“貧乏フリーランス”に陥るのはどうして?なぜあなたは儲からないのか
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「自由な働き方で稼げると思ってフリーランスになったはずが、働けど働けど暮らしが楽にならない。なんでこんなことに……」とモヤモヤしている、そこのあなた。あなたに足りないのは、もしかしたら「数字」を読むスキルかもしれません。
入ってくるお金と出ていくお金、すべてを数字で可視化してみたら、衝撃の事実がわかりました。月20万、30万売り上げても、貧乏フリーランスからは抜け出せません……!
それがわかるのも、数字があるからこそ。数字は嘘をつきません。逆に、数字がわかれば儲かる体質になるのも夢じゃない!?そこで、今回はコンサル出身の会計の先生、矢部謙介先生に、儲けを出すために必要な「数字」の考え方を訊きました。
中京大学国際学部・同大学大学院人文社会科学研究科教授・同大学執行役員学長補佐。専門は経営分析・経営財務。コンサルティングファーム等での経営コンサルティング活動に従事したのち現職。マックスバリュ東海株式会社社外取締役なども務める。著書に『決算書の比較図鑑』、『武器としての会計思考力』『決算書×ビジネスモデル大全』など。(X:@ybknsk)
こたつとお布団、コーヒーをこよなく愛するフリーライター。法学部出身のはずが、なぜか卒論のテーマは村上春樹であった。やれやれ。(X:@ponapona_levi)
目次
ぽな:
今日はコンサル出身、経営分析のプロである矢部先生に是非聞きたいことがありまして。わたし、ズバリ、めっちゃ儲かるフリーランスになりたいんです!
矢部:
直球ですね(笑)。
ぽな:
売上はあるはずなんですけど、正直あんまり儲かってない気がするんですよね……全然お金も貯まらないし、大きな出費があると貯金に手をつけちゃうこともあります。
矢部:
なるほど…ちょっと現状を確認してみましょうか。去年の売上や経費がわかる資料はありますか?
ぽな:
ええと、確定申告の資料があるので、そこから数字を出してみます。
【モデルケース】※数字はフィクションです。
(売上・費用)
・年間売上 300万円
・経費 1ヶ月あたり5万×12=60万円
・利益 240万円(資産)
・預貯金100万円
ぽな:
へへへ、「年間売上300万円」はフリーランスとしては結構稼いでいる方だと思います! 経費を引いても240万円が残ってます。そこから税金が引かれちゃうけど…。
矢部:
なるほど、利益が240万円ということですね。それで、生活費はその中から出すわけですよね?
ぽな:
そうですね。
矢部:
じゃあ、この分がフリーランスにとっての給料にあたる部分といえそうですね。だいたい、いくらくらいでしょうか。
ぽな:
そうですね。20万円くらいかな。家賃が7万円、食費が4万円、通信費や雑費が2万円、光熱費が2万円、あとは交際費などの諸々が5万円という感じでしょうか……。
(売上・費用)
・年間売上 300万円
・経費 1ヶ月あたり5万×12=60万円・利益 240万円
・生活費 1ヶ月あたり20万円×12=240万円
=差し引きゼロ!(資産)
・預貯金100万円
ぽな:
生活費を引いたら利益がゼロになっちゃった!というより、税金や年金を払ったら赤字ですね……。ちゃんと稼げていると思っていたのに……。
矢部:
結構稼げているな、と思っていても、数字で見てみるとそうでもなかったということがわかった感じでしょうか。
ぽな:
そうです。儲かるどころか、赤字です。会社だったら倒産まっしぐら…だから、毎年貯金が減っていたんですね。うわーん。
矢部:
数字を見るとはっきりとわかりますね。
ぽな:
よくわかりました。わかりましたが、わかりすぎて、正直ショックです……。先生、これから、わたし、どうすればいいんでしょうか?
矢部:
大丈夫です。それも数字が教えてくれますよ。
数字をちゃんと見るメリットは、今の状態を適切に把握できること。さらに、その後の対策——具体的には、入ってくるお金を増やす方法や、利益を確実に残す方法を具体的に考えられることです。
儲かるフリーランスになるためには、こうした「数字を味方にする」会計思考力が重要なんですよ。
ぽな:
数字を見て、初めて自分の現状がめちゃくちゃヤバいのがわかりました。でも、会計ですか。会計って、会社の決算書、P/L(?)とかB/S(???)とか読むアレですよね。なんか難しそうだな。
【いわゆる『決算書』と呼ばれる計算書類】
賃借対照表(B/S)…会社の資産、負債や純資産をまとめたもの。会社の財政状態がわかる。
損益計算書(P/L)…売上高や費用を記録し利益を計算するもの。いわば会社の「通信簿」。
キャッシュ・フロー計算書…会社の現金の流れを見るもの。キャッシュ=手持ちの現金。これ足りないと支払うべきものが払えず、倒産のおそれも。
ぽな:
確定申告のときに会計ソフトで売上や経費の計算はしてるけど、会計ってそれとは別物ですよね?
矢部:
いや、それも会計の一種ですよ。
ぽな:
え、そうなの!?
