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スキルは十分なのに成果が出ない…フリーランスがつまずく現場の特徴【社労士解説】

スキルは十分なのに成果が出ない…フリーランスがつまずく現場の特徴【社労士解説】

社労士(社会保険労務士)として活動するなかで、近年、企業の人事担当者やマネージャーの方から、フリーランス人材の活用に関する相談を受けることが増えてきました。

その中には、「契約書や働き方などのすり合わせを入念に行ったにもかかわらず、フリーランスが『居心地の悪さ』を感じているようで、うまくパフォーマンスを発揮してくれない」という声も少なくありません。

他にも、こんな声を聞いたことがあります。

  • 「スキルは期待通りだが、どうもチームの輪に入れず孤立しているようだ」という声が上がっている。何かできることがあるなら力になりたいが、どうすればいいか分からない(人事担当者)
  • フリーランスに依頼したタスクの進みが突然やけに遅くなった。理由を尋ねると、「必要な情報が見付からず、社員に確認したいが、聞きにくくて困っている」と言われてしまった。どの社員も質問は歓迎なのに⋯(現場マネージャー)

なぜ、このようなことが起きてしまうのか。実は、現場にある「暗黙のカルチャー」が、フリーランスの活躍のボトルネックになっている可能性があります。

この記事では、フリーランス人材に即戦力として活躍してもらうために人事担当者や現場マネージャーが意識したいポイント・具体的なケアを、社会保険労務士(社労士)の立場から解説します。

もひもひ
もひもひ

開業社会保険労務士(東京都社会保険労務士会所属)、特にIT/Web業界を中心に支援している。趣味は同人活動で、評論同人サークル「さかさまダイアリー」より同人誌「村上春樹っぽい文章の書き方」シリーズなど発行。(X:@mo_himo

違和感が募り、パフォーマンスが落ちてしまった2事例

トラブルまでは発展しなかったものの、フリーランスの心理的なストレスや業務の非効率を生んでしまった2つの事例を紹介します。

事例1:雑談とスラングで会話に入れないエンジニア

Slack上で、業務に関する話題と、業務に直接関係ない雑談や内輪ネタのやり取りが混在しているチームに入った、フリーランスエンジニアのAさん。

業務は問題なくこなせるものの、独自のスラングで日夜盛り上がるチームの空気感に馴染めません。飛び交うチャットも、「確認が必要な発信」なのか「読み流して良い雑談」なのかが分からず、モヤモヤが積み重なってしまいました。

事例2:失敗事例集にアクセスできないデザイナー

フリーランスデザイナーのBさんが参画したチームには、社員のみがアクセスできる情報共有ツールが存在していました。

そのツールには、過去の「しくじり」失敗例をまとめたドキュメントがあったのですが、Bさんはアクセスできず、毎回社員に口頭で確認するはめに。頑張って働けば働くほど社員の手を煩わせてしまう非効率感がモヤモヤとなり、うまくアウトプットを出すことが難しくなってしまいました。

稼働中のパフォーマンスを下げない! 現場マネージャーの3つのケア

このようなトラブルを未然に防ぐにはどうすれば良いのでしょうか?

ここでは、フリーランスの心理的ストレスを軽減する具体的なケアを紹介します。

ケア1:業務外コミュニケーションの「壁」を低くする

雑談チャットやランチ・飲み会に誘うのは良いことですが、フリーランスが「参加しなければならない(義務)」と感じるようなプレッシャーを与えてはいけません。

「参加は任意であること」「誘いへのレスポンスも義務ではないこと」を、最初の段階でマネージャーが伝えましょう。

伝える際には、以下のようなコミュニケーションが有用です。

「このチャンネルは基本的に雑談用です。大事な決定事項は別のチャンネルで共有するので、このチャンネルは反応も閲覧も自由です。もちろん投稿は歓迎です」
「ランチに誘うことがありますが、全て任意参加です。遠慮なく断ってくださいね」

会話のハードルを下げ、「壁」を極力低くしながらも、業務との「線引き」はしっかりとすることが大切です。

ケア2:暗黙知を意識的に言語化・共有する

どんな職場にも、長くいるメンバーだけが共有している暗黙知があるもの。それらを意識的に言語化し、しっかりと共有することで、アウトプットの効率が上がります。

過去の議事録や、重大な意思決定をしたときのプロセスはできる限りドキュメント化し、フリーランスがアクセスできるように権限を付与しておくと良いでしょう。

「このプロジェクトに関するドキュメントは全てこのフォルダにあるので、まずはご自身で参照してもらい、見当たらなければ◯◯さんに聞いて下さい」と伝えられるのがベストです。

そこまでのドキュメント整備が難しければ、最低でも月に一度は定期的に、「タスクの先にある、プロジェクトの最終的な目標やビジョン」を共有するのが理想的です。

「何のための仕事か」を透明化することで、言語化・共有しきれていない暗黙知がないか確認できます。

ケア3:報酬とは別軸で、「プロの仕事」を可視化・表出する

報酬を契約通りに支払うのは当然ですが、それとは別に「プロフェッショナルとしての貢献への感謝」を伝える仕組み作りも有用です。

例えば四半期に一度、マネージャーからフリーランスに対し、サンキューレターを贈る(仰々しければ、御礼メールでも良い)などの仕組みを用意します。

中身には成果物への評価だけではなく、「プロとしての〇〇さんのこうした強みが、〇〇という困難な課題をこのように解決してくれたことに感謝している」など、具体的な事例を挙げて敬意を明確に伝えることが重要です。

まとめ:プロ人材をうまく活用できる企業は、「区別」はしても「差別」はしない

フリーランス活用におけるカルチャーアンマッチの多くは、「正社員中心の、暗黙の了解」にプロフェッショナルであるフリーランス人材がすぐに順応しきれないことが原因で発生します。

フリーランスを真の戦力にするには、彼らを「プロフェッショナル」として区別し尊重しつつも、「組織貢献への敬意」も表出できる文化の整備が不可欠です。

人事担当者や現場マネージャーが、フリーランス人材を単なる「リソース」として扱うのではなく、「パートナー」として迎え入れる意識を持つこと。

これが、採用難の時代に優秀なフリーランスを早期に戦力化し、成果を最大化するための鉄則と言えます。

(執筆:もひもひ、編集:夏野かおる)

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