固定費は、下げて下げて下げましょう!極貧を経験して変わった「お金の意識」

固定費は下げて下げて下げましょう

こんにちは、夏野かおるです。今年の7月にフリーライターから法人成りをしたばかりの新米経営者です。

みなさんは「困窮した経験」がありますか。私にはあります。全財産が数百円になり、もはや泣く気力もなく、ぼんやりしていた時期が。

この体験が強烈すぎて、いまでも私は困窮を強く恐れており、狂ったように家計簿アプリを確認してしまいます。サブスクを解約し忘れていないか、おかしな請求はないかと、両目をかっ開いて確認してしまうのです。ときどき、「不正利用か!」と血相を変えるものの、結局、自分の飲み代だと分かって脱力したり。愚かな生き物ですね。

この記事は、そんな極貧マインドの染み付いた人間だからこそ言えるアドバイスです。それは、「個人事業主/法人問わず、固定費はなるべく下げましょう」ということ。具体的に説明していきましょう。

夏野かおる
夏野かおる

フリーランスの編集者・ライター。コンテンツマーケティングやディレクション、マネジメントに仕事の幅を広げ、2021年7月に1人会社を設立。高等学校教諭一種免許状(国語)保有。京都大学大学院博士課程指導認定退学(博士論文準備中)。趣味はゲーム。(Twitter:@Natsuno_Kaoru

事業経費は「変動費」と「固定費」に分けられる

個人事業主や会社の経費は、「変動費」と「固定費」に分けられます。

分かりやすく、たこ焼き屋さんを例に説明しましょう。

「変動費」とは、売り上げの増減に比例する費用です。たこ焼き屋さんなら、こんな感じでしょうか。

【たこ焼き屋さんの変動費(仮)】

  • 小麦粉/たこ/青のりなどの材料
  • プラスチックトレーなどの消耗品
  • 上記を仕入れるための送料
  • 忙しい日だけ入ってもらう、アルバイトさんのお給料
  • (宅配も行っている場合)1個売れるごとにかかる、仲介サイトへの手数料

これらの費用は、繁忙期には増加し、ヒマな時期には減少します。忙しさに応じて変動するから「変動費」と呼ばれるのですね。

対する「固定費」は、繁忙期だろうが閑散期だろうが、一定の金額で発生する費用です。具体的にはこんな感じです。

【たこ焼き屋さんの固定費(仮)】

  • 店長自身のお給料
  • お店の家賃
  • 水道・光熱費
  • 保険料
  • (月額制の場合)クチコミサイトの掲載手数料

※「いや、たこ焼き屋さんはもっとこういうお金がかかって……」などのツッコミがあるかもしれませんが、たとえ話ということで、大目に見てください。

これをグラフに起こすと、こんな見た目になります。

変動費と固定費

ではこのグラフに、「1個売れたら○円儲かる」のグラフを重ねてみましょう。すると、2つの線が交わるポイントがありますね。

変動費と固定費と損益分岐点

これこそが「損益分岐点」です。要は、売り上げと経費がトントンになるポイントで、「安定して経営するためには、○個以上売り上げなければいけない」という目安になります。

ここで考えて欲しいのが、固定費の存在です。

下の画像の左右を見比べてみてください。左は、固定費を抑えたビジネスです。右は、まあちょっと見栄を張っちゃって、イケてるオフィスなんか借りちゃって、固定費がかさんでいる状態です。

固定費の多いビジネス、固定費の少ないビジネス

どうでしょう、損益分岐点の位置が全然違うことがお分かりいただけるでしょうか。固定費がかさむと、ものすごく頑張らないと黒字化できないんです。これこそが「固定費は下げましょう」の理由です。

利益の出しやすさは業界によって異なる

もう一つ、頭に入れておきたい知識をご紹介します。それは、利益の残りやすさは、業界によって大きく異なることです。

以下に示すのは、国が個人企業を対象に行なっている「個人企業経済調査」という統計調査です。

概要によると、年間売上高がもっとも大きかったのは「卸売業,小売業」(2525万5000円)で、次点が「建設業」(1508万2000円)だとか。

▲年間売上高がもっとも大きかったのは「卸売業,小売業」、次点は「建設業」(引用:2020年(令和2年)個人企業経済調査 結果の概要

こう聞くと、「へえ、卸とか小売って儲かるんだ」「建設業がアツいのか」と思いがちですが、落ち着いて続きを読んでみると……

なお、1企業あたりの年間営業利益率(売上高に対する営業利益の割合)をみると,(中略)「卸売業,小売業」は7.4%と最も低くなっている。

と書かれています。あれれ?ですよね。

これはどういうことかというと、卸や小売は、売り上げが上がれば上がるほど、経費もたくさんかかってしまうため、実はあまり儲からないのです。

再び統計に戻ると、「卸売業,小売業」の売上は2525万5000円ですが、利益は186万7000円となっており、実に2300万円ほどが諸経費に消えている計算になります。