矢部:
実は、会計にはいくつか種類があって、社外に経営状況などを報告するための会計(財務会計)と、税金の計算に使う会計(税務会計)とでは、厳密には計算ルールが違います。
でも、フリーランスの場合は企業の場合と違って、そんなに難しく考えなくても大丈夫。例えば、確定申告で損益計算書って作りますよね?
ぽな:
作りますね。ん、損益計算書って……あ、そうか、P/L…損益計算書だ!
ぽな:
そういえば、賃借対照表も作っていました…。
矢部:
そう! 会計思考力を活かすために必要な資料はすでにみなさんの手元にそろっているんですよ。
フリーランスの方は、借り入れや仕入れがないケースがほとんどだと思うし、預貯金以外の資産のことも考えなくていいと思います。だから、企業のケースよりシンプルに考えてしまって大丈夫。税金の申告でやっている作業、イコール会計だとざっくり考えてみてください。
ぽな:
おおお、確定申告の延長が会計ってことか。なんか理解できそうな気がしてきたぞ。
矢部:
細かいことは置いておいて、まずは大枠の考え方を理解しましょう!
ぽな:
わかりました!とりあえず確定申告で作った損益計算書や帳簿を持ってきます!!
▼こちらもおすすめ!
フリーランスが読むべきはじめての確定申告ガイド【FP監修】
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矢部:
まず、前提の話から。儲け、すなわち利益を出すための仕組みを理解しましょう。本当は所得に対して税金がかかってきますが、控除などもあってややこしいので、ここではシンプルに考えてみましょうか。
【利益の計算方法】
・利益=売上-経費
矢部:
フリーランスの場合は、この利益から自分の生活費を出すことになりますね。したがって、本当の「利益」を計算するには、こうなります。
【本当の利益を計算するための方法】
・最終的な利益=売上-経費-自分の生活費
ぽな:
ええっと、この数字がプラスになればいいってことですか?
矢部:
そうです! それから、絶対に発生する支出である税金や社会保障費分のお金も確保しておきましょう。そうすると、最終的に手元に残るお金はどうなりますか。
ぽな:
ええっと、じゃあ、こんな感じでしょうか。
【最終的に手元に残るお金はいくら?】
・最終的に手元に残るお金=売上—経費—自分の生活費—税金等
ぽな:
あああ、わかったかも! この「手元に残るお金」がプラスになっているというのが、儲かっているということなんですね!
矢部:
そう、企業でいうと事業できちんと利益が出せている状態ですね。ここまでわかると、利益を出すために必要な年間売上……目標売上高がわかります。
ぽな:
なるほど……税金や健康保険の計算は難しいけど、わたしの場合だとどうなるかなあ。
【目標売上(400万円)の場合(※税額・健保の金額は概算)】
売上400万円
—経費(60万円)
—生活費(240万円)
—所得税・住民税・健保・年金(約81万円)
=約10万円※計算はこちらのツールを使いました。
ぽな:
うーん、ギリギリ…かなあ。消費税を払うと赤字ですね。
【目標売上(500万円)の場合(税額・健保の金額は概算)】
売上500万円
—経費(60万円)
—生活費(240万円)
—所得税・住民税・健保・年金(約109万円)
=約91万円
ぽな:
これなら、インボイス登録して消費税を納めても50万円くらい残りそうです。わたしの場合だと、500万円売上があると、税金や年金を引いても利益が出るってことですね。
矢部:
そうですね。では、試しに500万円を目標売上高に設定してみましょうか。
目標売上高を出す主なメリットは2つ。ひとつは「損をしない」ために必要な売上がわかること。ちょうど今、ぽなさんが実践したように、「私が利益を出すにはいくら売り上げればいいの?」をきちんと計算できるわけです。
そしてもうひとつは、「いくらで売るべきか」がわかることです。つまり、適切な単価設定ができるということですね。ちなみに、単価設定の具体的なやり方ついては次回取り上げます。
ぽな:
なるほど……手元に最終的に残る利益というゴールから逆算して目指す売上高や単価を考えるんですね。って、あれれ、経費はどうなるんですか? 売上が増えると経費もドカンと増えるんじゃないの?
ぽな:
目標売上高は500万でいいとして、経費って60万円のまま計算していいんですか。売上が増えると経費も増えるんじゃないかなあ。
矢部:
それも大事なポイントですね。経費の金額を考えるうえでは、固定費と変動費の考え方を理解することが重要です。フリーランスの方の経費にはどんなものがありますか?
ぽな:
ネット代とか、ソフト代とかかな。家賃の一部を経費にしているケースもあると思います。
【経費の例】
・通信費(ネット回線代、スマホの通信費)
・資料代
・ツールやSaaS、ソフト代などの費用
・家賃の一部
・交通費
・交際費
矢部:
今上げてもらったうち、通信費やソフト代、家賃なんかは売上の大小にかかわらず一定ですよね。こうした毎月の支出額が変わらないタイプの経費を「固定費」といいます。一方、「変動費」は月によって金額が変わる経費です。
【経費の種類】
固定費…毎月一定額が出ていく経費。・通信費(ネット回線代、スマホの通信費)
・ツールやSaaS、ソフト代などの費用
・家賃の一部変動費…売上高に連動して発生する経費。出ていく金額が月によって変動する。
・資料代
・交通費
・交際費
矢部:
さて、変動費にはどんなものがあるでしょうか?
