」という視点へ転換することが不可欠なのです。

本記事では、優秀なフリーランスのモチベーションとパフォーマンスを最大限に引き出すために、マネージャーやリーダーが避けるべき「地雷」をご紹介。日々多くの経営者や労働者と関わる社労士(社会保険労務士)の立場から、具体的なマネジメントのコツも解説します。

もひもひ
もひもひ

開業社会保険労務士(東京都社会保険労務士会所属)、特にIT/Web業界を中心に支援している。趣味は同人活動で、評論同人サークル「さかさまダイアリー」より同人誌「村上春樹っぽい文章の書き方」シリーズなど発行。(X:@mo_himo

超優秀なプロの「やる気」を削ぐマネジメント地雷3選

社員メンバーのマネジメントでは当たり前の「報連相」や「数字でのモニタリング」。しかしプロフェッショナル人材にとっては、大きくモチベーションを削ぐ「地雷」となり得ます。詳しく見ていきましょう。

地雷1. プロセスへの過度な介入や、やり方の押しつけ

1つ目の「地雷」は、フリーランスが、自らが得意な手法で迅速に結果を出したにもかかわらず、現場マネージャーが「このやり方は、うちの部署では推奨していません」「既存メンバーのやり方に合わせ、マニュアルに沿って修正してください」と、細かな手順まで改善指示を出し続けてしまうケース。

そもそも、ルールがあるなら明文化し、事前共有しておくべきです。そして、フリーランスは些細なプロセスまで口を挟まれると「私の専門性が求められていないのだろうか」と感じ、意欲を失うことがあります。

フリーランスに提供してもらうのは、「労働力」ではなく「最適な解決策」である。よりよい結果が得られるなら、プロセスの違いは受け入れる——そんな姿勢の持ち方を意識すれば、お互いに気持ちよく働けるでしょう。

地雷2. すべての承認を求める文化

2つ目の「地雷」は、「コンプライアンス強化」の下、ありとあらゆるタスクの実行にマネージャーやリーダーの承認を求めてしまうケース。

新たに使用するツールや成果物の軽微な変更まで、すべて現場マネージャーやリーダーの承認が必要。しかもマネージャーやリーダーは会議で離席中のことが多く、チャットへのレスが遅い。その結果、「承認待ち」ステータスのまま半日以上業務が滞る……このような環境は、フリーランスのやる気を大きく損ないます。

フリーランスは、「スピード感」「柔軟な裁量」を人一倍大切にすることが多いもの。それが外的要因によって失速させられると、「ここでは私の強みが活かせない」と見切りをつけられかねません。

地雷3. 得意分野外でのチームワークの強要

3つ目の「地雷」は、専門性の高い業務での活躍を期待して採用したにもかかわらず、社員メンバーの育成や組織貢献活動など、「人との関わり」を重視した成果まで依頼してしまうケース。

「チームビルディングの一環として、積極的に貢献してほしい」
「若手メンバーを育成し、戦力化してくれれば、ゆくゆくはお互いのためになる。まずは週に一度だけ、コードレビューもお願いできないか」

……このように、現場マネージャーやリーダーが「チームワーク」の名目で専門外の業務を任せてしまうことは珍しくありません。

仮に報酬を増やしたとしても、フリーランス側が「専門領域に特化してスキルや経験を積みたい(それによって将来的な報酬レンジを上げたい)」と考えていた場合、人材育成は「貴重な時間の浪費」と捉えられる可能性があります。

社員の育成やチームビルディングは企業の責任。現場マネージャーやリーダーは、プロフェッショナルの「時間対効果」を彼ら自身以上に意識する必要があるのです。

優秀なフリーランスを活かすリーダーの3つのコツ

優秀なフリーランスのパフォーマンスを最大限に引き出すには、マネージャーやマネージャーが「管理職」から「プロデューサー」へと立ち位置を転換し、フリーランスにとって理想的な環境を積極的に整えることが重要です。

コツ1. マネジメント対象を「人」から「目標(ゴール)」に切り替える

部下をマネジメントする場合、彼らのスキル開発や労働時間もマネジメント対象になります。一方でフリーランスをマネジメントする場合、管理の対象は「人」ではなく「目標(ゴール)」に焦点を絞るべきです。

プロセスや労働時間ではなく、「最終的な成果物の定義」と「期限や進捗」に意識を集中。それ以外のやり方は極力、プロであるフリーランスに委ねるべきです。

マネージャーやリーダーの役割は、フリーランスに指示を出すことではなく、「彼らが目標を達成する際のハードル(承認や社内手続きなど)を、代わりに排除する調整役」だと意識しましょう。

コツ2. フィードバックは「成果」に対して行う

部下へのフィードバックの目的は、中長期的な目線で彼らを育成すること。そのため、社内ルールや人間的なふるまいに関する指摘が入ってくることもあるでしょう。一方、プロフェッショナルであるフリーランスへのフィードバックは「成果」をベースに語るべきです。

フィードバックの際は、「こういうやり方の方が望ましかった」などの具体的なプロセスから入るのではなく、「このアウトプットはこうした点が優れていると思います」など、あくまで成果にフォーカスして伝えるようにしましょう。

また、裁量を委ねすぎて失敗したとしても、「今後も仕事を任せたい」あまりに、細かく指摘しすぎるのは悪手。「相手はプロなのだから皆まで言わず、自分で内省してもらおう」といったスタンスで臨んだ方が、結果として良い関係性になることが多いです。

コツ3. 「非同期コミュニケーション」を戦略的に活用する

フリーランスにとって最も価値のある資産は、「集中して業務に取り組む時間」です。したがって、フリーランスの稼働を最大化するには、「集中時間」を確保するためのコミュニケーション戦略が重要になります。

スケジュール調整が生じるような定例会議や定期報告は極力減らし、進捗報告はドキュメントベースの非同期形式(SlackやNotionなど)を基本としましょう。報告を求める場合も、「17時に報告してください」ではなく「16〜18時頃に一度報告してください」など幅を持たせ、急を要さない限りは最大限、プロの集中時間を奪わないようにするのがおすすめです。

また、「急ぎでない質問」はなるべくまとめて送り、作業を阻害しないよう配慮します。マネージャーやリーダー側が「一問一答のクイックレスポンス」を行わないように徹底することが、フリーランスの効率を最大化します。

まとめ:プロの力を借りることは「マネジメントを手放す」こと

優秀なフリーランスは、自身の専門領域においては多くの場合、現場マネージャーやリーダーよりも専門性が高いものです。

彼らを「会社の都合」や「社員メンバーと同じルール」で管理するのは考えもの。「信頼と敬意を持って目標(ゴール)を示し、あとは信じて任せる」という「手放すマネジメント」こそが、高いパフォーマンスを引き出すための鍵になります。

(執筆:もひもひ、編集:夏野かおる)

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