▲「売業,小売業」は利益率が低く、「その他のサービス業」のうち「不動産業,物品賃貸業」は利益率が高い(引用:2020年(令和2年)個人企業経済調査 結果の概要

一方で、利益率が高いのは「その他のサービス業」。とくに、「うち不動産業,物品賃貸業」は利益率34.1%と、卸や小売の5倍近くとなっています。不動産仲介は、店舗がそこまで広くなくて構いませんし、スタッフも1〜2名で回せるので、利益が出やすいのでしょう。

私のようなライター業(学術研究,専門・技術サービス業)はどうかというと、利益率は31.9%。不動産ほどではありませんが、かなり良い数値です。よほど派手な使い方をしなければ、会社が赤字になる可能性は低いと言えるでしょう(もちろん、油断は大敵です!)。

ちなみに、上で例に挙げたたこ焼き屋さん(飲食サービス業)はあまり利益率が良くないようで、12.9%だそう。飲食は在庫管理がシビアですから、どうしても利益が上げにくいのでしょう。外食好きとして頭が下がります。

このように、「儲かりやすさ」は業界によって大きく異なります。もちろん、利益“だけ”がお仕事の目的ではありませんが、ずっと赤字だと事業が続けられないのも事実。利益率が低い業種で起業するのであれば、なるべく固定費を下げ、閑散期に備える。利益率が高い業種でも、決して油断はしない。そのようなリスク管理が求められると言えるでしょう。

法人化すると気が大きくなりがち

どれだけキリキリ働いても、出ていくものが多かったら、経営は赤字になってしまいます。

そうならないためには、「スタート時に見栄を張らない」「定期的に見直しをする」ことが重要なのかなと。事実、新聞を読んでいると、コロナ禍で大企業が固定費削減を進めている、みたいな記事が目に入ります。ケタは全然違いますけどね。

富士通、固定費200億円削減 今期、ITの活用推進

これは自戒として書きますが、法人化すると、ついつい「どえらいことをやったった」感覚で、気が大きくなりがちです。「意識を高めるために 雑誌のサブスクを網羅しちゃお」とか、「人脈作りは大切だから 月額2000円の経営者サロンに入っておこ」とか。

一つひとつは小さな出費かもしれませんが、数ヶ月経って振り返ると、けっこうな金額になっていることも珍しくありません。「ザル会計」になっていないか、いま一度見直しをしてみましょう。

大事なのは、お金を意識的に使うこと

最後は、「削ってはいけないお金」の話で締めようと思います。

この記事ではさんざん「ぜいたくは敵!」みたいなことを言いましたが、だからといって、何でもかんでも削りゃいいわけではありません。

たとえば、ライターに必須のパソコン。たとえ10年前の機種でも、Wordファイルさえ生成できるなら、クライアントへの納品物は問題なく制作できるかもしれません。でも、ファイルを書き出すたびにもっさり止まるとか、エラーで落ちるなんてことがあれば、それは機会損失です。「節約節約!」ともやしばっかり食べていたら、体を壊すのと同じです。

個人的には、新聞や技術書、カメラ類などもあまりケチりたくない部類です。信頼できる情報源や、体系的に学べる書籍、ワンランク上の仕事をするための道具には、「ぐぬぬ」と唇を噛み締めながらも、そこそこ投資しています。使いすぎが心配な方は、「月々○円まで」のように目安を設けてもいいでしょう。

今回の話を総合すると、「意識的にお金を使いましょう」というメッセージにまとめられるでしょうか。

  • このお金は今、本当に必要なのだろうか。
  • 将来的に、どのようなメリットをもたらしてくれるのだろうか。

こういったことを自問しつつ、意識しながらお金を使っていけば、「知らん間に会社が赤字に!」というリスクはある程度避けられるのではないかと思います。

なんだか怖いし、難しいしで、あまり直視したくないお金の話。でも、個人で事業を営むなら、目を背けることはできません。数年前の私のように、困窮してぼんやり天井を眺めなくても済むよう、できるところから一つずつ考えていきましょう。

(執筆:夏野かおる 編集:少年B イラスト:あずさ)

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