ぽな:
交通費とか交際費、資料代かな。このあたりは売上が伸びると増えそうな気がします。
矢部:
増えるとしたら、どれくらいの金額になりますか?
ぽな:
月によって違うけど、せいぜい増えても1月あたり2万がいいところじゃないですかね。年額にすると20万円くらいかな。
矢部:
そんなものですよね。フリーランスといっても、ぽなさんのような職種(ライター)の場合、変動費はそこまで増えないことが多いんです。
ですから、売上が増えると、手元に残るお金がどんどん増えます。その分、税金は高くなると思いますが……。
目標売上高500万円を達成するのに必要な経費
=これまでかかっていた経費(60万円)+変動費増加分(〜20万円)→売上は+200万円だが、経費は+〜20万円程度
→利益(手元に残るお金)が増える!!
=儲かる!!
▼固定費と変動費についてはこちらの記事でも解説しています
固定費は、下げて下げて下げましょう!極貧を経験して変わった「お金の意識」
Workship MAGAZINE
ぽな:
よし、この状態が続けば現預金がどんどん増えていくはず!
矢部:
そういうことになりますね。企業でいうと、本業がうまくいって利益が出て、純資産も増加している状態です。
無駄遣いはせずに、どんどん売上を増やす。ぽなさんのような職種の場合、売上が増えても経費はそこまで増えないから、売上が上がれば上がるほど利益が増えて儲かるし、手持ちのキャッシュもどんどん増えることになります。
ちなみに、手持ちのキャッシュがたくさんあると、万が一売上が減ったときの保険になるし、設備投資もできるようになりますよ。
ぽな:
設備投資……。いいカメラやパソコンを買う、とかでしょうか。
矢部:
それだけじゃありません。フリーランスの場合は「自分に投資する」こともビジネスへの投資。「単価は割安だけど、将来につながりそうな案件」を受けるとかね。
ぽな:
なるほど!あとはスキルアップもですよね。そうしたら、もっと儲かるかも…!
利益を出す
→一部は預貯金としてストック、一部は投資に
→安心感アップ&ビジネスが成長してもっと儲かる
→フリーランスとして儲けながら、末長く活躍できる!
ぽな:
ああ、なんかわかってきたかも…! こうして、プラスのサイクルを回すのが安定的に稼ぐポイントなんですね。
ぽな:
お話を聞いて、なんで働いていても儲からないかがわかりました……。これまで「とにかくなんでも経費にして節税しよう」「今月は頑張ったから高い買い物しちゃおう」とか、そういうことしか考えてこなかったアホな自分を殴ってやりたい……!
500万円稼いでも、手元には数十万しか残らないのに、ここで下手に経費を増やしたり、プチ贅沢したりしたら儲けが減っちゃうじゃん。
矢部:
こうやって数字にすると、いろんなことが見えてきます。今回は、ぽなさんが目標売上を500万円にすると赤字を出さずに済むことがわかりました。
ぽな:
ええっと、目標売上高を出すメリットその1(目標売上高が分かる)ですね。
矢部:
そうです。そして、目標売上高を決めると、そこから逆算して、値付けができるようになります。つまり、今度は目標売上高を達成するために、何をいくらで売ればいいのかわかるということですね。これが目標売上高を出すメリットその2です!
ぽな:
おおお、めちゃくちゃ視界がクリアになりました!会計思考力、すごいな。
矢部:
数字で「見える化」することが重要ですね。というわけで次回は、損しないための値付けの話をしましょう。
筆者自身数字や会計には苦手意識がありましたが、今回のお話を伺って、ちょっとそんな甘えたことは言っていられないことがわかりました。数字がわからないって、はっきり言ってヤバすぎる……!
厳しい現実を突きつけられて、フリーランスとしての生き方についても再考を迫られそうです。
ところで、矢部先生もおっしゃる通り、儲けが出せるだけの売上高を確保するためには、適正な値付けが不可欠です。貧乏ヒマなしは困りますからね……。そこで、次回の連載では損しない、儲けをしっかり出すためのロジカルな値付けのやり方をテーマに、矢部先生にお話を伺います。値付けで困っているフリーランスの方は必見です……!
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最後に、より多く稼ぎたいフリーランスのために『Workship』をご紹介します。Workshipは、フリーランス・副業向けの案件検索プラットフォームです。
公開案件の80%以上がリモートOKと働く場所を選ばず、エンジニア、デザイナー、マーケター、PM/ディレクター、編集者、ライター、セールス、人事広報など、Web系のさまざまな職種の案件が紹介されています。
さらに、トラブル相談窓口や会員制優待サービスの無料付帯など、安心して働ける仕組みがあるのも嬉しいポイント。時給1,500円〜10,000円の高単価な案件のみ掲載しているため、手厚いサポートを受けながら、良質な案件を受けたい方におすすめです。
(執筆:ぽな 編集:夏野かおる)
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